ルーグラン王国聖戦戦争、やっぱり絶対戦力過多が過ぎたんだよ!! 屈強の騎士達が風前の塵みたいに飛ばされていくってどんな疑獄絵図なの!?
――舞台を再び異世界ジェッソに戻そう。
逢坂詠による神山両断事件の後、ブリュンヒルダの最高戦力であるプリュイは庚澤無縫よりも逢坂詠が危険であると判断し、詠への攻撃に打って出た。
「――転輪武装、聖剣顕現! 転輪異能、最上大業物『倶利迦楼羅』!!」
浄化の炎をそのまま固めて剣の形に整形したような真紅に輝く剣を生み出した聖剣と共に鞘から抜き払い、二刀流の構えを取る。
その瞬間、プリュイの戦闘力が大幅に上昇したことを詠は見抜いた。
「差し詰め、所持した剣の記憶を読み取って再現する能力……ということか?」
「――ッ!?」
「だが、所詮は借り物。己が信念と共に鍛え抜いた我が剣はそのような紛い物では止められんぞ!!」
「流石に俺も一流の剣士には負ける……かつて、俺が死を迎えたのも己が才能に、超共感覚に甘えていたからだ。だから、徹底的に鍛えた。記憶を読み取り、その動きを身体に刻みつけた! 模倣も積み重ねれば本物を超える力になる!! ――比翼焔聖ッ!!」
「紛い物だと理解した上で、それを鍛えて一流を越える境地に至らんとするか……つくづく惜しいな。もし、敵でなければ信頼に足りうる良い部下になっただろう。ここで切り刻まなければならないのが残念でならないな……」
「もう勝った気でいるのか? そんな慢心していいのか? 足を掬われるぞ! 俺という模倣者如きに!!」
最早言葉など不要と言わんばかりに詠は愛刀である雷切丸を鞘から抜き去り、『神刀・虚空御前』と共に強く握り、双翼の構えを見せる。
プリュイもまた比翼の構えを取り……そして、二人は怒涛の神速斬撃を互いに放ち始めた。
あまりにも速過ぎる故に常人の動体視力では捉えきれない不可視の太刀――それをプリュイも詠も化け物じみた動体視力で読み切り、互いを削り切ろうと剣を振るう。
「あんなものが……存在して言い訳がない! あれは、『異常』な力……イレギュラー……なんなのですか!! この戦場はッ!! 不都合と理解不能に塗れている!!」
感情がない筈のオルトリンデが叫び声を上げる。
真の神の使徒達も本来はある筈がない恐怖の感情に苛まれていた。あの場に割って入ろうとしたら己の身体が切り刻まれることを彼女達の直感が告げているのだ。
「――本当に化け物が過ぎるだろ! 無縫さんがまだマシに思えてくるじゃないか……いや、無縫さんは無縫さんで別ベクトルでおかしいけどな!」
一方、魔王に似つかわしくない雑兵処理に勤しんでいたテオドアは二人の死闘を見て恐怖に苛まれていた。
「『雷霆』、一斉掃射です!!」
戦場は理不尽に塗れている。王城と神山を守る戦力として、白嶺騎士団の第一部隊、第二部隊、第三部隊――たった三つの騎士団ではあまりにも分が悪過ぎた。
眼鏡を逆光で輝かせる龍吾の指示の元、井伊谷琢三や崑崙八仙彦斎――異界勢力制圧特殊部隊『雷霆』の面々が一斉に指向性音響共振銃を構えて掃射する。
対異界戦力用の飛び道具は剣などを武器として白兵戦を主とする騎士団との相性は最悪だった。中には魔法の使い手もいたが、指向性音響共振銃は音波で脳を直接揺さぶり、照射一秒で意識を十秒で命を消し去るほどの力を持つ。
照射時間三秒にして、白嶺騎士団の第三部隊は隊長を含めて全滅に追い込まれた。
「――さてさて、後方支援後方支援。私達はのんびり行きますよ。血の気の多い、やる気のある奴らが頑張ればいいじゃないですか」
全くやる気を見せず、眠たげな目をしている幸成だが、その支援は流石は陰陽頭というべき完璧なものだ。味方を守る結界を張って安全を確保しつつ、素早く呪を放って鬼斬達を強化していく。
本来、陰陽師は後方支援の役割を担っている。前線での戦いを得意とする鬼斬達を支援するのは陰陽師本来の戦い方なのだ。
