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三百八十五話


「おやおや、何が願いかな?」


 神はラウにも優しく相手をする。

 この世界の存在だから優しいのかね。


「お義父さんとお義母さんと一緒に居たいっきゅー」

「それはムーイがお願いしてくれるだろうから気にしなくて良いよ」

「じゃあ早く大人になりたいっきゅー、お義父さんとお義母さんの力になりたいっきゅー」

「それもダメだよ。すくすくと育つことが君にとって一番大事な事だから」

「きゅー! 何も叶えてくれないっきゅー!」


 ラウが神にプンスカと抗議をしているけれど神はヘラヘラと笑っている。


「亡くなった両親に逢いたいとかなら考えてあげてもよかったんだけど、君は身の程にあった願いをするようだからねー」

「きゅー……お父さんとお母さん、神様に死んだ人に会いたいとお願いすると痛い目に遭いそうってみんな言うと思ったっきゅー」

「うんうん。君は実に身の程を理解してるね。そんないい子の君に……少しだけ、両親との時間を上げよう。ムーイ、ラウを預かるよ?」


 神はムーイからラウを預かると……フッと、ラウは姿が消えて何処かの空間に飛ばされたのを映像で映し出される。

 そこは……ラウと出会った村のようだった。


「しばらくの間、平和だった村を再現して死んだ者たちの再現と、両親たちの残留思念を使って蘇らせてラウと過ごさせてあげよう」

「ラウは……」


 ムーイがその映像を心配そうに見つめている。

 ラウは、そこで……両親と再会して嬉しそうに話をしている。


「もしもこの小さな小さな箱庭が気に入ったのなら、僕がしっかりと管理してあげるよ」


 が、少しの間両親と話をしていると……何度もチラッと村の外の方を見て、両親と話をしているようだった。


「どうやらラウは君たちと一緒に居てずいぶんと成長しているようだよ。前置きに、今は両親と話すけど少ししたらムーイと君たちの所に行きたいって言ってるよ」

「そう……」

「割と心が無い裁量をするのかヒヤヒヤした」

「だから言っただろう? 僕は優しいってね。さすがにあんな小さな子を騙して破滅する様を見て悦に浸るほどじゃないよ。ムーイに嫌われてしまうじゃないか」


 本音はそこじゃないのか?

 自身の後継者にしたいムーイに嫌われたくないってさー。

 まあ、ムーイはムーイでラウの幸せを考えたらあのままが良いんじゃないかって切なそうな顔をしてるけど。

 ただ……うん。ラウの両親は……この世界の決戦で俺にメッセージを送ってくれたからなぁ。

 ……戻ってきたラウは、両親にしっかりと別れの挨拶が出来た。これからは俺たちと生きていくと話してきたことを誇らしく話すのは少しだけ先の出来事だ。


「さて……順番と言う訳じゃないけど、次はそうだねエミロヴィア、エミールと呼ぶべきか。君にしようか」


 神が今度は黙って見ていたエミールに願いを尋ねる。


「何を叶えて欲しいんだい?」

「オデ……は」


 エミールはなぜか俺に視線を移す。

 フレーディンとの夢だったんだろ?

 命の狙われない平和な場所で平和に過ごしたいって願い。


「オデの願いは……ユキカズの兄貴、ごめんなさいなんだな」

「なんで俺に謝ってるんだ? とりあえず言ってみれば良いだろ」

「ううん……オデ、神様に会うまでがフレーディンの兄貴との夢……で、今はもう、違う願いがあるんだな」

「へえ……一応、話を聞いてあげようか。君の最初の願いはなんだったかな?」


 神は俺の視線で見聞きしていた癖にエミールに改めて聞きやがる。


「オデの最初の夢は、弱い迷宮種だから襲われないように争いの無い平和な場所で平和に生きたかったんだな。フレーディンの兄貴ともその夢を叶える為に一緒にあなたに会いに行く事にしたんだな」

「うん。それで?」

「でも……ユキカズの兄貴たちと旅して、戦って……わかったんだな。きっとオデが望む平和に過ごすのは出来ないんだな。ムーイの姉貴が迷宮種じゃ無くなれば良いのか? と聞いてきたけど、オデは……迷宮種として生まれたのが良かったと思えるようになったんだな」

「まあ、そうだね。ムーイや僕にお願いすれば、君は迷宮種ではない普通の魔物……いや、この世界のグフロエンス辺りに変化くらいはさせて貰えるだろうね。それならばその集落や村で過ごそうと思えばできるだろう。僕としてもその辺りが落とし所だと思っているよ」


