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第2章  戻ってきた日常 ①

気が付くと病室にいる




誰かが用意してくれたテレビカードのおかげで

暇をつぶすことができている

暇な時間はテレビを見るぐらいしかやることがないのだ







液晶の中で、老若男女問わず大人気の『 ルーテー 』が言う


「 さすがにこんな激流の中で熱々ゆで卵を食べるのは無理じゃあ 笑 」



、、、笑  どうせやるんだろうが



これは病室で暇する俺だけじゃなく、全国民の40%近くがわかっていることである

わかっている結末だとしても、皆に笑顔を届けるのがルーテーだ

用意された流行りのキャストがルーテーを激流に落とす







「 お!  おい!?  がぼがぼっ  あ!  熱!  熱い!!


水の中でもゆで卵は熱々じゃあ!」


そのまま滝壺に消えていくルーテー

こんなむちゃぶりの娯楽コメディに付き合うお偉いさんってそうそういない




好きだ


くだらないけど、こんなメディアに全力で体を張るじいさん




こんなことやんなくてもいいご身分なくせに!  笑


ほんとに好きなじいさんだ






鉄人 ルーテー・ズ






『 政府直属 』  七英雄の1人  


戦前、1920年代から帰化し、我が国を裏に表に支えてきた鉄人だ

『 生まれた時からいた 』せいでそんなんまるで知らなかった


実直、 愚直、 昔かたぎ   人々から愛される要人系コメディアンだ









ルーテーに癒された後、カチャカチャ チャンネルを回す


暇だ、、、










一応あれから、



夜落とし店長や凪折りさん、苦手なパイセン、安頭割さん、、、

なんだかんだいろんな人が見舞いにきてくれる、、、

初めて入院したってこともあるけど、素直にうれしい

たかが職場の後輩ってだけなのに、ちらほら顔を出してくれるのだ

そりゃうれしくもなるってもんだ







俺はふと思ったことを聞いてみる

「 店長  俺っていつからここに入院してるんですか?」

にこにことしながらりんごの皮をむく店長


、、、手元を見ずに皮を上手にむけるってすごいなぁ


自分で料理を作ってみて、散々失敗してきたからこそわかることもある



店長が言う

「 今はゆっくり休みなって!」







$$$$$$$$$$$$$$$$$$$







翌朝、凪折りさんがきてくれた


「 ゆうがくん どう? 体の調子は 」


凪折りさんはいつものようにポカポカとした優しい笑顔で

布団をかけ直してくれる



口元までかぶった布団の中から、上目遣いで凪折りさんを見つめる

多分人生の中で1番母性本能をくすぐった自信がある



「 あ、最近は松葉杖を使ってリハビリが始まったところなんですよ

まさか自分が松葉杖を使う日がくるなんて思いもみませんでした!!


でもでも!   なんか初めての体験だらけで楽しいです!   えへへ 」


健気に頑張る後輩を全力でアピールする

俺が女ならとっくに落ちてる



落ぉちろ!  落ちろっ!!  落ちろぉぉお!!!













あ、 そういえば、、、


、、、ふと気になっていたことを聞いてみる





「  俺っていつからここに入院してるんですか?  」






、、、  流れる沈黙  にこにこしている凪折りさん






「 疲れてるでしょ? 

元気いっぱい休んで 元気いっぱい元気になろうね?」












あの時の激戦を ふと思い出す


、、、あの苦労を、 ほんっとに大変だったあの時のことを


寝起きから最後まで横っ腹を90発近く蹴られてきたあの時を、、、

射撃訓練場のペーパーだってあんなに撃たれねぇよ


陰湿で凄惨なあの時を思い出して涙ぐむ   ありがとう 凪折りさん

あまり眠たくもないけど気持ちを組んで寝たふりをする







、、、元気いっぱい休むはギリとして、元気いっぱい元気ってなんだよ







$$$$$$$$$$$$$$$$$$$







とある日、来ないだろうと思っていた苦手なパイセンが病室を訪れる



時折、1人空間になりたくてベッドの周りにあった簡易カーテンを閉めていた

そのカーテンが シャッ と無遠慮に開けられる



その辺のパイプ椅子を取ってガチャンと置くパイセン


「 はぁあああ、 お前の穴埋めのためにどんだけ苦労したと思ってんだよ!!

お前の代わりにっ!  俺もそうだしっ!

そのほかのやつらだってどんだけカバーしたか!!

そんでお前よぉ! 羊の体毛をめんどくさがって指定の場所に捨てなかったろ!

詰まった便所から出るわ出るわ  まじぶっ殺すぞっ!

