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三十九話


 障壁の先は……なんだろう?

 謎のカプセルっぽい物が無数に設置された区画が続いていた。

 中身は……壊れていたりして殆ど残っていない。

 何か人間や動物じゃない何かが浮かんでる。


「なんだろこれ?」

「実験動物でしょうか。錬金術などで作られたりする……」


 それっぽいな。

 その後に続く部屋は牢屋かな? 妙に厳重な檻が掛ったエリアに入る。

 檻の中は……何も無い。風化した骨が転がっているだけみたいだ。

 餓死したって事なのかな?

 地味に空調で風が僅かに流れている所為か、ミイラになったとしても風化してしまっているような歴史を感じる。

 宝箱の類がこれ見よがしに転がってるなー。何か法則でもあるのだろうか?

 問題は……牢屋の鍵は開いてないし持ってないんだよね。


「アナライズで確認してみますね」

「うん」


 牢屋の格子部分からフィリンが魔法で宝箱をチェックする。


「魔法的な仕掛けは無いですね。たぶん」

「じゃ手繰り寄せてみますか」


 フックを投げつけて手繰り寄せる。

 こういう時に便利だな。フック。

 罠は無いタダの木箱だった。中身は……何かのアンプル?

 鑑定するとDNAアンプルとしか出ない。専用の技能が無いと更に詳しく調べられないってところだな。

 こんな物まであるのか。


「あ、アンプルですね。上手く持ちかえれれば評価が上がりますよ」

「そうなの?」

「はい。内包されている情報にもよりますけど」


 何かに使用するって事か。

 まあ、小さいカプセルみたいな物だし、かさばらない限りは持っていけばいいか。


「へー……まあいいや、次行ってみよう」

「はい」

「ブー」


 で……その牢屋みたいな部屋の奥へと来た時、壁に武器っぽい物が飾られているのに気づいた。

 ……そんな武具を閲覧していると――。

 ガタンと俺達の前の壁が開いて、後ろの壁が迫ってきた。


「え!?」

「ブー!」

「キャ!」


 そのまま一気に押し出される。


「うお! いててて……」

「ブー」

「いったい何が……」


 出された先を確認すると――大きな培養槽と妙に広い運動場みたいな場所。

 培養槽の中には……ドラゴンっぽい生き物がぶくぶくと泡を立てて眠っている。

 体格がかなり良いから尻尾と頭を伸ばせば15メートルはありそうだ。

 でー……左上の壁の方を見ると監視室っぽい部屋を発見……。

 なんか嫌な予感に眉を寄せる。

 ビーっと何か音が響き渡り、警報のような光が壁から出ている。

 ……まさか。

 大きな培養槽の中にある液体が抜けていき、培養槽が取り外されていく。

 ビチャっと培養槽から出されて倒れた体勢のドラゴンがブルブルと体を震わせて起き上がる。

 名前が浮かんできたぞ。


「第一世代バイオドラゴン……レッドD:ラース」


 フィリンがポロっと呟いたので顔を見る。

 顔が真っ青になって震えてる。


「え?」


 再度起き上がるドラゴンに目を向ける。

 名前は……バイオドラゴン・レッドD:ラースってのは正しいけど。第一世代って何?


「グルルルルルウ……」

「ねえフィリン。見た感じ敵対的に見えるんだけど」

「は、はい! おそらく場所から推測するに戦闘テスト用の場所に強引に戦わせるために制御されているのではないかと!」

「逃げた方が良い感じ?」


 フィリンが俺を見て何度も頷く。

 ブルも震えてる。

 何か近くに転がっている物凄く大きな剣を拾い上げてこっちに敵意を見せて唸ってる。

 俺達の後ろには逃げ道は無く、精々モニタールームっぽい所くらいしか逃げられそうな場所は無い。

 ……あのモニタールーム、仮にぶち壊そうとしても相当強固な防壁が付いているんじゃないかな?


「かと言って逃げ場は無さそう。ちなみに……どれくらい強い?」

「私の知識じゃ、実際は分かりませんが、本に記載されるスペックでは第一世代となったら希少且つ強力と語られていて、オルトロス並みに強いです! 白兵戦で勝てる相手じゃありません!」

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 フィリンの説明とほぼ同時か、戦闘の合図とばかりに目の前のドラゴンは咆哮を上げてこっちに近づいてくる。

 速いし凄いプレッシャー! 魔法的資質が開花しているからか辺りに高密度の魔力が充満してるのが分かる。

 ドラゴンの持つ刀身に魔力が宿り、発熱しているのが分かる。

 大きく振りかぶって目の前にいる俺達目掛けて振り下ろさんとしている。


「避けろ!」

「ブー!」

「わああああああああああああああああ!」


 ブルがフィリンを担いで急いで跳躍、俺はブル達とは反対側に跳ねる。

 ドスンと激しい地響きが鳴り響く!

