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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第二章「無法都市ダルニカと幸運の女神に愛された勝負師」

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まだ元奴隷達の再出発支援が終わっていませんが、次回から異世界アルマニオス編に突入する模様……って、どんな急展開だよ!? 作者の思いつきかよ!!

 古代都市アヴァロニアの空間魔法が再起動したことを確認した後、無縫は真由美達を地球に送り届けてからドルグエスと共にフィーネリア達の元へと戻ってきた。


「五月蠅い奴が戻ってきたわね。……私の平穏もこれでおしまいなのね」


 ドルグエスを見るなり溜息を吐くフィーネリア。

 一方、エアリスとミゼルカはドルグエスの姿を見て怯えた。


 フィーネリアと違いドルグエスは異形――怪人の姿をしている。その姿を魔族と勘違いしたのだろうか?


「お二人とも危険はないよ。ドルグエスさんは魔族じゃない。……まあ怪人だから人外の括りには入るんだけどね。というか、それを言うならフィーネリアさんも見た目は人間だけど、歴とした宇宙人? 虚界人だからね。ロードガオンっていう星から来た侵略者だし、危険度はそう変わらないよ」


「……無縫君、事実だけどやめてくれないかしら? 私のことまで怖がられてしまうじゃない」


「……いや武器に目がない脳筋よりも、寧ろフィーネリアさんの方が危険だよね? 穏健派とはいえ侵略行為はするし、アヴァロニアの件が無ければこの世界を侵略することも視野に入れていたでしょう?」


「えぇ、その可能性は高かったわね。無縫君を相手にしない分、侵略が成功する可能性は高かった訳だし」


「まあ、ということでドルグエスは基本的に五月蠅くて空気読めないだけで人畜無害だし……いや、寧ろそれって公害じゃない? フィーネリアさんは少なくとも君達には好意的だし、心配はないよ。ああ、それとも純粋に男が怖いっていう話? それはどうしようともないし、フィーネリアさんにお任せすることになるけど」


「「いっ、いえ! 大丈夫です!」」


 エアリスとミゼルカは奴隷になってからまだ日が浅い。

 心が折れてしまうほどの酷い目に沢山遭った訳ではなく、男性恐怖症を発症している訳でもないようだ。


 二人が恐怖を抱いたのは、ドルグエスを魔族と勘違いしたからだろう。魔族に対して恐怖意識や敵愾心を持つ者は多い。

 実際、助け出された奴隷達の中でもトラブルは発生していた。現在は、無縫が「仲良くできないなら全員ひん剥いて砂漠のど真ん中に放置する。俺にとっては人間も魔族も大差ない。偏見を捨てて、まずは互いに少しずつ歩み寄ってもらいたい」と脅しを掛けたため沈静化しているが、それでもギクシャクした状態は続いているようである。


「む、無縫様は怖くないのですか!? 魔族のことが」


 エアリスとミゼルカにとっては……いや、人類にとっては魔族は恐ろしい存在である。

 父母から子へ、父母から子へと魔族という存在がいかに危険であるか伝えられてきた。

 白花神聖教会や東方白花正統教会――エーデルワイスを崇める教会の教えとは別に、彼女達には身近に潜む危険な存在であるという意識が刷り込まれてしまっている。

 言葉にしたのこそエアリスだけだが、ミゼルカも気持ちは同じようだ。


「かつては俺も偏見を持っていた。だが、実際に接して彼が俺達とは異なる精神構造、つまり本質的に邪悪な心を持っている存在ではないということが分かったんだ。……魔族だ、人間だ、そんな尺度で物事は測れない。人間にだった悪い奴もいるし、良い奴もいる。違うか?」


