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いよいよクリフォート魔族王国に入国だけど、何か忘れているような? ……ヴィオレットとシルフィアはいつ回収するのだろうか? まさか、このままメインヒロイン二人放置して物語進行なんてないよね!?

 シトラスが去っていった後、無縫とフィーネリアはオズワルドに案内され、長城の屋上にやってきていた。


時空の門穴ウルトラ・ワープゲートだったか? 空間魔法を経由して連れてくるんだったな?」


「えぇ……ここで皆様をお呼びしてもいいんですね」


「ああ、どれほどの人数になるかは分からないが、ここは広いから場所に困ることはないだろう」


「じゃあ、早速呼んできますね」


 時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを開いた無縫は時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを通って地球に戻った。

 待つこと十数分、無縫が時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを通っで長城に戻ってきた。続いて、二、三人ずつ魔族が時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを通って長城に現れる。


「よーし、お前ら! 順番に長城の中に案内しろ! ……ところで、この時空の門穴ウルトラ・ワープゲートは無縫、お前がこの場にいなくても維持できるのか?」


「えぇ、遠隔で魔力を送れば維持できます」


「じゃあ、俺達は邪魔になりそうだし一旦その場を退散しよう。ヴィクター、終わったら情報を纏めて執務室に持ってきてくれ」


「……全く、困った総大将様ですね。面倒な仕事は全部人任せですか?」


「俺は細々とした仕事は苦手なんだ。戦場で雑に指揮を執っている方が性に合う。そういう仕事は我らが参謀殿の得意分野。任せたぜ、相棒!」


「…………はぁ」


 オズワルドは側近で参謀のヴィクターに後を任せると無縫とフィーネリアを伴って応接室に戻った。


「……まあ、なんというか、本当に申し訳なかった。人間から幾度となく侵攻を受けて、散々な目に遭わされてきて、俺達は人間を憎んでいるんだ。それに俺達の天敵である勇者という存在にも恐怖があった。……本来であれば、お前達勇者はこの世界に拉致られた哀れな被害者だ。まあ、お前は元の世界に帰れるみたいだし、少し違う立場かもしれないが。……魔族に色々な奴がいるように、人間にだって色々いる。それを俺達に教えてくれたのは、他ならぬ『勇者』だったっていうのにな……まあ、俺達が生まれるよりも随分と昔の話だが」


「その約束を守り、現代まで人間側に攻撃を加えないという誓いを守っているってことですね。……まあ、正直、俺のことはあんまり信用し過ぎない方がいいと思いますよ。元奴隷の件だって、フィーネリアさんがいなければ素通りしていましたから。……異世界の数だけ苦しんでいる人がいる。その人全てを救うなんて現実的な話ではない。だから基本、深入りすることはやめているんです……際限がなくなるから。まあ、今回はフィーネリアさんから頼まれたから致し方なく助けましたが、今回は特例措置です。今回の件は、全てフィーネリアさんの善意の賜物です」


「――ッ!? そんなことはないわ! 私は口だけで結局行動で何一つ貢献できなかった……実行に移した無縫君のおかげよ」


「まあ、とりあえず無縫、お前が困っている人をほっとけない優しい人間だってことは分かった。フィーネリアさんもな。……善意っていうのは線引きが難しい。それが当たり前になってしまえば感覚は麻痺して感謝なんてしなくなる。文句を言い出す輩も出てくるだろう。そいつは身の程を弁えない欲張りだ」


 そもそも、無縫はこの世界の人間と魔族の敵対に無関係だ。魔族を奴隷にすることに加担した訳でも、その事実から目を背けた側の人間でもない。

 そんな彼に奴隷となった魔族を助けるのは当然のことであるというのはあまりにも筋違いな話だ。その善意をありがたく受け取るのが正しいのであって、それ以上のことを求めるのはあまりにも傲慢である。


「あっ、それとお渡ししておくのを忘れていました」


 そう言って無縫が取り出したのは大量の金貨だ。


「元奴隷の方々の再出発のためにお渡ししている金貨です。彼らの再出発の費用としてお役立てください。……人間の国の金貨ですが、金としての価値は十分にあるので問題はないと思いますが」


