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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第四章「傲慢で敬虔な異世界人達に捧ぐ王教滅亡曲〜ルーグラン王国聖戦戦争篇〜」

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六つも陣営がルーグラン王国と敵対確実なのに、その上落雷と桜吹雪と共に追加参戦なんて流石にオーバーキルが過ぎるんじゃないかな? 自重しようよ、神界の皆々様!

『大日本皇国の内閣総理大臣、大田原惣之助総理。ご存知の方は多いと思いますが、出身地は山口県防府市で十二月三日生まれ。好きなものは酒、温泉、ピスクドールで、特に彼の人形のコレクションは人形好き界隈から高い評価を得ています。元内務省の役人で内務省異界特異能力特務課長官まで上り詰めましたが、官僚の立場に限界を感じたことから政界入り。無所属ながら内閣総理大臣に選ばれ、党派閥や衆議院、参議院、貴族院といった枠を飛び越えた内閣を組閣したことは記憶に新しいと思います。金融担当大臣として光道党所属の参議院議員である保科(ほしな)志功(しこう)氏、消費者担当大臣として無所属の貴族院議員の夜叉ヶ池(やしゃがいけ)名執(なとり)氏、災害対策復興大臣として自由民権党党首で衆議院議員の橋爪(はしずめ)嘉門(かもん)氏、国土交通大臣として民政政友会党首で衆議院議員の宮藤(くどう)聡介(そうすけ)氏、観光大臣として皇民新党議員所属で参議院議員の楠村(くすむら)兼続(けんぞく)氏、科学厚生大臣として摂家近衛公爵家令嬢で貴族院議員の近衛(このえ)咲良子(さらこ)氏、財務大臣として光道党所属で衆議院議員の大村(おおむら)純樹(すみき)氏、文部大臣として大日本皇国最大の民間図書館として知られる鷹島図書館の館長を務めていらっしゃる鷹島(たかしま)陽菜(ような)氏、労働大臣として社会労働党党首で参議院議員の支倉(はせくら)光希(みつき)氏、農林水産大臣として蟹漁船第三共榮丸船長の倉間(くらま)三郎(さぶろう)氏、経済産業大臣に黒鳩財閥総帥で持株会社黒鳩グループ会長でもある黒鳩(くろはと)義弌(ぎいち)氏、環境大臣に極東大衆党所属で参議院議員の枇杷(びわ)湖水(こすい)氏を起用するという斬新な人事は素晴らしいと思いますが、個人的には自衛軍統合幕僚長だった逢坂詠氏を防衛大臣に、ドイツ総領事の相沢(あいざわ)秀吉(しゅうきち)氏を外務大臣に、天台宗狗音寺僧侶の隠影(いんかげ)果心(かしん)氏を内務大臣に起用したことがあの内閣組閣の最大の功績だったと感じています。更に大田原さんは文だけでなく武の領域でも卓越した実力者としても知られています。幼少の頃から逢坂詠防衛大臣と同じ道場に通って腕を競い合った居合の名手で、内務省時代には【銀閃】の二つ名で知られていました。その実力が評価され、天皇陛下より新生最上大業物二十四工の一つに数えられている『獅子刀・百獣護国』と呼ばれる刀を下賜されていて、剣の腕も使う刀も桁違いの強者です。逢坂詠防衛大臣もそうですが、このお二人があの時代に生まれていれば、第二次大戦において大日本皇国が敗北することはなかったでしょう』


『……歴史にIFはないが、俺はともかく詠があの時代にいたら歴史は変わっていただろうな』


『では、六人のご紹介を終えたところで今回の本題に入らせて頂きたいと思います。既にご視聴の皆様は色々と察しているとは思いますが、今回、六人の代表者に集まって頂いたのは二つの条約の調印のためです。一つは異世界間通商網への加盟、この条約への加盟が成立すれば、クリフォート魔族王国と、大日本皇国を含む八百九十七国との貿易が可能となります』


『……そんなに加盟国があったのですね』


『まあ、色々と世界を巡ってきましたからね。それに、同じ世界で複数の国が加盟することもありますからこれでも少ない方です。……そして、こちらの方が皆様方にとっては重要となると思いますが、異界間共同防衛条約への加盟もお願いしたいと考えております。この条約は、戦時における互助のための条約で、お互いの国がピンチな時には全力を出し合いましょうという取り決めです。大日本皇国は現在、様々な危機に直面しております。邪悪心界ノイズワールドという異界から現れたネガティブエネルギーの集合体であるネガティブノイズの侵攻、地底世界アンダグラウンドからの地底人襲来、地球に古来から存在する魑魅魍魎、鬼や妖怪など呼ばれる怪異達、頻発する時空災害。ロードガオンのことは抜きにしても、様々な敵対する者達がいますし、それに加えて今後敵対する可能性がある存在もいくつか予想されています。大日本皇国としては一国でも多くの味方が欲しいところです。勿論、ただ一方的に助けて頂くという話ではクリフォート魔族王国を始め加盟国の皆様も納得できないでしょう。この条約は先ほども述べた通り互助的なものですから、今後クリフォート魔族王国が攻撃を受けるようであれば大日本皇国を含む条約加盟国が全て敵に回ることになります。特にこの映像をご覧頂いているマールファス連邦の皆様はお気をつけください』