「たっ、確かに……」


「まあ、俺が出会った奴の中には邪悪な魔族も中には居た。自分達を虐げてきた人間への恨みに染まって、もう戻れないところまで行ってしまった奴とかな。そういう奴は俺の手で殺さざるを得なかった。……だけど、不思議なことに人間の方が邪悪なことが多かったんだよな。波菜さんの時だって、勇者召喚を行った人間の国は魔族討伐を旗印に掲げ、大義名分を得た上で平穏に暮らす魔族の土地に侵攻を仕掛け、命を奪い、奴隷にし……散々なことをしていた。それに、連中は勇者に呪いを掛けて人間兵器として運用し、諸外国に戦争を仕掛けようとしていたしな。寧ろ、ちゃんと歩み寄れる人間の国の方が珍しかったな。残念ながら片手で数えられるほどしかない。異世界アムズガルドのイシュメーア王国とか」


「異世界アムズガルドっていうと、ヴィオレットさんの出身地よね。無縫君と同棲している魔王の娘の」


「どっ、同棲!? 魔王の娘と!?」


 あまりにも衝撃的だったのか、ミゼルカが目を丸くして声を上げた。


「あっ、ああ……まあ、同棲? はしているな。俺のっていうか、名義的には母さんの家で同居はしているし」


「ヴィオレットさんもだけど、シルフィアさんとも仲が良いわよね? どっちをお嫁さんにするのかしら?」


「……はぁ? フィーネリアさん、何言ってんの? 頭大丈夫?」


「そ、そんな暴言吐かれるようなこと言ってないわよね!?」


「掃除洗濯料理家事全般は全て俺任せ! ギャンブルに行っては億単位の散財がデフォルト! 自分でギャンブルの分は稼げと配信のための機材は全部用意したし、配信のためのゲームも全部俺が遊んでいる! なのに、生活費の現金持ち出してギャンブルに行くギャンブル依存症! ほとんどパチンカス! 一体どこに惚れる余地があるんだよ!」


「うむ、つまり無縫ママだな!」


「……まあ、認めたくはないけど、最近二人に対して出来の悪い子ほど可愛く見えてくるような、ある意味母性的なものも感じてきちゃっているし」


「……色々と末期ね」


「ともかく少しは偏見を捨てて歩み寄ってもらいたいってのが本音だ。……まあ、この世界の魔族についてはまだ情報が少ないし、これから実際に魔族領に入って直に触れて確認するつもりなんだけどね。彼らが滅ぼすべき邪悪であるならば、俺も対処する……が、正直彼らは寧ろ被害者だと思うんだよな。迷宮で得た情報とかも踏まえると」


「寧ろ人間側が毎回戦争を吹っかけている感じよね」


「……まあ、それが真実であるって可能性は高そうだよ。さて、エアリスさんとミゼルカさんはこれからどうするのか決めかねていて、その答えを見つけるために同行しているんだったよね?」


「最初は私達を助けてくださった無縫様に少しでもお力になれればと思い、同行させて頂きました」


「ですが、現実を思い知らされて……勿論、お力になりたい気持ちは変わりませんが、今は無縫様の仰る通り、今後の指針を決めるためにも旅に同行して見聞を広めさせて頂きたいと思っています」


「んじゃ、見聞広めるために異世界に行こうか?」


「「いっ、異世界ですか!?」」


「……突然ね」


「ルインズ大迷宮の攻略後に連絡を入れていた異世界アルマニオスの宇宙移住技術研究局からメールが来ていてね。詳しい話を聞きたいらしい。移住計画が成功しそうなら移住先の星を作ってくれるそうだよ」


「そういうことならマリンアクアさんの力を借りたいわね。……ドルグエス、良いかしら?」


「うむ、構わんぞ!」


「技術系の分野だと確かミリアラさんも強かったんじゃなかったかな? フィーネリアさんも含めて三人で行った方が良さそうだね。後はエアリスさんとミゼルカさんも。……ドルグエスさんは、まあ、脳筋に活躍できる場面はないだろうし、次の迷宮攻略のメンバーが決まるまでは地球に戻って待機で。ネガティブノイズに対処できる人員も必要だからね」