 直後、俺達がいた場所に大きな亀裂ができていた。

 衝撃だけで壁まで吹き飛ばされたぞ。


「だ、大丈夫か!」

「ブー!」


 土煙りの中をブルはフィリンを背負って駆け、ドラゴンから大きく距離を取る。

 が、後ろには尻尾で応戦するといった様子で、尻尾をブンブンと振りかぶってブル達を薙ぎ払おうとする。


「きゃああああああああ!? よ、避けてる!? 凄いけどブルさん、そ、それ以上私をシェイクしないで、いろんな物が出ちゃいますぅううううう」


 もちろん、辛うじてブルはフィリンを担いで紙一重で避けるわけだけどさ。


「うううううう……」


 あ、フィリンを降ろして尻尾に向かって斧で振りかぶった。

 ガツッと僅かに鱗に傷を付ける事はできたけど、出血には至らない。

 その間に俺の方に狙いを絞り剣を振りかぶってきた。

 凄く速い、オルトロスよりも動きが遥かに良いんじゃないだろうか? Lvが上がってなかったら死んでいただろう。

 いきなり大きな剣を持ったドラゴンとの戦闘かよ。

 どうすりゃ良いんだ?

 ……決まってるんだろうな。

 ここで生き残るにはやりたくはないが、この謎の棒切れに頼るほか無い。

 棒切れを握りしめ、Lチャージを作動させる。

 けど個人的にはできる限り節約したい。


「こっちだ!」


 カッと体が熱くなり、ドラゴンの動きが遅く感じる。

 柄をドラゴンに向けて構える。



 解析――バイオドラゴン・レッドD:ラース。

 必要な出力を推測……使用者の思考を把握。計算完了。

 使用者の力を強制出力!

 敵対者を仕留められる出力抽出まで、後30秒!



 うっげ……こんな敵の猛攻を30秒も待たなきゃいかんのか!

 いや、それとも俺が節約したいとか考えたからなのか?

 結構融通が利くのな。

 素早く動く俺にドラゴンは剣を横薙ぎにしながら尻尾を俺に向かって振り下ろす動作を始める。

 その切り返しに合わせてブルとフィリンの方にも攻撃が来る。


「ブ!」

「ひえええええええ!?」


 一瞬でも間違えたら即死クラスの一撃にブルもフィリンも辛うじて避けた。


「ユキカズさんだけに負担を強いてはいられません!」


 フィリンが魔法の詠唱をしながら俺の方を見る。


「ユキカズさん。レッドD:ラースを仕留める場合、胸部にあるコア……逆鱗部分を狙ってください。頭を攻撃しても仕留める事はできると思いますが、弱点はそこです」

「分かった!」


 よくよく確認すると胸の辺りに逆さに生えている鱗がある。

 アレが逆鱗ね。

 ドラゴンとかに付き纏う弱点部位とかファンタジー小説で聞いた事があるけど、あそこまで露骨にあるんだな。

 何て棒切れに力を入れながら回避に専念して攻撃の機会を練っていると、ドラゴンが炎を纏う。

 あっち! 室内の温度が急上昇してるぞ!

 そして大きく息を吸い込む。


「主砲が来ます! 絶対に避けて!」


 竜の息……ブレスと言わないの!? と言うツッコミをする余裕は無く、ドラゴンが口を大きく開いて巨大な火炎を薙ぎ払うように放つ!

 くっそ! この攻撃は俺もブルもフィリンも咄嗟に避けるには壁上りでもしないとできる次元じゃない。


 せめてもの守りとばかりにブルが背中の盾を取り出して器用に前面に投げつけたわけだけど……一瞬で溶けた!

 こんなの耐えきれるもんじゃない!


 急いでブル達の方に回り込み、なかばヤケクソになって柄を振りまわす。

 スパッと炎を切る事ができたぞ。

 炎の残り香が羽織っていたオルトロスの毛皮に当たる。

 幸いにして燃える事は無いみたいだけど……真面目に受ける事ができるかと言うと怪しい。



 強攻撃の相殺により、出力低下。再充電に30秒!



 うげ……あんまり強く攻撃を放つと溜めをリセットするのかよ。

 ドクンドクンと心臓の音が強まっていくのを感じる。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 炎を切られて苛立ったのかドラゴンが咆哮を上げる。

 すっげーうるさい。キーンという耳がバカになったような感覚がする。

 凄いな、音だけで体が痺れそうなぐらい空気が震えている。


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[気になる点] どういう骨格でドラゴンが剣を持ってるのか…
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