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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第四章「傲慢で敬虔な異世界人達に捧ぐ王教滅亡曲〜ルーグラン王国聖戦戦争篇〜」

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宣戦布告があったため王都の守りを固めていたルーグラン王国だったが、流石に王都の中心部への空間転移は想定していなかった模様。……でしょうねぇ。

 ――開戦の瞬間は唐突にやってきた。


 空に開いた無数の時空の門穴ウルトラ・ワープゲート

 そこから現れたのは巨大な戦艦と、雄々しきドラゴン――『龍皇(マスター・ドラゴン)』ファディロス、無数の天使と悪魔の軍勢、そして彼らを指揮する二柱の神々――ウコンとサクラだ。


 まるで神話の一頁のような光景が大空で展開される中、王都の中心部に開いた時空の門穴ウルトラ・ワープゲートからも続々と人影が姿を見せる。


 真っ先に現れたのは、やはり庚澤無縫だ。続いて、ヴィオレット、シルフィア、惣之助、詠、レイヴン、龍吾率いる異界勢力制圧特殊部隊『雷霆』の面々、ミリアとシエル、鬼斬達、陰陽師達、ロードガオンの面々、ローフェス侯爵家の父娘、魔王国ネヴィロアスの面々、『純黒騎士団』の団長・副団長コンビ、夜の神ベンタスカビオサとクリフォート魔族王国の戦力が姿を見せる。


『開戦の号砲は我々が鳴らしましょう! 紅茶エネルギー充填開始です!!』


『ローヴマルクさん! 市街地は狙わないでくださいよ!!』


『まあ、後々のことを考えて間引くのも良いかもしれないが……君達に恨まれるのは不本意ではないのでね。狙うのは神山だ』


 「あー良かった」と胸を撫で下ろすエアリスとミゼルカだが、白花神聖教会にとっては神域である神山を攻撃される方が王都に砲撃をされるよりも許し難い行為のため、ルーグラン王国や白花神聖教会への精神ダメージさはこちらの方が大きかったりする。


 戦艦の主砲から放たれた紅茶の香りを漂わせる光条は神山を掠め、一部を抉り取った。

 敵の襲撃を察知して王都の中心街へと駆けつけてきていた騎士達は大地を抉るほどの理不尽な威力の一撃に恐怖を感じ、動きを止めてしまう。中には恐慌状態に陥って戦場から逃げ出す者もいた。


「ミリアラさん、ワーブリス兵の戦場投入をお願いするわ」


「了解しました。……保有するワーブリス兵の三割を戦場に投入します」


「くれぐれも民間人には被害を出さないように……狙うのは騎士みたいな戦闘員に限るわ」


「勿論、フィーネリア様の希望通りに調整しているわ」


「みんな! 民間人に攻撃しては駄目よ!! できるだけ非戦闘員への被害を出さずにスマートに勝つわよ!!」


 この戦争中、ロードガオン軍団の全指揮権を握ることになったフィーネリアが参戦したロードガオン人や怪人達に命令を下す。

 大凡侵略者らしからぬ宣言だが、ロードガオン軍団の者達は「うぉぉ!!」と大声を張り上げた。


「マリンアクアさん、指揮補佐をお願いします!」


「お任せください!」


「では、吾輩は暴れてくる!」


 指揮官として軍を鼓舞するフィーネリアに対し、ドルグエスは同じ隊長格にも関わらず聖武具でその身を固めて王城の方角へと独断専行で突っ走っていく。

 明らかに指揮官としての役割を果たす気がないドルグエスに……。


「本当にあの人には指揮官としての自覚があるのかしら?」


 ついつい愚痴をこぼしてしまうフィーネリアだった。



 開戦のタイミングこそ不明で、最初は遅れを取っていたものの騎士団の初動はかなり速い部類ではあった。

 ルーグラン王国はあらかじめ騎士団を王都の各地に配備し、どこから攻撃を仕掛けられても対処できるように万全の布陣を敷いていたのである。


 ……だがしかし、全ては無駄な足掻きに過ぎなかった。


 身体は鉄の如き硬さへと変化させた怪人がフルプレートの鎧諸共容易く粉砕し、雷を纏った怪人が雷撃を纏って蹴りで騎士の頭を兜諸共吹き飛ばす。

 街には徒手拳兎(ラービィ)長尾驢鎧(カン=ガリュー)といったワーブリス兵の中でも上澄の戦力が闊歩し、騎士達を粉砕、或いはキューブ化していく。


『こちらフィーネリア。王都の西地区の制圧が完了したわ。白嶺騎士団第四部隊の隊長を名乗る男が大将の私を名指しして一騎打ちを申し入れてきたから、不意を突いてキューブ化したわ。他の騎士達も大半はキューブ化したし、残りの騎士は完全に心が折れたようね』