「ああ! 任せておけ!!」


 「これだけ、脳筋脳筋と馬鹿にされてなんで怒りもせず受け入れられるんだろう」とドルグエスの態度に疑問を覚える、少しだけドルグエスの存在を受け入れられるようになってきたエアリスとミゼルカだった。



 ミリアラとマリンアクアに連絡を入れてから、無縫はドルグエスを連れて独立国家ロードガオン地球担当第二部隊が拠点としている雑居ビルのワンフロアへと向かった。


「おっ、お前は魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカス!? 何故このアジトの存在が!?」


「……お前ら、大日本皇国の情報収集能力を舐め過ぎじゃない? お前らのアジトの場所くらいとっくの昔に調べがついているよ。ただ、こっち側から攻撃を仕掛けなかっただけ」


「うむ、無縫なら当然のことだな!」


「隊長はどっちの味方なんですか!?」


 以前、魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスと対峙してボコボコにされたヘラクレスオオカブトを二足歩行させたような姿の怪人がキレ気味な口調で叫ぶが、鈍感なドルグエスは全く気にした様子も見せない。


「ってことで、お前らのボスを返却しに来た」


「返却って一体どこに拉致していたんですか!? 連絡は取れないし、第一部隊の連中からは大日本皇国との休戦協定が結ばれたからしばらく大日本皇国の味方をしろっていうよく分からない指示を出されますし……全く、俺達と連中に上下関係はないってのに」


「……たく、ガラウスの野郎はしっかり情報共有していないのかよ。前々から役に立たない野郎だとは思っていたが……」


「マリンアクア様とも連絡がつかないし……まさか、魔法少女!? 貴様が!?」


「いや、マリンアクアさんに関してはフィーネリアさんの頼みでマンション管理をしている筈だから俺は関係ないよ。……それと、代わりにマリンアクアさんとミリアラさんをしばらく借りていくからよろしくね」


「はっ!? 巫山戯るんじゃないですよ! この外道!! 俺達の幹部様を拉致するなんて非道な真似を!!」


「少なくとも二人とは友好的な関係を築いている筈だし、本人達の了承も電話で得ているから拉致とかじゃないんだけどな。――って、ことでドルグエスさん。俺達がいない間、大日本皇国の防衛は任せた。ほどほど期待しているよ」


「うむ、大船に乗ったつもりで任せておけ」


「……やっぱり少し心配になってきたなぁ」


「本当に一体どうなっているんですか!? 敵である筈の魔法少女と隊長が仲良くしているし、俺達も知らないマリンアクア様の情報も知っているみたいだし……マンションの管理って何!? ドルグエス様も大日本皇国の防衛引き受けちゃっているし!? ドルグエス様、ご説明を!! ご説明をお願いします!!」


 「あの脳筋に説明なんて無理だろうなぁ」などと思いつつ、無縫は独立国家ロードガオン地球担当第二部隊のアジトを後にした。

◆ネタ等解説・六十二話

異世界アルマニオス

 名前の元ネタは特にない。世界観を構築する際に念頭に置いたのはフジテレビ系列で2004年から不定期に放送されているゲームバラエティ番組『run for money 逃走中』の第15回以降の舞台設定である月のコロニー。

 研究階層(ラボフェーズ)住民階層(パブリックフェーズ)に分かれたコロニーの構造は尾田栄一郎氏の漫画『ONE PIECE』に登場する島である未来島エッグヘッドが着想元になっている。


重力

 地球上で物体が地面に近寄っていく現象やそれを引き起こすとされる力と人々が日々、物を持った時に感じている所謂「重さ」を作り出す原因となる力。

 物体が他の物体に引きよせられる現象及びその力。

 その物体の質量によって生じる時空の歪みが他の物体を引き寄せる作用。

 この三つのいずれかを指して用いられる言葉。


反重力

 物質・物体に加わる重力を無効にしたり、調節したりするとされる架空の技術または現象を指す言葉。

 現実の物理学では一般に不可能と考えられており、多くはSF作品に宇宙航行の基礎技術として登場する。

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