「……何故、マールファス連邦だけを名指ししているんだ? ラーシュガルド帝国もあるし、それに……召喚を実行した、つまり大日本皇国に恨まれている国はこのルーグラン王国の筈だ。さっきから恨み節が炸裂しているが……俺達が許されたってことは流石にないだろう?」


「恐らくだけど……ルーグラン王国は既に無縫君達の中で亡きものにされているんじゃないかしら? 滅ぼした後のもっと先の未来を見据えているのでしょう」


「ははっ……笑えねぇ話だ。なぁ、花凛。俺達はどこで間違えた?」


「強いて言うなら、異世界召喚をしたことが終わりの始まりだったのでしょうね。だけど、無縫君に珈琲を出せなかったのが決め手なんじゃないかしら?」


 たった一杯でも珈琲を出せば、もしかしたらほんの僅かだが、対応は変わっていたかもしれない。

 まあ、既にやったことがやったことなのでそのレベルの段階ではないのだが、花凛の言葉が腑に落ちたようにガルフォールの中で溶けていった。


『クリフォート魔族王国は、先代勇者との約束を律儀に守ってきました。領土を狙い、奴隷を得ようとする愚かな人間達の攻撃を受けても耐え忍んで、決して反撃はしなかった。そして、クリフォート魔族王国はこれからも人間と敵対することはないでしょう。恨みを募らせても、それを決して武力行使という形にはしない。とても素晴らしい、真似のできない崇高なことであると思います。……が』


 そこで無縫は言葉を切った。楽しげな顔が真剣味を帯び、その双眸は冷たい光を宿す。


『そんなこと、俺達にはどうでもいい。大日本皇国の政府の義務とは何か? それは、大日本皇国の利益を守ること。国民を悪意から守り、国民の生活を守り、国民の安寧を守り、大日本皇国の平和を保つこと』


『無縫の言う通りだ。大日本皇国には大日本皇国の民達を守る義務がある! ルーグラン王国! 白花神聖教会! 貴様らにも大義名分があると言いたいのだろう? だが、その大義名分と我々は本質的に無関係である!! 我が国の民を集団誘拐し、戦争へと駆り立てたことは決して許されぬ行いだ。大日本皇国首相として遺憾の意を示す! ……否、それでは甘いな。貴様らを断固として非難する!! 我々が突きつける要求は二つ。勇者として召喚された大日本皇国民の解放と、貴様らが崇める女神エーデルワイスの身柄の引き渡し。この二つに応じないようであれば、我々はルーグラン王国並びに白花神聖教会に対して宣戦布告をする。……まあ、貴様らがこの要求に応じるとは思えないのでな。次に会う時は戦場となるだろう』


『大日本皇国は無益な殺生を望みません……が、大日本皇国にルーグラン王国の民の命を救う義務もありません。加盟国でもない国が滅ぼうと知ったことじゃないってことです。それと、今回の条約締結によりクリフォート魔族王国もまた不本意な形ですが、本戦争に参加することになったのでよろしくお願いします。あー、それと今後のそちらの対応として予測できるものとして俺を神敵として認定すると思いますので、先にこちらから仕掛けさせて頂きますね。ベンタスカビオサさん!』


『……こんな殺伐とした場所に呼ばないで頂きたいのだが。大田原殿と無縫殿の怒りに恐怖してしまったよ。まあ、責任の大半は私の監督不行き届きによるものだから、甘んじて受け入れるけどね』


『今回のエーデルワイスの身柄の引き渡しは、俺達がルーグラン王国と白花神聖教会に対する最高の嫌がらせとしてエーデルワイスの殺害を検討していたことに対し、ベンタスカビオサ殿が何の対価も無しにエーデルワイスの助命嘆願をした結果、妥協案として提案したものです。命は助けますが、捕虜になった場合は命以外、つまり人権ならぬ神権は一切考慮致しません』


「……本当に無茶苦茶なこと言っているわね。ねぇ、美雪。貴方の好きな人は相当イカれているみたいよ」


「……でも、気持ちが分からないこともないよ。ずっと堪えていたんだね……あんな仕打ちを受けて怒らない方がおかしいよ」


「まあ……それは同感ね」


「それに……やっぱり……あの子は、無縫君だったんだなって確信したよ。庇って殴られて……それでもただでは起きない。ちゃっかりと警察に通報して退路を絶って……本当にそっくりなんだ」


「……そう、それは良かったわね」


 想像していた優しい少年像からかけ離れた無縫を見ても幻滅せず、寧ろ初恋の少年と無縫が同一人物だと確信に変わったと語る幼馴染に何とも言えない顔になる花凛だった。


『ところで、ベンタスカビオサ殿と共闘している俺達にとって君達って何だと思う? そう、神敵だ。ルーグラン王国も白花神聖教会も邪教を崇める異教徒にして神敵なんだ。まあ、俺達は神とか信仰していないけどね』