 王都を四つの分割し、そのうち西地区の制圧を引き受けたフィーネリアは無縫から作戦開始前に受け取っていたトランシーバーに報告事項を告げる。


『……なかなか速いですね。こちら東区画担当のコルタール、こっちはもう少し時間が掛かりそうです』


 一方、東地区ではコルタールとジェーンが暴れに暴れまくっていた。

 西地区がワーブリス兵と怪人による数の暴力を基本にしていたのに対し、東地区はたった二人の戦力のみという純粋な数だけ見ればあまりにも格差の激しい状況になっている。


 だが、たった二人で増援がないということはそれで十分であるという判断がされたということだ。

 最初は「たった二人だ! 王国のために素早く制圧するのだ!!」と意気込んでいた騎士達だったが……すぐにそれが過ちだったと気づく。


 まるで喧嘩殺法の如く変幻自在に型も何もあったものではない斬撃が次々と迫り来る騎士達を蹴散らしていく。

 そんな化け物じみたコルタールの剣技に、正統派の剣術を使うジェーンが合わせ、完全に手が付けられない状況になっていた。


「……歯応えがないな。お前ら全員、俺が叩き直してやる!!」


「あははは! 流石は親友! ……しっかしさぁ、折角久々に親友と二人きりで任務なんだ。なのにさぁ、つまんねぇんだよ。お前ら弱過ぎて」


 第五部隊の隊長を絶対零度の瞳で睨め付けたジェーンだったが、隊長格の男が失禁してその場に崩れ落ちると、興味を失ったのか次の標的を探して走り出した。


『第五部隊の隊長とやらはジェーンが討ち取りましたが、あまり強くなかったのでもっと上の戦力が控えている可能性があると思われます。引き続き雑兵討伐を進めて区画制圧を進めつつ第二波に備えます』


『こちら、北地区担当のディアマリー・ローフェスですわ。たった今、父上……いえ、ディオン・ローフェス近衛騎士団長が第六部隊隊長を名乗る男と交戦を開始しました。雑兵は私と共闘してくださっているファディロス殿の上空からのブレスの援護で大きく数を減らしているので、もうすぐ北地区の制圧が完了しそうです』


 使い慣れた大振りの騎士剣に風の魔法「暴風纏禍エアークラック・ゲイル」を纏わせたディアマリーが斬りかかってきた騎士を一太刀で斬り捨てつつ報告する。


「……貴方に恨みはないが、同盟国への恩を返すためだ。――斬り捨てさせてもらう」


 目を血走らせて「神敵に裁きを!!」と叫び、大振りの斬撃を放ってきた騎士を、ディオンは冷静に放った一太刀で斬り捨てる。

 蒼焔を纏った剣はフルプレートの鎧諸共騎士の胴体を両断し、切り裂かれた胴体から溢れ出した血液が地面に血溜まりを作った。


『こちら、リリスだ。現在、南地区にて白嶺騎士団第七部隊と各区画に増援に向かおうとしていた第八部隊、第九部隊、第十部隊、第十一部隊、第十二部隊と交戦に入っている。流石にこの程度の相手に遅れを取ることはないが、六人で全員相手にするのは時間が掛かり過ぎる。王都制圧担当の中で手の空いた者に増援を頼みたい』


 北地区、東地区、西地区では騎士団の部隊一つと交戦に入っていたが、唯一南地区だけは王都の玄関口ということもあって警備が厳重になっていたのか、五つの部隊が配備されていた。

 まさか王都の中心部に空間転移をしてくるとは思わなかったので初動は遅れたが、すぐに増援に駆けつけようと各部隊は行動を開始する。


 しかし、ここで大きな壁となったのが魔王国ネヴィロアスの魔王軍だ。


「【太極(インヤン)円環の蛇剣(ウロボロス)】!!」


「何故じゃ! 何故、我はヴィオレットちゃんと離されてここで戦わねばならぬのだ!! 許せぬ! 許せぬぞ! 庚澤無縫!! この恨みはルーグラン王国! この国の騎士共で晴らす!! 【魔王の一斬サタナキア・ダークネスラッシュ】!!」


「たく、魔王さんよ! 流石に八つ当たりで殺されるのは無念だと思うぜ。……龍爪(ドラゴン・クロー)ッ!!」


「貴方達に恨みはありませんが……焼き尽くさせて頂きますわ! 火焔龍茸マッシュルーム・サラマンドラ!」


「大人しく凍え死になさい。せめてもの慈悲ですわ! 凍界地獄ニブルヘイム・インフェルノ!」


劫火の爆裂フレイム・エクスプロージョンッ!!」


 リリス、ノワール、ヴァルフレウ、ヴェノゼラ、エルゼビュート、リアムの攻撃で五つの部隊は小さくない被害を負った……がいくら六人が一騎当千の実力者とはいえ、相手は一つ一つが一つの騎士団に相当する戦力である。

 部隊長も全員生存しており、まだまだ戦いは始まったばかりという状況だ。


 ≪聞ぃたか? ワイは本丸狙いで手が離されへんから、天使と悪魔で対処してぇや≫


『……私達も本丸を狙いたいのですが、そちらは無縫殿達に任せるべきですね。ここは譲りましょう。……天使軍よ! 悪魔達よりも一体でも多く敵を狩るのです!!』


『巫山戯たこと言いやがって! メタトロン!! いくぞ悪魔達よ!! 天使共よりも多くの敵を撃て!!』


 天使達を率いるメタトロンと、悪魔達を率いるルシファーの指揮のもと天使と悪魔の軍勢が一斉に南地区へと急降下した。


『――炛燦之大劔』


『――邪陰之大剣』


 天使の軍勢は光を固めた剣を悪魔の軍勢は闇を固めた剣を顕現し、地面に降り立つと同時に辺りの騎士の殲滅を競うように開始する。


『……なんで先輩方は張り合うのかしら? 今はもう背中を預けて戦う仲間だから協力した方がいいと思うんだけど』


『そうだよね。……仲良くした方が絶対にいいと思うのに』


 そんな天使達と悪魔達に若い天使のマリアエルと若い悪魔のファレスのカップルは冷めた視線を向けつつ、互いに背中を預け合いながら騎士達を一人ずつ確実に撃破していった。

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