forfeit〜彼の行方は誰も知らない〜
この世界には、2つの異世界人を召喚する方法がある。
1つは、自身の魔力だけで行う方法。
もう1つは……、死体に転移者の心を呼ぶ方法だ。
真夏の海で、新着の水着を隠すようにパーカをきた格好の少女は元気よく体を動かす。
「業!何してるの?早く泳ごうよ!」
「いや、俺は……。優也が、いるだろ…せっかくあいつと来てんだから、綾乃はアイツと泳いでこいよ。俺は、1人で楽しんどくから。」
少女の元気の良さに対して、業は人混みに酔い気分が良くなかったし、砂浜が素足とサンダルの隙間に入ってくることが気持ち悪くて最悪の気分だった。
「せっかく、普段運動してないから心配して誘ったのに〜。」
綾乃は、業に少し拗ねたふりをしてみせた。
だが、業にとってそんな事どうでもいい。今は、2人と一緒に居たくなかったのだ。
なぜなら……
「じゃあ、行こう優也くん!」
「ああ。」
声をかけられて、後ろから歩いてきた優也は業の隣で立ち止まった。
「俺は、十分待ったからな。もう、待たないぞ…業。」
「ああ、そうかい。」
二人とも、目を合わせず前を向いたままだった。
勝手に言うだけ言って、綾乃の方へ行った優也を見て業は、小さくつぶやいた。
「別に待ってくれなんて言ってねぇよ……。ただ、一人になりてぇけど、なりたくねぇだけだよ。」
自分がいることで誰かの邪魔になるのは嫌だ。
自分が集団の中にいて、嫌な目に遭うのも嫌だ。
でも、1人で居るのは…1人でうづくまっているのは……もっと嫌だ。
そんな考え、誰かに言えるわけでも無く。
更には、ただただ自分の存在が大きいと思ってる様な考え方だから言ったところで馬鹿にされるだけ……と思い。
深い溜息をつきながら……業は、砂浜に座りこんだ。
「?」
業は、砂浜の上に座って海で遊ぶ二人を見ていると、海におかしな渦が見えた。
「ちょっと待て、あれヤバくないか?」
そう思い、業は優也と綾乃に声をかけた
「二人とも〜ちょっと海から離れろ〜!」
その声は二人には届かず、業は周りを見渡した。
多くの人が、渦に気づき海から上がる人が増え始めていた。
「面倒くせーなー!」
走って2人の元へ近づき、海に入った。
「二人とも、なんか海がやべぇ。早く上がるぞ」
業がそう呼びかけると、優也は周りを見渡し業の言っている事が本当なのか確かめた。
「みたいだな。」
そう言って、優也は砂浜の方へ向かった。
しかし綾乃は、肩まで海に浸かったまま動かなかかった。
不思議に思った業は、綾乃に近づいた。
「おい!何やってんだ早く逃げるぞ!」
「こっち見ないで!」
そう言うと綾乃は、業に背を向けた。
「どうしたんだよ!早くしないと渦が ー 」
その瞬間、知らないうちに近づいていた渦が業と綾乃をのを飲み込んだ。
勢い良く流れる水の中で目を開けた業は、綾乃を探した。
(いた!って!こいつ胸丸出しじゃねぇーか!)
業の驚いた顔に気づいた綾乃は、両手で胸を隠した。
こっち見ないでバカ!そう訴えるような顔で綾乃は、業を睨んだ。
何がともあれ、綾乃が直ぐに海から上がれなかった理由が分かった業は、考えを切り替えた。
(こいつだけでも助けねーと!)
幸い、海にできた渦と言っても。
某海賊の洋画のように船を巻き込む程では無かったため、息が切れない限り流されるだけなので業は、自分の今使える力を全てを綾乃が抜け出すために使った。
業が自分だけを助けようとしている事に気づかなかった綾乃は、業の力を借りて何とか渦を抜け出した。
そのまま、泳いである程度離れて海面に顔を出した綾乃は、業が居ないことに気づき、潜って渦の方を見ると、まだ流されている人影が見えた。
「なんで?行かなきゃ!」
焦りと恐怖で、判断力が鈍っていた綾乃が渦の方へ行こうとするとー。
「ダメだ!」
優也が、綾乃をひきとめたのだ。
「だって、業が!」
「もう無理だ、今行って飲まれたらおしまいだ!」
渦の中から綾乃が抜け出し泳いでいる時、渦は大きくなりながら、砂浜から遠ざかっていたのだ。
「業が!業があの渦の中にまだ居るんだよ!」
怯えた顔で、綾乃は優也に訴えた。
「もう、諦めろ!アイツの事だ!綾乃だけ助けて満足でもしたんだろ!クソ!」
優也は、業の性格から考えて反論し綾乃を納得させた。
その声は、綾乃だけでも助かってよかったと思ってしまった。自分への怒りも混ざっていた……。
「う……」
目を開けると眩しくて、最初はよく見えなかった。
「貴方、名前は?」
だけど、直ぐに女の人の声が聞こえた……。
今回、読んでいただいてありがとうございました。
初めてだったので、文におかしいところがあったりしたかもしれませんが、読んでいただきありがとうございました。