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七話


 とりあえず習得したと思わしきスキルの実験に……図書室に来てみた。

 棚にある本に目を向ける。

 

 兵士の心得1


 お? 読めるようになってる。

 と言うか日本語に変わってるのか?

 これがスキルの効果なのかよくわからないけど、就寝時間までの時間つぶしに目を通してみよう。


 棚から本を取って読む。

 兵士に必要な基礎教育的な書物みたいだ。

 体力を引き上げるための鍛錬から剣術の授業等の戦闘訓練、薬草類の採取方法とか基礎的な講座が書かれている。

 下っ端の新人がやる雑務一覧って感じだな。

 そういや兵役の最初の二カ月はここで訓練兵として研修を行い、その後は新兵として地方の部隊で実技訓練って説明されたっけ。

 新兵に必要な事の全てを教えてくれるんだろう。

 なんて感じに本を読んでいたら就寝時間が近づいてきたのでベッドに戻る。


「ブ、ブ、ブ」


 ブルがベッドの脇で腕立て伏せをしていた。

 俺がターミナルに行く時にもしていたからずっとやっていたのではないだろうか?


「では訓練兵共! 寝ろ!」


 先輩兵士達の命令と共に部屋の明かりが消され、暗くなる。

 よく考えて見ると明かりはどうやって確保しているのだろうか?

 ランプっぽいけど、火とも蛍光灯とも異なる明かりだったなぁ。

 やはり魔力とかだろうか。

 しかし、寝ろとか、凄い命令だよな。

 そう思いながら疲れを癒そうと横になる。

 ぐっすりと眠れそうだ。


 ……


 …………


 ………………。


 なんか寝て起きてスッキリしたんだけど、まだ辺りが暗い。

 おかしいな、かなり寝た気がするんだが。超快眠した感じがする。

 ベッドの中でぐねぐねと寝がえりを打ち続ける。

 眠気が来ない。

 ヤバイな。興奮して全然寝付けなくなってしまったのかも。


「プー……ピュー……」


 下から微妙に可愛らしい寝息が聞こえてくる。

 暇なので覗きこんでみるとブルが鼻提灯を出して寝てる。

 これをファンシーと思わないのかこの世界の連中は……。

 さて……うん。暇すぎる。

 トイレに行くつもりでベッドから抜け出す。

 異世界故にこの辺りは……あんまり気にしないようにしないとね。


「ん? そこにいるのは」


 部屋から出ると見張りらしい先輩兵士が座っていた。


「トイレっす」


 とりあえず下っ端のつもりで返答する。


「そうか」

「後、寝付けないんで何か話をするか図書室で勉強してていいですか?」

「お前な……」


 あ、なんか呆れられてる。


「ま、そんなに余裕があるならマラソンでもしてるか?」

「それでも問題ないですね。できれば相方に罰が無い方向でお願いできないですか?」


 体力が有り余ってる挙句、暗くて暇すぎる。

 多少の疲労が得られるなら良い。

 筋肉痛どこ行った?

 スタミナ回復力向上の効果、凄過ぎる。


「良い心がけだ。じゃあ校庭を10周走ってこい! それでも同じ事が言えるなら図書室の使用を許可する」

「はーい」


 元気が有り余っているから良いか。

 ……やはりスタミナ回復力向上が影響してるのだろうか。

 とりあえず俺なりに、言われた通りに校庭を一人走っていた。

 やがて走り終わった頃、うつらうつらしている先輩兵士に近寄る。


「ん……終わったか?」

「はい」

「窓から見ていたが、お前、走るの遅いな……その割に体力はある。疲れないのか?」


 あのクソ不味い臭い飯の所為で寝付けないのかもとか考えていたけどさ。

 事実をしっかり説明しよう。


「えー……スタミナ回復力向上をそこそこ習得しちゃったんで」

「おま……ポイントを振る必要は無いって言われるスキルだぞ。バカじゃないのか?」


 必要無いスキルなのか。

 ゲーム的な意味で。

 こんな凄い効果なのに?


