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頂点への挑戦での混戦! ライバル達との連戦に次ぐ連戦! 壱

 レフィーナ、レイヴン、クロムロッテ、イクス、カーリッツ、ミリア、シエル、オズワルド、スグリ、マルセラ、ガルド、シャルロット、ギミード、ワナーリ――彼らは庚澤無縫との戦いを望み、徒党を組んで『頂点への挑戦(サタン・カップ)』のAブロックで暴れ回った。


 彼ら彼女らの目的は無縫と戦うという一点のみ――ただ利害が一致しただけというだけであって、基本的には同じ魔王を目指すライバル同士である。


「――ッ!? 黒狼閃!! こいつはまずいな!」


「氷華乱撃ッ!! ちっ、魔法攻撃が削りきれねぇ!! このままだと押し切られるぞッ! ギミードッ! 気合い入れろ!!」


 戦いの最中にギミードとワナーリの二人は徒党を組んだ十人ほどの即席パーティに物量で押し切られて惜しくも脱落してしまったものの、他の面々は順調にライバル達を撃破した。


 そんな彼らは無縫以外のライバルを蹴散らしたタイミングで徒党を解消して順番に無縫に挑み、無縫に勝った後にはAブロックの勝者を目指して戦いを繰り広げるつもりだった。……だが。


「一つ思ったんだが……相手は魔王軍幹部や魔王軍四天王を倒しているんだ。そりゃ、正々堂々サシで戦うべきだろうが……俺達が一人ずつ立ち向かって勝てるか? 相手は魔王よりも遥かに高い壁なんだ。なら、こっちも力を合わせて突破を目指すべきだと思うぜ」


 そんなオズワルドの提案の元、一時的に結ばれてすぐに解消される筈だった同盟はもうしばらく存続することとなった。


「いいよな? 無縫?」


「勿論です。……どちらにしろ、バトルロイヤル――全員入り乱れの戦いを想定していたんです。例えば優勝候補などと言われるような人物が出場したとすれば、彼を倒さなければ勝利はないという共通認識が生まれることでしょう。出場者達の共通の利益があるのであれば、共闘の選択も生まれる。当然のことです。レフィーナさん、レイヴンさん、クロムロッテさん、イクスさん、カーリッツさん、ミリアさん、シエルさん、オズワルドさん、スグリさん、マルセラさん、ガルドさん、シャルロットさん。――全力で持ってお相手しましょう!!」


「じゃあ、まずは俺から行かせてもらうぜ! 【悪魔の橋ディアボルス・ポーンズ】では叶わなかった戦い――この決勝の舞台で思う存分楽しもうぜッ!!」


 オズワルドが弾かれるように地を蹴って加速――無縫との距離を一気に詰めると背丈ほどの巨大な黒い剣を構えると、紫色の炎を纏わせる。

 そのまま剣を振り下ろすと、斬撃は紫色の鳥の形へと変化して無縫へと殺到する。


鸑鷟飛斬ヴァイオレット・フェニックス!!」


「【被害の逸避(ディフレクターム)】」


 が、無縫はニヤリと笑って右手を突き出した瞬間、紫色の鳥の形をした斬撃は無縫を避けるように逸れていく。

 その攻撃が向かう先はオズワルドを陽動に使い、気配を消して右後方から無縫に攻撃を仕掛けようとしていたカーリッツだ。


「『破城戦鎚』!!」


 膨大な魔力を纏わせたカーリッツが慌てて戦鎚を振り下ろして迫り来る紫の斬撃を粉砕する……が、次の瞬間、カーリッツが目撃したのは間近に迫った無縫の姿だった。


「覇霊硬化――黒脚大蹴!!」


 覇霊氣力によって鋼鉄を凌駕するほど硬化した無縫の足がカーリッツの腹部を蹴り飛ばした。

 そのあまりの速度に対応できなかったカーリッツは尋常ならざる速度で場外まで吹き飛ばされる。


 その威力の高さ故に蹴り飛ばされた腹部には大きな風穴が開き、吹き飛ばされたカーリッツは蹴り飛ばされた瞬間に意識を飛ばしていた。

 恐らく、撃破されたと実感する前に意識を手放したのだろう。……敗北したことにすら気づいていないのかもしれない。


 『夢幻の半球(ドリーム・フィールド)』の効果で結界の外部に飛ばされた瞬間に綺麗さっぱり外傷の一切が消えたカーリッツだったが、意識を手放してしまったせいか、外に出ても目を覚まさなかった。

 救護班が速やかにカーリッツの元へとやってきて、カーリッツを担架に乗せて医務室へと運んでいく。


「オズワルド司令! 呆けている暇はないっすよ!! 特注式(オーダーメイド)ワーブウェポン・狂乱惑刃(ウェスペルティリオ)!」


 自分の攻撃が原因でカーリッツを撃破され、衝撃のあまり思考停止に追い込まれていたオズワルドはミリアの声でハッと我に返った。


「さっきも見たけど、惑刃(アンタレス)の改良版かな? いいよね、惑刃(アンタレス)。変幻自在の使い方ができる惑刃(アンタレス)は俺も好きだよ。……さて、ミリアさんに狂乱惑刃(ウェスペルティリオ)の組み合わせが厄介だってことは分かっているからサクッと仕留めさせてもらうよ。――ワーブリングシステム起動! (シルヴァー)ワーブウェポン・氷雅(アイス・ローヴ)


 眩い光と共に無縫の身体がワーブル体に換装される。

 そして光が収まると、そこに立っていたのは一人の女性だった。


 腰まで届くほどの銀色の髪、底冷えがするほどの冷たい蒼玉色(サファイアブルー)の瞳。

 白銀の胸当てと、腕を覆う金属製の籠手、ミニスカートをベースにした草摺――二の腕、腹部、太腿が顕になった戦乙女(ヴァルキューレ)を彷彿とさせる露出度の高い鎧を纏い、その手には二つの刀身のない剣の柄の部分を握っている。


