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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第四章「傲慢で敬虔な異世界人達に捧ぐ王教滅亡曲〜ルーグラン王国聖戦戦争篇〜」

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神の使徒と大日本皇国連合軍の激突だけですでにピンチなのに、この上、ネガティブノイズという名の第三陣営を投入するってどういう神経しているの!? 〜庚澤無縫の無慈悲な自己責任論を添えて〜

「悪いけど、二人にはシルフィアちゃんと遊んでもらうよ! なんたって借金の一部帳消しが掛かっているからね!」


「――イリスフィアは助かったみたいだが……黒崎波菜をこれ以上野放しにしておけない! しかし、こんな時に! 何故、邪魔をする!!」


「なんかさぁ……貴女って王族の中ではまともそうだけど……だったらなんで白花神聖教会の召喚を止めなかったの? 結局、それを黙認していた時点で貴女達も似たようなものじゃないかな? 私は召喚されていないし、正直この国には何の感情もないけど……波菜さんの辛さは無縫君と一緒に彼女を助けたから知っているし、その心の傷は分かっているつもりだよ。波菜さんがそれを望むなら、その意思を尊重したい。……邪魔をしているのはそっちの方だよ? 滅ぼされて当然なんだよ。ルーグラン王国も、私の故郷――魔法の世界フェアリマナも、さぁ!」


「ブリュンヒルダ王女殿下、ここは私に任せてください」


「しかし、フレイヤ殿……」


「ブリュンヒルダ王女殿下にはやらなければならないことがありますよね。異世界から召喚された人々の手を汚させずに、この国を守り、できるのてあれば彼らを元の世界に帰したかった。そのために、貴女は頑張ってきたし、その願いに共感したから私もプリュイも協力したのです! こんなところで貴女は立ち止まってはいけない!!」


「――ッ! 分かった! フレイヤ殿……いや、美智香殿! ここは任せた!!」


 ブリュンヒルダはこの場をフレイヤに任せて王城へと走る。

 その姿を見送ると、フレイヤは氷属性の魔力を迸らせた。


「――ふーん、その感じだと転生者なんだね。私は興味ないけど、無縫君は興味ありそうかな。どちらにしろ、私は殺すつもりはないからね。私の役目はここで足止めをすることなのです! 悪いけど、徳政令発動のために私に倒されてね!」


「私には私の矜持があるわ。……無縫さんとは同郷ではないけど同じ日本人。異世界に召喚された辛さが分からないということはないわ。――でも、流石にこれはやり過ぎよ!! 私は、絶対に止めるわ! 貴女を倒して、私はこの戦争を止めに行く!!」


「……あの顔は、まさか、な」


 その凛々しいフレイヤの顔に、かつて出会った恩人の面影が重なり、テオドアは少し驚愕していた……が、臨戦態勢を整える騎士達と対峙するために魔剣を構える。

 それ以外の大日本皇国政府、鬼斬機関、陰陽連、ドルグエス、神界の二柱、クリフォート魔族王国――それぞれの戦力も武器を構えた。


「……流石に私一人では厳しそうですね。ならば、神の使徒全員でお相手しましょう」


 真の神の使徒も神山を切り裂く一撃を目の当たりにして流石に一人では厳しいと判断したのか真の神の使徒の増援を呼び寄せる。

 その数は合計で百――たった一人でも圧倒的な存在感を放っていたが、それが銀色の軍団となれば威圧感も異様なものとなる。


「……えっと、そういや名前なんだっけ?」


「私は神よりオルトリンデの名を賜っております。この後殺される者に名乗る必要はないかもしれませんが」


「じゃあ、代表してオルトリンデさん。戦闘の開始なんだけど、少し待ってくれないかな?」


「……怖気つきましたか? まあいいでしょう。僅かな時間ですが、命あることを感謝して与えられた幸せを感謝しなさい」


「そういう話じゃないんだけどね。じゃあ、遠慮なく……」


 訓練場にいたほとんどの召喚勇者達は春翔が倒された時点から一切戦闘に関与せず、本当にただその場にいるだけになっていた。

 ほとんどの者が絶望に暮れていた……が、彼らは命があることに安堵していた。

 春翔のように気絶された上で鎖で雁字搦めにされてどこかに連れて行かれた訳でなく、この場にそのままいることを許されている。無縫にイジメを行った者やイジメを黙認していた者達にとってはそれだけでも十分な慈悲になった。


