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八十話

 おお……スゲー筋肉。

 普段の体型だとわからないけど、ブルならこれくらい筋肉があっても不思議じゃない。

 非常に男らしい。

 海外のヒーローとか格闘ゲームのキャラクターみたいだ。


「バウ」


 これか? って感じでブルが自身を指差したので俺が頷く。


「やっぱりブルだったのか。それって一体なんなんだ?」


 変身能力をブルが持っているなんて初耳だぞ。

 ニュッとブルはオーク姿に戻ると、俺に背を向けつつ尻尾を振り振りして指差した。

 ……そういやブルの尻尾ってふさふさの銀色だ。


「親の血で変身能力持っているとか?」

「ブー? ブー」


 若干小首を傾げつつブルが頷く。

 本人もよくわかってないって感じか?


「最初からオーク姿じゃなくて狼男姿でいれば良いのに」

「ブーブー」


 ブルは首を横に振っている。

 俺を指差した後、バルトを指差して武器を振うモーション。


「ブ」

「ギャウ?」


 で、バルトと握手。

 俺、バルト……握手。


「俺と出会った時は使えなくて、バルトと出会った頃には使える……Lvが上がったから使えるようになったって事か?」

「ブー!」


 どうやらそれっぽい。


「ダンジョンでも出来ればよかったんじゃないか?」


 強くなるのかは知らないけれど、覚えていたなら教えて欲しかったな。いや、いきなりぶっつけ本番でやるのは厳しい代物だったのかもしれないけどさ。

 するとブルは空を指差した後、俺が数字を尋ねる際の動きをして30を指差す。


「空? 30……Lv、違う?」


 違う違うとブルは頭を横に振る。

 うーん……こういう時に会話が出来ないのは不便だ。

 異世界言語理解も取得する際にどんな言葉がわかる様になるか薄らと表示されるのだけどオーク言語が無いので習得を躊躇っている。


「30……秒、お? 当たりじゃないけど違う? 30分?」

「ブー!」


 お? 正解みたいだ。

 それからブルは地面に円を描いた。

 かなり下手くそだけどこの世界独特の夜に浮かぶ不気味な月だとなんとなくわかる。


「月が出てないといけない」 

「ブー」

「でも今は昼間で月は見えないぞ?」

「ブー」


 そこからブルがポージングを取る。

 これは知っている。Lvアップって事か。


「月が出ている時に変身は出来た。Lvアップして昼間でも可能になっているけれど、制限時間は30分?」

「ブー!」


 どうやら正解の様だ。

 ダンジョン内だと月は見えなかったもんなぁ……なるほど、秘密の変身があったけれど使用できなかったって事なのね。

 なんで隠していたんだろうか?

 ブルがアドリブで震える動作をしている。

 反動が厳しいってことかもしれない。

 これもLvで解消したのかな?


「とにかく事情はわかった。じゃあこっちの事情も聞いてくれ」

「ブ?」


 俺はブル本人にこの国で話題になっている名を告げずに去って行く狼男の話をし、その調査の為にこうして探していた話をした。


「本来はブルと合流してから捜索をしようと思っていたんだがな……」


 まさか件の狼男がブルだったなんて誰が想像できるだろうか。


「もしかして名を告げずに去って行くのは俺が教えた、急いでその場を離れろって奴を守った結果か?」

「ブ!」


 頷かれてしまった。どうやら正解らしい。

 確かにオーク姿で助けるよりも安全になったのは間違いない。

 人助けをして余計な騒ぎを起こさない為に逃げていたら、謎のヒーローって事で人気になるとは……助けられた者達が正体はブルだって知って幻滅しないか不安だ。

 いや、幻滅する奴は無視していいか。

 だって! ブルは良い奴なんだし!

