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三十六話


「ブル、何か敵の気配はあるか?」


 こんな薄暗い挙句、狭い場所じゃ何かあった際に戦い辛いぞ。


「ブ? ブー……ブブ」


 しばらくブルが鼻を鳴らして何かを感知しようとしたけど、どうやら魔物は今のところいないようだ。


「フィリン、この手の施設はどうやって進んだら良いんだっけ?」

「施設の防衛装置が生きている場合はその装置類を破壊、もしくは防衛装置の起動を止める事を優先すべきで、後は今までと大して違いは一応無いですね。むしろ野生の魔物の類がいない可能性が高いと思います。居ても餓死などしてるかと」


 ふむ……そんな仕組みがあるわけね。


「ただ……外から見た限りだと穴も開いていたようなので、魔物がいないとは一概には言えませんね」

「わかった。じゃあできる限り気をつけよう」


 というわけで恐る恐る、外よりも割と大胆に俺達は通路内を進んでいった。

 ……妙に小奇麗に見えるな。


 施設内を進んでいくと人が住んでいた痕跡とでも言うのかな?

 廃墟を探索しているような感覚に襲われる。


 一つ目の部屋はどこかの会社の一室にありそうなオフィスみたいな部屋だった。

 ずらっと何かパソコンのようで何か違う妙な機材が机の上に並べられ、椅子に腰かけて誰かが作業でもしていたような跡がある。

 パソコンにしては形状が変だな……丸い水晶玉みたいな物にシリンダーが隣に付けられ、後ろには壊れているけど赤い宝石みたいな残骸がある。

 敢えて言うなら魔法的な何かかな?

 現代日本じゃないのは確かだけど、こんな機材あるんだな。


 二つ目の部屋は何かの実験室っぽい部屋だ。

 硝子越しにもう一つ部屋がある。その中には何か天秤みたいな物が設置されているけどよくわからない。

 こっちのパソコンみたいな物は壊れていないようだ。

 ただ、よくわからないボタンが沢山あるし、キーボードっぽい物まである。


「この配列はー……」

「知ってる文字?」

「古代文字にありますね。研究書物で目を通した覚えがあります」


 おお……中々にフィリンは有能だね。

 どうやらこの世界の施設なんだなぁ。

 これで俺の世界の文字とかが書かれていたら、俺は実は未来へ転移していたんだー! とかなるところだった。

 生憎とそんな展開は無さそう。


「間違いなく実験室でしょうね。ここは、王立の錬金術アカデミーとかではこういった部屋があったと思います」


 色々と指摘したいけど踏み込まれると嫌がりそうなので黙っておこう。

 きっと、整備兵になりたいからなんだ。

 で、通路を歩いていると何か機械音っぽい物が聞こえてくる。

 警戒していると、何か掃除機と言うかドラム缶みたいな物がゆっくりと進んでくる。

 魔物枠……ではあるみたいだ。


「非戦闘用掃除型エレキックスだってさ」

「この施設の清掃用自律防衛装置だと思いますね。なるほど、道理で妙に小奇麗だと思いました」

「ブ?」


 フィリンが警戒を解く。


「大丈夫なの?」

「はい。この施設の清掃をする魔物……とでも言うのですかね。定められた命令で定められた範囲を掃除し続けるんですよ」

「へー……」


 動くドラム缶は俺達を検知したのか脇を通り過ぎていく。

 本当に敵じゃないのね。


「魔導兵の研究用に持って帰りたいですけど、かさばりそうですね。同型の物も国の施設にありそうですし」

「ブ?」


 掃除を勝手にしてくれるのは便利で良さそうだよね。俺達ギルドで面倒な掃除とか倉庫整理とかやらされていたし。


「ん……」


 そんな掃除機ロボット的なポジションの魔物が来た先……どうやら施設のゴミ置き場的な場所に出る。

 充電式なのかあのエレキックスが収納されているカプセル的な物が散見する。

 ずらっと並んでいるね。


 全部で20機いるのかな?

