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五十七話

「ここが新たな赴任先かー……」


 今回俺たちが到着した町は、湖がある自然が豊富そうな町だ。

 整備はそこそこ行き届いているようだ。

 エミロヴィアや訓練校が如何に田舎町だったのかが分かる程度には文化レベルが高いのが分かる。

 大きな仕掛け時計のある綺麗な街並みだな。

 蒸気機関っぽい装置とかあるし、馬が引く馬車以外に自転車とかバイクっぽい乗り物まである。


「今回の赴任先はソルインと言う町だ。言うまでも無く大きな湖……ラフィア湖が観光地として有名だぞ。近隣には迷宮が点在していて冒険者で賑わっている。名物は……確か湖で獲れた魚だったはずだ」


 おー……観光地として非常に良さそうな場所ですね。

 とか答えたいけど、今日から俺達はここで働く訳だから、腑抜けた事は言えない。


「それじゃあ赴任先のギルドに挨拶に行け、私は内部監査をする為に正体を隠して行く」


 ああ、トーラビッヒを裁く際にやっていた、不正の現場を押さえる為の行動ですね。

 こう言った所でもやるのか……。


「それでトツカ上等兵とフィリン、それとブルトクレス。お前達に会わせる人物への手紙と地図だ。ギルドに報告し、荷物を置いたら向かってくれ」


 ライラ教官はそう言って俺達に手紙と地図を渡すとそのまま町中に消えてしまった。


「それじゃ行こうか」

「はい。なんか赴任された時の事を思い出しますね」

「あんまり良い思い出じゃないけどね」

「ブー」

「ギャウ」

「そうでしたね。今回は大丈夫だと思って行きましょうよ」

「うん」


 と言う訳で俺達はギルドに向かい。挨拶を行った。

 ソルインのギルドは……結構清潔そうなギルドだ。少なくともエミロヴィアみたいなボロボロじゃない。

 しっかりと清掃が行き届いているのが分かる。

 ただ……ソルインの街で気になったのは下水の匂いかな。

 排水溝が目立つ所に何個もあった。


「トツカ上等兵、ロイリズ上等兵、ブルトクレス上等兵、ソルインのギルドに着任致しました。確認を宜しくお願いします」


 手慣れた敬礼をしながらギルドの係に挨拶を行う。


「はい。話は通じて居ますね。こちらへ」


 って感じで受付の人がギルド内の職員区画へと案内してくれた。

 うん。エミロヴィアとは雲泥の差だね。

 表面上、数日は補充要員って事で派遣される形になっているっぽい。


「まずは荷物を降ろして貰う為、寝泊まりする部屋へと案内をしますよ」


 丁寧な様子で俺達はそれぞれの宿舎へと案内される。

 で、案内された部屋は……しっかりとベッドが二つに分けられた部屋だった。間取りもそこそこ広い。5畳くらいはある!

 おお! 今度こそ立派な部屋に案内されたぞ!

 兵士の扱いが今までで一番良いかもしれない。


「男性二人はこちらの部屋をお使いください」

「ブル! やったぜ! 広いぞ!」

「ブー!」

「ギャウ!」


 と言う所で俺たちの後ろに引っ付いていたバルトが鳴く。

 ああ……うん。良い子だけど三人部屋になりそうだ。

 添い寝大好き甘えん坊ドラゴンが一緒なんだよな。


「そちらの……えー……」

「あ、この子は許可を得て俺が飼育している子です」


 竜騎兵のコアって説明して良いんだっけ?

 ライラ教官から聞くのを忘れていた。

 後で聞いておこう。


「飼育している魔物は魔物舎とかで管理ですよね」


 馬とか足になる魔物カテゴリーの生き物はギルド内だと近隣にある魔物舎に預けたりする。


「ギャウ!」


 ここでバルトが拒否する! とばかりに俺の頭によじ登って甘噛みを始める。


「規則ではそうなりますねー……」


 ゴリゴリとバルトが抗議の甘噛みをやめない。

 案内をしてくれたギルド員の兵士がバルトにちょいちょいと指でちょっかいを仕掛ける。


「ギャウゥウウウ……」


 ここでバルト必殺震えるチワワ攻撃!