「ともかく、これが夜間図書室使用申請書だ。だが……休める時にしっかり休まんと体が持たんぞ」


 そうなんですけどねー……。

 疲れがね、無くなっちゃった挙句、眠気が飛んでるんですよ。


 とりあえず書き込んでっと、頭の中でこの世界の文字が日本語に翻訳されていく。

 日本語じゃない文字を書いている気がするけど、これは相手に合わせた変換だろうか?

 そんなわけで図書室に本を取りに行き、先輩の前で読んでいた途中の本を持ってきて読み始める。


 先輩は交代で見張りをしているようだ。

 読んでいたら交代人員がやってきて俺を見て呆れていた。


 次に来た先輩兵士はカードゲームが好きなようだ。

 俺が暇そうに本を読んでいるのを咎め、カードを広げ始めた。

 異世界のカードはまだよくわからんがウノに近いと思う。

 少しばかりルールを教わって勝負をしていたら気を良くしたのか笑顔になった。


 その合間に本は読み終わった。

 頭に叩き込まなきゃいけない物が結構ありそうと不安になりつつ適度に疲れたので本を図書室に戻して就寝した。

 それからしばらくして……。


「起床ー!」


 まだ日も出ていない時間帯に先輩兵士が新兵の寝ている部屋にやってきて怒鳴った。

 凄く大きな声だった。

 みんなめっちゃ眠そうな顔で飛び起きる。


「朝の訓練だ! お前等! 荷物を持って校庭20周しろ!」


 うわーお。こりゃあきつい。

 仮眠しただけで眠気が覚めていたところだからちょうどいいけど。

 俺と同じように回復しきった連中も居るのか割と軽快にマラソンは始まった。


 ……スキルって凄いなと感嘆の声しか出ない。

 あんなに地獄だった初日の出来事が割と序の口だったんだと思い知らされた。

 こう……辛いしきついんだけど、少し休むと疲れが飛ぶんだよ。

 小学生の頃みたいな元気っていうのかな? アレの凄い版。

 スタミナは長続きしないんだけど僅かに休むとそこそこ回復ってペースを繰り返してる。


 ヒーヒー言いながら20周を終えると朝の清掃、部屋もピカピカになるまで掃除させられた……その後やっとのことで朝食だ。

 めっちゃ硬いパンと変なスープを食わされた。

 その後は座学の時間だそうだ。


「まずお前等に教える事はレラリア国の軍事基礎、そして兵士としての心意気だ! 一人一人復唱!」


 って感じで、本気で異世界の軍隊に入ったんだなといった様子の国の訓辞を覚えさせられて復唱させられたよ。

 あ、ブルはブーしか言わない。

 方言なのかよくわからないけど先輩兵士も諦めてた。


 異世界言語理解ってのは俺みたいな日本人にしかないスキルのようだ。

 このスキルの技能を上げたらブルの言葉がわかるのかね?


 その後は兵士をするうえで習得すべきスキルの授業だった。

 このスキルはどんな効果があるー的な奴。


「スタミナ回復力向上……これは取る必要がないスキルである事を忘れるなー! ここで訓練をしていればポイントなしでもいずれは勝手に習得する」


 ターミナルで振り込まなくても自力で習得できるのもあるのかよ!

 自動習得条件とかわからないんですかね?


「はい」

「なんだ訓練兵トツカ」

「自動で習得できる条件は何でしょうか? この辺りはまだ勉学が足らなくて……」

「ふむ……良い質問だ。このスタミナ回復力向上は未習得の者がLv1を習得するのには個人差、種族差はあるが人間の場合Lvが20と三カ月の鍛錬で出ると言われている」


 ……そうですか。

 Lv1の俺からしたら習得するのはまだ先になりそうなものだったんだな。

 じゃあ取っても損は無い。

 今の俺には無理な話なので。


「ありがとうございます!」

「では続けるぞ。Lvが上がれば勝手に習得するしスタミナの回復速度は相応に上がっていく。しかも他に優秀なスキルが出る!」


 わかってるってーの!

 でも俺は今が疲れを取りたかったんだからしょうがないんだ。

 深呼吸をするだけで酸欠から立ち直るのが早くなるのは日本人からすると便利なんだぞ!

 なんて内心愚痴りつつ授業を受けた。


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