 しかし、美雪を除くほとんどの者達は無縫がクラスメイト達の方にやってきたことに恐怖を覚えた。

 花凛までもが「私達はこのまま殺されるんじゃ……」と怯える。

 無縫の命を狙った猟平はブルブルと震えて、死を覚悟したのか目を閉じていたくらいだ。


 だが、そのようなことは起こらなかった。


「――お久しぶりです、細石照さん。この度は、ご愁傷様でした」


 照はその時、何を言われていたのか理解ができなかった。

 隣にいた五十鈴も無縫が何を言っているのか全く理解できていない様子である。


 そんな照に無縫はスマートフォンを差し出す。そこに映し出されたネットニュースを見ても、照には理解ができなかった。

 否、頭が、心が理解を拒んでいた。


「……う、そ……だよ、ね」


「…………」


「私達が無縫君のイジメを黙認していたから……自分達がイジメられる側に回るのが怖くて見て見ぬふりをしていたから、無縫君は恨んでいるんだよね? だから、こんな偽のニュースサイトなんか作って……私を騙そうと、している、んだよね?」


「…………」


「ねぇ! 答えてよ!! 嘘だって!! ドッキリだって言ってよ!! ねぇ!! ねぇ!!!!」


「現実を見ろ、細石照。……異世界に召喚され、自分がいない間に父親は新聞社ごと爆破され、母親は最愛の娘と夫を同時に亡くしたショックで後追い自殺をした……悲しいことだけど、これが現実だ。……受け入れろとは言わない。ただ、この事実を俺は君に話さなければならない義務がある。俺はこの爆破事件の犯人に心当たりがあるからな」


「…………ねぇ、無縫君、何を言っているの? テルリンに、辛い事実をぶつけて……その上で、復讐でもさせようとしているの? ねぇ! なんでそんなことができるの!!!! テルリンの気持ちを考えてよ!!」


「外野は黙っていろ。てめぇは照のなんなんだ? 土方五十鈴。……この戦争が終わった時、話を聞く覚悟があるなら俺が知っていることを打ち明ける。その時はそれ相当の責任を負う覚悟をする。……その上で復讐をするかどうかは自由だ。お前の人生はお前のものであって誰のものでもないからな」


「…………分かった。……今はこのことを教えてくれたことに、感謝している。……この世界から帰還した時にいずれにしても、向き合わなければならないことだったから。……まだ、全然心の整理が、ついて、いないけど。……お父さん……お母さん」


 照はそのまま泣き崩れ、五十鈴は照の背中を摩りつつ無縫の方を睨め付ける。

 しかし、無縫は我関せずといった様子でその場を後にする。美雪が空気を読まずに無縫に呼びかけても、無縫は全くその言葉に応えなかった。


「悪かったな。時間をもらって」


「……構いません。どうせ、もうすぐ奪う命ですから。…………しかし、随分と酷なことをしますね。ここでその話を伝えるべきでは無かったのでは?」


「照の天職は死霊術師(ネクロマンサー)、敵に回すと厄介な戦力だ。ここで、一度心を折って戦線から離脱させるべきと判断したまでのこと」


「……私達も非人間で、感情などは持ち合わせていませんが、何故でしょう。貴方のやり方には嫌悪感を覚えます」


「そりゃどうも。お褒めに預かり恐悦至極……じゃあ、改めて戦争の続きを」


 その時、無縫のスマートフォンがけたたましい音を立ててアラート音を響かせる。

 続いて大田原達政府関係者のスマートフォンからもアラート音が鳴り響いた。


「……申し訳ないけど、もう少し待ってもらっていい?」


「はぁ……ここまできたら一緒です。もう少し待ちましょう」


 「意外と融通が効く神の使徒だなぁ」と思いつつスマートフォンを触っていた無縫だったが、突如として着信音が鳴り響く。

 スマートフォンに表示された名前に露骨に嫌そうな顔をしつつ、無縫は電話に出た。


「はいもしもし庚澤無縫。なんだよ、今、ルーグラン王国と戦争中だよ!」


『そんなこと知らないわよ! というか、どうでもいいわよ!! そんなこと!! このタイミングで主力が出払っているせいで、こっちは大迷惑なのよ!! 大規模侵攻よ! 大規模侵攻!』


