ステータスプレートの配布って異世界あるあるだよね。
「ミスリルっていうのは極めて希少かつ高価な金属だ。更に、作成もアーティファクトっつう古代魔導文明の遺産が必要となる。大手の冒険者ギルドも所持しているくらいだから一点ものと比べて格段に多いとはいえ、それでも希少なことに違いはない。俺も冒険者になりたての頃にはおやっさん……『先輩冒険者から絶対に無くすな! 万が一無くせばかなりの額が吹っ飛ぶことを覚悟しろ!』って言われたくらいだ。まあ、俺とお前達じゃ立場は違うが、あんまりいい顔はされないって思ってくれ」
「ちなみに経験者だ。あの時のギルマスとか上層部の怖い顔は今でも夢に出るんだぜ」と笑い飛ばせない真剣な顔で語るガルフォール。
若干空気が凍ったが、ガルフォールは気にせず話を進める。
「プレートに薄らと魔法陣と魔力回路が刻まれているだろう? 見えにくいかも知れないがな。その中心あたりに生体情報物質……まあ、要するに血液だな。そいつを一滴垂らせば所有者が登録される。その状態で『ステータス・オープン』って唱えれば自分のステータスが表示されるって寸法だ。隠す時には『ステータス・クローズ』、セットで覚えておけよ、個人情報保護的な意味で。ああ、俺に原理とか聞くなよ。そういうのは、アーティファクトとかを研究している部署に聞け。まあ、紹介状くらいは書いておくぜ」
「――顕現せよ! 我が強さを指し示す能力情報板! ……なるほどなるほど? JUDGE MY STATUS!! ……なるほどなるほど?? ……ふむ、重要なのは言葉ではなくステータスを開きたいという意思みたいだね。閉じる時も鍵となる言葉がなくても閉じれることを確認できたし……ガルフォール団長、ということで報告よろしくお願いしますね」
「……………………はぁぁ!? ンな馬鹿な! おいおい、それ本当かよ! というか、他のみんなが躊躇しているってのに躊躇いなくブスリって指先に突き刺して豪胆だな! んじゃ、開いた奴はしばらく待っておいてくれ。まずは説明を終えてしまおう。その後に見て回ってステータスを確認させてもらう。まずはレベル……説明が難しいな。ステータス上昇と連関する強さの指標的なものか? 上限は100って聞いているが、もしかしたら更に上があるのかも知れない。まあ、少なくとも現在までそんな奴は現れてないけどな! ステータスは筋力、体力、器用さや素早さに関係する敏捷、防御耐久力の指標である耐久、魔力、魔耐、幸運によって構成されている。今は低いかもしれないが、成長と共に上がるから気にするなよ。で、最後に天職と技能だ。技能はスキルとも呼ばれる。どっちで呼ぶかは個々人の自由で、どうぞ、って感じだ。その天職の領分においては無類の才能を発揮する。そもそも天職持ちは極めて希少だが、その中にも希少なものからそうでもないようなものまで様々だ。大きく戦闘系天職と非戦闘系天職に分類されるんだが、戦闘系は五千人に一人、物によっては一万人に一人の割合と言われている。……もっと希少なものも中にはあるがな。非戦闘系も少ないと言えば確かに少ないが、百人に一人、希少なものでも一千人に一人くらいはいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな。……だが、ここで、お前達も少し混乱しそうな要素を一摘みだ。――固有系天職って区分がある。この世にただ一人しか生まれてこない才能。だからと言って全てが役に立つ天職って訳でも無いからな? ここが、また面倒なところなんだが。そういった天職を持つ者には先達が存在しない。勇者だって極めて珍しいとはいえ、前例はある。……そんなの手に入れた日には大変だぞ。まあ、大化けする可能性ってのもあるっちゃあるが、そこに浪漫を感じる奴も少なくはない」
ガルフォールの話を聞き、少しだけ嫌な汗が流れる無縫。個人的には非常に気に入っている珈琲師……だが、本当にそんな天職に先例はあるのだろうか?
