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【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第三章「クリフォート魔族王国回遊記」

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ホテル『ロイヤルトゥインクル』最上階のレストラン『ステーキ処 IWAMI』のシェフ、祝井梟帥は伝説の料理人として名を轟かせる高遠敦の一番弟子のようだ。

 試験室へと通された無縫とレフィーナは一枚のレジュメを与えられ、筆記具を片手にテストと格闘した。

 そして、試験時間終了時刻である五十分後、テストは試験監督を務めたカトレアに回収され、答え合わせが行われる。


 大人数の試験者がいる場合はテストを回収したところで挑戦者は一度帰宅し、後日結果を聞きに行くという流れだが、こうして少人数の場合はその採点してテストを返却してくれるようだ。


「テストの採点が終了しました。今から返却を行います」


 普通であればテストを取りにいく形になるが、カトレアは無縫とレフィーナの近くまで歩いていき、二人に直接テストを手渡していく。


「無縫さん、テストの結果はどうだったのかしら? ……あっ、もしかして答えたくないのかしら?」


「いえ、別に俺は気にしないタイプですが……割とテストの点数ってセンシティブな話題ですし、触れない方がいいのかな? と思いまして」


「私もそういうのは気にしないタイプよ」


「では、俺の点数から。満点ですね」


「凄いわね……私は九十二点よ」


「合格点は七十点ですので、お二人とも合格です。特に、無縫様はクリフォート魔族王国に来たばかりと聞きましたが、これほどまでの点数を取られるとは正直驚きました」


「俺って別に勉強が苦手なタイプじゃないですからね。大田原さんや内藤さん、親代わりの二人にも心配はかけられませんし。クラスメイトからは爪弾きにされていたので、テストの点数が公開される形だったらもう少し手抜きをしていたのですが、点数は非公開だったのでしっかりと平均点越え、大体全教科九十点周辺の点数は取っていました。……まあ、運に頼れば満点も取れるのですが、それじゃあつまらないので全部自力ですね」


「……クラスメイトから爪弾きって、酷い目に遭ってきたのね」


「学校の高嶺の花の女子生徒二人に何故か目を掛けられていたからそれに対する嫉妬……なのかな? まあ、俺にとっては完全に余計なお世話だったのですが。テストの点数が公開されていたら、目立って余計に出る杭を打たれないように点数の加減はしていたかもしれません。まあ、でも所詮は子供の嫌がらせ。……もっと厄介な存在は社会に出れば、外交に参加すればごまんといますからね」


「ところで、運に任せたら満点を取れるというのはどういうことでしょうか?」


「俺には昔から尋常ならざる幸運が備わっています。宝くじを買えば必ず一等が当たりますし、馬券を買えばその馬が一位を取りますし、他にも運が絡むものに関しては敗北の経験がありません。あまりにも人生がつまらな過ぎて……というより、得体の知れない『渇き』というものに悩まされて昔はその『渇き』を癒すために色々と無茶をやっていましたが、ヴィオレットとシルフィア――騒がしい二人の家族や、大田原さんや内藤さんのような親代わりの二人との出会い、他にも様々な場所や世界を巡ったりロードガオンの人々と戦ったり、鬼斬や陰陽師みたいな方々と関わったり……そういった経験を通じて少しずつ『渇き』は消えて今はそれなりに楽しい生活を送れています」


「なんだかんだであの二人と仲がいいのはそういうことだったのね」


「あっ、本人達にはナイショですよ。……絶対に調子に乗りますから」


 無縫の言葉に「容易に想像できるわ」と同意するレフィーナだった。



 試験の結果は二人とも合格。無事、ベークシュタインへの挑戦権を手にいれた無縫とレフィーナは宿屋『鳩の止まり木亭』へと戻った。

 時刻は十一時頃、ギミードやワナーリといった常連客達も仕事などに出掛けており、戻ってくる昼休憩まではまだ時間がある。


「意外と早く戻ってきたのじゃな。……もう少し時間が掛かると思っていたのじゃが」


「まあ、筆記試験だけだったしなぁ。レイヴンさんはまだ帰ってきてないのか?」


「外が騒がしいし、そろそろ中央広場でメープルさんとの試合が始まるんじゃないかな?」


「じゃあ、試合終わりにレイヴンさん誘って昼食にしようかな? 宿屋に一旦戻ってきてから、昼食食べて……昼から時間があるからどこか挑戦するのもいいかもしれない。希望が通れば、だけど」


