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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第一章「Welcome to gesso」

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デモニック・ネメシスを討伐した元無能は百層から七百層まで落下中!

 ――ヒュ〜〜。


 どこまでも自由落下を続ける無縫。視界に映るボスの間の明かりは徐々に小さくなっていき……豆粒のように小さく。


「……いや、どこまで落ちんねん!」


 一人ツッコミを入れつつ、魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスに瞬時に変身――愛用する魔法少女の杖――瑠璃色の陽光スタッフ・オブ・ソーダライトを召喚すると、その上にちょこんと横乗りで座って勢いよく下へと急降下した。


「……三百層、四百層……まだだな。七百層とちょっとまで奈落は続いているのか。まあ、完全に落ちたら命はないタイプのバトルフィールドだったのだろう。……まあ、でも俺みたいな奴にとっては単なるショートカットだけどね」


 七百一層に降り立った魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスは【ステータス封印】で封印されていた全てのステータスを解放した後、光魔法で光源を創り出した。

 無数の光源に照らされた七百一層はどうやら遺跡を彷彿とさせるエリアのようだ。ところどころから水漏れのように地下水が噴き出しており、かなりひんやりとした空気が漂っている。……まあ、あらゆる環境に適応できる魔法少女の身体には何一つ影響がない訳だが。


「さて……このエリアにはどんな魔物が」


 魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスは辺りを見渡して……視界に入った複数の牛鬼(ミノタウロス)風の魔物に顔を引き攣らせた。


牛鬼の大殺戮魔ミノタウロス・ターミネーターって名前の魔物なのか? ……その割には殺戮系のスキルよりあっち方面のスキルが多いというか……【性転換】スキルとか、女は犯す、男も女にして犯すっていう強い意志を感じるしなぁ。とりあえず、貞操の危機は全力で回避させてもらうよ!」


 光源として使っていた火球と迷宮を淡く照らす緑煌石の光が物理法則を逸脱した動きで収束、光の筋(レーザー)と化して次々と牛鬼の大殺戮魔ミノタウロス・ターミネーターの急所――心臓を的確に貫いていく。


 魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスの固有魔法――その正体はエネルギー操作である。

 それも、エントロピー増大則を真っ向から無視し、熱のような煩雑なエネルギーからでも純粋なエネルギーを取り出して操れるというなんともぶっ壊れた効果となっている。


 増大する宇宙のエントロピーを引き下げるために営業職の如く暗躍する某宇宙生物や、エネルギー不足に悩み、挙句一部の過激派が魔法少女をドロドロにと化してエネルギーを取り出す作戦まで強行した砂上の楼閣と化した某魔法の国が欲しがりそうな固有魔法だが、本人はあまりにもチート級な性能故に「戦いが面白くなくなるから」とあまり使いたがらない。宝の持ち腐れである。


 ちなみにエネルギーは自分が知っているエネルギーであればという条件はつくものの、基本的にどんなエネルギーにでも変換することが可能である。

 更に、既に存在するエネルギーを操ることしかできないという訳でもなく、他の魔法少女と同様に魔力を消費して魔法を発動することも可能である他、物質に干渉することで質量をエネルギーに変換して莫大なエネルギーを取り出すこともできるため基となるエネルギーに困ることもない。……まあ、後者の質量をエネルギーに変換する魔法は魔法少女になってから一度も使ったことがないのだが。


 そこに、異世界で獲得した多くのチートスキルが組み合わさってしまうのだからタチが悪い。流石は大日本皇国が誇る最強の守護者である。


 ちなみに、死亡偽装には【黄金錬成】という別の力を使うつもりでいたようだ。純粋な【黄金錬成】は莫大な魔力を消費してそれに見合った黄金を生み出す技だが、少し精度を落とせば莫大なエネルギーを犠牲に少量の金を生成する術となる。

 元素転換を可能とするだけのエネルギーは雑にぶっ放すだけでも戦術級や戦略級の魔法と同等程度の被害を出してしまう。無縫はこれを適当にぶっ放して巻き込まれたことにするつもりだったが、もしそんなことをすれば無縫どころかクラスメイト全員が巻き添えを喰らう可能性もあった。……頓挫して本当に良かったといえる無茶苦茶な作戦である。


「さぁてと……とりあえず、内藤さんに連絡を入れておこうかな? それから……ん? 当初の予定では受け渡し云々は魔族領に入ってからのつもりだったけど、この時点で十分帰国は可能だしな。大日本皇国を守護しつつ、迷宮を攻略する二足の草鞋をすればいいだけだし、期限もしっかりと決めて無かったしな。よし、フィーネリアさんとドルグエスさんにも連絡を入れよう」


