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七十三話

「……アレがキラーヒュージブロブか」


 複数の目玉を所持した……SAN値が削られそうな気持ちの悪い大きなナメクジみたいなスライムが俺たちの行く先で動いている。

 通路が埋まっていて、壁にしか見えない。

 何か獲物が近くに居るのは分かっている様で、周囲に触手を生やして調べている様だ。

 あの触手に触れない様に子供は身を潜めているそうだが、見つかるのも時間の問題である……そうだ。

 ここまでの道中は藤平がいないお陰で随分と楽に移動出来た。

 近接のプロであるブルが居るお陰もあって余裕で戦闘が終わる。ブルの愛武器ヘルファイアは偉大だ。

 飛野も舌を巻いていた。で……飛野とフィリンは誘導組からは外れて貰い、子供たちの救出組になって貰った。

 最悪の事態を想定し、逃走経路には着火すると燃える油をまいてある。


「では……行くぞ」

「ええ」


 ライラ教官の声に頷いて、何時でも走れる準備を行う。

 異世界に来てから覚えた走り込みの実力を見せてくれる!


「ギャウ!」


 バルトもやる気だな。

 移動速度の関係でバルトが先制攻撃を行う予定だ。

 ブルは……まあ、お楽しみ。

 ライラ教官と合図を送り……よし!


「ギャウ!」


 バシュッとバルトがキラーヒュージブロブに向かってブレスを射出。

 キラーヒュージブロブにブレスが命中すると、無数にある目玉が俺達に一斉に向かう。


「こっちだ」

「―――!」


 ドバァ! っと想像とは異なる速度でキラーヒュージブロブが俺たち目掛けて突撃して来る。


「はっや! キラーブロブの比じゃない!」


 俺とライラ教官はキラーヒュージブロブから逃げ出し、頭の中で浮かぶ地図と照らし合わせつつ、先を飛ぶバルトの後を追いかける。


「――!」


 ゲ! 逃亡先にキラーブロブが出てきやがった!

 音を聞きつけてやってきたな!

 悠長に相手をしていたら追い付かれる!


「スターショット! よっと!」


 魔法で最小限のキラーブロブを吹き飛ばし、剣で切りとばしつつ進む。

 ライラ教官が俺より先に進んで行き、道を塞ぐキラーブロブを腰の入った斬撃で容易く斬り飛ばして行っている。

 頼りになるなぁ……。

 ふと後方を見ると、どう見ても距離が縮む速度でキラーヒュージブロブが俺たちに向かって来ている。

 もはや壁が迫ってきていると言っても過言じゃない!


「余所見をせずに行け! 捕まりたいのか!」

「ギャウ!」

「とんでもない!」


 全力疾走で俺とライラ教官、バルトが下水道内を爆走していく。

 正直空気が滅茶苦茶悪い。

 次の丁字路を左に曲がって……って所で丁字路の左に謎の壁が出来ていた。


「っキラーヒュージブロブの奴……分け身のキラーブロブで壁を作っているぞ!」


 ライラ教官が毒づく。


「アクセルエア!」


 ズバァっとライラ教官の腰が入った一撃に壁が大きくえぐれるが突破するのに少し足りない。


「フレイムウォール!」


 後方のキラーヒュージスライムの侵攻に合わせて撒いた油に着火させるため、ライラ教官が魔法を唱えて、ひるませる。

 よし! 俺もこの間にやるぞ!


「スローインダガー!」


 スターショットを合わせたスローインダガーをキラーブロブで作られた壁に投げつける。

 良い感じに突き刺さり貫通はしたのだけど、人が通り抜けるには足りない。


「ギャウ!」


 何故かここでバルトが俺の腕に絡みつき、口を開ける。

 う……魔力が減る感じがする。


「ギャウウウウウ」


 ボウ! っとバルトの口から長時間シャインブレスが放たれた。


「生体武器変態まで所持しているのか、そのドラゴンは」


 どうやらそう言った魔物の類が居るらしいライラ教官の話。

 ともかく、バルトのブレスのお陰でキラーブロブの壁が解けたのでそのまま突っ切る様に突き進む。


「――!」


 あぶなかった!