「折角なら外食したいのじゃ。無性にジャンクフードが食べたい気分……モンスターバーガーズのハンバーガーとか最高じゃな」


「ホテル『ロイヤルトゥインクル』最上階のレストラン『ステーキ処 IWAMI』の最高級フィレステーキが食べたい気分だよ!」


「おいおい、振れ幅凄いなぁ。……折衷案だと『ステーキ処 IWAMI』か」


「どこが折衷案になっているのかさっぱり分からないわ。聞く限り高級店だけど……大丈夫なのかしら?」


「まあ、レフィーナさんとレイヴンさん、後スノウさんの分も払うくらいはできるからね。本当は日頃のお礼も兼ねてビアンカさんにも食べてもらいたいところだけど……流石にお昼時は無理そうだしなぁ。ビアンカさん、今夜って時間もらえますか? リリスさんと一緒でよければ是非一緒に夕飯を」


「お気遣いありがとう。そうね、折角だし御相伴に預かろうかしら? ごめんなさいね、気を遣わせてしまって」


「それくらいお礼をさせてくださいよ。色々とご迷惑をお掛けしていますし」


 ほんの少し遠慮しているスノウと宿の部屋にいたタタラを誘い、無縫はヴィオレット、シルフィア、フィーネリア、レフィーナ、スノウ、タタラと共に広場へと向かった。



 武器であるナックルダスターを装着したメープルの拳が空を切る。

 貫いたレイヴンは一瞬空間のテクスチャに乱れが生じたように深刻なズレが生じた後、空間に溶けるように消え去る。


「魔導忍法・蒼火の手裏剣」


 次の瞬間、メープルの背後から無数の蒼焔を纏った手裏剣が殺到してメープルの背中を突き刺した。


「――ッ!! 蛇女咬の拳(ラミアズ・ナックル)!!」


 背中に突き刺さった手裏剣によるダメージの感覚に顔を顰めつつ、メープルは背後に向かって拳を振るう……が、背後に迫っていた剣を構えたレイヴンを殴った瞬間、レイヴンの姿が膨大な水となって崩れ去った。


「魔導忍法・水月の術でござる!」


 「魔導忍法・夜月の朧」と対を成す惑わしの技を使い、背後の背後を取ったレイヴンは今度こそメープルに蒼雷を纏った斬撃を浴びせてメープルを戦闘不能に追い込んだ。


「おめでとうございますぅ! バチカルの魔王軍幹部戦、勝利ですわぁ!」


 『夢幻の半球(ドリーム・フィールド)』の領域から出てダメージを無かったことにしたメープルが拍手と共にレイヴンを称賛する。

 しかし、その表情はどこか物足りなさそうだ。無縫の時とは違い全力は出せないルールでの試合、忍術を全て見切っていながらも甘んじて受けなければならない手を抜いた試合はメープルを満足させてはくれなかったのだろう。


「お二人とも素晴らしい試合でした」


「負けてしまいましたわぁ。凄いですねぇ〜、レイヴンさん」


「ところで、お二人ともこれからお時間よろしいでしょうか? 実はこれから俺の故郷、地球にある料理屋に昼食を食べにいくのですが、一緒にどうですか?」


「まぁ、素晴らしいお誘いだけどぉ、午後からもお仕事があるのよねぇ〜」


「でしたら、リリスさんとビアンカさんをディナーに招待するつもりなので、そちらの時間でどうでしょうか?」


「夕食の時間なら明日の仕込みをする前に食べに行けるわぁ〜。折角のお誘いだしぃ、ご相伴に預からせてもらおうかしらぁ〜」


 バチカルで高い人気を誇るビアンカとメープル――そんな二人を夕食に誘うという両手に花状態の無縫に魔王軍幹部戦の観戦に来ていた魔族達が嫉妬の視線を向けるが、無縫は全く動じた素振りを見せずに話を続ける。


