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九話


 翌日、薬草採取の仕事かと思ったけど、今度は栽培の仕事だったっけ。

 訓練校に隣接しているプラント……温室みたいな栽培用の場所で薬草の世話をさせられた。

 水遣りから害虫駆除までやり方をレクチャーされた。

 まだまだ知らない薬草から何まである。


「あ……」


 薬草の水遣りをしていたら女兵士とぶつかってしまった。

 多分、同期だと思う。

 手拭いを被ってマスクを付けた状態だけど相手が女性だって分かる。

 背丈と目から察するに俺と大して変わらないんじゃないだろうか?


「す、すみません」


 女兵士は俺達が寝起きしている訓練校の隣にある女用の寮で寝起きして仕事に準じている。

 プラントとか何かが無い限りは一緒になる事は無い。

 男女の区別はしっかりとしているんだなぁ。


「いえいえ、こちらこそ申し訳ないです」

「そこ! 何よそ見しているんだ!」


 やべ! 注意されちゃった!

 急いで作業に戻る。


 薬草は調合して薬にするけれど錬金術と魔法とかにも使われるそうだ。

 国の歴史と言うかプラントで薬草栽培の始まりの座学を教え込まれたっけ。


 辺りを確認すると訓練兵の内半分以上が興味ないって態度を見せている。

 俺は異世界の授業だから面白くはあるんだけど、彼等からすると当たり前の事だから興味が湧かないって事だろうか?

 あの魔法学校の映画の中に入ったみたいで楽しかったぞ?


 次の座学は魔物の解体方法の授業。男女合同で行われる。

 スリープラビットが運び込まれて一人一羽ずつ捌く実習をさせられる。

 先ほどぶつかった女性らしき人が俺達と同じ班に分けられる。


 一応挨拶をしてからゴクリと息を飲む。

 解体……かー……うん。そうだよね。生きるのに必要な技能だよね。


「あああ……」


 女性は青い顔をしながら支給された刃物で解体を行っていた。

 俺の方もやっていたけど失敗気味だったと思う。

 ブルは手慣れた様子でアッサリと捌いていたっけ。

 ちなみにこの捌いたスリープラビットの肉が今晩の飯となるのは食事の際に知った。


 残り時間は畑の世話。

 できる限り自給自足をさせる方針のようで、クワを両手に持って畑での仕事。

 

