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九十三話


「それでラスティ、バルトの機体の変化はトツカによるものだとわかったが、性能はどうなんだ?」

「想定以上の出力が出るようになっているわ。量産機ではなく、ワンオフ機と言っても過言ではないわね!」


 ラスティがすこぶるご機嫌だ。

 戦闘に関しては藤平にやられたのでよくわからない。

 ただ、動きが良くなったのはバルトの想定するシミュレーションで分かっている。

 実際にそうなのかまではわからないけどさ。


「それでライラ教官、俺のクラスメイト達とはどれくらいで会えるのでしょうか?」

「うむ……一応、国が派遣させた地へ向かっているのだが、気流や危険な魔物の関係でな……合流は我慢してくれ、最前線との連絡は中々難しいのだ」


 ちなみにこの船旅の途中で何度かバルトに乗ったまま戦闘をしたっけ。

 一応、砲撃と翼による凝視攻撃で襲ってくる空中の魔物……ワイバーンを返り討ちにしたけれど、そこそこ苦戦した。

 しかも野生のドラゴンなんかとも遭遇しかねないって事で少し遠回りしているそうだ。

 無駄な戦闘どころか飛空挺が撃沈されたらたまったものではないって事だろう。


「ブー」


 お? この声は! 俺の心の友だ!


「ユキカズさん……ブルさんが来た事を喜んでいるのが魔獣兵に乗っているのにわかりますよ。表情が反映されてます」


 おや? 俺が乗っている魔獣兵の表情まで反映されているの?

 フィリンが呆れたように注意してくる。


「やれやれ……ライラ上級騎士様もなんで俺なんて強引に連れてきたのかねー」


 と、ブルとフィリンの後ろにいるのはライラ教官が城下町の警備をしていた所を引っ張って来た……40代手前の熟練兵士であるアサモルトと言う渋めの男性だ。

 最初の印象はだらしがない愛煙家の男性だったかな? ただ……ライラ教官に絞られてそこそこ腕に覚えがあるからこそ、俺はわかる。

 ふざけた様に見せているが動きに無駄がない人だ。

 で……なんかヒョウ柄っぽいフード付きのコートを着ている。


「抜かせ、私の目が黒いうちは怠けるくらいならこき使ってやる」

「おー……こりゃあ厳しいねーおっちゃんに何をさせようって言うのか」


 ヤレヤレと言った様子でライラ教官の言葉を受け流すアサモルト。

 このアサモルト……何を隠そう、ブルの後見人であるそうだ。

 なんとなくだけど……人間じゃないなこの人、いや……外見は人間なんだけどなんとなくブルを含めた亜人とか言われる人種に該当する様に感じる。


「ブー……」


 どのような経緯でアサモルトがブルの後見人をしているのかは、まだよくわかっていない。

 ただ、話によると城下町の見回りなんかを月夜の晩にブルに兵士の服を渡してさせたりしていたとかなんとか。

 その辺りまでは判明している。

 俺はこのアサモルトって男の事は測りかねている段階だ。

 ただ……ブルの後見人として兵士になれる様に手はずを整えてくれているので、悪い人ではないはずだ。


「んで、異世界の戦士様は専用の竜騎兵……じゃなくて魔獣兵に乗って分析中ってことか」


 俺は魔獣兵のコックピットコアを開いて降りる。

 あ、一応バルトが俺の肩に乗っている限りは浸蝕を多少は抑えられるそうだ。


「ローレシア隊所属、兎束雪一伍長です」


 レラリア国流の敬礼でアサモルトに自己紹介を行う。


「レラリア国所属、警備56隊、隊長のアサモルト伍長だ。随分と出世が早いな」

「そこはー……まあ」


 ライディング持ちは自然と階級を上げざるを得ないって話だしね。


「えっと、ブルにはとてもよくして貰っています」

「おう。そうらしいな」

「ブー!」


 ブルも肯定とばかりに鳴いて頷く。


「本当、ブルには助けられてばかりで、色々と目標にさせて頂いていますよ! で、アサモルトさんはブルの後見人をしていると言う事ですが、ブルの事をどれほど知っているのでしょうか! 知っていたら教えてほしいのですが!」