「同胞を救ってもらっただけでなく、彼らが社会復帰するための費用まで……本当に何とお礼を言っていいのか。ああ、必ずこの費用はしっかりと役立ててみせる!」


「よろしくお願いします、オズワルドさん」



 金貨の入った袋を手渡した後、無縫とフィーネリアはオズワルドの案内でクリフォート魔族王国に入国することとなった。

 同行するのはオズワルドの他に魔族の騎士が二名だ。傍目から見れば、クリフォート魔族王国に侵入した不届き者二名を移送しているように見えなくもない。


 無縫とフィーネリアは入国した瞬間から刺すような視線に晒された。

 嫌悪、恐怖、殺意……様々な悪感情が無縫達を襲う。これまでのこの世界の人間の所業を考えれば当然のことである。


「すまないな。……ってあんまり応えてない感じだな。これだけの悪意に晒されているのに顔色一つ変えないとは」


「まあ、自分で言うのもなんですけど、潜り抜けてきた修羅場の数が違いますからね。……こういった感情に晒されるのは慣れっこです。それに……まあ、真面な人生は送ってきていないので」


「時々忘れちゃうけど、無縫君ってまだ未成年なのよね。……そういえば、親御さんってよく危険な任務に行く無縫君を止めないわね。普通の親なら、そんな危険な真似させないと思うけど」


「母親はそれどころじゃないっていうか、自分のことで精一杯というか。多分、俺のことなんてどうでもいいと思っていると思うよ。……父親と呼べるものは俺にはいませんし……まあ、家族には恵まれなかったということですね。大田原さんと内藤さんが親代わりみたいな感じです」


「……辛い半生を送ってきたんだな」


「まあ、俺も割と身勝手にやっていたんで……母親からしてみれば、疫病神以外の何者でも無かったと思いますよ。……あの二人もそうだけど、一番はヴィオレットとシルフィアに出会ったことかな? あの二人と出会って、振り回されているうちにずっと俺を悩ませてきた『渇き』が薄らいでいったので。……あの二人には面と向かって言えないですけどね、絶対に調子乗るから」


「まあ、確かに……想像が付くわね。――って、そういえば迎えに行かなくていいのかしら? あの二人ってまだ天空カジノにいるのよね?」


「とっくの昔にお金尽きただろうし、どうなっているのやら。無理矢理借金して繋いでいるのか、それともお金払えなくなって身売りするしかなくなるまで追い詰められて天空カジノの腕利きエージェント相手に逃げつつ暴れまくっているかも。……まあ、ここまで来たら一緒だし、とりあえず『頂点への挑戦(サタン・カップ)』のエントリーをして、拠点を見つけてからでもいいかな? キリがいいところで連れ戻しに行こうと思っているよ」


「しかし、大丈夫なのか? そう悠長にしていて」


「まあ、二人とも強いからね。ヴィオレットは異世界アムズガルドの魔王国のお姫様、つまり魔王の娘だし、シルフィアは魔法の世界フェアリマナの妖精で魔法少女に変身する力も持っている。流石に凄腕のエージェントでもどうにもならないだろうね」


「まっ、魔王の娘!? ……ああ、なるほど。それで、魔族に対して嫌悪感が無かったんだな。しかし、そんな国の重要人物、よく預けてもらえたな」


「預けてもらったというか、本人が駄々を捏ねたというか。そのせいで魔王とは確執ができて、行くたびにしょっちゅう喧嘩をふっかけられているよ。アイツからしたら娘を誑かしたタチの悪い男なんだろうけど……こっちは勝手にギャンブルを覚えた挙句、莫大な負債を生み出すただの疫病神なんだけどなぁ。シルフィアもだけど」


「……というか、大日本皇国の最後の砦を豪語し、魔王と引き分けるほどの実力者……一体どれくらい強いのか気になるな」


「Curiosity killed the cat……好奇心は猫を殺すって諺があるみたいだけど、まさにそれね。知らない方がいい恐怖ってのがあるのよ」


「まあ、そこまで言われると逆に気になるよな! よし、折角だし魔王軍幹部との勝負見せてもらうぜ! ……っていっても、この近くだとあんまり見応えのある試合は見れないか?」