 開いているのが9機。

 カプセル内で沈黙……充電中っぽいのが6機。

 何かしらの不備で壊れているようなのが5機のようだ。

 その奥はゴミ置き場で無数の埃と骨が詰まれている。


 侵入して死んだ魔物の死体って事だろう。

 他に謎の設置物として運び込まれたのか宝箱が無造作にあって、何かゴミの中に色々と転がっている。


「なんで宝箱までこんな所に?」

「あくまで推測なのですが、ダンジョンの形状が変わる際に、空間ごと変化するので施設内に出現したって……事じゃないでしょうか?」


 ダンジョンとこの施設は別と考えて、だけどこの空間ができる際に混ぜ込まれると、謎の宝箱としてポップする。

 それを掃除機がゴミとしてここに集めて捨てた。


「掃除機にはイレギュラーな品は総じてゴミって扱いなんだろうなー」

「とは言え、ありがたく頂いておきましょう……凄い埃ですね」


 長年蓄積した埃を掃除機が集めてここに捨てているって事だろう。

 表層にあるのだけでもコレなんだ、掘れば色々と宝が出てきそうな気配。


「あ……マジックシードが落ちてる」


 当たり前のようにマジックシードが埃の山から顔を覗かせていて悲しくなってきた。


「ちょうど良いから帰路のオイルタイマーが無いか探してみよう」

「ブー!」


 そんな訳で軽く調べたのだけど、帰路のオイルタイマーは見つからなかった。

 ただ更にマジックシードを発見。

 これで俺とブルの分が確保できたな。


「よしブル! 一緒に使おう」

「ブー」


 ブルがマジックシードを持って何か金を演出する形に手を変えた。

 持ち帰って金にしたいって感じだ。


「ブル、よく考えるんだ。マジックシードを売っぱらって金にと思っているんだろうが、俺達は兵役期間中の新兵。帰ったとしたらまずその物資は国の物として扱われる。ちょろまかして誤魔化すにしてはマジックシードは高値過ぎるんだ」


 あくまで今の俺達は国の兵士として装備品等が最初に支給されていたわけで、ダンジョン内の物は一応、国の所有物という扱いになる。

 ならば緊急処置として使うしかなかったと、マジックシードは使用しておくのが正しい。

 吐き出して国に献上とかできる物じゃないんだからな。


 おそらく、トーラビッヒも緊急時だったと言い張って使用する予定だったはずだ。

 もちろん、このクラスの物を持ち帰れば評価は上がる。

 国への奉仕って事で兵役期間の短縮もできただろうね。

 だけどそれは非常に勿体無い。


「ブル、俺はお前が将来成功するためにも魔法は使えて損は無いと思うんだ。たとえ好みじゃないとしても」

「ブー……」


 どっちかと言うと肉弾戦を好むブルには魔法の資質はあまり無いかもしれない。

 だけど覚えないのは激しく損だ。


「せめてスタミナヒールを覚えるんだ。そうすればより長時間、筋トレができるぞ」

「ブ!」


 俺の助言にブルが目を輝かせる。


「なんでユキカズさんがそこまでブルさんを説得してるのかよくわからないのですが……友達だからですか?」

「もちろん! 恩着せがましく行く!」

「何か台無しな気がしますね……」

「とりあえずこれで三人ともマジックシードが使用できるわけだし、フィリンも俺達に金を払うような事はしなくても良くなったよ」

「あ、はい……ホントあっさり人数分集まってしまいましたね。希少な品なのに」


 まあねー。結果オーライと思いましょう。

 そんなわけで俺は自分にマジックシードを振りかける。


 魔法加護を習得!

 土系統、光星魔法……スターショットを習得しました。


 視界にそんな文字が浮かんだ。


「スターショットだってさ」

「隕石を魔法で再現した光魔法との混合魔法ですね。ユキカズさんの投擲スキルと似た挙動なので良いかと」

「おー」

「ブー」


 ブルは……何か力こぶを作ってる。

 良い魔法を引き当てたっぽくて機嫌が良いな。


「援護魔法のパワーボールの魔法でしょうか?」

「ブー!」


 正解のようだ。

 えっと……俺も詳しくは知らないけど、腕力がアップするというブル向けの魔法のようだ。

 ただ、階位は低いそうでおまじない程度の効果しか無いらしい。

 ここから発展させろって事だろう。


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