三百八十話
俺は自分の力でやりたい事だ。
ムーイも何か叶えたい願いがあるのだろう。
「……うん。やっぱりユキカズはユキカズだなー」
「なんだよそれ」
なんかムーイの反応が気になる。
やっぱりムーフリスを取り込んだ所為で妙な考えと言うかムーフリスにじわりじわりと意識を乗っ取られてきているんじゃないだろうか?
不安だ……そういや神様ってのは願いを叶えてくれるんだったっけ。
「ムーイはこう、叶えたい願いとか無いのか? 俺が好きとかはわかってるから、それ以外でさ」
「あ、先に言われちゃったぞ。うーん……それ以外だと……内緒」
ムーイが秘密って口に手を当てて笑う。
おう、そういうことを言う様になったか。
ただ、はぐらかされるから困るな。おい。
それこそムーイが欲しいものを密かにそろえるとか出来ないじゃないか。
「お菓子ならいえば作ってやるからな」
「やったー! わかったぞユキカズ」
こんな些細な事で喜んでくれるならいつでもな。
「あのなーなんとなくな、ユキカズーそろそろ神様って人の所へ行く準備が整って来たんだと思ってムーイは考えてたんだぞ」
「まあ……一応行こうと思えば行けるんじゃないかとは思うけどさ……良いのか? 聖獣の試練を突破してる訳じゃないし」
なあ? 聖獣たち。
と、俺の中に居る聖獣たちに尋ねる。
『うーむ……相応の試練を乗り越えたのではないかと私は思う』
『むしろ私たちが課す試練よりも険しい道を進んでそこに至っている訳であるしなぁ』
『今回の戦いを考えると……』
『よくぞ助けてくれたとしか言いようがない……試練を乗り越えたで良いと、思うのだが……』
あ、満場一致で神に会いに行って良いと。
なんて感じに聖獣たちと確認をしつつムーイと夜の街並みを見つめていると……。
『……良いよ。君たちは十分な活躍をしたと、子供たちも満足してるし認めてあげるよ。道を開いてくるがいいさ。道の詳しい場所も教えておくよ。本当はもう少し僕の作った世界を回ってほしかったけど、事態が事態だったからしょうがないね。消化試合ほどつまらないものはないし』
と……神らしき存在の声が俺の中に響いてきていたのだった。
そうしてピコっと視界に、神への道を行く矢印が現れた。
『あんまりぞろぞろと来られるのは嫌だからね。君とケント、ムーイとエミール、それとラウ……を連れて来て良いよ。それと少し落ち着いてから来るように、捕虜の面倒を放置されるのは面倒だしね』
面子の指定までか。
捕虜ってラルオン達の事か?
「ユキカズ? あ、何か声が聞こえてるんだなー?」
「ムーイもわかるのか?」
「んー……なんとなくそうなんじゃないかと思ったんだぞ」
「そうか」
こうして……俺たちは神って奴と謁見する許可をもらったのだった。
アポ・メーカネース・テオスとの決戦から一週間が経過した頃。
神に呼ばれた面子で一路、目的地である神への道の祭壇へと向かって行っている。
ラルオン及びバルトは留守番となったのだけどその際にはおいて行かれる事にバルトがかなり抵抗した。
もちろんラルオンもしばらくは抗議してたけど侵略者側だった手前、我慢してくれた。
一応、ラルオン達の処遇に関しても神には話を通さないといけないしなぁ。
はあ、頭が重い。
「はー……やれやれ、やーっと神への謁見が出来るってか、これでやっと帰れそうだな」
「そうなるとは思うんだがなぁ……で、健人、相変わらず頭の中は賑やかか?」
ニヤニヤと俺は健人を挑発気味に確認を取る。
「俺で遊ぼうってなら相手しねえぞ。たまーに聞こえて来てるぜ。相変わらずよー」
「それは何より、で……ムーイとエミール、ラウは心の準備は出来てるか?」
「おー、やっと神様ってのに会えるんだなー」
「オデは……会って良いんだな?」
ムーイは特に緊張とかはしてない様子だけど、エミールの方は遠慮がちって感じだ。
