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三百九十三話


「なー言えよー」

「おっさんの戯れ言は無視してさ、早めにクラスのみんなを元に戻したくなってきた」

「戻すのは良いけど今後の戦いとかを考えて後回しとか考え無いのか?」

「まあ……強さが大幅に下がるけどさ出し惜しみするのってどうなんだ? ブルやエミールはどう思う?」

「ブー……」

「未来が分かれば良いと思うけど分からないから悩むんだな」

「ブ! ブブ!」

「ブルはみんなをすぐに戻して良いって感じみたいだな」

「ブー!」

「なーなーいい加減言えよ」


 チラチラと何故か健人に視線を向けているアサモルトがしつこく聞いてくるのを無視してブルやバルト、エミールを相手にこれまでの戦いとか、早くクラスメイトの皆を元に戻したいと今後の事を話す。


「さすがに溜まるもんも溜まるだろー? ブルトクレスもいい年になってんのに相変わらずなんだぜ? 最近じゃ白銀の狼男様ファンクラブなんて代物まで出来てんだからよ」

「なんだと! ブルトクレス、なんでそんなお前はモテんだよ。俺が頭下げて良い女と仲良くなってんのによ!」


 健人は恩着せがましいのが問題なんだろ。


「すごいなブル。どこぞの節操無しの狼男とは完全に逆じゃないか……気を付けないとブルのファンクラブの連中が間違いかねないか?」

「俺も銀色の狼男だぜ? 据え膳を食わねえなら頂いちまうぞー」

「ブー!」


 ブルが躊躇無く健人の腹を蹴り飛ばす。


「うぐ……俺は諦めねえ!」


 ファンクラブの連中を健人がパックンちょされる危険性が出て来たぞ。

 やばい。健人の矯正か監禁をしなければいかんか。

 ワン・アジン辺りに密告をお願いするのも良いかもしれない。今はチャンネルの接続が出来てるから健人の視点が見えるはず。


『そんな見張りに関して報告される方の身になってほしいのだが……長兄、やる気を見せるな。落ち着けーー』


 最後の神獣からも声が聞こえてくるし、現実的か。

 ワン・アジンが興奮しすぎて宥めに入ってるようだ。


「無視するんじゃねえよー良いからこの経験豊富なおじさんが相談に乗ってやるぜ? 下手だと恥を掻くぜ? だから今まで出会った年上の経験済みの女性で良いって人を言えよー」

「しつこいなアサモルトも……」


 怠け者で、この手の猥談をしてくるって典型的な無能上司だぞお前……。

 いい加減話さないと止めないって態度だから嫌だけど答えてやるしかないのか?

 ったく……と思いつつ考える。

 ムーイは除外、フィリンは……ってやっぱりなんでフィリンなのかは疑問だけどそれも除外。他に身近な女性って考えるとあんまり居ないんだけど……姫様も除外、良いなと思った年上のか。

 ライラ教官はそこまで年上じゃないから除外かな? なんか縁が無さそうだからこその信頼感あるし。


「む……無性にトツカを叱りたくなってきた」

「MEへの説教も程々にして欲しいYO……」


 と、同時刻にライラ教官は殺意を抱いたそうだ。ラルオンは何かしでかして怒られていた。


 となると年上の女性で考えて……話したいし見ていたい人だと。


「良いなと思ったのはドーティスさんとルセトさんかなー、見返りを求めない真面目な働き者って感じだし」

「ブヒ!?」

「な、てめえ! 俺の女を抱きたいとか何抜かしてんだ! ドーティスは俺のもんだコラァ! やっぱルセトに色目を向けてやがったんだなぁ! リイもやらねえぞ!」


 ブルが驚きの声を上げ、健人が怒鳴る。

 何疑ってんだよ。リイも俺にそんな感情持ってないだろ。


「こいつがしつこいから言われた条件で答えただけだろうが!」

「フハハハ」


 で、当人のアサモルトがゲラゲラと笑っている。


「いやぁ、その顔が見たかったぜケント! 俺の姉さんを奪ったからにはなぁ! お前も奪われるかもしれないって恐怖をやっとわかったか。フハハハ! 俺は上位互換様に期待してるぜぇ? おれぁよ、おめーが暴れる度に脅威となる奴が現われないか待ちわびてたんだよ!」

「てめ……このシスコンがぁ、復讐のつもりかコラァ!」

「歪んだ復讐心だな……」


 飛野がため息をしている。


「兎束もよりによってブルの母さんの名前を言うのはどうなんだよ。ルセトって人もどんなのか知らないけどさ」

「いや、年上の熟知した人に教わるならってしつこくて。知ってる人で良いなと思った人とするならってさ。ルセトさんってのも健人の犠牲者、超真面目で祝いの席で困ってる人が居ないか密かに見回りするような人」


 思えば満更でもないって態度で聞かれたっけ、生け贄にって。


「確かに兎束が気に入りそうだな」

「ブブ」

「ギャウ」


 ブルが警戒気味なまなざしをしてバルトがため息をしている。さっきの俺に対する目つきが消し飛んでるのはなんで?

