八十六話
「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「いちいち騒がしい奴だな」
藤平が投げ、掴んだ剣を向けて答える。
お前は本当、武器投げるの好きだな。
魔導兵に乗っても変わらないのか。
「どっちが操縦が上手いかこれでわかったんじゃないか?」
「ちげーよ! たまたま調子が悪かっただけで普段はお前よりも遥かに上なんだよ!」
なんだその小学生がゲームで負けた時の言い訳みたいな台詞は。
「先手を取ったからって調子に乗るな! しょうがねえ。お前ごときにこのシステムを使ってやるとは思いもしなかったぜ!」
っと、言うと藤平の魔導兵の各部からギュイイイイイイイイイ……って音が響きつつ機体が赤く光を放ち始める。
目に見える速度で藤平の乗った機体が素早く起き上がり、背中に付けていたパイルバンカーみたいな電撃槍を取りだした。
推測……オーバーブーストを施したと思われる。
性能が向上。
操縦ログから分析……行動予測調整完了。
「バルトの分析の精度が高くて助かるな」
お前だけでも藤平って倒せるんじゃない?
『ギャーウ』
めっちゃバルトがご機嫌だ。俺に褒められて嬉しいのかもしれない。
それと……大嫌いな藤平の悔しがる声が嬉しいとか。
……俺もそうだけど性格悪い気がする。
ペットは飼い主に似るって言うもんな。
ブル、フィリン……俺とバルトを浄化しておくれ。
二人の一挙一動が俺とバルトの心を綺麗にしてくれるんだ。
ああ……なんで俺は藤平なんかのしりぬぐいをしなくちゃいけないんだ?
日がな一日、みんなと一緒に楽しく冒険と善行して暮らしたい。
「これを受けて生きていられると思うなよ! うぉおおおおおおおおおおおおお!」
よく叫ぶ奴だ。
通信画面からガチャガチャと操縦桿をレバガチャしているみたいな音が響き渡る。
藤平搭乗の魔導兵は噴射剤を使って素早く俺に駆けより、盾の無い右側に素早く旋回して電撃槍で突こうとして来た。
うん。予測の範囲で多少速くなったにすぎない。
なので、右旋回した所で藤平の魔導兵のカメラアイに向かってシャインブレスをぶっ放す。
バシュっとシャインブレスが魔獣兵の口から放たれた。
「うわ! ぐ……」
至近距離にカメラアイ目掛けて放たれたシャインブレスで藤平の魔導兵は視界が染まり、闇雲に放った電撃槍は空を突く。
バッとサイドステップで回り込んで避ける。
もちろん、藤平の奴は魔獣兵の頭部じゃなくて操縦席にいる俺目掛けて電撃槍を放ってきた。
本気で殺す気でやってきてやがる。
つーか、バルトに完全予測されてるけど、藤平の奴、意表を突こうと妙な動きをしすぎだ。
正面から殴りかかって砲台でぶっ放せば良いって場面でも妙に回り込んで来る。
後ろや横からの攻撃をしたがる癖って奴だ。
それぞれの腕で鍔迫り合いに持って行き、動きを止めてターゲットをロックしてから大砲で撃つってのはバカに出来ない攻撃方法だぞ?