「う……」


 ズキューンと、ギルド員の兵士が胸を打ち抜かれた様に声を漏らす。

 その技は俺のだ! 真似をするんじゃない。


「気持ちは分かります。この子は行儀が良いんで、少しだけ様子を見てくれませんか?」


 フィリンの援護射撃が放たれる。


「しょ、しょうがないですね。一応、他の職員にも話を通しておきますが、部屋が汚れていたら魔物舎に行ってください」

「ギャウ!」


 わかったとばかりにバルトが笑顔で鳴いて応える。

 八重歯がチャームポイントとなっているね。

 くっそ……世渡りの上手な奴め。何処でそんな事を覚えた。

 ……飛空挺で覚えたんじゃないかと思える。

 貴族の子供達もせっかくの旅行って感じで親に甘えていたし、見て覚えたに違いない。


「では荷物を降ろした後、支店長への挨拶をお願いします」

「はい」


 ……まあ、ギルドの作りや職員の反応を見る限りだと問題の無い人だって事くらいは察せられる。

 一応俺達はライラ教官直属の一時補充要員って事らしいしね。

 無碍な態度をしたらどうなるかってのもあっちは分かるはず。

 あ、一応隠しているんだっけ?


「じゃあユキカズさん、ブルさん。私も荷物を置いてきますね」

「うん」

「ブー」


 って感じでフィリンはフィリンで別室に案内され、俺達は支店長とやらと挨拶を交わした。

 自己紹介とかは省略する。


「補充要員の兵士たちか、よくこの街、ソルインに着任してくれた。まだ慣れないと思うが、ぜひ勤勉に職務に励んでほしい」


 支店長は……真面目そうな40代くらいの男性だったなぁ。

 俺たちへの対応も問題は無い。職員を大切にしてるって印象がある。

 敬礼をして、卒なく着任報告を終える。

 たぶん、ライラ教官も内密に調査した範囲じゃ問題ないって感じで相手をするんじゃないかな?


「それで君たちに関してなのが……業務に関して明日から動いて貰いたい。まずはこのソルインに馴れてくれ。それに少しばかり話は来ている。ラスティ=ルモルト様のお屋敷に行くのだったな」


 お? ここは既に事前に話が来ているのか。


「はい。少々込み入った理由でこの子を見て貰う事になっております」


 俺の後ろにぴったりついているバルトを支店長に見せて答える。


「ああ……確かに、あの方が興味を持ちそうだ」


 なんか激しく同情の眼を俺に見せていません?


「ラスティ様は優秀な方で温和な方だ。だが、機嫌を損ねない様にしてくれ」


 ここは……敬礼で答えるべきかな?


「ハッ!」


 レラリア国兵士の敬礼で支店長の言葉に応じる。


「ではすぐに向かってくれ」

「承知しました!」


 って感じで俺が話をする形で支店長との挨拶を終えた。

 支店長の部屋から出て、深く息を吐いてからフィリンとブルの方を見る。


「着任のあいさつは終えられましたね。じゃあ次に行きましょうか」

「うん。そうしよう」

「ブ!」


 って感じでギルド内の建物を歩いて出て行く、あ……一応受付の方から出る感じ。

 そうしてソルインのギルド内の様子を見ると、確かに冒険者とかで賑わいを見せている様だ。

 他に、町人がギルドの受付に何かお願いをしている様子も見受けられる。

 エミロヴィアだとこんなやり取りは滅多になかったなぁ。

 いろんな意味で健全な町だと思えそう。

 って思いつつ、どんな仕事があるのか掲示板を通りがけに覗いてみる。


「下水道の掃除……スライムが大量発生してるから討伐してくれってのがあるね」

「みたいですね。確かソルインってスライムが多くて、スライム素材の養殖でも有名な場所なんですよ。大きな湖もありますし」


 へー……クラゲとかが多いみたいな場所って感じなのかな?

 もしかしたら非常食として配給されるレーションはここで養殖されたスライムが原料だったりするのかな?


「……下水道に生息するスライムが養殖って……お腹壊しそうだなぁ」

「湖の方じゃないのでたぶん、別種のスライムですよ。ありました。キラーブロブだそうです」


 キラーブロブね……なんか嫌な響きだな。


「あんまり報酬が良くないみたいですね……それなら近隣のダンジョンに行って魔石を取ってきた方が稼ぎになりそうです」


 あー……そう言う感じか。

 他にも賞金首の張り紙が貼られている。

 イラストだけど、キラーヒュージブロブって張り出されている。

 やっぱりちょっと値段が低めだ。

 あ、キラーブロブは魔法ないし属性攻撃推奨って書かれている。物理攻撃に耐性持ちって事みたいだ。

 地味に面倒な相手だな。火炎瓶とか消耗品を使えば良いだろうけれど、下水道だから息とか出来なくなりそうだし。


「縄張り意識が強い性質を持っているだけで下水道からは出てこないから放置され気味の様ですね。唯一の難点は異臭を放っているって事みたいですが……」


 放置されがちの魔物討伐か……この辺りが兵士の俺たちの仕事になりそうな予感がするなぁ。

 まあいいや。今は依頼よりもライラ教官に言われた人に会いに行かないとね。

 って感じで俺達は掲示板を横切り、ギルドから出て地図を頼りに町から少しばかり離れた小山にある……なんか大きな屋敷っぽい建物へと向かったのだった。


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