《初投稿》小説
初投稿です!
ラノベを出版するのが将来の夢です。
よろしければ読んでいって、感想ください!!
春の風に乗りその言葉は私の胸に届く。普段は生意気だけど、いざとなったら頼りになりまっすぐな人。そんなかっこよく、可愛い後輩なのだ。そして私は彼に抱きつき伝える。
「こちらこそ、よろしくね」
(あぁ、俺も先輩とこんな恋ができたらな)
「あ、痛ったー」
叩かれた頭を摩りながら俺は顔を上げる。
「先輩、もう少し人を優しく起こすこと出来ないですか?」
「わざわざあんたが図書館で勉強したいって言うから着いてきてあげてるのに、寝るとはほんといい度胸してるわね。」
腕を組み頬を膨らませた先輩からの視線はとても痛いものだが、俺はあくびをしながら返す。
「こんな暖房がかかった部屋で寝ないとか俺には無理ですよ。それよりこのまま叩かれ続けたら、俺の頭凹むかもですよ。」
「あんたが寝なければ私も叩かなくて済むの。それに何度起こしてもあんた起きないんだし...。もうすぐ閉館時間なんだから早く準備して帰るわよ。」
俺はもう一度大きなあくび、そして背伸びをしてから帰りの準備をした。
先輩、蓬田凛華は俺の2つ上で高校3年生。成績優秀で生徒会長までこなしている。それに比べて俺、遠野晴弥は赤点を回避するのがやっとであり、クラスのカーストというものでも下位のような存在だ。なぜ俺がそんな上過ぎる立場の先輩と一緒に入れるのか。それは俺にも分からない。ただ気に入ってくれていることは確かだ。
2月の半になったというのに今日は珍しく雪がちらついていた。薄着で来てしまった俺たちは下駄箱から靴を取り出し、足早に校門へ向かって歩きだす。その時、男子生徒3人が話していたのが聞こえてきた。内容は...やはり先輩のことだった。俺もずっと謎だが先輩は基本、人の前で感情を出さない。俺と一緒にいる時は普通に話すのに、他の人が会話に入ると静かというか、凛とした感じになるのだ。なぜそうするのかも分からない。だが俺の前では砕けて話してくれているから、気に入られていることが分かる。
「そういえば先輩ってなんで俺と一緒にいてくれるんですか?他の人みたいに冷たく扱わないんですか?」
「...病んだの?あんたそういうこと言う人じゃないでしょ。」
「なんか、ふと気になって。」
「なんでなのか、ねぇ〜。私にもあんまり分かんないけど、強いていうなら好きなものが同じだったからかな。」
「それだけ...。そしたら俺がその好きなものが変わった時に、先輩は離れていくってことですか。」
「どうなんでしょうね。それはその時の私にしか分からないわ。」
やっぱり先輩は何を考えているのか、さっぱり分からない。それでも居心地がいい間は一緒にいたいな。先輩は3月には卒業する。それまでにこの想いを伝えたい。入学した時からの一目惚れ。それを伝えたら、きっと先輩は俺から離れていく。分かっている。だとしても伝えたい。
3月9日。卒業式。卒業生たちはグラウンドに集まりそれぞれで話をしていた。先生と話をする人。友達と話をする人。恋人と話をする人。様々だ。そして俺は先輩と校舎裏で会う約束をしていた。中庭に立っている桜の木は満開ではないがほんの少しだけ咲いていた。まだ少し肌寒いので俺は日向で先輩を待っていた。この学校には伝説とは言わないが、少し噂みたいなのがあった。それは「卒業式後に自分と相手の好きなものを渡して告白すると成功する」というものだった。そのため本を持ってくる人や、ギターを持ってくる人もいた。普段の俺なら噂を信じるのは馬鹿馬鹿しいと思う。だが、先輩と付き合える可能性が少しでも上がるなら、その噂に乗っかろうと思い、俺はガトーショコラを持ってきた。男子の俺が1から作るとか重いかもしれないが、俺は料理が得意だった。そのためせっかくならということで手作りを作り、飾りも兼ねてさくらんぼをのせたものを持ってきた。。だけど先輩はいつになっても来なかった。
