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三百六十九話


「ふふふ……初めましてと言うべきか、それとも……? 久しぶりとでもいうべきか?」


 そこに居たのは……黒い影みたいな奴だと思うのだけどグニグニと煙が粘土を練るように体を練り上げたかと思うと……見覚えのある姿に変わる。

 異世界の戦士から力を奪い取り自身を神とまで称した、「あいつ」が姿を現した。


「お前は――!?」


 俺が異世界の戦士としての力をすべて解き放って仕留めたアイツが目の前にいる!?

 一体どうして? あの時あいつは死んで、神獣たちの親である神が死体を操ったんじゃなかったのか?


「どうだね? 久しぶりの再会だろう? 思い出話に話でも咲かせてはどうだね? まさか最後の神獣にそのような力があったとは、誤算ではあったけれどこちらも更にバージョンアップをしたのだから負ける事は無い」


 アポ・メーカネース・テオスが奴の横に笑いながら浮かんで呟く。


「驚くのも無理はない。が、トツカユキカズ……君のお陰で俺は機会を与えられたのだよ」

「どういうことだ!」


 なんで死んだあいつ……いや、ムーイではない迷宮種ムーフリスがここに居るんだ?


「あいつ見覚えがあるぞーユキカズがムーイに会う前に戦った奴で、教えてくれた奴だぞー」

「知り合いか?」


 ムーイにはよく寝る前にラウや子供たちに映像で見せていたもんな。

 健人はそういった映像鑑賞会には参加してなかったから知らないのも無理はない。


「フッ、なんで俺が生きているのかと思っているのだろうが、お前と戦った俺は確かにあの時、お前にやられて死んだ。だがな、俺の体はあの時の戦いの前にこの方によって一部採取されて別の場所で培養されていたのだよ。先ほどのお前らがしたように!」


 奴の説明でムーイやエミールが行ったアポ・メーカネース・テオスの裏を掻いた出来事からしっくりと来た。

 つまり俺が戦った神を僭称する奴だったムーフリス本人ではなく、その体の体から分離した別のムーフリスだったのか。

 一部とは言え、継続した意志を持った存在か。

 ……カーラルジュに力の源を奪われて俺がどうにか生かしていた状態のムーイみたいなもの。かな。


「……」


 ムーイが何か言おうとしたような気がしたけれど開いた口を再度閉じる。

 どうしたムーイ? 何を言おうとしたんだ?


「あれだけの力がありながら敗れたもう一人の俺の所為でどれだけみじめな思いをしながら培養されていたか、だが……今の状況を考えたら礼を言わねばいけないかな」


 屈辱に打ち震えるかのように拳を握った神を僭称する奴だったけれど嬉しそうに笑って答える。

 その笑みには狂気すら感じられる。


「礼を言われる筋合いは無いんだが? 経緯が分からないな」

「そうだろうとも、所でお前は相変わらず察しが悪い愚かなのか? 神獣や神……邪神に関する話を知るかのように」

「悪かったな。悠長に解析してられない事ばかりな挙句、立て続けにお前らが襲ってきて教えてくれないんだろ」

「相変わらずのようで笑わせてくれる。すべてはお前と共にいる迷宮種……俺と同郷の存在のお陰でもある」

「ムーイかー?」


 ここでキョトンと自身を指さすムーイ、うん。その動作はなんか和むね。

 個人的には地下に居るエミールの方が気になってきた。力の源を奪われた状態だから死んでしまわないか気になる。

 どうも力の源の方のエミールが大丈夫だって伝えていたけれど……バルトやラルオンだってどうなっているか……。


「そうだ! たまたま俺よりも恵まれた強さを得たからと好き勝手に生きているぬるま湯に浸りきった存在め! が……まあいい、おかげでアポ・メーカネース・テオス様が俺を再度見出し、此度の世界侵略で導入された物資、及び迷宮種共をすべて俺に食わせてくれたのだ。お陰でこうして最強の迷宮種であり神獣の力と聖獣の力を宿した存在に進化させて貰えたんだ!」