 後少し遅かったらキラーヒュージブロブに捕まっている所だった。

 と内心安堵しつつ走って行く。

 ええい! 無数に群がってくるキラーブロブが邪魔だ! バルトのブレスを薙ぎ払う様に放って一掃しながら進んで行く。


「フレイムウォール! ファイアボール! く……攻撃するその場で回復している。大元をぶち抜かないと効果は薄いか」


 定期的にライラ教官が足止めの魔法を唱えて攻撃してくれていた。

 このお陰で俺達はどうにか逃げられている。

 Lv30程度じゃ絶対に追い付かれるぞ!

 それくらいの速度で俺達は下水道内を走り続けていた。

 そうして……とある地点に到着。

 ブルがヘルファイアを持ったまま構えている。


「やってくださいブル先生!」

「ブー! ブー!」


 力溜めを行ったブルが俺のお願いを聞き入れて俺たちの後方に居るキラーヒュージブロブに向かってその強靭な力でヘルファイアを振りかぶる。


「――――ァ!?」


 ズバァっとライラ教官の咄嗟の一撃であるアクセルエアの切れ味の比じゃない火の軌跡がキラーヒュージブロブに刻まれた。

 キラーヒュージブロブもブルの積みに積んだ一撃を受けて悶絶したのか触手が滅茶苦茶に動き回る。


「おお……ブルトクレスの必殺技は魔導兵や竜騎兵に匹敵する代物だな」


 ライラ教官も感嘆の声を上げる。

 ジュワッとキラーヒュージブロブの一部が塩を掛けたナメクジの様に収縮したのがわかる。


「ギャウ!」


 追い打ちにチャージしたブレスをバルトがキラーヒュージブロブの傷の一番奥、深い所に向かって放つ。


「――ァアアア!?」


 なんか悲鳴が聞こえた。良い感じに急所にダメージが入った手応え。

 白兵戦でも結構良い感じにダメージ入るじゃん!

 なんて思ったのだけど、残った部分は乾燥した部分を押しのけて俺たちの元へと向かって来る。

 傷も粘土を練り直した様に戻ってしまった。

 心なしか速度が落ちたかな?


「ブー!」


 そのまま逃げる! ってばかりにブルも俺たちの後に続く。


「良い感じに消耗は出来ている! このまま目的地に誘導だ!」

「はい!」


 って感じで時々振り返りつつ、俺達は地道にキラーヒュージブロブを誘導した。

 途中で現れるキラーヒュージブロブが指示したらしき壁はライラ教官とブルの力技でどうにか突破!


「ゴール!」


 前のめりに水路から飛びだして俺達は目的地に到着し、そのまま横に転がる。

 ドバァっと飛び出す形でキラーヒュージブロブが俺たちの前方に飛びだした。

 うげ……20メートルくらいはある大きな液状生命体だったみたいだ。

 車は急には止まれない、どうにか回避は出来た形だ。


「おうおう! ライラ達YO! 随分と弱らせてくれてベリーグッド! 後はこっちに任せてYO!」


 全長4メートルのドラムカンみたいな胴体をした二足歩行の……ロボットとも言い難いゴーレム……魔導兵に乗ったラルオンが二本のアームのそれぞれに持っている武器……三日月刀でキラーヒュージブロブに突撃して思い切り斬りつけた。


「――ァ!?」


 更に背中に搭載した大砲から砲弾を射出……本当にロボットとしか言いようがないなぁ。

 砲弾がキラーヒュージブロブに命中すると赤く燃え上って破裂した。

 うん。粘液状だからわかる破裂の仕方だ。


「――!!」


 キラーヒュージブロブが膨れ上がって津波の様に魔導兵に乗ったラルオンに覆いかぶさらんとしている。

 同時に肉片が無数に飛んで来て、キラーブロブとして俺達にも襲ってきた。


「ギャウ!」

「観戦している暇は無い! トツカ上等兵! 行くぞ!」

「はい!」

「ブー!」


 後方に居る俺たちはラルオンの援護とばかりに各々魔法を放ちつつ、群がってくるキラーブロブ達を屠る。

 効果は低いが無いよりマシなはずだ。


「OH! しぶとい! まあ、ちょっと下がっているんだYO!」


 バックダッシュをしてキラーヒュージブロブの攻撃を避けたラルオンはすかさず斬りつけアクセルエアを放ってコアを露出させる。


「喰らえYO!」


 ガチャンとコア目掛けて砲弾を射出し、コアに命中。


「――ァアアア!?」


 うっそ……アレだけやったのにまだしぶとく動いている。

 どれだけ生命力の塊なんだよ。


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