「ああ、言い忘れていたがレベル1のステータスの平均は10くらいだ。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな。んじゃ、そろそろ見て回らせてもらうぜ。訓練メニューの参考にしたいしなぁ」
◆
ガルフォールの想定したように、勇者召喚された者達のステータスは平均以上、どれも素晴らしいものであった……無縫を除いて。
その中でも突出したステータスだったのは春翔、美雪、花凛の幼馴染三人組だ。やはり、華がある者達――ステータスも恵まれているようである。
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獅子王春翔 LEVEL1
種族:人間、性別:男、年齢:17
天職:勇者
筋力:300
体力:300
敏捷:300
耐久:300
魔力:300
魔耐:300
幸運:300
技能:勇者剣術・全属性魔法適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剛力・金剛・縮地・気配察知・魔力感知・言語理解
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白石美雪 LEVEL1
種族:人間、性別:女、年齢:17
天職:聖女、治癒師
筋力:10
体力:10
敏捷:25
耐久:10
魔力:150
魔耐:120
幸運:8
技能:回復魔法・神聖属性魔法適性・高速魔力回復・言語理解
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天月花凛 LEVEL1
種族:人間、性別:女、年齢:17
天職:剣士
筋力:100
体力:100
敏捷:100
耐久:100
魔力:100
魔耐:100
幸運:100
技能:剣術・飛斬撃・縮地・気配察知・言語理解
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美雪は聖女という勇者にも比肩する戦闘系と非戦闘系のハイブリッド天職を所持、花凛は典型的な剣士タイプだが、基礎スペックの平均値が極めて高い。ステータスの成長速度はこの基礎スペックが基準となるので、花凛の未来は保証されたと言っても過言ではないだろう。
そして、それを容易く上回るのが春翔だ。ザ・勇者というべきテンプレスキルが欲張りセットとばかりに詰まっている。
別にここで悪意とかはないのだが、初めて異世界に召喚された時の波菜と無縫のステータスを確認してみるとしよう。
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黒崎波菜(オルフレイ) LEVEL1
種族:人間、性別:女、年齢:8
天職: 勇者
筋力:1000
体力:1000
敏捷:1000
耐久:1000
魔力:1000
魔耐:1000
幸運:300
技能:神聖聖剣術・勇者剣術・神聖付加・双剣術・全属性魔法適性・全属性耐性・複合魔法・高速魔力回復・剛力・金剛・縮地・気配察知・魔力感知・言語理解
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庚澤無縫(アムズガルド) LEVEL1
種族:人間、性別:男、年齢:14
天職: 勇者、魔王、網羅武器士、大魔術師、大賢者、大聖女、武闘王、万象鑑定士、万物錬成師、無敗勝負師
筋力:245000
体力:245000
敏捷:245000
耐久:245000
魔力:245000
魔耐:245000
幸運:Unmeasurable
技能:神聖聖剣術・勇者剣術・神聖付加・勇者覇気・魔王闇剣術・暗黒付加・魔王覇気・網羅武器術・操武・飛斬撃・全属性魔法適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・痛覚完全遮断・精神攻撃無効・呪術系攻撃完全反射・状態異常無効・即死攻撃無効・自然影響無効・回復魔法・思考加速・並列思考・無詠唱魔法・神聖属性魔法適性・蘇生魔法・障壁魔法・空間属性適性・複合魔法・神速魔力回復・網羅格闘術・剛力・金剛・縮地・万象鑑定・錬成・万物創造・黄金錬成・運率操作・イカサマ・不死鳥の光護・気配察知・魔力感知・熱源探知・言語理解
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比較対象になりそうな波菜の方が歳が幼くステータスが高かったりする。まあ、世界が違うのでなんとも言えないが。
無縫とは……比較する方が烏滸がましい。
なお、最初にステータスを表示した際に幸運の項目に「『気紛れな女神の寵愛』の効果により幸運に異常が発生している」と一瞬だけ表示されたのだが、あれは一体なんだったのだろうか?
未だにアムズガルドのステータスを開く度に疑問に思う無縫である。
◆ネタ等解説・十一話目
「顕現せよ! 我が強さを指し示す能力情報板」
元ネタの元ネタは『遊戯王VRAINS』に登場するリボルバーの召喚口上「現れるがいい! 我が道を照らす未来回路!」。それを元にした自作『文学少年(変態さん)は世界最恐!?』の能因草子が使用したステータス表示の言葉が元ネタとなる。相変わらず複雑な経路のパロディだなぁ、おい。
「JUDGE MY STATUS」
元ネタの元ネタは『ラクエンロジック』のゲーム開始時の口上「ジャッジユアロジック」。それを元にした自作『文学少年(変態さん)は世界最恐!?』の能因草子が使用したステータス表示の言葉が元ネタとなる。相変わらず複雑な(ry
◆キャラクタープロフィール
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・セリスティス・グレーゼバルト
性別、女
年齢、二十一歳。
誕生日、三月三日。
血液型、A型Rh+。
出生地、ルーグラン王国グレーゼバルト伯爵領。
一人称、私。
好きなもの、剣術、書類仕事、和気藹々とした職場。
嫌いなもの、社交界。
座右の銘、美しき花の剣技。
尊敬する人、ガルフォール・ハウリング(上司)。
嫌いな人、特に無し。
好きな言葉、「綺麗な花には棘がある」。
嫌いな言葉、特に無し。
職業、グレーゼバルト伯爵令嬢→ルーグラン王国第三騎士団騎士団長→ルーグラン王国第三騎士団副団長→ルーグラン王国白嶺騎士団総隊長補佐。
主格因子、無し。
「グレーゼバルト伯爵令嬢。幼い頃から貴族社会や社交界に居心地の悪さを感じる一方で兄の真似をして剣を振るった時にしっくりときたと感じ、騎士の道を志す。反対する父親に騎士を志す兄以上の実力を見せつけて認めさせて晴れて女騎士となった。第三騎士団の騎士団長となるが、次第に自分は騎士団長として矢面に立つよりも騎士団長を支える方が得意なのではないかと考え、騎士団長に相応しい人材を探し求めた。冒険者として頭角を表していたガルフォールを発掘してからは彼を上司として立て、補佐役として彼を助ける立ち回りをしている」
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