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三百七十三話


「なんか……ユキカズの真似をしてるなーあいつ」

「そうなるのかね。戦いにおいて重要なのは勝者、相手の模倣と相手の予想を超える行動って鉄則ではあるんだけどさ」


 どうも俺の戦果から最適解を導いたって事なのかなぁ?

 考えて見ればアポ・メーカネース・テオスがこの場でしていたのは俺に近づく行為に感じられるのは間違いない。

 この世界で得たすべてによって成長させたムーフリスに寄生し、苗床にしてムーフリスが得た能力と共に進化してエネルギー体となり、ムーイとよく似た体をしているムーフリスと力を合わせて更なる変身。

 うん。

 手段や状態は異なるけれどまるで鏡を相手にしているような気がしてくる。

 人のふり見て我が振り直せって言葉が頭に浮かぶけど、どう直せば良いかわからないや。

 バキン! っと魔法膜を破って現れたのは漆黒の闇で構築され、スパークしながら邪悪そうなエネルギーの顔を纏う、水棲系の魚やクジラのような外見をしたこの建物のオブジェにされていた聖獣を暗黒進化させたような魔物だった。


「ははは……どうだ。この最強たる獣の姿は! 聖獣の力は元より神獣の力、更に迷宮種……世界の力が私と言う神の元に集結して形となった最高神の姿は!」


 闇獣・リヴァイアサン


 と、俺の視界に表示される。


「闇獣・リヴァイアサンって解析名が出たな。ゲームとかでよく聞く名前になったもんだ」

「お? 言いえて妙じゃねえか。確かリヴァイアサンって結合させる、編み込む、ねじれるとか渦を巻くって由来があるらしいぜ」


 確かに……これまで奪い取ったり操ったりした力を編み込んで形作られた化け物って意味ならこの名前は間違いは無いか。


「悪魔の方にもいて嘘つきで人に取り付いて払うのがきちいとか。まんまじゃね?」

「健人、あんまり抜かしてるとまた狙われるぞ」


 ギロっとアポ・メーカネース・テオスプラズマとムーフリスが合体して変身したリヴァイアサンが健人を睨んでいる。

 さすがに今の状態だと庇うよりも前に大技をぶっぱなして来そう。


「なんとでもほざくが良い! 私の力を受けろ!」


 ゴゴゴ……と、雨雲が上空から発生して空をどんどん覆って行き……スコールのような雨が降り注ぎ始める。

 その雨が地面に付着する同時に煙が立ち上っていく。


「うお! あっち! ゲホ……おい。アシッドレインな挙句、毒素を含んでやがるぞ!」


 健人が雨に打たれ、咳き込みながら述べる。

 が、パアアア……と、エミールが作り出した世界樹が健人を守るようにバリアを展開し始める。


「おうおう。カエルが出した世界樹様はサービスが行き届いて良いじゃねえの」

「エミールに感謝するんだな」

「なんでお前が我が事のように抜かしてんだよ」

「エミールが正当な評価を得る為に風聞は必要だろ?」


 ブルは元より、ムーイやエミールにはしっかりと評価されて欲しい。

 その為に俺は努力を惜しまないぞ。


『なんだな。ユキカズの兄貴はこんな時でも変わらないんだな』

「それこそユキカズだぞー」


 エミールとムーイがよくわからない同意をしている。


「さあ! この最高神による神罰を……愚かな邪神の僕共に下してやり、この邪神の世界を駆逐してくれる! 私が手に入れるはずだった世界を破壊した……報いを受けろぉおおおおおおおお!」

「ギャオオオオオオオオオオオオオオ!」


 っと、空に浮かんだリヴァイアサンが咆哮をあげる。

 魔導兵から寄生機械、更にそこから電子生命体になってムーフリスと変身か。

 経路が異なれどもう一つの自分のようにも見えてしまう変化だ。


「ユキカズ、こっちも変身しないのかー?」

「まあ、相手が最終形態になったみたいだし、エネルギーを奪うような状態にはもう無い。変身を解禁しても良いとは思う」


 ヴァイリオ達で建物をぶっ壊そうというのはこの建物がエネルギー吸収効果を所持していたから避けていた訳で、今はエミールが生み出した世界樹により機能はほぼ停止している。