卒業式からの帰り道、俺は先輩の家に向かっていた。先輩に聞きたかった。想いを伝えれなかったことよりも、なぜ会うという約束を破ったかだ。先輩の家は高校から20分ぐらい。河川敷に沿って自転車を漕ぐ。桜はほとんどが蕾。先輩の家に着くまで俺は先輩の無事だけを祈り続けてた。
家が近くなるとなんだか少し騒がしくなってきた。なにかあったのか?と思いながら先輩の家が見え始める角を曲がった。その道では人だかりができており、警察が交通整備をしていた。先輩の家の前で。俺は思わず自転車から投げ降り、そちらへ駆け出した。先輩は無事なのか。それだけが気になった。もしかしたら先輩は事故に遭っていないかもしれない。たまたま先輩の家の前で事故が起きただけかもしれない。先輩という可能性は少ないはず。なのになんでこんなにも胸騒ぎがするんだ。集まっていた人に声をかける。
「あの、何が起きたんですか?」
「あぁ、この家のお嬢さんが事故に遭ったんだって。今日が卒業式だったらしくてね、本当にかわいそうよ。」
「...。」
先輩が事故。嘘、ではないんだろう。今日の卒業式でも先輩を見かけたことはなかった。つまりそういうことなんだろう。途端世界が暗転した。真っ黒の世界に。目の前に起きてた現実は消えていき、地面がなくなった。俺を支えていたものがなくなってしまった。真っ暗の世界にそのまま堕ちていき、堕ちていった。
「うわーーーって、痛っー。」
「あ、ごめんなさい。」
「先輩、人を叩いて起こすのやめてくださいよ。」
「確かに叩こうとしたけど、あんたが急に起きるから余計と力が...。」
叩かれた頭を摩りながら俺は先輩と話す。ん?前もこんなことしなかったか?というよりさっき見ていた夢のようなものはなんなんだ?
「というより、あんたが図書館で勉強したいって言うから着いてきてあげてるのに、寝るとはほんといい度胸してるわね。」
この言葉も一度聞いたことがある。
「すみません先輩、今って何年の何月でしたっけ?」
「どうしたのよあんた。転生する夢でも見てたの?今は2022年の2月よ。」
転生、ではないだろう。先輩と図書館で勉強して俺が寝てしまい、頭を叩かれる経験はしている。だとしたら過去に戻った、というのか?そんなことがあるのか。いや、ありえない。でも俺は今そのありえない体験を今している。
「あんた頭おかしくなったの?それよりももうすぐ閉館時間なんだから早く準備して帰るわよ。」
「分かりました...先輩。」
「それとこのあと本屋に寄りたいから着いてきて。」
「え、面倒くさいです。帰らせてください。お願いします。」
「あんた、なんでこんなことで頭を下げてまで嫌がるのよ。でもダメよ。私はあんたの睡眠のために図書館で待ってたんだから、少しは私の用事に付き合ってもらわないと。」
先輩は少し怒りながら俺の先を歩く。
「そう言われると心が痛いです。まぁちゃちゃっと買いますか。それでどんな本買うんですか?」
「桜っていう本よ。知らないかしら?」
「多分それ純文学の本ですよね。俺はラノベとかそういうやつでしか活字は無理なので。」
「ラノベで面白いのもあるけど、純文学もいいわよ。私が買うのは最近流行ったりしてて、今日最新巻が出たからなくなっちゃうかもなのよ。」
「へーそうなんですね。また今度貸してくださいよ。」
そして俺たちは本屋に向かった。
先輩と過ごしていて、分かったことだがやっぱり俺は過去に戻っている。一度経験したことをもう一度繰り返している。そしてもう一つ分かったこと、俺のその場での行動次第で未来は変わっていること。
