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船乗り募集

うちのお店はチェーン店で、普通に『一般人』の皆様を仲間として迎える

裏事業のことは知らなくても

人手がたくさんほしい部門が数えきれないほどあるからだ





だが選び抜かれた船乗りは違う





それこそ出世街道を争い合うエリートたちが切磋琢磨しあういばらの道なのだ


簡単に採用されるわけではない






まさか偶然そんな世界を知った俺が勝手にエントリーされてるなんて思ってもみなかったわけで、、、






ようやく慣れてきた出勤

いつものように厨房へ向かう


「おはようございま~~す。」

昼勤だろうが夜勤だろうが当たり前に言えるようになってきたのは

大人の通の世界に慣れてきた嗜みだろうな


なんでもない顔をしながら格好をつけて厨房へ入る






「う~~あ!  おあお~!」

この人以前にも増して退化してないか、、、



「安玉割さん、おはようございま~す」



フィジカル的には逆らってはいけない先輩なので後輩らしく挨拶をする

慣れてきたころに、ちょっとふざけて『ら行』が言えないことをおちょくってみたことがある





気が付いたら厨房が騒然とし、





みんなが 

「おーーいっ!!  戻ってこい!  戻ってこい!!

とにかく謝れ!  とにかく謝れ!」


の合唱だったことをうっすら覚えている

どうやら意識を失っていたらしい


その時に顔が少し変形したし、いくつか差し歯にもなった






そーやっておちょくって以来、

たまに安玉割さんが真顔で俺を観察してくることがある






真顔で、じっっっと、、、






なんだかよく覚えてないがそれ以来、この人と目が合うと体が震える。。。


慣れてなかった頃は 『え、なんで、、、震えるの、、、?』

一種の働かせすぎホリックだの、五月病かと思っていた







お皿洗いの単調な時間、、、

ホールにヘルプで急遽注文を取る金曜日、、、

ホールに行ったり、皿洗いをしたり、

忙しすぎて覚えてもいられないバイトの日々、、、




記憶にある限りではいつも悪ふざけで先輩を笑う

忙しすぎてハイになるのだ   皆だってそうだ

そういう「空間」を一緒に過ごすと逆に楽しくなってハイが加速する


そのあとになぜか記憶が抜け落ちる

抜け落ちた記憶が未だに回復しないせいか、いまだにおちょくりたい気持ちが芽生えてしまう


でもそんなことを繰り返すうちに、

いつの間にか前後の記憶がいつも失くなっていることに気づく、、、


そんな記憶の抜け落ちを『恐い』と感じるようになってから、








『先輩の顔を立てる』が身についてきた








ある日、安玉割さんが言う

「おうおろおろ、えんあついえんだなぁ~、、、 えっえっえっ

う~あ、 あんあえよ」

(もうそろそろ選抜会だなね。ふふふ。ゆーが、、、頑張れよ)




多分、えっえっえの部分は笑っていたのかな、、、ってなんとなくわかった

この人、相変わらず退化してんなぁ~

なんで前歯ないんだよ





、、、ふふ





そして意識を手放した


速ぇーよ  今のはフライングだろ








$$$$$$$$$$$$$$$$








たまに意識を飛ばすことにも慣れてきた頃に

店長の夜落としさんが言う


「ゆうがは見込みがあるからうちとしても今後も一緒に働いていきたい

一般入社でもいいけどゆうがにヤル気があるなら選抜試験を受けてみないか?」


いつも無精髭がチョロチョロと生え、

いつも気だるげ

だがなんだかんだいったってこの人の指揮、実力はすごい


そんな夜落としさんに褒められるとその気になってしまうというものだ









「お給料、高いよ?」









この一言だよね


慣れてきたとはいえ、こんな訳のわからない世界に慣れ、

さらにもう一歩おかしな世界に踏み込むかもしれないのにこの一言は強烈だ




「店長、自分受けてみたいと思います」




そして今、

異世界にある本社、『バース』にいる






$$$$$$$$$$$$$$$$






はじめは困惑だらけだった


「旅費はもちろん会社持ちですよね?」

「どの県?」

「自分で予約をとって現地に向かうの?」

「期間は何日間なの?」


初めての外泊でいろんな質問があったけどたった一言で黙らされた








「だまれ」


がんぎまり、  犯罪を犯すことに抵抗感のない眼力でパイセンが睨みつける


〇ロスゾ?








そのまんまの意味に反論が急速にしぼむ


わかりやすさに原点を置き、

なおかつたった漢字制度3文字だけで意思疎通を可能とする音程






「 だ、、、だまれ、、、  あえ?? 」






初めての思いに対し、すべてを吹き飛ばすこの一言で黙った




黙らされた




だって歴戦の先輩やパイセンがそういうんだもん

そうするしかない




凪折りさんが横から優しくフォローする








「明日起きたらわかるからさ、   だまれ」








、、、それだけで凪折りさんの優しさが伝わる

きっと明日目が覚めたらどうにかなっているんだろうな、、、

それだけ凪折りさんの言葉にはだまって納得させられるだけの重みがある





「凪折りさん!  明日!  俺!!  頑張ります!!!」




ほのかに感じてもらえただろうか。この想い。。。

恥ずかしいけど精いっぱいの自分の気持ちを凪折りさんに伝わるように気勢を吐く




きっと明日の朝には迎えがきたり、

何かしらの手配が大人の世界ではすでにされているんだろうなぁ~~~、、、

そう思いながら深夜25時、高ぶる気持ちがようやくまどろんで眠りについた、、、

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