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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第一章「Welcome to gesso」

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Act.1-27 七百一層を探索せよ!! 天職とスキルを確認しつつ、魔物討伐。PART TWO.

挑発(タウンティング)! うむ、敵の攻撃を引きつけることはできるようだな! 護法の障壁で受け止めつつ、棘盾の盾撃スピニーシールド・スウィング……よし、決まった!」


 リリスは守護戦士(ガーディアン)の敵を引きつけるスキルで攻撃を自分に向け、ダメージ遮断効果のある障壁を展開する巫女(カンナギ)のスキルで攻撃を防ぎ、その隙を突いてトゲトゲのある盾を生み出して魔物にぶつけて撃破する。

 リリスが自分の知っているスキルを確認するように技を試していく一方、滝ノ瀬廉、松嶌紬、旗幟遊大――内務省異界特異能力特務課の新人達は三人で背中を預け合いながら指向性音響共振銃を構えて魔物達と交戦していた。

 命中すれば例え頑丈な甲羅に覆われていようと回避も防御もできない音の弾丸を放つ指向性音響共振銃を無効化することはできない。


 結果として、魔法少女プリンセス・カレントディーヴァや龍吾が苦戦した魔剛の巨亀(オリハルトータス)にも苦戦することは無かったのだが……。


「……どうやら、指向性音響共振銃の扱いバッチリのようですね。ただ、スキルを扱う戦いの方にはチャレンジできていないようだ。……無縫君、茉莉華さん、競争を中断してください。無縫君、新人三人にスキルの扱い方の指導をお願いします」


「分かりました! ……茉莉華、命拾いしたな!」


「それはこっちの台詞よ!」


 魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスと魔法少女プリンセス・カレントディーヴァは互いに「ふんッ!」とそっぽを向き、魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスは廉達の元へとやってきた。一方、魔法少女プリンセス・カレントディーヴァは魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカス達と離れるように魔物の群れの中へと飛び込んでいく。


「まず、滝ノ瀬さんには魔弓士(マジック・アーチャー)用の弓と、義賊(シーフ)用の短剣、探索者(レンジャー)用のロープをお渡ししておきます。魔弓士(マジック・アーチャー)は魔力を知覚し、操ることで矢のように変形させることが可能な天職です。また、魔法を矢の形に変形させて放つこともできます。松嶌さんには補助用の杖をお渡しします。施療神官(クレリック)と治癒師と雷炎術師(プラズマ・マンサー)、魔法系が多いのでまず魔法の使い方を説明しましょうか。魔法の習得はまず体内の魔力を知覚することから始まります。その後、自然界の――つまり外の魔法を知覚し、小規模な魔法であれば体内の魔力に、大規模な魔法であれば体内の魔力を使って自然界の魔力に干渉することで自らのものとし、その魔力に意味を与えることで発動します。適性が合えば、その形をイメージするだけで発動が可能ですが、詠唱などを付け加えることでイメージを補填して効率化や高速化をさせることもできます。雷炎術師(プラズマ・マンサー)はプラズマを生成し、操る能力のようですね。こちらは他のスキルと同様に感覚で使えると思いますよ。旗幟さんは剣をお渡ししておきます。高位付与術師(ハイ・エンチャンター)も基本的には魔法使いと同じです。ただ、魔法使い系が攻撃や回復の魔法をそのまま思い浮かべて発動するのに対し、高位付与術師(ハイ・エンチャンター)は武器などの媒体に対して何かの魔法を付与するというものです。まあ、いずれも感覚で習得するものですし、まずは実戦行ってみましょう」


「流石は無縫、買った家電の説明書を読まないタイプの人間は言うことが違うわね」


「不服だけど、確かに読まないな。基本的に必要な情報は書いてあるし、書いてないのもフィーリングで分かるだろ? というか、ヴィオレットとシルフィアの動画編集用のパソコンを組んだのも、動画編集に必要なアプリケーションをダウンロードしたのも、キャプチャーボードに対応できない携帯ゲーム機の動画を撮るために安価で購入した中古のゲーム機を改造したのも俺だし、基本的に機械類には強いからな、俺。……まあ、流石にオリジナルの茶番劇用の音声の準備はハードルが高くて、機械系に強い内務省官僚の友人にお願いしたけど」


「それだけできれば十分だと思いますけどね。……機械に強くて、配信経験者というの那須(なす)さんですか? まあ、彼なら引き受けてくれそうですね。しかし、無縫君も多彩ですね。年末の宴会ではプロ顔負けのコインマジックとカードマジックを披露していましたし」


「カジノによっては、マジックを披露しているところもあるんですよ。そこで、技を見ていたらなんとなく習得できました」


「……本当に嫌味な器用さしているよね、無縫って」


「お褒めに預かり恐悦至極」


「褒めてないわよ!!」



紫電の矢パープルライトニング・アロー!!」


 弓を構えた廉の左手にバチバチと音を立てる紫の電撃が発生――その電撃が矢を形作った。

 思いっきり弓を引いて矢を放つと、矢は死を呼ぶ飛行者(デスゲイズ)へと放たれる……が、狙いが甘かったからか矢は死を呼ぶ飛行者(デスゲイズ)、の頭上を擦り抜けていった。