 オークだってだけで文句を言う奴とは関わる義理も無い。


「とりあえずフィリンと合流して話をしようか」

「ブー!」

「ギャウ」


 って事で俺はブルを連れてフィリンの元へと向かい合流した。

 それからフィリンに件の銀色の狼男がブルである事を説明するに至る。


「まさかブルさんだとは……ただ、あの子たちから事情を聞いて、ちょっと可能性はありました」

「何かあったの?」

「はい。あの子たちが助けてくれた狼男から飴を貰ったって言っていたじゃないですか」

「そう言えば言ってたね」


 俺が追いかける直前、少年が憧れの目で何か握っていた。


「その飴を見せて貰ったのですけど……ユキカズさんが私やブルさんに配った飴と同じだったんです」

「ブー……」


 ああ、ブルにあげた飴ね。つまりヒントは十分にあった訳か。

 ちなみに子供達なんだが、ブルを見て、助けてくれた狼男だなんて微塵も思っていないのか距離を取っている。

 オークは嫌われ物だものなー……。たぶん、教え込まれているんだろう。


「ここまで早く任務が終わるとは思いませんでしたけれど……じゃあセレナに報告に行きましょうか」

「うん」

「ブルさん。狼男姿が人気があるんですよ。みんなに好かれますね」

「ブー……」


 うーわ。なんかブルの奴、滅茶苦茶渋い顔をしてる。

 女性が苦手なのかな?


「安心しろブル。ブルの本能から何か間違いを犯したとしても、俺はブルを信じているし多少の援助は絶対にする。冒険者になれたらブルの子供の世話だって絶対にするから。その為に積立貯金もしてるぞ」


 巷で噂の性的なオークの話を俺も多少は聞いている。

 ブルが発情期が来ていない若いオークって認識で、間違いを犯して子供が出来てしまったとしてもその責任をある程度軽減出来る為にお金の工面はしていきたい。

 だって、それ以外は性格良い奴なんだ!


「ブウウ……」


 先ほどの非じゃない位、ブルの顔が更に渋くなってしまった。


「ユキカズさん。ブルさんは性的な話を嫌がりますよ。現にラスティさんの所でもそうだったじゃないですか」


 ああ、そういや父親似、繁殖キング、女コレクターが我慢できないワードだったっけ。

 父親がハーレム好きで、そう言った所から性的な問題が嫌いなのかもしれない。


「今日はブルの沢山の面を見る事が出来た良い日だ」

「逆にブルさんはユキカズさんに知りたくないし知られたくない事を突きつけられた日になっていると思います。勝手に積立貯金はやめた方が良いかと……」

「ブーブー!」


 ブルもフィリンの言葉に賛成か。バルトは俺の頭を抗議の甘噛みをしている。

 良いじゃないか。俺はブルの子供なら大切に出来る自信があるぞ。

 きっと良い子だ。

 なんて冗談をしながら俺達はセレナ様の所に行ってブルを紹介した。


「あ、あなたは!」


 狼男に変身したブルを連れて行くと、依頼人の女性たちは目を輝かせて、乙女の顔をして近づいて行く。


「バウ」

「あの節はありがとうございました! あなたに助けられて……私……」


 って様子で依頼人の女性たちは狼男姿のブルを直視できず顔を赤らめて見つめている。

 うーん……これが恋する乙女と言う奴か。

 ブルの方は困ったって様子で頭を掻いている。


「なんて素敵な筋肉なのかしら……」


 女性陣のセリフがおかしい様な気がしてきた。

 その合間に俺とフィリンがライラ教官とセレナ様に事情を説明した。


「まさかブルトクレスがあの屈強な狼男だと? 言われても信じられん……」

「もう見つけてくるなんて驚きですわね。ライラ。ですがブルトクレスさんはとても紳士的な方なのですわね」


 クスっとセレナ様は微笑ましく笑っている。


「ではどうしましょうか……」

「どうしましょうと言われましても……」

「とりあえずブルにはあの姿の時はその場を去らずに安全な所まで案内して良いと教えておきました」


 じゃないと噂がね。

 色々と一人歩きしてしまったのならしょうがないのですって感じ。


「その……どうか私と交際をして頂けないでしょうか!」

「あ、ずるい! 私こそ!」


 って感じで助けられた女性達が不穏な睨みあいを始めてしまい。ブルが両方を交互に見て困った表情を浮かべている。

 ちなみにブルは狼男姿になっても人の言葉を話せないらしい。

 狼男ってこの世界には普通に居るんだよね。種族的な感じで。

 ワーウルフだったかな。


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