 おっと、立て続けに俺の知りたい事を聞いてしまった。

 だってブルって言葉がわからないからどんな風に育ったとか、何が目的なのか全然わからないんだ。

 事情を知っているなら是非とも知りたい。


「ギャウ!」


 バルトがここぞとばかりの甘噛みをしてくるが譲れん。


「どうしてそんなにブルトクレスの事に興味があるんだ?」

「ここは私も興味があるな。ブルトクレスに関して、アサモルト……いくつか質問して良いか?」


 ライラ教官が間に入る。


「このブルトクレスは私ですら間に入れず、高速で動きまわる異世界の戦士の本気の動きに追随する速度でトツカと共に戦っていた。普通の人……オークでもさすがにありえない力を持っている。何か知っているなら話せ」

「やれやれ……お上は何時も、必要な時だけ情報を求めるねぇ。下っ端は大変だ」

「はぐらかすな! 貴様……歩くしぐさで私がわからないと思ったか!」


 ああ、やっぱライラ教官も分かってるんだ。アサモルトの動きが熟練者のそれだって言うの。


「んで、お前も同じか?」


 ってライラ教官の話を置いて、アサモルトは俺に尋ねる。


「違いますよ。それはブルが性格イケメンだからに決まっているじゃないですか! 俺はブルの親友になりたいので、ブルを知りたいんですよ」

「ブー……」


 俺の返答にアサモルトはきょとんとした顔をした後、渋い顔をするブルの方を見て笑い始める。


「くっくっく……いやぁ。ブルトクレス、面白い奴と出会ったなぁお前」


 何かツボにでも入ったのか?


「ユキカズさんは相変わらずですよね。命の危険だって言うのに……」

「このノリに関しては私も馴れて来ているぞ」

「んじゃ、ブルトクレスみたいな奴が他に居たら? そいつが女だったらどうする?」


 アサモルトの質問に俺はふと、フィリンの方を見る。


「な、なんですか?」


 まあ、一応フィリンも性格良いよね。関わらなくても良いはずの俺に付き合ってくれているし。

 そうしてブルを見る。


「性格が良いなら友達になりたいですね。俺の故郷には朱に交わらば赤くなると言う言葉があるんですよ……男とか女とか関係なく、良い人と知り合って、俺も良い人になりたい」


 フィリンも色々と実家の方は面倒らしいし、俺が出来るなら力になりたい。

 ブルみたいな良い人が不遇な目に遭うのは、我慢できなくなってしまっている。

 咄嗟に誰かを助けられるような人と言うのは希少なのだ。


「何と言うか……貴様が言うと打算が混じって聞こえるな」

「友達コレクションでしたっけ?」

「なに? そんな事までコイツ言ってるのか!?」


 ライラ教官とフィリンが呆れた様に言うと、アサモルトは腹を押さえて笑い出す。


「友達は掛け替えのない宝物だぞ! 俺が親友になりたいと思う奴は少ないですよ! 俺は良い人の力になりたいんです」

「じゃあ、お前と同じ異世界の戦士共は親友じゃないのか? ヒノはどうなんだ?」

「えー……」


 ぶっちゃけると、心配ではあるけれど、友達コレクションに入れるかと言うと、無いなー。

 アイツら、正直性格良いかと言うと怪しい。


「貴様の基準はわかったからそれ以上言うな……全く、その様子じゃ先は長いだろう」

「ブルトクレス、お前すげえよ。お前の親父の上位互換だコイツ。性別関係ない部分が間違いなく上だ」

「ブ!? ブゥウウウ……」


 アサモルトがそう告げた直後、ブルは俺の顔を見てから今までで一番渋い顔をする。

 いや、だからなんで渋い訳?


「ブルの親父って女好きらしいって話の?」

「ブルさんが似てると言われると嫌がる方ですけど」


 フィリンがアサモルトに尋ねる。


「んー……まあ、ブルトクレスはどっちかと言うと母親似だろうな」

「ブルさんのお父さん……オークならわかりますね」

「ん? まあ、ブルトクレスとは話が出来ないからな。そこからか」


 おや? 何か違うのかな?


「ブルトクレスの親父ってのはな。まあ……良い女と付き合う事を好む奴だったのは間違いない」

「良い女って……」


 ライラ教官とフィリンが不愉快そうな顔をする。

 まあ、美女とかその辺りだよな。

 きっとブルの母親と言うのは人助けを平気で行う真面目な、女騎士みたいな人なんだろうってのは想像に容易い。


「美女……とか思うだろ? 違うんだよ。基準はコイツとおんなじ」


 で、何故か俺を指差して来た。


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