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三百九十話


「おう! こんな姿になっちまったけどお前の親友、兎束雪一が戻ったぞ!」


 しっかりと自己主張しないとね。


「ユキカズさんが帰って来たって本当ですか!?」


 と、なんとフィリンまで話を聞きつけてきた。

 何なの? 何か任務でみんなここに集まってたのかな?


「あ、フィリン。ただいま、最後に会った時よりも大人びてるね」

「え?」


 記憶の中のフィリンはちょっと幼い所があったけど、そのフィリンより少しだけ大人びた顔つきになってる気がした。


「それよりもブル、健人の事を知ってるみたいだけどどういう事なんだ? なんで先制攻撃をしてんだよ」

「ブ、ブブブ!」


 は! そうだった! とばかりにブルは我に返るように拳を強く握りしめ、ボキボキと音を立てながら健人へとじりじりと距離を測っている。


「おいブルトクレス、その態度はなんだ! いてえじゃねえか!」

「ブブブー!」


 絶対に逃がさんとばかりにブルが尻尾を振りながら声を上げている。

 どういう事なんだろうか?

 健人もそれ所じゃねえみたいだし、説明しろコラ!


「それより……ユキカズさん? 相変わらず皆さんとの再会なのにブルさんを優先するんですか?」


 と、フィリンが俺の行動を指摘してきたのだけど、そこにムーイがサッと間に入って満面の笑みを浮かべる。


「フィリンだな。ユキカズから色々と聞いてるぞーすごく良い人で可愛い子だってームーイの名前はムーイ! よろしくなー」


 ムーイはフィリンに自己紹介をして握手を求めている。

 フィリンはと言うと親し気な声を掛けてきたムーイにどう返事をしたらいいか困惑そうな顔をしている。


「え、あ……はい。よろしくお願いします。フィリン=ロイリズです」

「あ、名字も必要だったな。ムーイ=ムーフリスだぞー」

「ムーフリス……」

「うん。こっちのダンジョンと同じだぞーで、この子はラウだぞー」

「よろしくっきゅー、まだ言葉を覚えきれないけどこれで良いっきゅ?」


 こっちの世界に戻る前の時間で俺はムーイやラウにこちらの言語をラルオンと一緒に教えたので日常会話くらいは覚えて貰えている。

 まあ、ムーイは俺の言葉を覚えているのでレラリア国の言語は完全習得してるんだけどね。

 ムーイのテンションに押されつつ、フィリンはムーイから俺へと視線を向ける。

 ヤッホー、俺ってわかる……訳ないか。俺の姿を見てもピンと来てないし。


「本当にトツカかどうか真偽を確かめている最中だ」


 ライラ教官がそんな俺たちの様子をフィリンに説明している。


「ギャウウウ」


 っと、バルトは情報交換が終わったのか戻って来て俺に引っ付いてきた。

 今の俺って小型形態だから小竜バルトと同じサイズなのでそのまま持ち上げる事すらされてしまいかねない。


「ギャウギャウ」

「本当だYO! いろんな困難乗り越えて、ME達は帰ってきたんDAZE!」


 チェキラ! っとラルオンが太鼓判を打った所で、フィリンは確信したような顔をしてくれた。


「やっと……帰って来てくださったのですね。それで……なんでブルさんがその方を相手に拳を握って隙を窺っているのでしょうか?」

「よくわからん。健人、いい加減教えろよ。ブルとお前はどんな関係なんだよ」


 ワン・アジンはハーレム野郎は健人だけだって言ってたけどブルの年齢からして健人とは合わないだろ。

 少なくともブルの年齢は20歳だったはずだぞ。

 あれから……どれくらい経ったっけ? 半年行ったらいい方くらいだよな?