 迷宮種を全て食わせた……つまり奴らに捕らえられて改造された迷宮種達のすべてが目の前のムーフリスに力の源を奪われて集約していると……。

 まだ迷宮種とはどんな存在なのかの答えは得られていないけれど、それでも敵勢力にあった迷宮種の力が集まって目の前にいるという事に他ならない。

 まあ、ここに来る前からムーイやエミールは感じ取っていたようだから予想外と言う程ではない。


「お陰で……元々の体さえも大きく進化することが出来たという事だ。そこに居る同郷よりも俺の方が格は上だというのはわかったか?」

「ムーイよりすごいって言いたいみたいだぞー?」

「邪神に魅入られているのか妙な姿をしているな。まあ……その姿の方がこちらでは有利なのだろう」


 ムーフリスはグニグニと天使のような悪魔のような姿から、黒いムーイみたいな姿へと変化させて見せる。

 が、その背中から天使のような悪魔のような姿を生やしていて……うん。デザインが非常に気持ち悪い。


「うへぇ……ムーイの色替えかイケメンかのどっちかにしろよ気持ち悪い」


 と、健人が素直な感想を述べようとした所でグイっとムーイが健人に飛び掛かる。


「おわ!?」


 と、健人が声を上げたけれど、丁度健人が居た所は今、ムーフリスが放った異世界の戦士や迷宮種の力で凝縮された熱線が放たれて焼け焦げていた。

 バキバキと……世界樹の一部が焼けてしまう。

 徐々に世界樹が再生していくけれどそれでも高威力の一撃をノータイムで放って来やがる。


「危ねえな! おい!」


 突き飛ばして辛うじて助けてやった健人が懲りずに敵に抗議の声を上げる。

 ムーイが体勢を立て直して、再度俺は相対するように立った。


「つーか健人、あいつの気配で震えたりしない訳?」

「ああ? 今更何を抜かしてんだよ。震えたら解決すんのか?」


 ブルとか飛野、ライラ教官たちでさえ、あいつの威圧を受けて多少影響を受けていたのに健人は割と平気そう。

 とは思ったけど尻尾が若干震えている。

 精神力で抑え込んでいるって事なのかね。

 とはいえ、やっぱり俺はあの神を僭称した奴……ムーフリスの気配と言うかそう言うのは感じられないんだよなぁ。

 ムーイもどうもピンとは来てないっぽいかな?

 念話と言うか寄生した状態での脳内通信でムーイに尋ねる。


「なあムーイ、あいつの気配、すごく感じるか?」

「え? うーん? 大きな気配はするぞー沢山の迷宮種達の力が集まってる」


 やっぱり気配は感じるのか。


「行けると思うか?」

「頑張るしかないぞー」


 で、エミールにも聞いてみようかな。今、俺とムーイの中で見ている状態だし。

 エミール? 大丈夫か?


『だ、大丈夫じゃないんだな。すごい気配で怖いんだな。オデを出すんだな?』


 しないしない。十分エミールには働いて貰ってる。

 むしろ早く体の方のエミールを助けに行きたい。


『相変わらずだが……気を抜くなよ』

『うむ。なんとおぞましい気配を持っているんだ』

『何より……あいつの気配が強まった。どうやら奴の中に最後の聖獣が取り込まれている!』


 聖獣たちの方が状況を真面目に分析してるって状態だなぁ。


「さて……そろそろ戦いを再開しようではないか」


 アポ・メーカネース・テオスのコアらしき奴がユラァっとムーフリスの前に降り立ち、ビュっとムーフリスが取り込む様に包み込んだ。

 同時に健人と戦っていた冒険者もムーフリスの触手が絡みついて包み込んで練り上がってしまう。


「うへ……敵が合体ってか、操られてた奴がどうなってるか気にしたら負けだな」


 ドクンドクンとムーフリスから鼓動が伝わってくる。

 うわ……合体と言うかパワーアップしてる流れだなぁ。

 ギョロ! っと練り上がりが収まり形になったかと思うと真っ黒なムーイみたいになり腹には目玉、毛皮にはナンバースキルを使用した時の紋様が展開され、どこからともなく剣が降って来てそれを掴んで構えてくる。

 耳は翼のように広がり、左右で天使と悪魔のような形相をして見せているようだ。

 で……その背中から天使のような悪魔のような人だった頃に戦った奴が羽化するように生えているんだから気色悪い。


「……どこかで見た昔の誰かさん達みてーだな。背中からも人が生えてるけどよ。真似してみたらどうだ?」

「うるせーあんな風に俺が生えたら気色悪いだろ」


 あんな風に人間に戻るとかだったら勘弁してほしい。絵的にさ……うん。


「下はユキカズに寄生してもらった時のムーイみたいだぞー」


 グロいとしか言いようがない。

 一応背後はオブジェ……じゃないだろうな。

 なんか不敵に笑って構えているし。


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