「それと、お店はドレスコードがあるので正装をお願いします」


「あっあの……一体どんなお店に連れて行くつもりなのでござるか?」


「ふっふっふっ! ホテル『ロイヤルトゥインクル』最上階のレストラン『ステーキ処 IWAMI』といえば、伝説の料理人として全世界にその名を轟かせ、こと料理分野においてはミシュランガイドを超える究極の料理店ガイドブックである『究極の美食評議会』が出版する『NEW GASTRONOMY HORIZON』、通称『NGH』、『美食の地平線』において殿堂入りを果たしている『美食の巨人』高遠(たかとう)(あつし)の一番弟子にして、ミシュランガイド三年連続三つ星受賞、『NGH』においても毎年一つ星を獲得している凄腕シェフ、祝井(いわい)梟帥(たける)が自ら腕を振るう予約の取れない人気店なのです! 本来は予約の取れない高級店で、基本的にホテルの宿泊客にしか解禁されていないんだけど」


「大田原さんの関係でコネクションがあって、特別に食事をさせてもらっているって感じだよ。過去には英国の王子夫妻をもてなしたこともあるし、信頼と実績のあるお店だね」


「それはとても楽しみですねぇ〜」


「いや、正装って、持ってないでござるよ!? 拙者、ただの学生でござるよ!!」


「私も同じね、エルフの里の実家にはドレスの一着くらいはあるけど、どちらかというとエルフの伝統衣装みたいな感じだし、困ったわね……」


「……私も登城する時の正装は工房に置いてある」


「ご安心を、正装の類は沢山常備しているので」


「……無法都市の時にお世話になったわね。あの時は選ぶのに苦労したわ」


「フィーネリアさんは、こっちで適当に選んで大丈夫ですね?」


「…………それでいいわ」


「ってちょっと待って欲しいでござる! テーブルマナーとか他にも心配事が」


「大丈夫大丈夫、祝井さん優しいから許してくれるって……アレに比べたらマシだよ」


 そんな品位と権威あるお店で食事なんてできる訳がないと抵抗するレイヴンだったが、抵抗虚しく昼食に参加させられることとなった。

◆ネタ解説・百十七話

レジュメ

 フランス語の「résumé」を語源とする言葉で、文章を要約したものを指す。論文の内容を簡潔にまとめたものや、講演会や講義などで配布される講義内容を要約した資料などがレジュメに該当する。

 類義語にプリントがあるが、大学などではプリントという表現が用いられず、レジュメという名称が使われるようである。


モンスターバーガーズ

 名前の発想元は尾田栄一郎氏の漫画『ONE PIECE』に登場するフォクシー海賊団のメンバーであるハンバーグ、ピクルス、ビッグパンからなるチーム・グロッキーモンスターズの連携技から。

 有名ハンバーガーチェーン店であり、ジャンク系のハンバーガー業界ではトップの業績を誇っている。


『究極の美食評議会』

 『NEW GASTRONOMY HORIZON』を出版する本作オリジナルの組織。

 附田祐斗氏原作、佐伯俊氏作画の漫画『食戟のソーマ』に登場した遠月十傑評議会やワールドグルメオーガニゼーションなどが元ネタと言えなくもない。

 ただし、このテクストは料理ものではないため、特に強い権力を持っているという訳でもない。


高遠(たかとう)(あつし)

 初出は『百合好き悪役令嬢の異世界激闘記』で、百合薗グループの幹部の一人。

 別世界の彼女の活躍は語ると長くなるので、本編を読んで頂きたい。

 本作でも料理人の道を歩んでいる。東京都港区麻布に『L'Assiette Blanche』という店を構えており、ミシュランガイドを超える究極の料理店ガイドブックである『究極の美食評議会』が出版する『NEW GASTRONOMY HORIZON』において殿堂入りを果たした『美食の巨人』として知られている。

 また、祝井(いわい)梟帥(たける)を含めて複数の弟子達に慕われている模様。

 酒とタバコと賭博を愛するダメ人間だが、料理には一切妥協せず繊細な技と豪快な調理法を使い分け、菓子から高級料理に至るまで調理するものなら何でも作れるという素晴らしい料理の才能に恵まれている。

 『百合好き悪役令嬢の異世界激闘記』における敦との決定的な違いは専門学校時代の高遠の同期で親友だった犀川(さいかわ)晋史(しんじ)に誘われて『Restaurant Assiette Blanche』で働く道を選ばなかったこと。彼の手を取らない道を選んだことで、敦は挫折を味わうことなく己の目指す皿を目指し続けることができたのである。

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