「どんな関係って俺の最初の息子に決まってんだろ。ガキが軍服来て何してんだ」

「……は?」


 いやいや、年齢が合わないだろ。

 確か健人って異世界の戦士になって十年って言ってたじゃないか。

 ブルの年齢と件の異世界の戦士は20年以上前って話で。


「お? 噂を聞いて来てみればマジでいるじゃねえかよ良い女ハーレム野郎が」


 ぞろぞろと、アサモルトが煙草を手に持ちながらやって来て健人を見て普段のひょうひょうとした顔で言い切った。


「ブルトクレス。待望の親父とご対面だ。絶対に逃がすんじゃねえぞ」

「ブヒ!」


 コクリとブルはアサモルトの言葉に頷いた。

 ふむ……なるほど……。


「とりあえず健人は動けない様に捕縛しておくのがこの場を収めるのに良さそうだ。レルフィやリイ。健人を庇わないように」

「なんかよくわかんないけどわかったわ」

「承知しました」


 と、健人の近くで待機していたレルフィとリイは被害が飛び火しない様に待機して貰う。


「なんでだよ! つーかてめぇ……アサモルトか? ずいぶんと老けちまってやがるな。親父に似てるじゃねえかよ」

「うるせえ。神妙にお縄に付きやがれこの風来坊、ここが年貢の納め時だ」

「ブブ!」

「俺も助太刀するぞ」


 ブルの敵は俺の敵。健人、ここで袂を分かつことになるとはな。


「チッ! 気を付けろ! そいつはいろんな生き物に寄生する化け物だぞ! 早く引っぺがさないと大変な事になるぞ」


 健人が事もあろうに俺を指さして叫びやがった。


「誤解を招くような真似を言うのをやめろ!」

「んー? ユキカズに寄生して貰ったお陰で助かったぞー?」

「キュー?」


 ムーイとラウが首を傾げてるけど、今はそういう状況じゃないの!


「良いから大人しく捕まれ健人ー!」

「何なんだよ! 俺が何をしたってんだー!?」

「まったく……帰って来たと思ったら騒がしい奴だお前は……」


 ライラ教官の額に青筋が浮かんでいるのが非常に印象的だった。

 って形で俺たちは健人を捕縛した。

 現在、健人は縄で縛られ拘束される形になる。

 とにかく、状況の整理が必要だという事で再度整列して各々椅子に腰かけて話をすることになったぞ。

 ああ、健人は例外でブルの足元で簀巻き状態で転がされている。


「とりあえずターミナルとバルトを通した事で貴様がトツカである事はどうやら証明された」


 ライラ教官が指揮を取って話を纏めてくれるっぽい。

 いやぁ助かるね。


「と言う訳で兎束伍長、ただいまを持って復帰致しました!」


 レラリア国式の敬礼をしてみんなに挨拶をする。

 あ、もちろん証拠とばかりにこれまで持ってたレラリア国の兵士の服を差し出したよ。

 これでしっかりと身分証明完了だね。


「ギャウ」


 バルトがなんかため息をしてる。何だよ。

 やっぱお前、ボディと性格違わないか?


「えーっとユキカズさんなんですね。ずいぶんと姿が変わってしまいましたが……とはいえ、ヒノさんや他の異世界の戦士の方々を考えると不思議ではありませんが」

「なんで異形化するはずが魔物化して自我を失わずに済んだんだ?」

「そこは、神獣の創造主の気まぐれで異形化して自我を失うのを避けてそいつの世界で魔物サバイバルをさせられたって流れになるんだが……」


 フィリンと飛野の質問に答える。


「飛野もやっぱ健人みたいに変身できる訳?」

「ああ、あれからしばらくしたら侵食率が上がらなくなって竜人の姿に成れるようになった」

「おーカッコ良さそうだな」


 健人の姿を思えばきっと見た目はカッコ良さそう。

 俺は、まあ今は可愛い系だけどさ。

 変身すりゃあんまり姿は問題ないか。


「その件は話そうと思えばいくらでも出てくるんだけど、俺として気になるのはブルと健人の関係性なんだけど、こう……計算とか色々と合わないから先に解決した方がよくない?」

「ブ?」


 え? そこが先? ってブルがそんな顔をしてる。


「自分の話よりブルさんなんですね」

「兎束は相変わらずだなぁ……」

「はぁ……何かある度に話の腰を折ってきそうだからこちらを先に詰めてからにするか」

「そうだNE! つもる話はマウンテンのようにあるYO! MEも敵の手に落ちて操られて居たのを助けて貰ったんだYO」

「私たちからすると死んだはずのラルオンさんが元気にいる事が気になって仕方ないですけどね」


 フィリンの若干トゲのある指摘は後回しにしてブルと健人に関する話を進める事になった。


「んで、健人。ブルのやべえハーレム男な親ってのはお前って話なのは本当なのか?」

「やべぇっててめえな。ブルトクレスは息子って言ってんだろ。雪一、なんでお前が俺の息子の事を知ってんだよ。つーかオークオークと拘ってたのはブルトクレスの事だったのかよ」


 ふと考える。

 おかしいぞ? 結構ムーイやエミール、ラウ、リイ、孤児院の子供やカトレアさん達、レルフィさんやルセトさんにだって俺が居た世界での出来事を映像魔眼で物語仕立てで読み聞かせをしてたんだぞ?

 なら健人が俺の息子とか言ってブルの事を話したっておかしくなんかない。


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