「まだだ! カメラがマヒした程度でやれると思うなよ! つーかめくらましってお前の武装雑魚過ぎだろ!」
って言いながら藤平の奴、何かしらのモードを切り替えたのか、こっちに攻撃を再開する。
それも予想の範囲内で避けられない攻撃じゃないな。
大きくバックステップして加速しながら切り上げを行う。
「めくらましに撃っただけだよ」
ガギィイイン! っと良い音がして電撃槍を弾く。
それから追撃のブレスをぶちかます。
バシュッと良い感じに命中して藤平の魔導兵は大きく吹っ飛ぶ。
「くっそ! 動きが悪ぃな! もっと反応速度を上げろよ! ポンコツ機体!」
うーん……なんか藤平を相手にゲームセンターで対戦ロボット格闘ゲームでボコボコにしている様に感じる。
ぶっちゃけ、ラルオンの方が遥かに腕前が上だろ。
「結構改造してこの程度かよ! くそ使えねぇな! こんな雑魚に苦戦してんじゃねえ!」
今度は機体の所為にし始めた。
「しょうがねえな! 雑魚相手にこれを見せるなんて思いもしなかったがやるか!」
そう言って……藤平の機体の光が強まる。
『全く……力に溺れた者の私欲に満ちた力の解放は見るに堪えないな。まあ、貴様との適合者ならしょうがないのかもしれん』
『そうだな……正直、ウンザリしてきた。それに引き換え貴様の適合者はしっかりと鍛錬をして結果を残す者だな』
『うむ。やや日常が単調であるが、人の世を見るには良い。兵士を真面目に取り組んでいるのはこれはこれで良いな』
『菓子が美味そうでな……仲間に居る我の眷属の一人が食っていたぞ。多少は味が分かって助かる』
『コイツは作ってもあんまり食わんからそれは羨ましいもんだ』
『最後の……お前は何時も美味しい所を持っていくな』
『フ……お前の方も時々面白いだろ?』
なんて声が聞こえてくる。
――divine beasts反応検知。危険、直ちに対応を推奨。
っと、表示された画面に浮かび上がる。
直後――藤平の機体が加速して即座に俺の目の前にまで接近していた。
「ユキカズさん!」
「何!? 速い! トツカ!」
フィリンとライラ教官からの声がスローに聞こえてきた。
ああ……こりゃあヤバイ。
「死にやがれ!」
ヤバイ! バルトの予測を超えた挙句、今までの数倍の速度の攻撃を操縦コア目掛けて放たれる。
藤平の事を舐めていた訳じゃないが、魔導兵が予測を超えた速度で来て対応に遅れた……。
く……どうする。
――操縦者の生命の危機を感知、fusionモード――適合反応、搭乗者からの蓄積divine beasts因子解放――unisonモードに移行……。
パーツ強制進化!
ホワイトパピー:グロウアップ エネルギー残量(満腹度) 浸蝕率蓄積エネルギー83%→73% ブレス弾数2
肉体装備
頭 試作試験型進化バイオモンスター。アンダーリザードビースト+2
体 量産型第四世代バイオドラゴン。ヴィーゼートカスタム
手 量産型第四世代バイオドラゴン。ヴィーゼート・レッドDカスタム
足 試作試験型進化バイオモンスター。アンダーティラノビースト+2
尻尾 試作試験型進化バイオモンスター。アンダーティラノビースト+2
翼 試作試験型進化バイオモンスター。フライアイズボールビースト+2
所持装備 魔導兵用三日月刀+3
竜騎兵用シールド
武装
チャージフレイムブレス
チャージシャインブレス
チャージスターブレス
クイックスピード
アイズウイング
スローイン
謎の表示で出た蓄積浸蝕率エネルギーという数字が8%から3%に低下し、装備が変化した。
しかも藤平の動きに多少追い付けるようになった気がする。
ドンと力強く尻尾で地面を叩いて勢いよく跳躍し、藤平の一撃を避ける。
「何!? これを避けるだと! だがまだだ!」
藤平がそのまま俺に向かって追撃の跳躍をしてくる。
何か無いか?
と武装に意識を向けるとバルトの援護があるお陰なのかアイズウイングと言う武装を選択される。
バサァっとオマケ程度にしか付けられていなかった魔獣兵の羽が大きく広がり軽く羽ばたいて藤平の追撃の軌道からそれつつ、翼から目玉が出来上がって熱線が放たれた。
「チッ!」
空中制御で防御をした藤平が熱線を受け止め、着地した所で俺も着地する。
「ユ、ユキカズさんの機体も光を纏っています。それにアレは一体……」
魔獣兵の変化に俺自身も驚きを隠せずにいる。
「てめぇ……何無駄に隠し事してんだよ。兵士の分際でよ」
お前が言うなって台詞を藤平の奴はかましている。
何回お前は本気になれば気が済むんだよ。後、兵士をバカにするな。
「バルト、これは何だ?」
unisonモード……操縦者に因子が確認された場合、浸蝕を抑え、搭乗中の蓄積浸蝕率を充電、有事の際に反映させて搭乗者の生存と延命を図る機体進化システム。
開発名・因子適応者用・試作第一世代バイオモンスター・ホワイトパピー:グロウアップ……個体認識名バルト=ズィーベンフィア
開発コンセプトはdivine beastsの因子を植え付けた者が乗る事を前提としたバイオモンスター。
って文字が浮かび上がった。





