迷宮挑戦前、様々な陣営の者達が一堂に会する伏魔殿の如き懇親会。 その肆
「残りは魔王軍即応騎士団と魔導近衛騎士団近衛騎士、ルキフグス=ロフォカレ学園組だな? ってことで、ここからは俺とアルシーヴが紹介を担当するぜ。まずは、ジュラキュール=ルスヴァン。種族は吸血鬼で、血闘術と剣術を融合した特殊な剣術――ルスヴァン流血刀術の使い手だ。騎士団員の中では中堅に属していて、先輩からも後輩からも頼りにされている。俺個人としては、将来が楽しみな騎士の一人だな」
「ご紹介に預かったジュラキュールだ。騎士団長からこれほどの評価を賜るとは……今の自分に甘んじず更に研鑽を積まなければなりませんね」
ジュラキュールと初対面な者達が抱いた印象は「真面目そうな性格な騎士だな」というものだった。
自分に厳しく常に上を目指す向上心――既に先輩騎士からも後輩達からも高い信頼を勝ち得ているのだろうが、その立場と力に甘んじず更に上を目指そうとする気概があるのはとても素晴らしいことだと好印象を抱いたようである。
「続いて、コンスタンス=ダルタニャン。猫人間出身で技術と攻撃に特化、そこに血刀術の搦手を混ぜてくる剛の剣の使い手であるジュラキュールとは対極に位置する加速魔法と軽量魔法を組み合わせたスピード特化の双剣術を得意としている。一撃一撃の威力は確かに同期入隊のジュラキュールには及ばない……が、その圧倒的な手数と敵を翻弄するスピードは厄介極まりない。そのスピードに手も足も出ない入隊して日が浅い騎士の卵達が何もできずに模擬戦で敗北するのは最早魔王軍即応騎士団のお約束と言っても過言ではない」
「ご紹介に預かったコンスタンスよ。騎士団長からは過分な評価を賜ったけど、私はまだまだだわ。……特に徒手拳兎のような硬い装甲を持ち合わせている敵には全く手も足も出なかったから、硬い装甲をも砕ける強力な攻撃手段を手に入れるのが今後の課題ね」
「ロードガオン出身の私としては、徒手拳兎の装甲をやすやすと破壊されてしまうと立つ瀬がないのだけど……」
強力な装甲と高い戦闘力がウリの徒手拳兎――その装甲を一撃で破壊する威力の攻撃手段の獲得を目指すというのは、ロードガオン出身のフィーネリア達にとっては複雑な心境になる挨拶だった。
「なんか少し空気が悪くなっている気がするが、気にせず行くぞー。で、次はシエル=コニッリア。兎人で今年入隊したばかりの新人だが、既に【戦鎚の兎夜叉】っていう異名を轟かせている有望株だ」
「だ、団長ぅ!! そ、そんな風に紹介されてしまうと、み、みなさんの期待が上がってしまいますぅ!! は、初めましてぇ、シエルと申しますぅ! よろしくお願いしますっ!!」
「ミリアさんとシエルさんは訓練中に二体のネガティブノイズと夜蜘蛛刃に要救助者一名を守りながら勝利しています。お二人とも実力は確かです」
「……す、夜蜘蛛刃まで……」
無縫にまで高評価をされ、恥ずかしさのあまり赤面するシエルと、夜蜘蛛刃まで撃破されたことに愕然とするフィーネリア達。
なお、同じロードガオン人のドルグエスはというと「ほう、夜蜘蛛刃を討伐したのか! なかなかの使い手のようだ。是非手合わせしたいものだ」と相変わらずの脳筋で戦闘狂な台詞を口にして別の意味でミリアとシエルの二人を震え上がらせていた。
「次は魔導近衛騎士団だな。まずは、ディージス=モルティザー。純魔族出身で腕が立つ騎士としてその名は魔王軍即応騎士団にも届いている。盾と大剣を扱う守護戦士のスタイルで、身体強化系の魔法と守護魔法を使う典型的な守りの騎士だ。近衛騎士の役割は魔王陛下を含む要人を守護すること、これほどその役割に合った力を持つ騎士もなかなかいないんじゃないか?」
「只今紹介に預かったディージスだ。今年で近衛騎士団に所属して十二年目になる。紹介にあったように、戦闘よりも守ることに特化した騎士だ。今回の大迷宮挑戦でも味方を守ることに全力を注ぎたいと思っている」
