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六十四話


「ま……分別は明日になるでしょうね。余計な部分はこっちで別の処分するけど良いかしら?」

「どうぞ」

「はーい。んじゃ。また持ってきなさいよ」


 って感じで本日の竜騎兵作製作業は終了っと。

 ライラ隊長が今夜か明日辺りに監査をしていた事を暴露して、明日の朝辺りには訓練をする事になるだろう。

 それまでの間、俺達は各々の作業をする事になるか。


「ギャウ」


 バルトがここで俺の服の裾を噛んでコアのある部屋の方を見る。


「クッキー、次のお仕事時間まで搭乗訓練して行く?」

「うーん……」


 まあ、見張りの作業中に晩御飯は食えるし、やって行っても良いけれど……。


「あ、それなら私も観察させて貰って良いですか?」


 フィリンはラスティと一緒に俺の訓練内容の確認したいっぽい。


「ブーヒー」


 ブルは……先にギルドに戻るみたいだ。


「ギャウギャウ!」


 バルトは俺と遊んでほしいって感じで鳴いているし……今日はあんまり遊んでやれていないのも事実か。


「分かりました。じゃあやって行きます」

「はいはい」


 と言う訳で、次の仕事の時間近くまで俺はむき身のコアに搭乗し、バルトが用意したシミュレーションで搭乗訓練をする事にしたのだった。

 正直に言えば、娯楽が少ない異世界でこう言った体験型ゲームみたいなのが出来るのは中々に楽しい。

 訓練時間はあっという間に過ぎて行った。

 かなり遊んで疲れたはずなのに、疲れが無いのはなんでだろう。

 眠気も少し減っている気がする。


「ユキカズさんの駆動の癖からして、設計図にはこう修正したらどうでしょうか?」

「良いわねヒョロヒョロ。後、私のやりたい実験の為に完成品にバイオモンスター要素を組み込むと……」


 ってフィリンとラスティは各々俺の訓練の情報を参考に何やら話し合いをしている。

 非常に有意義な時間だったのだろうなぁ。


「ギャーウー」


 もっと遊ばないの? って感じでバルトが俺を見てくるが、時間なんだからしょうがないだろう。


「そろそろ次に行かないとな」

「ギャウ!」


 バルトの頭を撫でると、嬉しそうに俺に飛びついてくる。

 なんて言うかバルトはこうした遊びでも満足してくれるんだな。

 遊ばして貰っている様な気がするけれど、バルトが満足してくれるならそれも良いか。


「フィリンは……次の仕事は、ここでの勤務か」

「あ、はい。ラスティさんにそう命じられた形でギルドには許可を貰ってます」


 趣味と実益を兼ねた仕事が出来て良いね。

 ライラ教官も名采配なんじゃないかな?


「了解。じゃ俺は次の仕事に行ってくるよ」


 と言う訳で俺は見回りの仕事を請けにギルドへと戻った。

 先輩兵士と共にソルインの街を定められたルートを通って見張りを行う。

 兵士は夜間でも見回りをするんだよなぁ。

 他にも街の金持ちに依頼された建物の見回りなんかも仕事に混じっている。

 俺の場合は赴任してすぐなので、街に慣れるって感じで一区画の見張りだけだけど……。

 軽く見回りをして終わった。

 昼間に捕まえた暴漢の騒ぎで今日は若干静からしい。


「次の仕事は……ソルインの湖にある島の迷宮入口で見張りか……」


 こんな仕事があるんだな。

 ランプ片手に湖畔に行き、先輩兵士の案内で小舟に乗って向かう。


「こっちだ」

「湖に迷宮なんてあるんですね」

「ああ、冒険者共が鉱石とか魔石目当てによく来る。それに綺麗な水がこのダンジョンで採れるんだ」

「へー……」

「その水を使うと品質が上がるって事で色々とな。他にもウォータークリスタルって鉱石が貴族の装飾品につかわれたりする。ろ過にも使える便利な鉱石だ」


 ダンジョンってのは鉱物の産地だったりするんだ。


「後は……このダンジョンで出たら超ラッキーな装備にネプチューンシリーズが有名だな。出たら金持ちの冒険者が喜んで買ってくれるぞ」


 ああ、そうなんだ。


「ギャーウー」


 月明かりの中をバルトが飛んで俺に手を振っている。

 なので手を振り返す。


「……確かお前、パン屋に今日は派遣されていたよな」

「あー……はい。訓練校で菓子作りをして先輩とかに配っていたらなんか、菓子作りが経歴に乗っちゃったみたいで」

「なるほどな。今度食わせてくれよ」

「パン屋で働かされるので、食べたければ店に来てください」

「はは、融通は利かないか。酒の肴になる様なお菓子ってねえ?」


 この場合はクルトンとか作って渡せばいいのか?