 周囲に魔物がいないことを感知スキルで確認してから、無縫は徐にスマートフォンを取り出した。


「お疲れ様です、内藤さん。今お時間よろしいでしょうか?」


『えぇ、今は大丈夫です。無縫君、どうしました?』


「実は紆余曲折あって今、一人で迷宮に居まして」


『確か、迷宮に挑戦するという話でしたね? クラスメイトと一緒に居た筈ですが、何故そのようなことに?』


「……実は転移系のトラップに巻き込まれて迷宮の百階層まで飛ばされたのですが、そこでかなり強力な魔物と交戦中にクラスメイトから攻撃を受けまして……そのままの勢いで七百層まで落下して現在に至るという状況ですね」


『…………はいッ!? ごほん……ええっと……どういう状況か説明して頂けますか?』


 無縫は自分が高校で置かれていた立場や受けていたイジメの内容、その原因と実行犯(・・・)が今回の凶行に至った理由を全て詳らかに話した。

 電話口から一切の反応が聞こえないのが、少し不穏である。


『……なるほど、状況は全て理解しました。……どこぞの錬成師が主人公の異世界ものを思い出しますね』


「一体どんな話ですか?」


『あれだけ有名な話ですから、ご存知だと思っていました。……ふむ、非常に不愉快なお話ですね。無縫君の対応は実に無縫君らしいと思います。虐めの原因は全て嫉妬ですから、無縫君がどんな対応を取っていたとしても状況は変わらなかったでしょう。……黒崎さんと芦屋さんを頼らなかった考えも分かります。お二人にとってはかなり精神的に苦痛な選択だったと思いますけどね。……我々の仕事は我が国の国民を守ることです。彼らは残念ながら(・・・・・)庇護の対象となってしまいます。ですが、虐めにもしっかりと対応はしなければなりません。学校ぐるみで虐めを隠蔽という前例も残念ながらいくつもありますからね。ここで一度見せしめにするのも良い考えかもしれません。……まあ、それを抜きにしても私は無縫君に情がありますし……それに、本物の父親の如く私以上に貴方のことを大切に思っている大田原さんは、今回の話を聞いて黙っているという選択肢は取れないでしょうからね。文部省は内務省から独立した省庁ですから、ある程度指示は出せます。彼らへの断罪の瞬間が今からとても楽しみですね』


「……内藤さん、怖いですよ。そんな大騒ぎすることでもないですって」


『……それで、これから迷宮探索ですね。実は丁度、異界特異能力特務課に入った新人三人の実戦研修を行おうかと思っていたところなんです。それと、参事官補佐も自らの言葉で無縫君に報告したいことがあるそうなので、今からそっちに行っても大丈夫ですか?』


「実はこれから独立国家ロードガオンの幹部二人に連絡を入れて攻撃中止の対価のお支払いをしようかと考えていたんです。アポは取っていないのでこれから交渉をするのですが。単独行動が可能になったことで、もう大日本皇国の防衛はできますからね。地球と異世界を行き来しながらのんびり迷宮を攻略しようかと考えていたのですが……もし、そことかち合っても大丈夫なのであればどうぞ」


『特に問題はありませんね。一応、他にも希望者がいないか確認してから転移しますので、座標だけメールで送ってください』


「分かりました」



 独立国家ロードガオンの幹部二人――フィーネリアとドルグエスに連絡を入れると、こちらも了承がもらえたので、無縫は早速時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを使って地球へと帰還した。

 今回の目的地はフィーネリアが所有する高級マンションの一つだ。そこで、フィーネリアとドルグエスの二人と合流することになっている。


 エントランスでスマートフォンを弄ぶこと十五分、中から三人(・・)の男女が現れた。

 一人目はフィーネリア、二人目はドルグエス、そして三人目は黒髪の長髪をポニーテールに結った赤い目をした長身痩躯の男である。


 名をガラウスといい、脳筋思考のドルグエスを支える右腕的存在だ。ちなみに左腕的存在はマリンアクアという青色の髪を持つ妖艶な女性である。

 フィーネリアとも仲が良く、彼女がマンションのオーナーになった際には真っ先に部屋を借り、賃借人第一号になったようだ。現在はフィーネリアからの頼みでマンション管理士の資格を取って管理人を引き受けているようだが、今回はフィーネリアとドルグエスの二人と繋がりのあるマリンアクアではなく何故かガラウスが同行しているようだ。