 先輩兵士に理不尽な命令をさせられたなぁ。

 みんな寝ようとしていたら謎の腕立て伏せを1時間とか、清掃作業……トイレはトラウマになりそうだった。臭いって意味で。

 ブルと二人でさせられてしばらく臭いが引っ付いた。

 割と本気で掃除技能とか覚えるか悩んだ。


 で……訓練校の裏手にはゴミの山が転がっている。

 折れた模擬剣とか錆びた鎧の残骸とか……。その中で大きな穴の開いた大鍋を発見。

 かなり錆びてる。


 何かの物語で読んだ記憶が蘇る。

 大鍋を風呂釜代わりに風呂に入る話を。

 水浴びだけで片付けるのはそろそろ限界と言うかゆっくりと風呂に浴びたい。


 二、三日掛け自由時間と就寝時間の暇な時に大鍋の補修を行った。

 まず大鍋の錆を落としたうえで、壊れて捨てられた鎧の程度の良い物を見繕い、先輩兵士に工具を貸してもらって、仕留めたエレキジェリーを接着剤代わりに使って穴を塞ぐ。

 武具のメンテナンスをさせられたからやり方は多少分かってきた。


 本格的な修理は就寝前に行った。

 ハンマーで何度も叩いたぜ。

 火とかを使わない応急修理でどこまでできたものか。


「ブル……今日はこっちこっち」

「ブー?」


 後はブルと一緒に修理した大鍋に水を入れて沸かす。

 火の扱いは俺もブルもできるしね。

 良い塩梅の温度になったので早速入ろうとブルを急かす。


「ブー……」

「どうしたの?」


 どうも微妙に遠慮するんだよな。ブルの奴。

 材木を薪にまで斧で割った功労者なのにさ。

 ……訓練校の窓の方からこっちを指差して笑っている奴等が居るけど気にしない。


「風呂嫌い?」

「ブ」


 頭と言うかなんて言うか鼻を横に振られる。


「遠慮するなっての、先入っていいから」

「ブー」


 割と遠慮がちのオークだよなブルって。

 物語のオークとかって邪悪な生き物ってイメージあったけど、実際は結構違うな。

 戦闘じゃ助けてもらっているし、お礼のつもりで先に風呂に入ってもらいたい。

 やがて俺の勧めを拒むのを諦めたのかブルは服を脱いで大鍋に浸かる。


「ブー……」


 お? 良いお湯なのか気持ちは良さそうだ。

 しかし……なんだろう。

 大鍋から顔を出すブルを見ていると豚骨スープという単語が頭を過る。

 良い感じに浸かったブルに支給された石鹸を泡立ててタワシで擦る。

 オークって肌が丈夫なんだろうなー……触った感じだとモチモチで柔らかいんだか……。


「ブ!」


 パンと手拭いを体にぶつけ(オヤジ臭い)をしてからブルは水を綺麗に拭き取ってから着替えた。

 それから水を補充して再度温め直しをしてくれた。


「じゃあ俺も」


 そんなわけで今度は俺の番。良い湯だった。

 俺が背中を洗ったお礼にとブルが代わりにしてくれる。

 結論で言えばブルの腕力の高さに背中の皮が剥げそうになったってところかな。

 臭いが取れて良い感じだった。

 後、大鍋の補修がそこそこ上手くいって良かった。


 こんな感じの日々が二週間……時に経験値と言うかLvが上がらない日もあったけど過ぎていった。




「訓練兵共喜べ! 明日は休日だ! 外出許可も下りるし金も少しばかり支給されるぞ! 存分に楽しむんだな!」 


 本来は一週間に一回休みの日があるんだけど、最初の一週間は外出と休暇をさせないのが恒例なんだとか。

 とりあえずつかの間の休みになんとなく安堵の感情が浮かんでくる。

 一日中ゆっくりしてるのも良いけど、この世界を知るって意味で出かけるのも良いかもしれない。

 精神的な疲れ以外は特に無いし……美味しい物を食べたい。

 どうしたらあんなに不味くて臭い飯が出来上がるのか実に不思議でしょうがない。


 というわけで休日。

 俺はその足で訓練校から近い最寄りの街へと先輩兵士たちと一緒に行った。



 おー……なんて言うか、ゲームとかで見た事のある町並みって言うのかな?

 城下町とはまた異なった趣があって良い。

 リアルな空気と風を肌に感じて若干の興奮を覚える。

 少量の駄賃を持って何をするかを考える。


 んー……訓練兵同士の談話や先輩兵士から教わった事を纏めると酒場で酒を飲みながら先輩冒険者とかと話をするのが良いらしい。

 どうしたものかな。

 とりあえず散歩をしてから考えよう。


「あ? そこにいるのは兎束じゃねえか」


 声に振りかえると自信に満ちた顔の藤平が俺を指差して近づいてくる。

 身なりが良くなってる?

 こう……動きやすそうなスケイルアーマーを着こんでいて腰には剣、背中には弓を背負っている。

 不機嫌な様子はない。


「藤平か」

「こんな所で何してんだ、お前」

「何って兵役を受けて休みの日に街に出てきただけだが」


 すると藤平はさも馬鹿にするような目付きになり、笑いを堪えている様子で腹に手を当てながら近くにあるカフェを指差す。


「ま、まあいいや。せっかくだしよ。そこで茶でも飲んでいこうぜ(俺の自慢話を聞け)」


 なんかルビに俺の自慢話を聞けって聞こえた。

 俺の気の所為か?

 それとも異世界言語理解が発動したんだろうか?

 藤平の言動は確かに異世界レベルだが……。


「貧乏なお前に俺が恵んでやるよ」


 まあ、駄賃程度の金しか無いからせっかくだし、奢ってもらうかな。

 二週間以上も同郷の奴等と話をしてないし、この際藤平でもいいか。


 で、藤平と一緒にカフェの椅子に腰かけて……藤平が受付の人にお茶を注文しに行った。

 確か……前払いだよな?


「んで兎束、調子はどうだ? 兵役ってどんなもん?」

「調子は特に……だな。兵役に関しちゃ多分、想像通りじゃないか? 地味にきつい。けど色々と勉強になるよ」


 まずはこの世界に慣れる事が必要だ。

 現にここ二週間で近隣に生える薬草の見分けが付いてきているし、傷薬の調合もできるようになった。

 スキルを取れば何かアシストされるみたいだけど、そんな物は無くても自力でできると兵役で学んだくらいだ。

 ここから更にスキルを習得すると、より効率よく調合ができるようになるんだそうだ。


 異世界の戦士としてがんばった方が色々とマンツーマンで教えてくれるのかもしれないけど、マイペースで生きてる。

 それもまた藤平なら理解してくれるだろ?

 俺は俺の生きたいように生きるって言っていたんだし。


「は、百聞は一見にしかずって言葉を知らねえのか? 甘い奴だぜ」


 理解しろよ。

 しょうがないか。藤平だもんな。

 自分以外のやり方は全部間違ったやり方なんだろう。


 お前はウゼー奴だぜ。

 お前が奢らなきゃ話なんてしないぜ。


 なんて上から構えた方が良さそうだ。

 そもそも調合とかは一見だろ。

 実際にやってるわけだし。

 何でもスキルに頼ると、何かしらの出来事で躓きそうでな。


 しかし、会わないうちはアイツ何しているかな?

 とか考えて、ちょっと会ってみたくなる気もするけど、実際に会うと話をしている事に後悔してきた。

 なんで俺はこんな分かり切った奴に付いてきてしまったのか。


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[気になる点] 壊れた鉄製品鋳潰して再利用しないの勿体ないと思ってしまうけど、文化差か
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