「……やっていることはセオリー通りなんですけど、なんか間違っているような感じがしますよね、先輩……じゃなかった、陰陽頭殿。ほら、後輩達、鬼斬に混じって前線で戦っていますよ? あれが新時代なのかな?」
「嫌味ですか? 天才・蘆屋天涯殿。……全く、道満の血を受け継ぐ貴方が陰陽頭になれば、私も楽隠居できたというのに」
「俺は陰陽助の方が性に合っているんです。人を支える方が得意ですから。……帰ったら書類仕事ありますからね」
「代わりにやっておいてくれないですか? 陰陽頭の役職もあげますから」
「ご先祖様が聞いたら呆れますよ! 貴方は安倍晴明の師である賀茂一族の天才の再来と言われていますから。……じゃあ、俺も前行きますので、後方支援よろしくお願いします。聖天纏符!」
「やれやれ……本来なら午睡をしている時間なんだけどなぁ、優雅にポテチを食べながら」
天涯が符より生み出した白い小手を両手に装備し、天涯は圧倒的なスピードで戦場へと突撃していく。
その体を眩いほどの金色の輝きが包んだ。幸成による身体強化の陰陽術だ。
「白滅拳浄!!」
「九字格子・連撃! でござる!!」
「音と陰陽術の融合よ! 爆浄音散!!」
「飯綱ちゃん! 行くよ!!」
「うむ、任せるのじゃ!!」
「聖獣深化・大管狐!!」
「――我が力を見るがいい!! 鬼火火祭り!!」
眩い光を纏った拳を迫り来る騎士を上回る勢いで肉薄して、その身に叩き込んで吹き飛ばす天涯。
そんな上司に負けじと在原芳房が「九字格子」を連発し、西嶋美遊は音撃術師と陰陽術を組み合わせて強化した音攻撃を放ち、春風藤翔は陰陽術の符で飯綱ちゃんを強化し、巨大化した飯綱ちゃんが巨大な鬼火を放って次々と騎士達を撃破に追い込んでいく。
「「――桃源天剣流・北斗ノ太刀・破軍」」
「覇霊氣力・雷鳴変化ッ! 千鳥雷切ッ!!」
「覇霊氣力・水流変化ッ! 九頭竜村雨!」
一方、本来前線で戦う鬼斬達も負けてはいない。
桃沢真由美と桃沢日和の桃沢流継承者二人が唐竹、袈裟切り、逆袈裟、右薙ぎ、左薙ぎ、左切り上げ、右切り上げ、逆風、刺突――怒涛の九連撃を放って騎士達を圧倒し、それに負けじと覇霊氣力を漆黒の雷撃に変化させた鵜木春臣が騎士の胴を一瞬にして真っ二つに両断する。
桜庭愛莉も覇霊氣力を水の属性へと変化させ、剣を振るうと同時に無数の九頭竜の姿へと斬撃を変化させて九人の騎士を同時に戦闘不能に追い込んだ。
「はははっ! 効かぬ! その程度の軟弱な剣では我が堅牢なる外鎧皮は破れんぞ!! ……だが、聖なる鎧に傷がつくのは残念なことこの上ない!!」
「巫山戯るな! 神聖なる鎧をッ! この化け物が!!」
一斉にドルグエスの身体に剣を突き刺した騎士達だったが、ほとんどの攻撃は鎧に傷つけるのがせいぜいで、鎧の隙間を上手く通り抜けた切先も怪人の強力な外鎧皮に阻まれてその先に刃を通すことはできなかった。
「聖剣を使うまでもない。貴様らは、ここで我が身刃の錆にしてくれよう!」
ドルグエスの身体を目に見えないエネルギーが包み込む。そのエネルギーが針状に変化し、周囲の騎士達を不可視の槍の如く貫いて串刺しにした。
ドルグエスとはロードガオンが開発した強力無比な怪人――怪人能力である『鎧』抜きでも並のものではダメージを与えられず、その身と纏うエネルギーは全身凶器と化して血の雨を降らせる。
本来は恐怖の象徴の如き存在なのである……まあ、常識の欠如したただの莫迦なんだけどね。
内務省により白嶺騎士団の第三部隊が、鬼斬機関・陰陽連・ドルグエスの連合により第二部隊がそれぞれ壊滅――。
≪なんや、ワイらの出番はないやんか≫
≪いいことではありませんか≫
≪ワイも戦いたかったのに≫
≪この……子供が≫
クリフォート魔族王国の面々が第一部隊とガルフォール・ハウリング、加勢に現れたセリスティス・グレーゼバルトの方に向かっているのを確認し、ウコンとサクラは出番がないと判断して空に留まっていた。
