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五十五話

 俺がしっかりと把握したのを確認したドラゴンが、ドラゴン形態に戻って俺の胸に引っ付く。


「バルト=ズィーベンフィア。だとさ」

「バルトですか。遺物で見つかる竜騎兵のコアネームでよく聞きますね。ズィーベンフィアはおそらく製造番号……たぶん、74だったかと思います」

「試作74号機って事かな?」

「ギャウ!」

「ただ……かなり若い製造番号だと思います。第一世代だとすると、竜騎兵の基礎となったナンバーかも」


 いやいや、そこまでなの?


「試作1号機とかが一番じゃない? そこから比べるとかなり遠そうだけど」

「さすがに1号機がまともに動くはず無いじゃないですか。実戦を想定するならもっと数が増えますって」

「トツカ上等兵。フィリンにこの話題を振ると日が暮れるぞ。いい加減、訓練の時間を超過しかねんのだが?」


 ここでライラ教官のストップが入る。

 ただ、フィリンの目がこれでもかってくらい、ドラゴン……バルトに注がれている。


「まー……後でフィリンの話は聞くとしてお前はバルトって言うんだな。これからよろしくな」

「ギャウ!」

「後、人には絶対に迷惑をかけるなよ?」

「ギャウ!」


 分かったとばかりにバルトは頷く。

 本当に分かってくれているのかね……なんて感じで竜騎兵のコア(可変式)であるバルトを俺がペットとして飼う事になったのだった。


 バルトは確かに良い子と言うか聞きわけの良い子なのは間違いない。

 俺たちが訓練を受けている時も少し離れた所で横になってあくびなどをしながら俺たちの稽古を見守っていたし、調理作業をしている俺を遠目で見ているだけで皆の作業の邪魔は絶対にしない。

 むしろ配膳なんかを自発的に手伝おうとまでしてくれる始末で、キッチン班には喜ばれていた。

 バルトが俺の後を付いて陽気に歩く様は飛空挺の乗客達の注目を集めていた。


「わー! 何これ? 小さいドラゴン?」

「可愛いー」

「ギャーウ?」


 自然と子供とかが集まってバルトをペタペタと撫でても特に威嚇とか抵抗もせずに遊び相手になってくれている様で、親には微笑ましい目で見られている。

 飛空挺のマスコットになってるな。

 これで喋り出したら一人称がオイラとか言いそう。


「ギャーウ!」

「キャハハ!」


 とまあ、子供たちは若干退屈していた空の旅で楽しいお友達を手に入れて遊んでいた。

 ちなみにバルトが欲しいと駄々をこねた子供とかが親に泣きついて親が俺に金を積んで譲ってほしいとお願いしてきたけれど、ここはライラ教官に間に入ってもらってどうにかしてもらった。

 国の物だからバルトは譲れないで通してくれたっけ。

 で、ライラ教官はバルトを欲しがる子供に屈んで視線を合わせて微笑む。


「バルトがそんなに可愛くて欲しいんだな。気持ちはわかる。だがな……バルトだって好きな飼い主がいて、それがここなだけなんだ。自分ならもっと幸せにできると思うかもしれないが、幸せと言うのは人それぞれ変わる。あまり我がままを言ってお母さんやお父さんを困らせるんじゃないぞ?」


