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三百九十一話


「なーユキカズーもしかしてケント、ユキカズがブルの事を話している時に全部いなかったんじゃないかー?」


 今までの事を思い出す……そういや健人は俺がブルの映像を映す時や語る現場に必ずいなかった気がする。

 知ってるとばかり思ってたぞ!


「確かにブルの問題ある行方知れずの父親の特徴だけを羅列していくと健人に行きつくんだけど致命的に歯車が合わない所があるんだ。健人は異世界の戦士にだったのを10年前だって言ったんだぞ。健人、鯖を読んでたのか?」

「んな事嘘言ってどうすんだよ! 10年と少しだ!」

「やれやれ……ここまで言い切るとはねぇ……何か齟齬があるんじゃないかなぁ?」


 アサモルトがため息をしながらニヤニヤと健人へと告げる。


「ブルさんのお父さんは10年と言ってますが……、えーっとケントさん。ブルさんを子供と認識してましたが幾つだと思ってますか?」

「ああ? そりゃあ9歳……って所じゃねえの? ずいぶんと発育が良いが、オークだからなぁ」


 健人がブルの年齢を間違えてる?


「……ユキカズさん。ユキカズさんが行方知れずになってからどれくらい経ったと認識してますか?」

「え? そりゃあ……半年行ったら良い方くらいかな?」


 しばらくは細かく数えるのをしていたんだけど途中から命がけだったり爆睡したりしてて曖昧になってしまったんだよね。


「1年3か月です」

「え?」

「ユキカズさんが行方知れずになって1年3か月経ってます。ブルさん、22歳にこの前なったそうですよ?」

「え……いやいや、さすがにそこまで時間は経ってないでしょ」


 いくら細かい日数を言えなかったとしても1年以上経っているはずはない。

 密度は果てしなかったけど、そこまでは過ぎてない自覚はある。


「いいや? 間違いないぞ兎束。兵役期間だけだともう俺の方が過ぎたなーって思ったし」


 飛野も当然のような顔をして言った。

 ええ……KIA扱いかMIAなのかわかんないけど俺、一応兵士としては先だよね?


「と言うか気づくの遅れたけど飛野、兵士服着てるな」

「ああ、あれから、色々と思って兵士になったんだよ」


 そうかー飛野も兵士になったのか。

 1年3か月となると折り返し地点越えてるから冒険者までもう少しじゃないか。

 フィリンももうすぐ兵役満了の時期じゃないかな?


「なるほど……おそらく、ユキカズさん達の居た世界と私たちの世界とでは時間の流れが違った……と言う所でしょうね」

「その辺りが無難な所だろうねぇ……なーるほど、ずいぶんと変わった世界に居たもんだ。探しても見つからない訳だ」


 アサモルトが転がっている健人を見下げるように言い切る。


「つまりブルトクレスの親父さんは20年近く、行方知れずだったという事だなぁ……いやぁ酷いもんだ」

「な、なんだと?」


 健人の方も唖然とした様子でブルとアサモルトを見ている。

 くそ……俺にも問題が飛んできたじゃないか。

 とんでもない時間が過ぎてしまっている。

 あの神の野郎……ピクリとも言わなかったじゃないか。

 今頃、茫然とする俺たちを見てゲラゲラ笑ってるんじゃないか?