「……なかなか当たりませんね。しっかり狙っているつもりなのですが」


「――電離の奔流プラズマティック・バースト!! はぁはぁ……かなりの魔力を消費するわね」


「助かりました、松嶌さん」


 廉に狙われて鬱陶しさを感じたのか、標的を廉に定めて襲い掛かってくる死を呼ぶ飛行者(デスゲイズ)に至近距離であれば流石に攻撃を当てられるだろうと、魔力を収束して矢を形成していた廉だったが、廉が矢をいるよりも死を呼ぶ飛行者(デスゲイズ)の攻撃が命中するよりも早く紬が杖と共に無縫から受け取った用途不明の鉄片をプラズマ化させ、収束して死を呼ぶ飛行者(デスゲイズ)の翼を撃ち抜いた。


「……金属をプラズマ化したのですか?」


「無縫さんから渡された鉄の板の使い方……恐らくこれで合っていると思います。電気や炎を生み出すこともできますが、金属類をプラズマ化させる方が威力は出るようです。……なかなか制御は難しいですが」


「こちらも似たようなものですね。弓矢の経験なんてないので、なかなか当たってくれません」


「まあ、最初はそんなものみたいですよ。内藤さんみたいにスキルに絶対必中のような因果干渉系効果が付与されていない場合や射撃補助系のスキルがない場合は的に当たるようになるまで大変と聞きますから」


「ちなみに、無縫さんはどうでしたか?」


「目を瞑って射っても、適当な方向に撃っても当たりましたよ? まあ、運がいいので」


「……だと思いました」


 無縫と龍吾の二人は当てにならないことを悟った廉はこの時、異世界にいるうちは安全圏でとにかく当てる練習をして、地球に戻ってから弓道やアーチェリー経験のある内務省職員に教えを乞おうと方針を固めた。


 一方、二人と同期の遊大はというと……。


「大気に付与を行い、亀の魔物の頭上のみに気圧を1YPa(ヨタパスカル)になるように調整……うわぁ、原型がなくなるくらいに潰れた。この魔法、魔力の消費が激しいですが、その分できることの範囲もかなり広そうですね。とりあえず、過剰過ぎますし、ファンタジーの王道の属性付与魔法剣だけで留めておきますか?」


 魔剛の巨亀(オリハルトータス)を粉砕した自分の高位付与魔法(ハイ・エンチャート)に恐怖を抱いたのか、それとも効率が悪いと判断したのか、無縫から受け取った剣に炎を纏わせて無謀にも魔物達の群れの中へと突っ込んでいった。

 ちなみに、中学時代から剣道一本で大学に通いながら二天一流系譜の道場の門戸を叩き、大学卒業と同時に免許皆伝となった遊大と剣士のスキルの相性は頗る良く、牛鬼の大殺戮魔ミノタウロス・ターミネーター相手にも全く遅れを取ることは無かった。


 内務省入省時には「戦闘経験が少ない」と謙遜していたものの、銃火器の扱いと実戦の経験がないだけで剣を使えば右に出る者といえば鬼斬出身者か無縫くらいという実力過小申告の疑いがある遊大は、日頃のストレスの発散でもしているのか「ひゃっはー!!」という奇声を上げながら魔物の鮮血に染まりながら魔物達に斬撃を浴びせて血飛沫を上げていく。


「……遊大さんは大型新人ですね」


 苦笑いを浮かべる龍吾に、同意の意味を込めて苦笑いを返す魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスだった。



変身術師(シェイプ・シフター)に、パン屋――戦闘できる天職が当たらなかったってことは、自前の戦力で戦わなければならないってことじゃないですか!!」


 半ギレ状態で「ワーブリンクシステム起動!」と叫び、自らのワーブルを消費してワーブル体と呼ばれるワーブルで作られた戦闘用の体を生成――その体に魂を移して戦闘準備を整える。

 ロードガオンには大きく分けて四つの戦闘スタイルがある。


 製造した怪人を使う戦闘方法、ワーブルを使って生み出すワーブリス兵と呼ばれる兵器を使う戦闘方法、ワーブルを消費する武装を使う戦闘方法、ワーブルで戦闘体を作り出し、その戦闘体に魂を移して戦う方法の四つだ。

 基本的にそれらを組み合わせながら独自の戦法を構築するのがロードガオンの一般的な戦い方なのだが、ガラウスはその中でも怪人もワーブリス兵も一切使用せず、ワーブルで作った戦闘体とワーブルで動く武器を駆使する戦闘を得意としていた。


 ちなみに、フィーネリアは怪人を前衛に配置し、自身は戦闘体を使用せず後方からワーブルを消費する武器を駆使して遠距離攻撃を仕掛ける後衛型、ドルグエスは怪人に改造された身体を武器として時に正面から、時に搦め手を駆使して戦う半前衛型、マリンアクアは怪人とワーブリス兵を投入し、自分は安全圏から一方的に敵を攻撃させる後方支援型である。

 ただし、マリアアクアは己が矢面に立って戦うことに苦手意識を持っているというだけで、ワーブルを使用する武器の扱いができない訳でも、戦闘体での戦いができないという訳でもない。なんなら、ガラウスと肉弾戦をして圧勝できるくらいの実力を彼女自身が自覚していないだけで有していた。


 ガラウスの特技分野である近接戦闘でも実力が劣り、マリンアクアのような怪人製造やワーブリス兵の製造といった後方支援も苦手。……そんなマリンアクアを差し置いてドルグエスの右腕を名乗っているのはガラウスである。

 ロードガオンの人事は一体どうなっているのだろうか?

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