そして今日は卒業式。先輩が事故に遭った日。俺は在校生の席から卒業生入場を待っていた。少し時間より遅れたが卒業式始まった。卒業生が入場し始め、俺はその中にいる先輩を探した。先輩は7組、そして蓬田なので一番最後に入場をする。見落とすはずがなかった。なのに、なのに先輩が入場してこない。俺は席から外れて駐輪場に向かって走り出す。途中、先生から何度も呼ばれたが俺は気にせずに、先輩に渡す本を持って家へ向かった。 先輩の好きなものは、チョコレートではなく本。俺も貸してもらって読んだが、確かに面白い本だった。よくその本の感想を言い合ったり、考察をして先を予想したり、俺と先輩の間での一番の話題だった。
先輩の家が近くなる。また騒がしい。間に合わなかった、と俺は理解する。
「先輩...」
だが俺は一つの違いに気づいた。あの時は人だかりからの声しか聞こえなかったが、今はサイレンが聞こえた。先輩はまだいる。そう考えて俺は最後の角を曲がり自転車から降りて、集まりの中へ入っていく。最前列に行くとそこでは先輩が倒れていた。あの時は見えなかった、見ようとしなかったが自動車に轢かれていた。
「先輩!」
俺は先輩の側に向かい声をかけた。
「...は...るや...」
「はい、俺です!晴哉です!」
「はるや......さ...さくら...」
「桜がどうしたんですか。先輩、先輩!」
そして先輩は目を閉じてしまった。目に溜まった涙を袖で拭き先輩を見つめ直した時、世界は崩れ始め真っ暗の世界となった。先輩を救えなかった。つまり俺の選択が間違っていたということだ。だけど分からない。何が違うのかが分からない。
「先輩、すみません。救えなくて。」
誰もいない真っ暗の世界からはもちろん返答はない。だがこれ以上落ち込んではいられない。先輩は今とても不安定な状態だ。いつ過去戻りが終わって先輩が死ぬ事が変えられなくなるか分からない。だから進むしかない。先輩がこの卒業式の日を無事に終えて、俺が告白する。そう決意する。そしてまた俺の意識は落ちていった。
「明日卒業するんですよね先輩。なんか実感がないです。」
「そうね、本当に明日でこの学校に来るのが最後だと信じれないわよね。」
「先輩がいない学校はもう行く必要がなくなりそうです。このまま僕も退学しようかな。」
「馬鹿なこと言わないの。それに今の時代高校卒業は必要最低限のようなものよ。やっぱり自分の為にも大学卒業は必要よ。」
「そうですよね、大人しく大学進学しときます。」
校門から少し曲がったところを2人で歩く。先輩と下校するのもこれが最後。それを何度も願った。過去に戻らないように、先輩が生きているように。
「それじゃ、先輩。俺はここで。」
「...うん、またね晴弥。」
そして俺は先輩と別れ、自転車に乗り家に向かおうとした所、
「晴弥ー。」
「どうしたんですかー。」
「桜、見に行きましょうね。」
「なんで急に桜なんですか?別にいいですけど。」
「約束よ。」
「はぁ、じゃあまた明日。」
そして俺は今度こそ先輩と別れ、本屋に向かった。そして先輩の好きな本の新巻を買う。この本を読むのは2回目だが、1つ1つの場面にドキドキする事ができるこの本を俺は、改めて好きになっていた。そして家に帰り、いつも通り夜ご飯を食べ、風呂に入り、寝る前の読書をする。新巻は先輩に明日渡すから読まずに、俺がこの本で好きなシーンの初巻を読み始める。桜が咲き、枯れるのと主人公の恋は同じ動きをする。よくある話だが俺はとても好きだった。この桜が、この桜が...。そういえば先輩はなぜ別れ際に桜を見に行こうと言ったのだろう。そしてなぜ桜なんだ。桜が満開のシーズンはもう少し先のはずだ。小説に感化されたのか?いや、そんなわけない。桜、桜、桜!そこで俺は思い出した。先輩との約束を。そして俺は先輩の家に向かって自転車を漕ぎ始めた。先輩との約束。先輩の好きなもの。俺の好きなもの。最初から気付けるはずだった。