 ≪無縫さん、残念ながらその解釈では足りないですわ≫


 突如として声が響いた。透き通るような声が文字通り天から降り注ぐように、朗々と歌うように、発せられる。

 それと同時に響き渡る落雷の音……その音を聞いて、無縫は苦笑いを浮かべた。


『何故、わざわざ降臨なされたのですか? 神界にとっては下界の些末な争いでしょう? サクラさん、ウコンさん?』

◆ネタ解説・二百六話(ep.207)

・「強いて言うなら、異世界召喚をしたことが終わりの始まりだったのでしょうね。だけど、無縫君に珈琲を出せなかったのが決め手なんじゃないかしら?」

 着想元は遠藤浅蜊氏のライトノベル『魔法少女育成計画episodesΦ』に収録されているエピソード「プキン将軍の事件簿 魔法使いの殺人」より語り手である保安局のファトルの地の文「私はこう思う。ホーグルテンがプキンにたっぷりの食事を与えてさえいれば、あのような目にあうことはなかったのではないだろうか」。

 プキン将軍も元ネタ通り理不尽だけど、無縫君も大概だよなぁ、って話。


◆キャラクタープロフィール

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隠影(いんかげ)果心(かしん)

性別、男。

年齢、六十二歳。

誕生日、四月八日。

血液型、AB型RH-。

出生地、京都。

一人称、私。

好きなもの、国家安寧。

嫌いなもの、内憂外患。

座右の銘、鎮護仏教。

尊敬する人、特に無し。

嫌いな人、特に無し。

職業、天台宗狗音寺僧侶、天皇家直属隠密部隊『八咫烏』筆頭、玄老院五大老、内務大臣。

主格因子、無し。


「大田原惣之助による組閣に伴い招聘された人物。表向きは民間の人間で、天台宗狗音寺住職。政教分離の原則のある大日本皇国において宗教家を政治に参加させることに反対意見を持つ政治家達からは非難されたが、彼の正体を知る大物政治家の多くは大日本皇国の影の大物の登場に驚愕すると同時に、政治への関わりを禁止された天皇家の政治干渉を危惧している。なお、大物になればなるほど彼の危険性を理解しているため表向き非難の声を上げることはなくなっていく。その正体は天皇を輔弼する影の権力者である玄老院の筆頭・五大老の一人であり、天皇家直属隠密部隊『八咫烏』筆頭を務める忍。彼を内閣に組み込むという一手は大田原惣之助の人望のなせる技であった。国家の安寧のためなら手段を選ばない人物で、特に能因草子、百合薗圓、庚澤無縫といった存在には警戒して動向をチェックしている。その一方で、若者の活躍に心を躍らせるタイプでもある模様」

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相沢(あいざわ)秀吉(しゅうきち)(並行世界/大日本皇国)

性別、男。

年齢、三十八歳。

誕生日、七月九日。

血液型、AB型RH-。

出生地、島根県。

一人称、僕。

好きなもの、数学、権謀術数。

嫌いなもの、特に無し。

座右の銘、狐の知恵。

好きな人、エリーゼ・相沢(旧姓エリーゼ=ヴィーゲルト)。

嫌いな人、特に無し。

職業、元ドイツ総領事、外務大臣。

主格因子、無し。


「元ドイツ総領事。大田原惣之助の依頼を受けて外務大臣に就任した。数学分野において天才と呼べる頭脳を持っていた一方で、平凡な同級生を見下しており、本来であれば自分のような賢い人間が愚かな者達を支配するべきであるという選民意識を中学生・高校生時代には持っていた異世界召喚されたら暗躍して主人公と敵対しそうなタイプの性格をしている。東京帝国大学では国際系の学部を専攻、グローバル時代を見据えて外務省に入庁してドイツの領事館で働くことになる。その功績が認められてドイツ総領事となったが、この頃も野心は消えることなく寧ろ高まっていた。しかし、ドイツで最愛の人となるエリーゼと出会い、彼女に惹かれるうちに生来の毒気が抜かれていった。大田原惣之助とは庁舎務めの時代に知り合いになった。基本的には自身が上に立つべき存在であると考えているが、大田原と会ったときには初めて『彼の下についても良い』と感じており、大田原から外務大臣になるように依頼された際にはすぐさま帰国を決めている(エリーゼも背中を押したため唯一の懸念点も解消された)。某数学の天才の誕生日(二月八日)ではなく、陸軍の軍医総監で文豪・森鴎外の名でも知られる森林太郎の没日(七月九日)から取られている。また、『舞姫』のモデルとなったエリーゼの縁者が妻になっているなどかなり森林太郎を意識した設定になっている。なお、相沢秀吉の名前そのものが『舞姫』の相沢謙吉から着想を得たもののため、本当に彼の周りには『舞姫』の要素が揃っていると言えるだろう」

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