「フレーディンと一緒に行く夢だったんだろ? エミールはこの前の戦いで大活躍だったんだから遠慮するなっての」
一週間経った今でも世界樹は青々と大地に根を張り、世界を守っているとばかりにその壮大な姿を遠くからでも見せてくれていた。
そんな世界樹を作り出したエミールが罰せられるはずはない。
罰を与えるなら……俺が許さん。それこそラグナロクを起こして排除してやる。
「わかったんだな……それでもオデ、怖いんだな」
「まったく、臆病なのも程々にするんだぞ」
どうも神に会うって事に関してエミールは尻込みしがちだ。
俺の行動をゲラゲラ笑ってみてる奴なんだから遠慮なんてしなくて良いっての。
で、ラウはと言うと。
「きゅー」
こっちは逆に事の大きさをわかってないとばかりにムーイに抱っこして貰ってご機嫌だ。
リイやカトレアさん、ルセトさん達がラウを連れていく事に関してやや渋めの心配した様子だったのが印象的だったかな。
まあ、彼女たちは……待機となってしまってるけどね。
そんなこんなで割とあっさりと矢印に従って移動をしていたら、神への道が開く祭壇にたどり着いた。
祭壇に近づくと俺の体が反応し……ヴァイリオ達、聖獣たちの認証が発生した。
すーっと、それぞれ聖獣たちを模した紋様が空中に浮かび上がり、すべてが浮かんだ所でカッと光の柱が祭壇から天高く空へと伸びて行く。
「な、なんだな?」
「どうやらこれが神への道って事みたいだな」
『そうだよ。ああ、そうそう。まずはムーイを先頭にしてくれない? 君たちの戦いで一番の功労者でしょ? 3分経ったら他の者も来て良いよ』
「……神って奴からご指名でムーイが先頭で行って3分後に来いってさ」
「一人一人謁見ってか? だりぃ」
言いたいことはわかる。
で、ムーイは抱えていたラウを降ろして光の柱に近づく。
そして……なんか光の柱に手をかざしているようだった。
「……ムーイ?」
「……なんでもない。わかったぞー。じゃあ先にムーイ、行くなー」
「あ!」
ピョン! っとムーイは俺が頷くよりも早く光の柱の中へと入って行ってしまった。
で、エミールが呼び止めるように手を前に出していた。
「どうしたエミール」
「あ、あの……ユキカズの兄貴、この光の柱が出た瞬間からなんだな……」
「ああ」
なんだ? なんかすごく嫌な予感みたいなものが俺も感じられるような気がしてきた。
思えば……なんだろ、妙な威圧感が柱から感じられるんだ。
けどこう言うもんだろと思っていたが……。
「今まで感じた事も無いくらい、凄まじい程の迷宮種の気配がここから出て来てるんだな」
「ムーイ!?」
おいおい! 神って奴が最後に爆弾をぶちかまして来やがったのか?
俺たちを口封じするために盛大な罠を仕掛けたみたいな!
一目散に俺は光の柱に突撃する。
「あ、お義父さん、待ってきゅー!」
ラウがそのまま俺を追いかけてきた! く……ラウの為にも踏みとどまらないといけなかったか。
「おい! ちっ! しゃあねえ! 行くぞカエル」
「なんだな!」
って事で健人とエミールも俺とラウに続く。
すーっと視界が光に包まれたかと思ったけれどそれも一瞬で、次に気づいた時は空高く……地平線の先まで、何か液体のような変わった色の海のような場所の空に俺たちは投げ出されていた。
ビリビリと何か……とてつもない気配が周囲から漂っている。
なんだこの感覚。
下を見るとムーイが体を広げて一足先に落ちていく姿が見える。
「ムーイ!」
羽を広げて一目散にムーイの元へ向かう。
高高度から一直線にだ。
ムーイを回収後にラウを拾って、次に健人とエミールか……大丈夫だろうとは思うけど飛べる限り飛ぶしかない。
ヒューっと出来る限りムーイに近づく為に羽を羽ばたかせていく。