 迷宮種を失う事になるだろうけどね。と、神は残念そうに答える。


「もしくは、君も事前に知っただろうけど、君を元に新たな種族を作り出して集落を与えるという選択もある。それなら君は迷宮種のままで居ながら平和な場所も得られる。迷宮種の中には僕に会わずに安住の地を死ぬまで維持した者もいるよ。天敵に追われる前の君のように」


 敵を呼び込むかそうではないかの違いはあっても……って事なのだろうと俺も思う。


「その願いとは違うものを君は僕に願いたいのだろう?」

「なんだな。フレーディンの兄貴と歩んだ夢は叶ったんだな。だから次の夢があるんだな」

「何を望むのかな?」


 神の問いにエミールは健人の方を見る。


「次の夢はケントの兄貴が教えてくれたんだな」

「俺か? 何か俺、このカエルに教えたか?」


 健人も心当たりがないとばかりに首を傾げてるぞ。


「オデは……みんなの為に頑張ってありがとうって言って貰えて、とても嬉しかったんだな。ユキカズの兄貴はオデの頑張りを褒めてくれたんだな。そしてケントの兄貴が作った居場所が凄く羨ましいと思ったんだな。だから、オデは、オデ自身でオデの居場所を……ユキカズの兄貴たちと一緒に作りたいんだな」


 と、エミールは新たに生まれた夢を話した。


「なるほどね。確かに君の願いは僕では叶えさせる代物ではない類だね。まあ細かく言うなら僕の世界から価値が低いとはいえ僕の宝である君が出ていくのは少しばかり名残惜しいね」


 迷宮種は等しく所有物って言い方を神はしているが……。


「その宝をアポ・メーカネース・テオスに殆ど改造されてたじゃないか。今更所有物扱いするなよ」

「勝手にあのポンコツが僕の宝を奪ってたんだよ。君たちが処分しなかったらしっかりと罰した位は察してほしいね」


 ゾッと、今までどれだけヤバイ気配だと言われてもピンと来なかった俺の背筋から鳥肌が立った。

 く……俺を選んだ神獣の創造主と言うのは嘘じゃないという事だろう。


「まあ、僕も物分かりが悪いと思われたら心外だからね。エミール、あそこまでこの世界の為に頑張った君に関しては多めに見てあげるよ。何より……ふふ、ご褒美は既に兎束雪一から貰っているかい?」

「な、なんだな……」


 困ったと言った様子でエミールはもじもじと両手を握って俯いていた。


「やれやれ……どうにもピンとくるような願いは無いようだ。では……ムーイと兎束雪一、君たちから聞いて纏めないといけないようだね」


 と、今度は俺たちの番となった。


「俺とムーイは一緒かよ」

「ん? 正確にはムーイだけだね。君は僕の配下、どれだけ頑張っても願いを叶える褒美なんてしないよ」

「おい」


 ここまでどんだけ苦労したと思ってんだ。

 それを俺は報酬無しってひどすぎるだろ。


「だって君は兵士、僕は神で王と言うポジションだとするなら王の命令に従うのは絶対じゃないか」

「兵士も雇用された存在でしっかりと代価を貰って働いてんだよ」

「それは認識の違いかな……と、冗談はこれくらいにしないといけないね。褒美は無いが恩赦はあるよ」


 冗談なのか? 本当にー? ムーイの顔色を窺ってるだろ。


「まあそうだね。兎束雪一、君の願いはアレだろ? 健人と同じくあっちの異世界に戻りたいが初めに来るだろう?」

「ああ、そうなる」

「ともすればね……言ってはなんだけどその処理はねー。だって……言ってしまえば配置換え、転勤だから」

「配置換え?」

「今回の騒動とか色々とあって、あのポンコツの本体が居る場所に行かせたんだよ。最後の神獣であるあの子をね。もちろん完膚なきまでに破壊させたよ」


 と、神は……なんか大きな砦みたいなものが焼け落ちる光景と、その中にある大きな目玉の機械が消し飛ばされる姿を見せる。


「あっちの世界の秘密基地とばかりにダンジョンを根城に暗躍してたからね。僕だって馬鹿じゃないよ。神獣たちの娯楽を悪用してこんな真似をした奴に報い位受けさせるさ」

「こっちに来たのが本体じゃなかったのか」

「ポンコツからしたらどっちも本体なんだろうさ」


 俺たち側もそうだけど分身多いな!


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