「そうみたいだな。今、ニュースサイト確認したら、大日本皇国、ステイツ、ロシア、ブリテン、フランス、イタリア、中国への同時侵攻。それも、かなりの規模みたいだな」


『その中には支配主【七皇】も一体確認されているわ。恐らく、他の国も同様の状況なのでしょうね。ブリテンとイタリアを除いた各国は大日本皇国への、というか、貴方への応援要請を出しているけど』


「――そんなもん無視だ、無視。大日本皇国が襲われているのに外国優先できる訳ないだろ!」


『アンタ、思いっきり別の国優先しているわよね! こっちは、アンタ抜きでも一部地域に関しては何とかなっているわ。具体的には東京帝国大学周辺と中京都の西側ね』


「恐らく能因草子教授と、百合薗グループだな。……百合薗圓殿が強いのは知っていたが、草子殿が強いという噂は本当だったんだな。流石は異世界帰りというべきか。――茉莉華、今から俺が空間転送するものを空に打ち上げろ」


『命令するんじゃないわよ! 私とアンタは同格よ! 同格!!』


 空中ディスプレイ(・・・・・・・・)の準備を進めつつ(・・・・・・・・)、小さな時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを開いて、その中に球体のようなものを放り込む。


「そいつを思いっきり空に投げてくれ。それと、時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを開くから、茉莉華、お前もこっちに来い!!」


『……やることは分かったけど、本当に腹が立つわね!! まあいいわ! 今回の件は貸しにしてあげる! 勇者召喚の鬱憤晴らしに付き合ってあげること、せいぜい感謝しなさい!』


「うぜぇ!!」


『こっちのセリフよ!!』


 そういいつつ茉莉華は球体を放り投げる。すると、球体に翼とロケットモータのような機構が動き出し、超高速で空へと球体が打ち上げられた。

 その間、無縫は王都各地に空中ディスプレイを展開していき、それと並行して王都を包み込む結界を作り上げる。


 それは王都を守る結界……というよりは、王都内部の存在を外に出さないための檻のように見えた。


「映像確認した。茉莉華、ありがとう」


『……そうやって普通にお礼を言われると調子狂うわね。すぐにそっちに飛ぶわ』


「――庚澤無縫より、ルーグラン王国王都内部にいる敵味方問わず全員に告げる!! 大日本皇国は現在ネガティブノイズによる大規模侵攻を受けている! このままでは大日本皇国が危険と判断し、ネガティブノイズを全てルーグラン王国の王都に空間転移させる」


「……おい、何を言って、いる」


 王城の中を走りつつ波菜を探していたブリュンヒルダは、突如出現した空中ディスプレイに驚いたが……そこから発せられた言葉を耳にすると、その意味が理解できずに足を止めてしまう。


「無縫君……流石にそれは、いくらなんでも」


 復讐心に駆られてルーグラン王国の人間を殺害し尽くそうとしていた波菜も、「流石にそれはいくらなんでもやり過ぎなんじゃないか」と一瞬だけ正気に戻ってしまう。

 それくらいこの言葉は理不尽で、理解不能な言葉だった。


「……おいおい、いくらルーグラン王国に恨みがあるって言ってもそれは流石になぁ……巫山戯ているだろ!!」


『大日本皇国によってやむに止まれぬ事態だ。我々は自国民の平穏を守るためにルーグラン王国の王都を生贄に捧げることとする。無論、相手は強大な戦力だ! 心して挑み、危険と判断すれば手渡してあるアイテムを使ってすぐにクリフォート魔族王国に撤退するように! 我々も奴らを倒すために全力を尽くすが、ネガティブノイズの大規模侵攻は厄介極まりない強敵……完全に無傷での勝利は厳しいだろう。多少の犠牲は出るかもしれないが、これも大日本皇国のため、犠牲はやむを得ない! それでは、これより三つ巴の戦争を開始する!!』


 無数の時空の門穴ウルトラ・ワープゲートが王都の各所に出現し、そこから下級、中級、上級――ネガティブノイズの集団が姿を見せる。

 それは、ルーグラン王都の滅亡を暗示する絶望的な光景だった。


「巫山戯てはいないよ。……これは全てお前達が始めた物語だ。君達が俺達を召喚しなければ、ルーグラン王国の王都がこうなることも、神山が切り倒されることも、多くの無辜なる民が死ぬことも無かった」


 無縫はオルトリンデ達から視線を逸らし、ガルフォールの方を凝視する。

 そして、ゆっくりとその言葉を口にした。


「――全てはね、君達の自業自得(・・・・)なんだ」

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