先輩と俺が出会ったのは入学式後の校庭だった。クラスごとに校内の案内をしている時、俺はトイレに行っている間にみんなに置いてかれた。周りを少し探したが完璧に置いてかれたようで俺は中庭で桜を見ていた。どうせ後から怒られるだろうなら、今はこの綺麗な桜を堪能しようではないかと思い、ベンチに腰掛けた。一応授業中扱いらしく、周りはシーンとしており静かだった。それなのに俺は気づかなかった。ずっと見ていたはずの桜の木の下に人がいたのだ。授業中に中庭にいるとかこの人ヤンキーか?怖、とか思っていたが、その人が振り向いた瞬間俺からそんな思考なくなっていた。ただ好きという感情が溢れてきた。俺の初恋。そして一目惚れ。数秒間目を合わせてたが我に戻り目を逸らした。
「君、桜は好き?」
この状況で桜?とか思いながら俺は返事をする。
「あ、はい、好きです。」
「そう、私も好きなの。」
そして沈黙が流れた。え、普通もう少し話すものじゃないの?これで会話終了?となっていて俺は思わず話しかけた。
「えーと、あなたはなんで今ここに?」
「あぁ、私は生徒会長だから入学式の片付けよ。それよりあなたは1年生よね。」
「なんか、置いていかれました。それでここがどこかも分からないのでとりあえず桜を見にきました。」
「置いていかれたって、どうせあなたがボーッとしてたんでしょ。」
初めて笑った顔を見た。綺麗。可愛い。
「先輩の名前、教えてください。」
「初対面の人にいきなり名前を聞くってあんた面白いわね。蓬田凛華よ。入学式でも挨拶したんだけどね。」
「入学式は寝ちゃってました。」
「初日から寝るってあんた頭おかしいでしょ。しかも入学式。」
「ちょうどこの季節はあったかいのでつい寝ちゃうんですよね。それに入学式つまんないし。」
「まぁいいわ、それよりあんたの名前教えてもらってないんですけど。」
「あ、すいません。俺の名前は遠野晴弥です。」
「遠野君ね、それじゃ私は片付けに戻るから。」
「頑張ってください。俺は担任を見つけて、怒られるのを耐えるのを頑張ります。」
「ほんとあんたって面白いわね。また会ったら話しましょう。」
そう言って先輩は戻って行った。俺と先輩の初めての出会い。それから桜が散るまで先輩とはよく桜の木の下で話をしていた。俺と先輩を出会わせてくれた桜。その存在を俺はずっと忘れていた。そして先輩との約束も。
「先輩、そんなに桜好きなら来年の桜、俺と一緒に観に行きましょうよ。」
「なんであんたと、って思うけどしょうがないからいいわよ。」
「ワーヤッター。」
「なんで嫌そうなのよ。」
「いや、先輩が嫌々っぽかったので俺となんかじゃやっぱりダメかーって。」
「あー面倒くさい、わかったわよ。あんたと桜見に行きたいです。来年の桜も一緒にみたいです。」
「うん、満足です。」
「ほんと、覚えておきなさいよ。忘れたらあなたの前から消えてやる。」
「それは困りますよ、せっかくできた上級生の友達なんですから。」
なんで忘れていたんだろう。忘れてはいけない事だったのに。好きな人と予定が出来たら普通忘れないだろ。何度も自分を恨みたくなる。俺が忘れていなければ、先輩が死ぬようなことはなかった。だとしても過去を悔やんでも、もうどうしようもない。今は先輩と桜を見に行く。そして俺は先輩の家が見え始める最後の角を曲がった。
俺はすぐにインターホンを押し、数秒後ドアが開いた。
「どうしたのよ、こんな時間に。何か用事かしら?」
出てきたのはパジャマに大きめのパーカーを着た先輩だった。よく考えたら今はもう10時を過ぎている。だけど先輩がいる。もう死んでしまったかもしれなかった先輩が。もう会えないかもしれないと思った先輩が。先輩が...、先輩が。固まったような体から力が抜けていくのを感じた。これで未来が変わったのかもしれない。先輩は生きていけるのかもしれない。そう気づいたら俺は先輩を抱きしめていた。