「ん? それは、どういうことなんだ?」


「よし、お前らどっちか無縫達が宿泊できそうな宿を取ってきてくれ。その間に受付済ませてしまおうぜ!」


 オズワルドの指示を受けた騎士の一人がオズワルド達とは別方向へと走り出した。


「……何から何まで申し訳ないな」


「良いってことよ。それくらいしか俺にできる恩返しはないしなぁ。……それに下心もある。点数を稼いでおきたいんだよ。無縫には嫌われたくないしな」


「俺も流石にそんなことで嫌わないんだけどね。……見極めるのはもっと本質的なところだよ。幹部達を巡り、街の人達と交流しながらこの世界で何をするべきか、その答えを見つけたいと思っている」


「……願わくば、無縫が魔族と敵対する道を選ぶことがないように、なんてな。……さて、ついたぜ。この建物だ」


 街の建物は基本的に煉瓦造りだ。無縫達が辿り着いた建物も例外ではなく、煉瓦作りのようである。

 地上五階建て、周囲の建物に比べても明らかに高い建物の中へとオズワルドはズンズン入って行った。無縫とフィーネリアも後を追うように中へと入っていく。


 オズワルドは迷うことなく真正面の受付に向かった。

 そして、到着するなり無縫達に受付の方に来るように促す。

 カウンターの向こう側では純魔族の受付嬢と思われる女性が深々と頭を下げていた。


「お待ちしておりました。庚澤無縫様とフィーネリア=レーネ様ですね。シトラス宰相様よりお話は伺っております」


「どうやら宰相閣下が先に話を通してくれていたみたいだ。良かったな!」


「説明の前に、まずは参加希望者の確認をさせて頂きたいと思います。お二人で参加されますか?」


「いや、俺だけの予定だ。で、いいよな? フィーネリアさん」


「えぇ、それで問題ないわ」


「承知致しました。では、参加にあたり必要な書類をお渡ししつつ、私の方から簡単に『頂点への挑戦(サタン・カップ)』について説明をさせて頂きます」

◆ネタ等解説・七十四話

Curiosity killed the cat.

 日本語訳は「好奇心は猫を殺す」。イギリスの諺。

 英語の諺に「Cat has nine lives.」(猫に九生あり)というものがあり、そんな猫ですら持ち前の好奇心が原因で命を落とすことがあるという意味。

 転じて、『過剰な好奇心は身を滅ぼす』と他人を戒めるために使われることもある。


◆キャラクタープロフィール

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・オズワルド=トーファス

性別、男。

年齢、三十五歳。

種族、純魔族。

誕生日、一月二日。

血液型、O型Rh+。

出生地、クリフォート魔族王国キムラヌート区画。

一人称、俺。

好きなもの、平穏。

嫌いなもの、細々とした仕事、侵略。

座右の銘、徹底的な防衛。

尊敬する人、特に無し。

嫌いな人、特に無し。

好きな言葉、特に無し。

嫌いな言葉、特に無し。

職業、対人間族魔国防衛部隊司令。

主格因子、無し。


「対人間族魔国防衛部隊司令を務める純魔族の男。人間に対しては敵意バチバチだが、一度気を許した相手には豪放磊落な性格を見せる。細々な仕事を部下に丸投げしたり、自分の領分ではない仕事には協力できる場面でも手を貸さないなど意外と不真面目で図太い性格をしている」

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・ヴィクター=ホーグ

性別、男。

年齢、三十一歳。

種族、純魔族。

誕生日、四月九日。

血液型、O型Rh+。

出生地、クリフォート魔族王国エーイーリー区画。

一人称、俺。

好きなもの、アップルティー、シチュー。

嫌いなもの、特に無し。

座右の銘、特に無し。

尊敬する人、特に無し。

嫌いな人、特に無し。

好きな言葉、特に無し。

嫌いな言葉、特に無し。

職業、対人間族魔国防衛部隊副官。

主格因子、無し。


「対人間族魔国防衛部隊司令のオズワルドの副官を務める男。オズワルドとは魔王軍入隊時の同期で互いに切磋琢磨してきた間柄。オズワルドよりも勉強ができ、困っている人を放っておけない性格だったことが災いし、二人が対人間族魔国防衛部隊に配属されるとオズワルドの相棒的な立ち位置に収まってしまった。面倒な仕事を振られることに慣れきってしまったのか最近では色々と諦めているようである」

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