『笑ってる』

『笑ってる』

『してやったり、気づいてよかったね! って爆笑してる』


 神獣たちの告発が俺の頭の中に聞こえてきた。

 あの野郎……。

 なんでそんな時間経過を遅らせてんだ。どうせ何か理由があるくらいは想像できるけど。

 例えば敵の侵入を避けられるとか、ダンジョン内の空間がねじれているように時間経過も一定じゃないとか。

 座学で似たような話を聞いたことはあるけど、ここまで時間が歪んでるのは稀だろ。

 ともかくこれで合わない年齢の問題も噛みあった結果、ブルのやばい父親は健人と判明した訳か。


「という事はブルの故郷の村は健人の言ってた村と同じか……」


 くっそ、行ってみたいと思ってた所じゃないか。


「そんな訳でぇ……ブルトクレスは父親がこれ以上、女を作ってこねえように兵役をして冒険者になろうとしてたんだけどよぉ。どうなんだよ上位互換様よ」


 アサモルトは相変わらず俺の事を上位互換呼ばわりしやがるな。

 チラッとレルフィやリイ辺りに目を向けている。勘が良いな。

 俺は若干怯えと言うか不安そうな顔をしているブルに顔を向けて目を瞑って横に振る。


「あっちの世界で良い女コレクションってやらかしてたよ。話は通してあるから徐々にこっちに来るかもしれない」


 健人の子供だろうって子、孤児院でもそこそこ居たもんなぁ。


「ブ、ブヒイ!」


 怒りの形相でブルは健人を蹴り飛ばす。


「うげ! や、やめろコラァアア! 俺が何をしたー!?」


 やらかしてるだろ。各地でボコボコと!

 やはり洗脳魔眼を長期間照射して真人間にしなくてはいけないか。


「去勢が必要だな」

「へ! 俺の再生力を馬鹿にするなよ? 抜かれたって生えてくるぜ。俺の体がタフだったから聖獣相手に重傷で生き残ったんだぞ。あの時、玉も吹っ飛んだけど生えてきたんだ」

『ボコボコした際に吹っ飛ばした手応えはあった』


 どんな自慢だ。

 ヴァイリオも心当たりあるのかよ。


「トツカ……ブルトクレスとその親に関する話はこれで良いか?」


 ライラ教官が悩ましいとばかりに額に手を当ててため息交じりに俺に聞いてくる。


「まあ、わかりました。で、俺に関してですが……魔物化した後、あっちで色々と進化して、カテゴリーでは神獣に属する事を認められたと言いますか、最後の神獣と入れ替わりでこっちに帰されました」

「過程を飛ばしてサラッと話すな! 本当、貴様はその辺りは相変わらずだな」


 えー? だって俺の概要を説明するとそれで良いじゃん。

 あんまり細かく話すと寄生って所で気色悪がられると思う。あっちの世界じゃみんな受け入れられて困ったんだけどね。


「ユキカズ、まずは自己紹介が良いと思うぞー」

「まあ、まずは紹介しないとライラ教官もどう処理したら良いかわからなくなるもんね。とりあえず来訪した側から話すのが良いかな」

「おーという訳でムーイだぞー種族は迷宮種、本当の名前はムーイ=ムーフリス。ユキカズの仲間たちはとある事で色々と知ってるけど今はこれくらいにするぞ」


 ムーイはそう言った後、ラウを抱き上げる。


「この子はラウ、ムーイとユキカズがお世話している子でオウルエンスって種族なんだぞ」

「きゅーよろしくお願いしますっきゅー」


 なんとも楽しそうに自己紹介するね。ムーイ。


「次はエミールが良いんじゃないかー」

「わ、わかったんだな。こほん」


 エミールが軽く咳をして前に……出て前に周囲を見渡す。

 で、なぜかブルと視線が合うとエミールとブルとでハッと何かあるような顔を両方している?


「なんだな」

「ブー」


 それから俺をチラッと両方見た後、なぜか軽く抱擁を交わす。

 いや、ここでなんで抱擁?


「なるほど、なんとなくどういう意味なのか分かりますね」

「被害者か」


 フィリンとライラ教官が揃って理解をしたように頷いてる。

 ブルに抱擁って良いなーエミールーでも良い人同士が仲良くなれそうでよかったー。


「原因も間の抜けた顔をしている」

「変わりませんねこの人」


 ライラ教官とフィリンもしっかりと説明してほしいんだけどなぁ。

 と思っているとエミールがブルと軽い抱擁をした所で緊張が抜けたのか自己紹介をした。


「オデの名前はエミールなんだな。迷宮種でエミロヴィアって名前なんだな。ユキカズの兄貴に色々と助けて貰って一緒に居るんだな」


 って感じにみんな自己紹介を各々終えた。


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