蒼氷双剣(アイスダブル)


 二つの柄に青白い輝きが収束し、半透明の青白い刀身を形作る。

 双剣を構えた無縫は攻撃に転じたミリアに肉薄し、双剣による怒涛の連続攻撃を仕掛けた。


 手から取り出した二振りの狂乱惑刃(ウェスペルティリオ)を無縫へと投擲し、その後双剣の構えを取ったミリアは二振りの狂乱惑刃(ウェスペルティリオ)を弾かれると一転して防戦に持ち込まれてしまう。


特注式(オーダーメイド)ワーブウェポン・破壊砲鎚(ミョルニール)!! 砲撃モードですぅ!! 飛燕弾(スワロースター)ッ!!」


雪の蝶(スノウ・パピオン)


 無縫の左手に握られた銀色の柄から氷の刀身が消滅する。

 無縫が刀身の無くなった柄を突き出すと、柄の部分に青白い輝きが宿った。

 そこから真っ白な蝶の形をしたエネルギー体のようなものが射出され、次々と鳥型の弾丸を飲み込んでいく。


 弾丸は着弾と同時に凍らされてしまう。そのまま落下するかと思いきや、氷の球体に一瞬にしてヒビが入り、無数の氷片となって砕け散った。

 凍結と同時に凍結した対象を破壊してしまう恐るべき技だ。


 その牙が向けられたのは飛燕弾(スワロースター)だけでは無かった。


「――シエルさん! 逃げるっすよ!!」


「――ッ!? 間に合いませんッ! ミリアさんッ! ごめんなさいですぅ!」


 その言葉を最後にシエルの身体は瞬時に凍結し、砕け散る。……だが、氷が砕け散った瞬間、シエルは戦場から消えずに留まっていた。

 ワーブル体に換装していたため、ワーブル体を犠牲に生き永らえたことを悟ったシエルは『戦鎚』を構えて無縫に迫る。


「シエルばかりに気を取られて……ウチのことも見て欲しいっす!! 爆裂弾(プロージョンスター)!!」


「至近距離からそんな恐ろしいもの撃つなよ。雪の蝶(スノウ・パピオン)


 右の剣で双刀の狂乱惑刃(ウェスペルティリオ)から繰り出される猛攻を受け止めつつ、ミリアが遠隔で放とうとした「爆裂弾(プロージョンスター)」を爆発前に氷漬けにして無力化する。

 更にミリアに向けて至近距離から「雪の蝶(スノウ・パピオン)」を放ち、ミリアを凍りつけにした。


 ワーブル体であるミリアは体の崩壊後にワーブル体の換装が解けて戦線に復帰できる……が、それまでの間動くことはできない。

 無縫はその隙を狙って「蒼氷双剣(アイスダブル)」を再び起動し、迫り来るシエルをミリアの目の前で真っ二つに切り裂いた。


「レフィーナさん、レイヴンさん、クロムロッテさん、イクスさん、ミリアさん、オズワルドさん、スグリさん、マルセラさん、ガルドさん、シャルロットさん――後十人……いや、ミリアさんが消えるから後九人か」


 元の物理的な身体に戻ったミリアを容赦なくリスキルして、無縫はワーブル体への換装を解いた。



「……流石に撃破速度が早すぎるわ」


 カーリッツ、ミリア、シエル……いずれも魔王軍幹部達を撃破してこの場にいる上澄みばかりだ。

 そんな彼らであってもあっさりと撃破されていく――その圧倒的な無縫の強さをまざまざと見せつけられ、レフィーナの頬を汗が伝う。


 勿論、無縫の強さを、戦いの無敗っぷりを見てきたレフィーナには無縫の圧倒的強さは想定できていたことだ……が、それでもこれほど一方的な試合になるとは思ってもみなかったのである。

 魔王軍四天王や魔王軍幹部の戦いのような「惜しい」と思える要素すら皆無な試合展開にレフィーナ達は危機感を募らせていた。


 それと同時に、一度は勝利した筈の魔王軍幹部を大きな壁として意識せざるを得なくなる。


「……レフィーナ殿はどうするつもりでござるか?」


「奥の手の魔法少女の力を使うつもりよ。……とはいえ、無縫さんにも魔法少女に変身されたら負けが確定してしまうわね」


「拙者は奥の手に賭けてみるつもりでござる。少しでも勝算を上げられるように今は様子見の段階でござる」


「詠防衛大臣との修行の成果かしら? 楽しみね。……私も負けていられないわ。どうせ、ここが最大の山場でしょうし、シルフィアさんからもらったアレ、少し危険だけど出し惜しみなく使おうかしら?」


「……二人には勝算があるということね。それなら、先輩として後輩にいいところを見せようかしら?」


 クロムロッテはレイヴンににっこりと微笑むと無縫の方へと歩いていく。

 イクスも「仕方ないなぁ……」と言いつつクロムロッテに続いた。


「ここで出てきますか。……お二人は消耗を狙ってくるタイプだと思っていました」


「貪欲に勝ちを狙うなら……ね。だけど、残念ながら私には無縫さんを倒せる方法が思いつかないの。だから、先輩として少しでも後輩の力になろうと思って。貪欲に勝ちを目指すだけが全てじゃないと思うの」


「そんなところです。こうなったらレイヴンの先輩として、少しでもいいところを見せたいと思っています!」


 クロムロッテとイクスは同時に無縫へと迫る。

 少しでも後輩の勝利に貢献しようとする後輩思いの二人を眩しそうに見ながら、無縫も臨戦態勢を取った。

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