三百八十九話
ヒュー! っととんでもない重力を感じつつ、ドシン! っと地面に叩きつけられるように着地させられた。
「うお!」
周囲を見渡すとクレーターが出来ていて……同様に隕石のようにラルオンとバルト、冒険者たちも着地させられていたようだった。
で……片方は見覚えのあるレラリアの軍服を着た兵士たち、もう片方はミュータントマシン、マシンミュータントと属される魔物が居るようだが、マシンミュータントの連中は俺たちの着地の衝撃で吹っ飛んでいる。
さて、状況的判断をしよう。
俺やムーイ、エミールは魔物枠っぽい見た目、ラウやリイもちょっと人種としては認識されているか怪しい。
となると頼れるのは……。
「健人、ラルオン! レラリアの兵士のみんなへの交渉をよろしく!」
健人とラルオン、バルトを出しつつ吹っ飛ばされたマシンミュータント達が襲って来ない様にけん制をするのが俺たちの役目としよう。
この三者に事情説明しないと味方から攻撃を受けるのは確実だ。
「あいあい。事情説明が面倒くせえけど、しなきゃやべえのはしょうがねえか。俺たちは争う気はねえから攻撃すんなよ。攻撃してくるなら実力の差を見せてやるぜ?」
「状況判断が的確だNE。OK! MEはレラリア国、認定冒険者でおそらく戦死として認定されているラルオン=リトース上位冒険者だYO! 状況的に加勢するからフレンドリーなfireは勘弁YO!」
「ギャウ!」
バルトが機転を利かせて敵に向かって攻撃を開始する。
同時に……あ、あの見た目は!
「ラルオン!? 貴様、死んだはずではなかったのか!?」
何とそこにはライラ教官が激しくタイミングよくいた!
どうもレラリア軍側の指揮をしていたっぽくて後方から駆けつけて来て、武器を構えてラルオンへ詰問している。
「ライラ教官!」
俺はライラ教官の元に駆け寄り、レラリア国式の敬礼を行う。
「なんだこいつは……いや、貴様……」
目を細めたライラ教官が俺を凝視してる。
「なんだろうな。貴様……見た目が随分と違うのだが知っているような気がするぞ。はっきり言ってその目つきをやめろ、トツカ!」
おお! 俺の事、こんな姿に成ってもわかってくれるなんてなんかすごく嬉しい!
さすがライラ教官! 見る目が違うな!
「はい! レラリア国ローレシア隊所属、兎束伍長です! このような姿に成り果ててしまいましたがただいま帰還しました!」
「真偽はどうでも良い。ラルオン、本物であるならしっかりと実力を示せ!」
「OH、理解が早いけど扱いが酷いYO……やるしかないNE。DOGなYOUも手伝いカモーンだYO」
「こっちに来て早々に戦闘かよ」
「良いじゃないのー。私も戦って大丈夫そう?」
「流れで襲ってきたら抗議すりゃいいだろ」
健人とレルフィさんも加勢してくれているようだ。
「ムーイ達も戦うかー?」
「なんだな?」
「二人は待機! 混戦しかねないから」
パッと見のムーイは可愛いウサギの獣人っぽいから人種として居そうだけど余計な争いにもなりかねないので動かないで貰った方が良い。
「わかったぞー。だけど大丈夫なのかー?」
「厳しくても追い返すしかないの! あのライラ教官! ブルは? ブルはここに居ますか?」
ああ、ライラ教官が居るって事はブルも近くにいるかも。
会いたいなーやっと会える。あの性格イケメンに!