「え、ほんとどうしたの。」
「すいません先輩。少しだけこうしていてもいいですか?」
「...いいわよ。」
先輩も抱き返してくれた。それが先輩は生きている、そしてこれからも生きていけるとなぜか俺に思わせてくれた。そう思うと思わず俺は泣いてしまった。なぜか先輩も泣いていた。数分後、俺たち落ち着いていた。
「聞きたいことは色々あるけど、今日は遅いからもう帰りなさい。」
「わかりました。急にすみませんでした。」
そして俺は家へと帰る。きっとこれで未来は変わった。明日の卒業式で全てを伝えて告白するだけ。
3月9日。卒業式。卒業生たちはグラウンドに集まりそれぞれで話をしていた。先生と話をする人。友達と話をする人。恋人と話をする人。様々だ。そして僕は先輩と校舎裏で会う約束をしていた。まだ少し肌寒く、日向で先輩を待っていた。ここ数日ずっと季節外れの寒さであり、桜の木は満開ではないが、ほんの少しだけ咲いていた。10分程度すると先輩は卒業証書の筒を片手にやってきた。
「先輩。卒業おめでとうございます。」
「はいはい、ありがとう。」
「卒業生代表として話してる先輩かっこよかったですよ。」
「...そういうのはいいのよ。それより、なんでいきなり家に来たのよ。それになんでいきなり抱きついてきたのよ。ちゃんと説明してもらうわよ。」
「今から言うこと信じれないと思いますけど、本当なので信じてください。」
「わかったわ。」
「俺は過去に戻ってきました。原因はきっと先輩が事故に遭って死んでしまうからです。信じれないと思います。実際先輩は今ここで生きているから。でも俺は今まで先輩が死ぬ所を見て過去に戻ってました。それで昨日は先輩と学校で別れた後、家に行ったじゃないですか。そこで会えたらきっと今日も会えると思ったんですよ。次会えなかったら先輩が死んだことが確定した世界で俺は生きるかもしれないとか、俺のせいで先輩を死なせちゃったって、俺色々考えちゃって...。そしたら先輩は家にいたので、なんかホッとして...抱きしめちゃって...。」
話している途中から俺は泣いていた。あの時も先輩がいることの実感があったが、今改めて話していて先輩が卒業式を終えたということが嬉しくて涙が出てきてしまう。すると先輩はあの時のようにまた、俺を抱きしめてくれた。
「そうなのね。ありがとう...。
私も少し話があるの。少し話してもいいかしら。」
俺は涙を拭いながら顔を上げ頷く。
「ありがと。信じれないと思うけど私も過去に戻ってたの。そしてあなたの反応を見ていると、きっとあなたも過去に戻ってると思ったの。私はその過去で死んだ。あなたが見てきた事故のことよ。死んで行く時、暗闇の中に堕ちていって次に意識が戻ると図書室に戻ってたの。これが1つ目の話。理解できそう?」
「分かりますよ。俺と先輩で起きてたことは一緒だったってことですよね。」
「そうね、だけど少し違うわ。それで次の2つ目の話をするわ。」
先輩は深呼吸をし、改めて話し始めた。
「あんた、桜の約束の事、完全に忘れてたでしょ。」
「そうです。先輩に言われるまで俺は忘れていました。」
「私はずっと約束の事覚えてたのに、あんたはずっと忘れていたでしょ。だから片方だけが覚えていてもダメなのよ。2人が覚えてないと。」
「すいません。自分でも何で忘れていたか分からないんです。」
「いいのよ別に、思い出してくれただけで十分よ。きっとこの過去戻りは桜を見る約束を忘れていると、事故に遭い過去に戻るという仕組みだったのだと思うわ。」
そこで俺は1つ疑問に思ってたことをきいてみる。