重厚な銀色の鎧を纏い、巨大な盾と剣を背負う大柄な純魔族の男はエスクードの挨拶を引き継ぎ、大迷宮挑戦への抱負を語る。
敵の殲滅が基本となる大迷宮挑戦とは一見相性が悪そうに思えるが、いつもと違う環境でどのような活躍を見せるのか、その活躍が期待される人物の一人である。
「同じく魔導近衛騎士団所属の如月蒼。鬼人出身で『攻撃こそ最大の防御』という座右の銘のもと疾風怒濤の如き荒々しい戦闘を繰り広げる騎士と聞いている」
「ご紹介に預かりました如月蒼と申しますわ。天職の錬成師と土属性、金属属性魔法を組み合わせて【高速錬金術式】と圧倒的な火力による火魔法と雷魔法を得意としています。座右の銘は紹介にもあった通り、『攻撃こそ最大の防御!』。敵に攻撃の隙を与えさえしなければ、守りなど不要というのが私のスタンスですわ」
その淑女然とした見た目と合致しない脳筋じみた戦闘スタイルにギャップを感じた者も少なくない。
守ることに特化した近衛騎士団には不向きそうな戦闘スタイルのように聞こえるが、近衛騎士団に長く所属して実績を積み重ねているところを踏まえれば、『攻撃こそ最大の防御』という危うさのある戦法ももしかしたら理に適っているのかもしれない。
「騎士団関連の紹介はここで終わりだ。ってこもで、アルシーヴさん、後は頼むぜ」
「では、エスクード殿から紹介を引き継がせて頂こう。まず、実技科目教科統括教官のクォールト=スパルツァール教諭だ。学園時代から剣と魔法に秀で、魔導近衛騎士団と魔王軍即応騎士団にも内定をもらっていたようだが、人に教える道に進みたいと教員の道に進んだと聞いている」
「ご紹介に預かりましたクォールトと申します。よろしくお願いします」
【霹閃】や【黒の破壊者】の二つ名を持つクォールト――その存在は学園時代から轟いていた。
魔導近衛騎士団や魔王軍即応騎士団に所属していたら優秀な騎士としてその名を残していただろう。しかし、彼は教員の道を志して教師となる道を進んだ。
各騎士団としては彼という戦力を獲得できなかったのは大きな痛手だが、その一方で彼の教えを受けた優秀な学生が騎士団に所属して頭角を表しているため、なんとも言えない複雑な感情を抱いていた。
「それと、学園内からレイヴン君の他に希望者の中から選んだ二名の生徒を迷宮探索に加えて頂きたいと思っている。まずは、クロムロッテ=アイビー君。ダークエルフ出身の五年生で魔導剣士だ。学園の女子生徒の中で実技・座学共にトップの成績で、全校生徒では実技三位、座学一位という優秀な成績を残している才女だ」
「理事長より過分なご紹介に預かりましたクロムロッテと申しますわ。この度は大迷宮挑戦という歴戦の騎士団員の皆様や異世界出身の猛者の皆様がご参加されるような大迷宮挑戦に一介の学生でありながら参加できる機会に恵まれたこと、心よりお礼申し上げます。……レイヴンさんは三年生で既にイリア様やマラコーダ様に勝利したとお聞きしていますが、私が三年生の頃には幹部巡りも半分まで攻略するのがやっとでした。優秀な後輩が育っていることは嬉しいことですが、同時に後輩に負けていられないという気持ちもあります。今回の迷宮挑戦は私の更なる飛躍の糧にしたいと思っておりますわ」
ちなみにクロムロッテは現時点で既にアィーアツブス区画とキムラヌート区画を除く全ての魔王軍幹部に勝利して、今年の『頂点への挑戦』の出場権を獲得している。
レイヴンにとっては尊敬すべき先輩であり、目指すべき目標でもあるのだが、そんなクロムロッテが無視できなくなるほどレイヴンも強くなっているようだ。
ちなみにクロムロッテの存在は対人間族魔国防衛部隊、魔王軍即応騎士団、魔導近衛騎士団も将来有望株としてマークしているが、本人は宰相のシトラスに憧れて魔王軍の文官職に興味を持っているようだ。
