Opus.5 - No.4
「……つまり、敵が襲撃したのは、初めからSクラスの能力者たちが目的だったと?」
「ビンゴ〜!」
真玖目は嬉しそうに声を上げる。
「能力者は、どんな力であれ、我々の暮らしている世界に何かしらの影響を与える存在だ。その力は、微弱な風を起こしたり、体から熱を放出したり、扇風機やストーブ替わりになるような些細なものもあれば、目に見えるもの全てを圧し潰したり、切り刻んだりする殺人級の能力を持つ者も居る。Sクラスは、アビリティクラス『Savage』――規定によれば、『大人数、もしくは広範囲に渡って損害を与えられる程度の能力を有する者』に与えられる危険度で、定められた四つのレベル――『Ornament』『Savage』『Disaster』『Unkown』の中でも二番目に高い危険度を誇る。二番目だからと言って甘く見ちゃいけない。一番低いOクラスの最低能力者でさえ、殺人なんか赤子の手を捻るより簡単にできる。……となれば当然――」
「そんな強大な力を秘める彼らを、喉から手が出るほど欲しがる連中も出てくる、という訳ですか」
「ビンゴ~!」
真玖目は人差し指を立ててニヤリと笑う。
「この世から決してなくならないもの、それは戦争・紛争・抗争――耐えることのない暴力の渦が、常にこの世界には溢れている。この世界に初めて能力者の存在が確認されてから、能力者兵器転用論なんていう興味深い論文まで出てくる有様だ。能力者を自分の利益のために利用しようとする奴らが、この世界中には五万と居て、奴らは常にこの小さな孤島に目を付けているのさ。獰猛な肉食獣のようにね」
彼はそこまで言うと、襲撃者たちの攻撃により焼け落ちてしまったSクラス能力者居住棟へと目を向けた。如月は報告を続ける。
「……今回、襲撃されたSクラスの居住棟には、Sクラス内でも重要監視対象にされていた者が多く入居していたと把握しています。――というのも、他の能力者と違い、特段能力が格上であったりする訳ではないのですが、彼らの大半は――」
「精神に何かしらの異常をきたしている者だった」
真玖目の唐突な横やりに、如月は深く頷いた。
「使う能力の種類だとか、力の大きさだとか威力だとか、そんなことは些細な問題でしかない。――重要なのは、能力を駆使する者が何を考えているか、ということだ。Oクラスの能力者であれ、殺人鬼的思考を教え込めば、途端にそいつは通り魔に早変わりする。Dクラスの超危険能力保持者であれ、不殺生を教え込めば、蟻も殺せないベジタリアンに早変わりする」
「今回誘拐されたSクラス能力者たちが、敵側に洗脳を受けてしまう可能性がある、と?」
「あぁもちろん。そうしないと、能力者を兵器に転用できないからね。私ならそうするさ」
そう面白げに答える真玖目に向かって、如月は少し呆れたように溜め息を吐いた。
「真玖目指令は、あまり危機意識をお持ちでないようですね。我々の管理していたSクラスの子たちが誘拐され、何処に居るかもわからず、何をされるかも分からない状況であるというのに」
すると、真玖目は「おやおや?」とおどけてみせ、ニヤリと口角を上げて答える。
「如月君、君は私が危機感皆無の状態で、こうしてニヤけていると思っていたのかね?」
「……もしや、既に奪還の手立てを考えているというのですか?」
如月からの問い掛けに、真玖目はビッと人差し指を立てて声を上げた。
「ビンゴ~!」