お前はもう少し周りを見習って、、、」  ピーチクパーチク ピーチクパーチク


矢継ぎ早にあーだこーだキャンキャン文句を言ってくる 俺が何かを喋る暇もない

いつも通り苦手なパイセンだ、、、


基本的にチワワは四六時中吠える  あれは神様の組み込んだ遺伝子であり命令だ

キャンキャン吠えるしか能がないチワワに

脳みそ的上位ランカーな『 ヒト 』ならではの憐憫をチワワ脳に向ける


『 吠えろ  余を楽しませろ 』

圧倒的上位者からのオーダーを下す


ってかよぉ!  男同士ならわかるだろ!  勝手に入ってくんなよ!

もし俺が秘密のナニかをこっそりしてたらどうすんだよ! あぁん?!


過去に2度、  お母さんに見られた俺は慣れっこだ

だがおめーはどうだ?!  おめーはそうじゃねぇだろ!?

俺の秘密のナニかを見てどう感じんだよ!  気まずいだろーがよっ!

シャッ て無遠慮に開けなければよかったってなるだろがい!


これは俺なりの優しさだ   見られても気まずいし、見た側も気まずいんだ

あの時お母さんは『 うふふっ 』て笑って静かに襖を閉めた

あの時のことは忘れられない  絶対に


そうだ  ふと天啓が下りる

勝手に開けられないよう今度店長に洗濯バサミをお願いしよう

間違いない  絶対にこれだ  そう心に決める



でも、こんな俺のためにわざわざ来てくれたことがうれしい

ムカつく7、うれしい3ぐらいだけどな


ガサツな扱いに対してこんなに感謝する後輩を心から大事にしろよ?

なぁ、俺は間違ってるか?  パぁイセン? あぁん?

口元までかぶった布団の中から、上目遣いでパイセンを見つめる



言いたいことを言ってすっきりしたのか

チワワ面でいくつかごにゃごにゃほざいて帰っていくパイセン


キャンキャンうるさいチワワを黙らすのは非常に気持ちがいい








$$$$$$$$$$$$$$$$$$$








その日の午後、

安頭割さんが完全体のパイナップルを持ってお見舞いに来てくれた


やっぱり素直にうれしい



「 お、おえはおっ、

おえーは ぅえっあいに おうあう すうって しぃんいえあ(・・・・・・)

(俺はよ? お前は絶対に合格するって信じてた)


身長190cm  強烈な猫背で伸張 160cm 程度になってしまう安頭割さんが

真剣な眼差しでじっと俺を見て語り掛ける




しぃんいえあえ?(・・・・・・・)

信じてたぜ?




どっかでメシでも食ってきたのか

相棒不在の前歯のすき間からお米が プッ てシーツの上に転がる







うれしい、、、

うれしいけどさ、、、







俺のシーツで稲作を始めんな!

ササッとさりげなくお米を床にはらう


何やら良いことを言ってるようだがもはや耳に入らない

適当に感謝の意的な相槌を打って口元にばかり目がいってしまう


おめーの前世がトラクターなのはわかったよっ!

でもこんなキモい稲作は断固拒否だ!!












だが、ふと   、、、ふと気になっていたことを聞いてみる


「 あ、あの、 俺っていつからここに入院してるんですか? 」














何やらべらべらと喋っていた安頭割さんが急に黙る

部屋に飾られ 埃をかぶったフィギュアのように

ただ、じっ、、、と俺を見つめている



さすがに、不安になる    、、、強烈に不安になる



不安になって思ってもいないことを口走ってしまう



「 お、俺はいつまで寝てたんすか! 1年ですか?

10年ですか!?  俺が起きて何年たってんだよ!!  

いい加減教えろよ  このシンナー野郎!!  何年何月だよ!!

いつまでも通訳不要だと思うなよ!?

おめぇみたいなキモキャラ、読者がいつまでも優しいと思うなよ!?」



まさかドラマである『 起きたら数十年たってました 』ってことが

自分の身に起きるなんて思ってもみやしない


急いで『 鏡になりそうな 』ものを反射させて自分の顔を見る









ぎゃっ!! 









うぶ毛だらけのつながった眉毛を見て、思わずそれを地面に叩きつける


俺はこんなひどい顔じゃない!!!





急いで洗面器に水を溜めて覗き込む


、、、40代?  いや30代でもない  ??? むしろいつも通り??








その時、








皮のままのパイナップルを 

すぅーーーーっと頭上高く持ち上げてる安頭割さん


水面でゆらゆら揺れるパイナップルとそれを愛おしそうに掲げる猫背





なんか幻想的だ   まるで1枚の絵画





そしてその鈍器を俺の頭上に叩き降ろす








ズガっ!!







、、、







ぴーーーっ   ぴーーーーっ  ぴーーーーっ


規則的に正しく鳴る脈拍音計の音に目覚める




気が付くと、




看護師が


「 戻ってきた! 戻ってきた!」って騒いでいる





ぼーーっとする中、わかったことがある


多分、選抜試験は合格したんだなぁって

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