「先輩は何でその約束の事ずっと覚えてたんですか?俺みたいな奴と来年から一緒に桜見る約束なんて、普通覚えてないものじゃないですか?」
すると先輩は顔を赤らめて俯いてしまった。
普通なら気づくはずなのになぜ、俺はこういう時だけ鈍感を極めているのだろう。普段はそれなりに察しがいい方だと思うのだが。
「どうしたんですか、先輩。俺なんかしました?」
「あんたのそれ本当に意地悪よね。」
「はい?」
「もういいわ、面倒くさい。何度も行動してきたし、普通気づくような事したり言ったりもしたのに、何で貴方は気づかないのよ。」
「え、だから何のことですか。」
「私はね、あんたのことが好きなの。だからあんたの事をそばに置いてたし、約束のことを覚えてたの。」
は?先輩が俺を好き?いや、そんな分けないでしょ。
「先輩、冗談はよくないですよ。俺が本気にしたらどうするんですか。」
「だから本気にしなさいって言ってんのよ。なに、あんた難聴系主人公のそれなの?」
「難聴系って、何言ってるんですか。」
「とにかく好きなのよ。」
「先輩が俺を好き。先輩が俺を好き。先輩が俺を好き。...え。えーーー。そうなんですか。」
側から見たら中庭で好き好きと騒いでるる女子と、静かだったのに急に叫び出した男子。俺だったら絶対に関わりたくないタイプの人たちだ。いや、嫌なタイプとかじゃなくて俺たちじゃん。
「だからさっきからそうって言ってるじゃない。分かった?」
「いや、流石に嘘で...。」
そこまで言った瞬間先輩の顔が怖くなる。
「はい、すみません。先輩は俺が好き。これでいいですね。」
「それでいいの。」
怒らせた時の先輩は本当に面倒くさく、怖い。俺はちゃんとそこを察したのだ。決して難聴系主人公ではない。先輩は一度深呼吸をし改めて俺に聞いてくる。
「それであんたはどうなのよ。」
「とは?」
「あんたは私のことどうなのよ。」
俺と先輩の身長差的にも。そして先輩史上最高の上目遣いで聞かれた。
「あー好きですよ。」
「そうなのね、よかったわ。というよりなんでそんな冷静な感じで言うのよ。」
「自分でもよく分かんないですけど、落ち着いたらなんかそうなりました。嫌でした?」
「嫌ではないけれど、本当に私のこと好きなの?」
「なんですか、先輩。俺の気持ちが信じれないとでも言うんですか?」
「それはさっきのあんたにも言えるでしょ。」
「あ。まぁいいんですよ。俺は先輩が俺を好きなの分かったんで。でも先輩は俺が先輩を好きなの信じれないんでしょ。なら言ってあげますよ。どれだけ俺が先輩のこと好きか。」
「えぇ〜。」
「先輩、初めて俺たちが会った日覚えてます?」
「覚えてるわよ。入学式の日に迷子のあんたを私が見つけたんでしょ。」
「あの時先輩を見た時、俺は一目惚れをしました。桜を見る時、太陽が眩しくて目が細くなる先輩が好き。勝負事に一喜一憂して俺に逆ギレしてきたりする先輩が好き。俺のこと適当に扱いながらも大切にしてくれる先輩が好き。俺のことを好きって言ってくれた先輩が好き。」
俺は片膝を立てて先輩に手を差し伸べた。王子様的なやつだ。そしてずっと、ずっと伝えたかった言葉を改めて言う。
「俺は蓬田凛華が好きです。付き合ってください。」
春の風に乗りその言葉は私の胸に届く。普段は生意気だけど、いざとなったら頼りになりまっすぐな人。そんなかっこよく、可愛い後輩なのだ。そして私は彼に抱きつき伝える。
「こちらこそ、よろしくね」
今回が初投稿ですが、僕にとってこの「小説」は2作品目です。自分の中でも読みたいと思う話を作りました。皆さんの中で好評なのか、酷評なのか。どこが良いのか、悪いのかをぜひ教えてください。
これからも不定期ですが投稿していくつもりなので、これからも楽しみにして読んでください!
読んでくれてありがとうございます!!