 どうして停止したと同時に変身しなかったのかと言われたら相手が小さいし出力の関係でムーイと一緒に戦った方がよかったからだ。

 だけど今は相手が巨大化している訳で、しかも戦力を集結した状態。

 ムーイによる白兵戦だとサイズ的な振りが大きい。


「……ムーイが巨人化して殴るってのでも戦えそうだけど、うん」


 どくん、どくんと俺の中にあるスキル、LDBBGがここぞとばかりに鼓動をしているように感じている。

 まるでこうしろと教えているとばかりに、俺の体が……俺やみんな、異世界の戦士となったクラスメイト、果てはブルやフィリン、ライラ教官たち、そしてこの世界のすべての者たちの為にと心が叫んでいる。

 ……俺は卑怯者だ。

 異世界の戦士として国に招かれたけれど、断わって兵士から始め、自己保身でクラスのみんなを犠牲に生き残ってしまった。

 この卑怯者がみんなの無念を晴らすために力に手を染めて黒幕だと思った奴を仕留めた後、何の因果か魔物となって神獣として認められてここに居る。

 いや……この出来事の黒幕を仕留めるための機会を与えられた。

 そして……キラキラと世界樹から俺たちに向かって力が流れてくる。

 地脈を伝った……これは祈りだろう。

 遠い……耳ではない地脈を伝って願いのような声が俺には聞こえてくる。


『聖獣様、神獣様……どうかこの世界を救ってください』

『聖獣様の無念を……どうか……』

『ああ、神様、神獣様……何卒聖獣様と世界をお救い下さい』


 それはこの世界中の人々の願いが地脈を伝って俺たちに向かって流れているかのようだ。


『我が子ラウの未来をどうかよろしくお願いします……』

『ラウを助けて下さり、ありがとうございます。もう、抱きしめる事さえできませんが……神獣様方、ありがとうございます』


 ラウの両親まで俺たちに語り掛けている。


『きゅー……お義父さんお義母さん、生きて帰って来て……』


 ラウの声も聞こえてくる。

 うん。ここまでみんなの期待を背負ってしまったら逃げるなんて選択肢は選べない。


「ユキカズ、やるぞおおおお!」

「やっても良いけど、無茶は絶対にするなよムーイ」


 まあ、こういった決戦で無茶をして実質死んだ俺が言っても説得力なんてまるで無いのだけどさ。

 ならば俺がやらねばならない事……ムーイ、エミール、ラウ、リイ、不服だけど健人やみんな。

 神に踊らされているけど……やってやろうじゃないか!


「行くぞ! 全ての命の為に……あんな奴に世界を滅茶苦茶にさせてやるもんか! 報いを、受けさせてやらぁあああああああ!」


 と、俺は鼓舞して声を張り上げる。

 そして……徐にこの時の為とばかりに連れてきた健人を……ムーイの体を操縦して肩を掴む。


「あ? なんだよお前ら、さっさと変身してアイツに向かって行けよ。滅茶苦茶アイツ、力を貯めてますとばかりに口に光を集めてやがるんだからよ」


 ちなみに俺の迷っている時間は数秒だった。

 それほどまでに今の俺たちの出力は高い。


「そのために健人、ちょっと力を貸せ」

「あ、な、何をするつもりだ! や、やめろコラァアア!」


 サーっと青ざめた健人を逃がさないとばかりに掴んで羽を広げて思いっきり飛び上がり、EX変身を発動させる。


「は、はなせぇえええ!」


 ええい大人しくしろ。


「ケント、大丈夫だぞ。きっと何かあっても少し痛いだけだぞー」

「なんのフォローにもなってねええええええ!」


 俺の解析があいつを仕留める為に必要な素材に健人が必要だって分析してるんだよ。

 と言う訳で変身に必要な項目を選択……俺の所持する項目が選べとばかりに最適解を表示させている。


「大上健人」「フュージョン」「機械仕掛けの神を討つ者」


 っと、ここでに機械仕掛けの神を討つ者が聖獣たちの力と迷宮種達の力、世界樹から流れてくるこの世界の人々の祈りを連結させている!

 フュージョンもこれまでにない程に輝いているし、健人には俺のLDBBGが連結して起動してるなぁ。

 なんか……EX変身が本来の力とばかりに発動していくのが分かる。


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