 パンの耳を揚げた奴を砂糖じゃ無くて塩とかまぶしたら肴に出来そうだけど。


「んじゃ、今度残り物で適当に差しいれますよ」

「サンキュー」


 って感じで雑談をする。

 ダンジョンで、ネプチューンシリーズね……どんな代物なのか興味が湧くな。

 ライラ教官に聞いて今度、このダンジョンに入って良いか聞いてみるのも良いな。

 なお、他にもソルインの街にはダンジョンがあるそうだ。

 なんて雑談と言うか紹介を先輩兵士から聞いている内に島に到着、ダンジョンの入り口にある小屋で交代を行う。


「新しく赴任してきた奴を連れてきた」

「ああ、交代の時間か」

「ブー!」


 ここで交代しようと立ち上がった兵士のほかにブルがいて、声を掛けてきた。


「お? ブルもここか」

「ブ!」

「んじゃ、場所はしっかりと紹介したからお前ら、今夜はここで見張りをするんだぞ。勝手に入ろうとする奴は追い返せ」

「わかってますって、しっかりと冒険者カードの照合をするんですよね」

「そうだ。まあ……こんな時間にダンジョンに入ろうとする奴は間違いなく怪しい奴だし、来ないとは思うがな。むしろ出てくる奴の相手をしろ」

「はーい」


 と言う訳で俺はブルと一緒にダンジョン前で見張りの仕事を行う。

 槍を持ってダンジョンの前で二人で立ち仕事だ……正直、激しく暇。

 もちろん座ったりしても良いんだけどさ。

 何かあった際には即座に反応出来なきゃいけない。

 それと……時々、ダンジョン方向から魔物が出てくる。


「見張りってよくも悪くも見張りなんだな。ブル」

「ブー」


 ゼリーリザードと言う中型のトカゲが割と俊足でダンジョンの入り口から這って来たのを感知して先制攻撃で槍を投げつける。

 ドスっと良い感じに胴体に突き刺さって、ゼリーリザードは絶命した様だ。

 槍を引き抜いてゼリーリザードから魔石を採取。

 なんとも手慣れてきたなぁ。


「ギャウギャウ」


 ゼリーみたいに柔らかい魔物でバルトが皮を軽く引き裂いて身を食べ始める。

 ……名前の通りゼリーみたいだ。

 ふと、飛空挺の料理人から教わったレシピにゼリーがあったのを思い出した。

 この肉なら作れるかもしれない。

 肉を鍋に入れて焚火でじっくりと炙って肉を溶かして漉し……貰った余り物の干し果物を投入してしばらく混ぜた後、フィリンから教わった簡単な氷の魔法で冷やす。

 料理に使える程度に火と氷と水の魔法が出来るようになってしまった。

 やがて鍋の中身が固まったのを確認してひっくり返し、蓋に載せて持っていたシミターで三等分に切り分ける。


「完成! ゼリーリザード、フルーツ盛り!」


 じゃーんと……プルンプルンのゼリーが俺の目の前に完成していた。


 鑑定チェック!


 ゼリーリザード、フルーツ盛り(仮題)

 品質 新鮮 美味

 毒物 無し

 効果 空腹解消 知力一時向上 魔力回復(弱)


「ブー!」

「ギャーウー」


 夜食とばかりにブルとバルトが涎を垂らしている。

 であるが、同時に俺は内心膝をついている。

 なんでこんな代物が屋外で作れるようになっちゃってるわけ?

 いつの間に俺は菓子職人としての思考が働いてしまっているんだ!

 干し果物なんていつの間に携帯するようになった! 俺!


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