「奇妙な姿に成っているが貴様は全く変わらんな! この戦場の何処かに居る。終わったら駆けつけてくるだろう」
「あーい。じゃ……みんなの手伝いをしますかね」
俺は魔力を練って、魔眼を戦場に居るマシンミュータント共に放って動きを弱らせた。
ムーイやエミールへ寄生して大暴れする程の敵は見かけられないからこれくらいで大丈夫だろう。
と言った形で再会し、戦闘が始まったのだけどマシンミュータント共は俺たちの乱入で割とあっさりと駆逐されたのだった。
「さて……現在、基地に貴様らを入れる訳には行かないが、まずは事情を問わねばならんか」
チャキっと相変わらず雄々しいライラ教官が剣を鞘に納めて仮設で作られた大型のテントに俺たちを招いた。
「私も状況が状況故に、すぐに対応しなければいけなかったから先送りにしたが貴様はトツカで良いのだな?」
「だから何度も言ってるじゃないですか」
「そこまで姿を変えてどの口が抜かすか貴様」
「まあ……そこは否定できない。でも最初はフライアイボールだったんですよ! まだ見た目可愛くなったと思いませんか?」
「目玉の魔物か……確かに貴様っぽいな」
「兎束が帰って来たって!?」
と、そこにやってきたのは飛野とバルトだった。
「ギャウ?」
バルトは俺を見るなり、くっついてフンフンと匂いを嗅いでいる。
「ギャウ!」
それから飛野とライラ教官に向かって鳴いた。で、なぜか俺の耳をカブカブと噛みついてくる。
「いたた! バルト、痛いって」
「ギャウギャウ!」
と、バルトは涙を流しながら俺の耳を何度も噛みついている。
「あっちにラルオンを乗せていたお前のボディがあるから情報交換してこい」
「ギャウ!」
俺の指示を理解したのか凄い速度でバルトがボディの方に飛んで行った。
「お前……兎束なのか? バルトが本物だって認めたみたいだけど」
「だから何度も言ってるだろ。どうもバルトが認識する何かの登録を俺にしてて、そこは無事っぽくて認証は非常に助かるよな。技術は凄いよ」
「どうもずいぶんと変わり果てたがそのようだ。まったく……ターミナルを通せば認証も通るのか?」
どうしたものかとライラ教官が唸ってる。
「あれから色々とあったんだよ。異形化するかと思ったら魔物化しちまってさ。やっとこさ帰ってきたら戦場に投げ込まれてよ」
「そうだったのか。何はともあれ生きて帰って良かったよ。俺も肩の荷が少し軽くなった」
ふふふ、みんなを助ける手立てを手に入れてきたと教えるのは何時にするかな?
立て続けにしたら困るよね。
「ブー」
そこに聞こえるは俺の親友、心の友の声!
「おー! ブルー! やっと会えた」
「ユキカズ、さっきからずーっと目がキラキラしてるぞー」
「ユキカズの兄貴、よく話している人たちをオデたちも直接見れて良かったんだなー」
ムーイ達の反応も気になるけど俺は全然会えていなかった親友の姿を目撃して駆け出す。
ライラ教官と一緒に居るから理不尽な目に会う事は減っただろうけど大丈夫だった?
また妙な迫害や差別をされてないか気が気じゃなかった。
俺はお前に会えた事で良い人探しに目覚めてムーイやエミールに出会えたんだぞ。
なんて様々な思いを描きながら見覚えのあるオークへと、再会を喜ぶように両手を広げて飛びつこうとしたのだけど――。
「ブウウウ!」
シュン! っとブルは俺の横を高速で駆け抜けて……健人のみぞおちに深々と拳を叩きこんでいたのだった。
ズシンと衝撃が辺りに響き渡った。
それはもう見事な拳が決まった瞬間だ。
ヒューっと隣に立ってたレルフィさんが口笛を吹くくらいに。
「ガハ……いきなり、何をしやがる。こいつは」
健人がみぞおちに拳を叩き込まれて腹を抑え込みながら抗議した。
「ブブ!」
っと流れるままにブルは次の一撃で健人の後頭部へと叩きつけて意識を失わせようとする動きをしたが、健人は咄嗟にバックステップをして避けた。
「な、なんなんだてめぇ……って、お前よく見たらブルトクレスか? 大きくなったなぁ。なんでお前こんな所に居んだよ。まだガキだろうが」
……ん? 健人がブルを知っている?
どういうことだ?
「健人、お前ブルの事を知ってるのか?」
と、言いつつ俺は健人を逃がさないとばかりに臨戦態勢で構える親友のブルに背後から近づき、バルトのように背中に乗る。
「ブ!? ブブ!?」
あ、ブルが俺に気づいて驚きの声を上げる。
「ブル、ただいま帰ったぞ! 元気だったか?」
「ブブ……ブブヒ?」
たぶん、ブルは俺の特徴とばかりに手でクッキーの形を描いた後、投げる動作をして見せる。





