サンタさんってホントにいるの?
ある東北の寒村に、冬が来ました。
その村には、田畑と山以外何も無く、大きな建物といっても小学校だけで、それも一階建の平屋でした。
そんな小学校のある少年は、たいへんな事件を抱えていました。その少年の家では、クリスマスの夜に、真っ赤な手拭いがサンタさんから貰うのですが、何と、ほかの子に聞くと、サンタさんなんていないと言うのです。
少年はいてもたってもいられなくて、お母ちゃんに聞こうとしました。しかし、もし本当にいなかったら、その手拭いは、誰から貰っているのか。他に考えられるのは、お母ちゃんに違いありません。なので、少年は聞くに聞けずにいたのです。
そこで、少年は小学校の先生に聞いてみることにしました。
一人目は、担任の中西先生にすると決めていました。しかし風邪でお休みを取られていると教頭先生が言うのです。しかし、クリスマスは一週間後。待ってはいられません。そこで、教頭先生に聞いてみることにしました。
’教頭先生、教頭先生、サンタさんは本当にいるのですか?
“勿論、いるとも、いるとも。
そうは言うものの教頭先生は、見た事がないほど顔を苦しそうにするので、どうしても納得がいきません。そこで、次に山田先生に聞く事にしました。この人は村1番の苦労人で、この村の中でも貧乏な家庭で育ちながら、教師までになりました。この人なら間違いはありません。
’山田先生、山田先生、サンタさんは本当にいるのですか?
”僕の家にだけ来た事が無いから分かんないんだ
と、言うのです。どうもその顔は嘘をついているようには見えませんでした。
しかし分からないと言われて納得できる少年ではありません。そこで、さらに家に帰ってから、電話で中西先生に聞いてみることにしました。
家に着くと、一目散に受話器の方へ。
電話をかけると、すぐに繋がりました。
’中西先生、中西先生、サンタさんは本当にいるのですか?
”小野君はサンタが信じられないのですか?
’そんな事は…でも教頭先生はいるって言いました。でも、山田先生は来た事がないって
”そうですか…分かりました。サンタとは、確かにいるのです。しかし、条件があります。
’条件?
“はい。サンタを信じる事です
’それっていないって事じゃ…
“そんな事はありません。仏様だって同じです。いると思うから生まれる。そして神社だの仏像だのができるのです
’じゃあサンタさんは結局いるんですか
“それは自分で考え、答えを出しなさい。思考を捨ててはいけません。分からないから聞くというのは傲慢ですよ
でも、一つ言えるのは、小野君が信じる限り必ずいます。
と、先生はおっしゃいました。
少年は、サンタはいるんだ、信じ続ければずっといるんだ、と思いました。
*
その少年は随分大きくなっていつしか結婚し、子供を持ちました。
しかし彼は子供のサンタとなる事はありませんでした。彼は、今でも待っているのです。真っ赤な手拭いを、サンタさんを。
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