 無縫は予想外の状況に首を傾げつつ、フィーネリア達に声を掛ける。

◆ネタ等解説・二十三話目

牛鬼の大殺戮魔ミノタウロス・ターミネーター

 筆者オリジナルの魔物。初出は『文学少年(変態さん)は世界最恐!?』。ミノタウロス系の魔物の亜種。

 ターミネーターといういかにも殺戮系の名前を持ちながら性転換系のスキルを持つ謎生物。しかし、その力は凶悪で『文学少年(変態さん)は世界最恐!?』の世界では生息地としている魔王領で多くの魔族達に絶望とトラウマと尊厳破壊を与えた。

 ミノタウロスとはギリシア神話に登場する牛頭(半人半牛)の怪物のことを。


エントロピーの増大則

 エントロピーとは熱力学及び統計力学において定義される示量性の状態量のこと。

 熱力学第二法則が定める熱力学的に可能な操作から熱力学的エントロピーの増大則が示されており、エネルギーはより煩雑な状態へと向かい、最終的に宇宙は熱的死を迎えるという説もある。


増大する宇宙のエントロピーを引き下げるために営業職の如く暗躍する某宇宙生物

 『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズに登場するマスコットのような外見の四足歩行動物、キュゥべえのこと。

 インキュベーターと呼ばれる地球外生命体の端末でエントロピーの増大による宇宙の熱的死を回避するべく暗躍している。


エネルギー不足に悩み、挙句一部の過激派が魔法少女をドロドロにと化してエネルギーを取り出す作戦まで強行した砂上の楼閣と化した某魔法の国

 遠藤浅蜊氏の『魔法少女育成計画』に登場する魔法の国のこと。異世界にある不思議な国で魔法使い達が暮らしている。

 国の方針として「新しい血」を求め様々な世界に仲介人の魔法使いを送り、協力者を増やしている。

 近年は魔力不足に陥っており、「魔法の国」の建国の立役者である始まりの魔法使いの直弟子「三賢者」の一人であるアヴ・ラパチ・プク・バルタの現身プク・プックは始まりの魔法使いの残した装置を起動して魔法少女をドロドロに溶かして魔力を取り出すというとんでもない計画を企てていた。なお、その魔力不足の原因は三賢者達を限定的な不死としている三賢者システムそのものにあった模様。


【黄金錬成】

 元ネタはテレビアニメ『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』に登場するりパヴァリア光明結社統制局長アダム・ヴァイスハウプトが行使する黄金錬成。

 作中では「超高温・超高圧によって引き起こされる核融合によって哲学的結婚(元素転換)を行い「金」を錬成する術式」とされているが、本作でも膨大な魔力を消費して似たような現象を引き起こしている。ただし、本作では黄金錬成の精度を上昇させることが可能で、完全なる黄金錬成も可能という点では元ネタと異なる。

 自作『百合好き悪役令嬢の異世界激闘記』にも同様の錬成スキルが登場。


どこぞの錬成師が主人公の異世界もの

 白米良氏のライトノベル『ありふれた職業で世界最強』のこと。本作はかなり『ありふれた職業で世界最強』と近い設定がある。……というか、逢魔時自身が影響を受け過ぎているテクストの一つである。


◆キャラクタープロフィール

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内藤(ないとう)龍吾(りゅうご)

性別、男。

年齢、二十五歳。

誕生日、十月二十日。

血液型、A型Rh+。

出生地、新潟県新潟市。

一人称、私。

好きなもの、アンティーク、休暇、小説サイト巡り、普通。

嫌いなもの、残業、徹夜、裏切り、旅行。

座右の銘、無念無想

尊敬する人、坂口安吾(内務省異能特務課参事官)、織田作之助(ポートマフィア最下級構成員)。

嫌いな人、司法庁の役人達。

好きな言葉、「やれ突飛さだ奇抜さだケレン味が 評価される世の中ですが楽しい旅行先よりも帰ってきたわが家が一番安らぐでしょう? そうシンプルなのが一番強いんですよ(アオキ)」。

嫌いな言葉、「あなたが死にたいと言った今日は、昨日死んだ人達が死ぬほど生きたかった明日なんです」。

好きなゲーム、『ポケモンSV』。

好きな作品の傾向、異世界ファンタジー。

好きな漫画、『文豪ストレイドッグス』。

職業、内務省異界特異能力特務課参事官。

主格因子、無し。


「若くして内務省異界特異能力特務課の参事官にまで上り詰めたエリート官僚。軍人経験者でも鬼斬出身でも陰陽師出身でもない純粋な一般出身でありながら、数々の任務を己が頭脳で成功させてきた超人である。無縫にとっては惣之助と並ぶ恩人である」

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