 失言だった気はするけど、アサモルトの奴、これを俺に言わせたかったってのは間違いない。


「フハハハ、あんまりフラフラしてると上位互換様に寝取られちまうぞぉおおお」

「たぶん、これってアサモルト也の牽制なんじゃないか? ブルのファンクラブも安泰かもな」


 健人に聞こえない様に手で押さえ、小声で飛野が説明してくれる。

 ああ、なるほどね。

 ブルの手伝いとして健人を挑発してると……まあ、あまりにも女癖がひどすぎてドーティスさんが泣いてたりしたら俺も慰めたくなってしまうと思う。

 まあ、ブルが魅力的だからしょうがないよね。


「なーフィリンー」


 そんな男性陣の卑猥な会話から離れた所でムーイがフィリンに声を掛けている。


「な、なんですかムーイ、さん」


 フィリンもフレンドリーなムーイの様子にちょっと押され気味だ。


「フィリンはユキカズの事好きだよなー?」

「え……えっと」


 フィリンが反応に困ってるじゃないか、ムーイもなんでそんな念を押した確認をしてるんだ?


「ムーイ、ユキカズ大好きだぞーでもフィリンの方が先に好きそうだから確認だぞー」


 いや、あのなムーイ? そんな剛速球でフィリンに何を話してる訳?


「ああ……あの予感はこれだったのかもしれないですね」


 非常に困ったと言った様子で顔を赤くしているフィリンが俺に視線を向けた後、目を瞑って開いたかと思うとムーイをしっかりと見つめる。

 これはフィリンがムーイに説教する流れかな?

 あんまりムーイに説教って効果が薄いと思うんだけどね。

 いや、フィリンは俺の事を友達って思ってるだけなので人にそんな詰問するみたいに好き嫌いを聞くのはどうかとか注意する流れになりそう。

 というかギスギスした女のやりとり……は無いと祈りたい。

 健人がそう言った問題が起こってるように見えないのはある意味、羨ましいんだけどね。

 最初からいろんな女と関係持ってます、それでも貴方は魅力的ですね! って前提で声を掛けてるし、相手の女性も独占欲が少なめの人を選んでいるのかも知れないけど。


「あの、フィリン。ムーイはまだ勉強中で感情の機微には疎くてーー」

「そうですね。どうもユキカズさん達異世界の戦士達を悪用した騒動で活躍した私はペンケミストルの親から縁談が嫌って程来てまして、やりたい事の妨害にまで発展され掛かっているんです」


 ん? ああ、フィリンは王女だし、あの戦いに関わった英雄って扱いならそういうのあり得るよね。

 縁談すごいんだ……大変だなぁ。


「原隊復帰をユキカズさんがして下さるなら婚約関係にあるとし、してくれるなら私も縁談が来ないように出来るので、ひ、非常に助かりますよ」


 なんか最後の方、ちょっと声が弱くて顔が赤いんだけど大丈夫?


「おー」


 ムーイは何かわかったみたいに頷いてる。

 よく分かって無いだろ。

 だけどムーイはトントンとフィリンの背中を優しく叩いているように見える。


「わかったぞーならフィリンが先だなーでもあんまり待たせないで欲しいぞームーイの勉強が終わるまでにお願いするぞ」

「……」


 なんなの? フィリンとムーイにしか分からない何かがあるっぽいんだけどさ。


「ブー」


 で、何故か俺の後ろでブルが今まで見た事無い、なんかゲスっぽい顔をしてるんだけど?


「あ、ブル。発情期? フィリンが好きなの?」


 それはそれで良いんじゃ無いの? 俺が矢面になるからブルとフィリンが交際、結婚するなら祝うよ?


「ブウウウ、ハァアアアア……」


 ブルがそこで深呼吸からの超デカため息になった。

 いや、どうしたんだよ。


「これはすさまじい。剛速球以外、全く理解出来てないな。大変だ」

「ギャウ」

「ふへへ」


 飛野もなんかため息してるしバルトもあきれ果てた顔をしてる。

 健人、なんだ? お前にフィリンは絶対にやらん。ブルなら許可するが。


「ははは、そっちはそっちでしょうがねえけど、上位互換様には熟女達にレクチャーをして貰う事を考えねえとなぁ」


 で、何やら姉を寝取られた事で脳を破壊されて復讐に燃えるアザラシ男の方はどうしたもんか。

 怠けてんのもそれが理由なんじゃないのか?

 健人も罪深いな。

 とりあえず……アサモルトに乗っかる訳じゃ無いけど、脅しは掛けておかないとダメかな。

 藤平に調子に乗られた時の事がふっと脳裏を過ぎるが、あいつの真似をするのが良いかもしれない。


「これ以上、妻子を泣かすようなことをしたら……お前の妻をお前から奪うからな。ふへへへ……」


 できる限りの殺気と威圧を掛け、キリッとと言うか邪悪そうな顔で健人を脅してやった。

 女をこれ以上増やしたら承知しねえってね。


「く……この野郎! 急いで帰るぞ! 早くしねえと奪われる!」


 よし、健人に脅しが決まったぞ。


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