その他の戦力では勇者パーティは戦意喪失、魔法少女シルフィー=エアリアルがフレイヤを相手取り、王女ブリュンヒルダは黒崎波菜が相手取ることになるだろう。
上空に現れた真の神の使徒達と戦うのもそれはそれで楽しそうだが、あの程度の戦力ならば相対する庚澤無縫一人で十分に対処はできるだろう。
そして、厄介なことに――現在、フリーの状態にある戦力が二人いる。一人はヴィオレット、そしてもう一人は大田原惣之助。
あれほどの戦力がすっかり観戦を決め込んでいるのだ。そんなウコンが中で出しゃばって、神の使徒との戦いに参加するのはウコンの理想とするところではない。ウコンはもっと血湧き肉躍るような戦いを望んでいるのだ。
◆
「――毒蛇の鞭尾ッ!!」
「呪われし闇! 唸れッ! 剛聖剣!!」
「不可視の地雷よ、不可視の空中機雷よ、我が敵の行く手を阻め! 【不可視の天地雷原】」
「蜘蛛の巣大回転!」
「――覇魔王狼拳!!」
「薔薇の蔓打!」
「大地からの氷槍!!」
「こっ、これが魔王軍幹部の力なのか!?」
騎士達は恐怖していた――魔王軍幹部、魔族の上澄み達の力の強大さに。
メープル=ミルフィーユ、エスクード、アルシーヴ=ライブラリアン、ラピス=アネモネ、ヴィトニル=ヴァナルガンド、マラコーダ、淡空白雪――彼らはその実力を惜しみなく見せつけ、迫り来る騎士達を次々と殲滅していた。
だが、勿論、それは全ての魔王軍幹部の総力を結集したものではない。
「……あのー、私、同人の仕事があるのにこっち来たんですよ! なんでサボっているんですか!!」
「霊魂の翼撃」を放ちつつ、イリア=フレスベルグは叫んでいた。
全く戦う気を見せないベークシュタイン=フリネーオとジェイド=ニェフリートに。
「私はただ呼ばれたから来ただけだ。始まりの大穴の探索に役立つ何かを得られるかもしれないと期待したが、蓋を開けてみれば雑魚の山だ。とても私の期待には応えられそうにない」
「……ここにはワタシが絵筆を握るに値する敵が存在しない。ワタシを戦わせたいなら絵筆を取るに値するモノを連れてくるのだな」
「ああっ! 本当に二人ともいい加減にしてくださいよ!!」
普段はサボり側にいるイリアが働かない二人にツッコミを入れる珍しい場面だった。
「【粘性化】、【捕食】!」
「――ッ! こいつは、スライムの上位種か! 食われ……る」
一方四天王の方も全く負けていない。レイン=シュライマンはスライムの能力を惜しみなく使用して騎士達を包み込んで捕食を開始、残る三人も――。
「向日葵光束砲!!」
「少しおばちゃんと遊んでくれるかしら?」
「龍の咆哮!!」
アルルーナ=ドリュアデス、曼珠=ラジアータ=緋月、ゼクレイン=ニーズヘッグ――魔王軍四天王達も他を圧倒する大立ち回りを見せていた。
そんな魔族の軍勢に怯えつつも勇気を振り絞って剣を抜き去り、突撃しようとしていた騎士がいた。
だが、その男が戦場に辿り着くことは無かった。首を文字通り吹き飛ばすほどの狙撃を受けたからである。
それは、【不可視化の外套】という魔法を使い、姿を消した二代目魔王軍四天王筆頭のコクリコ=クラムベリの弓矢を使った狙撃によるものだった。
「ふぉふぉ、久しぶりに共闘と洒落込むか? ベンタスカビオサ、ベンマーカよ」
『……人間も私にとっては愛し子も同然、無益な殺生はしたくないのですが』
「はぁ……分かりましたよ。今回だけです、もう二度と貴方とは共闘しません」
「連れないことを言う……」
「――【双闇堕魔翔刃】!!」
「――【魔王の一斬】!」
『夜に落とす』
初代と二代目――二人の魔王に加えて創世神話に語られる神々までその力を振るう。
騎士達はまるで風の前の塵の如く飛ばされ、戦場は更に地獄の様相を呈していく。