 なんとも意外な説得を子供に行っていた。


「船に乗っている間は自由に遊んでやってほしい。私からのお願いだ」

「ギャーウ」


 バルトもアドリブなのか、ライラ教官と俺にすり寄る動作をして、ごめんなさいと謝罪するように子供相手に頭を下げていた。

 そんな動作をされては子供の方も引かずにはいられずに諦めてくれる子が大半だった。

 まあ……さすがに育ちの良い貴族の子が乗る事が多い客船である訳だ。

 一部、とんでもない子供とか親が居たみたいだけど、さすがにその手の客はライラ教官の顔を知らないはずは無いので、子供の方が叱られる事になっていたけどさ。

 なんとも凄いね。

 それと、どこの世の中でも可愛らしいは正義なのかもしれない。


「バルトに人気あるならブルも人気が出てもいいと思うんだけどなー」

「ギャウ!」

「ブ!?」


 裏の休憩室でバルトの人気に関して愚痴を言ったらバルトがブルを睨む。

 ブルの方はバルトに睨まれて妙な声を上げている。


「ユキカズさんはブルさんの方が可愛いと思っているってことですか?」

「いや、ブルもバルトも同じように可愛らしい所があると思わない?」


 可愛らしい豚で尻尾がふさふさのアクセントを持つブル。

 無邪気さが売りの小さなドラゴンであるバルト。

 どっちもマスコット枠として十分だと思うんだ。


「ブー」


 ブルがなんか微妙に眉を寄せて俺を見てる。


「ブルさんは可愛らしいって言われても嬉しくないんじゃないかと」

「ブウ!」


 あ、ブルが頷いている。


「俺はブルもバルトに負けてないって言いたいだけ。偏見が邪魔をしているだけなんだよ。だって考えてみてよ。ブルがバルトみたいに無邪気に子供たちと一緒に居る光景を」


 混ざっても何の不思議も無いと俺は思える。


「確かにブルさんはオークの中じゃ親しみやすい種だとは思いますけど、それでもちょっと怖いと思いますよ」


 うーん。これは異世界人独自の感覚なのかな?

 少なくとも俺はブルがファンシーカテゴリーに所属していると感じている。


「ギャウウウウ」


 バルトがこれでもかと俺に頭をこすりつけて遊んでほしいとばかりにじゃれてくる。


「ああはいはい」


 よく跳ねるボールを作ってポイッと投げて取らせる遊びを行う。

 投擲修練を取得している俺の投げるボールを取るのは中々に難しいぞ。

 いろんな所にバウンドするから目で追うのも中々大変なはずだ。


「ギャウ!」


 パシッと上手く掴んでバルトが俺のもとに戻ってくる。


「よしよし!」


 なんか馴れてきたな。

 一緒に寝る時も同じベッドで添い寝しないといけないけれど、飛空挺の旅も順調だ。


「今日は大分ゆっくりできているなぁ」


 ただ……こう、客室対応と厨房の下ごしらえ、掃除をやらされて自然と睡眠時間が減ってしまっているけどさ。

 昨日なんて俺のスケジュールを確認したライラ教官に船員が呼び出されてしかられていた。

 なんか俺のあだ名がワーカーホリック発生装置とか囁かれているが、別に俺が好きでやってんじゃない!

 船内の縦社会が問題なんだよ。


「ライラ教官がユキカズさんが船内構造の改革に一役買っているって言ってましたね。ちょっと羨ましいです」


 なので今は休憩室で休まされている。


「大変なのは変わらないよ?」

「ブー」

「ユキカズさん。私達の中で一番早く出世しそうですね」

「どうだろうね?」


 ライラ教官の直属の部下だからこの辺りは変わらないかも。

 ちなみに俺達はずっと飛空挺の船内に居る訳じゃ無く、着陸した際の近くの街での仕事とかもやっている。

 まあ……武器屋のメンテナンス作業手伝いとか酒場での皿洗いとか、街の見張りの手伝いとかもさせられている。

 知らない街に何度か立ち寄ったなぁ。

 確かに落ち着く暇は無いかもしれない。

 あ、ここでこの前チェックしたターミナルでのステータスを確認し直そう。



 兎束 雪一 Lv61 侵食率 35.32%


 所持スキル 異世界言語理解1 異世界文字理解3 No:Lチャージ No:Lドライブ HP回復力向上1 スタミナ回復力向上4 秘孔 投擲修練7 マルチアイ7 採取補正4 ファイアマスタリー5 トラップマスタリー3 回避向上4 鑑定 調合2 兵士流菓子調理技能(中伝) 兵士流清掃術(初伝) アーマーマスタリー6 ライディング3 モンスターテイミング5 モンスター解析4 魔法加護


 ※ステータス補正スキル 腕力アップ8 敏捷アップ9 体力アップ6 スタミナアップ7 命中アップ8


 スキルポイント20



 兵士流菓子調理技能(中伝)

 なんか非常に気になる技能をスキルポイントを消費することなく取得してしまった。しかもこれは成長を続けてしまっている。

 清掃術も同じだ。いや、こっちは訓練校でいずれ覚えると言われていた奴だけどさ。

 菓子作りは俺の目指す所とは絶対に違う所に至ってきている。

 激しく悔しい気もするけれど、確かに菓子作りの腕前が上がった自覚はある。

 今じゃぼんやりと材料を見てどんなお菓子が作れるか頭に浮かんでくるようになってしまったし。

 飛空挺の仕事をしているうちにどれだけ腕前が上がってしまうのだろうか?


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[一言] グランでブルーなファンタジーのマスコット化するの?
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