一方、魔法研究の分野にも興味を持っており、卒業というタイムリミットが近づく中、どちらも道に進むか決めかねているらしい。
「そして、最後に紹介するのがイクス=シェパード君。狼人間出身で四年生。魔拳士として四年生の中では実技トップの成績、五年生の成績上位者にも食らいついていけるほどの高い実力を持つ」
「イクスと申します。よろしくお願いします」
全学年の実技成績ランキングでは八位、クロムロッテを含むルキフグス=ロフォカレ学園史上稀に見る優秀な者達が揃っている黄金世代に一学年下ながら喰らいついていけているイクスも十分に優秀な人材であると言えるだろう。
当然、各騎士団も早々にイクスの存在をマークしており、既に対人間族魔国防衛部隊、魔王軍即応騎士団、魔導近衛騎士団のスカウトが声を掛けていたりする。
「一通り紹介も終わったところで今後の大迷宮挑戦の概要についてお話しさせて頂きます。それが終わりましたら、親睦会のために細やかながらお茶とお茶菓子をご用意しておりますので、お借りしたお隣の部屋に移動するという流れでお願い致します」
「あの……ところで、先ほど出て行かれた大田原様と詠様のことは、その、よろしいのでしょうか?」
おずおずと躊躇いながらも尋ねてきたクロムロッテの言葉に、無縫は苦笑いを浮かべた。
「……まあ、後ほどお二人には俺の方から説明しておきますので。今は気にせず紹介に入らせて頂きますね」
◆キャラクタープロフィール
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・クロムロッテ=アイビー
性別、女。
年齢、十七歳。
種族、ダークエルフ。
誕生日、一月二十一日。
血液型、A型RH+。
出生地、クリフォート魔族王国キムラヌート区画。
一人称、私。
好きなもの、湯豆腐、出汁茶漬け、甘葛。
嫌いなもの、特に無し。
座右の銘、特に無し
尊敬する人、シトラス=ライムツリー、アルシーヴ=ライブラリアン、レイヴン=ロナウドなど。
嫌いな人、特に無し。
好きな言葉、特に無し。
嫌いな言葉、特に無し。
職業、ルキフグス=ロフォカレ学園生徒。
主格因子、無し。
「ダークエルフの少女。魔導剣士の天職を持つ生徒。学園の女子生徒の中で実技・座学共にトップの成績で、全校生徒では実技三位、座学一位という優秀な成績を残している。人間族魔国防衛部隊、魔王軍即応騎士団、魔導近衛騎士団も将来有望株としてマークしているが、本人は宰相のシトラスに憧れて魔王軍の文官職に興味を持っている。一方、魔法研究の分野にも興味を持っており、卒業というタイムリミットが近づく中、どちらも道に進むか決めかねている模様」
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・イクス=シェパード
性別、男。
年齢、十六歳。
種族、狼人間。
誕生日、三月十日。
血液型、A型RH+。
出生地、クリフォート魔族王国カイツール区画。
一人称、俺。
好きなもの、金目鯛の煮付け。
嫌いなもの、酢の物。
座右の銘、特に無し。
尊敬する人、ヴィトニル=ヴァナルガンド。
嫌いな人、特に無し。
好きな言葉、特に無し。
嫌いな言葉、特に無し。
職業、ルキフグス=ロフォカレ学園生徒。
主格因子、無し。
「狼人間出身の少年。魔拳士の天職を持つ。四年生の中では実技トップの成績、全学年の実技成績ランキングでは八位とルキフグス=ロフォカレ学園史上稀に見る優秀な者達が揃っている黄金世代に一学年下ながら喰らいついていけるほどの実力を持つ。とても後輩思いなことが知られており、後輩達からも慕われている」
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