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三百五十九話


「あるかもしれないぞー? 迷宮種のお腹にエミールみたいにため込んでる奴とかー」

「なんだな。貯蔵していたものがあるかもしれないんだな」


 ふむ……確かにそう考えるとあのダンジョンの素材に紛れてよさげな武器防具とかあるかもしれない。


「へっ! 期待するしかねえな。魔導兵が出てきたらよ。雪一、おめーがハッキングして乗れるようにしてくれよな」

「出てきたらな。じゃあラウ、行ってくるな?」

「行ってくるぞー」


 俺とムーイが大人しく見送るラウを撫でて告げる。

 俺はエミールに寄生しているから尻尾で、ムーイは手でラウを優しく撫でる。


「きゅー……絶対みんな生きて帰って来て」

「ラウの坊ちゃん。オデもユキカズの兄貴とムーイの姉貴に負けない様に頑張るんだな」

「うん。エミールも頑張って」


 ラウの為にも頑張らないとね。


「んじゃみんな、作戦通りにするんだぞ。無茶してケガとか死んだりしたら承知しねえからよ。俺も絶対に死なねえから、みんな……後は頼んだ」


 健人もカトレアさんやリイ、みんなに声を掛けていた。


「……この世界の人たちの為にやるYO」

「ギャウ」


 ラルオンはそんな俺や健人、みんなを少しばかり羨ましそうにしている。

 ……ラルオンの仲間たちはおそらくあの建物に、捕らえられていると見て良い。

 生きて居たら良いけど、おそらく……か。


「んじゃ出発。みんな遅れるなよ!」

「おー!」



「内部に入らないとな。素直に入れてくれたら苦労しないんだけどさ」


 一路、瘴気漂う居城目掛けて俺たちは近づいて行く。

 もちろん道中には警備とばかりに魔物がぞろぞろ配置されている。

 ミアズママシンミュータント・スラッグ型に始まりミアズママシンミュータント・ザウルス型とか言う……大砲を背負った目の無いバイオ恐竜なんかがこっちに向けて飛び掛かって来る。


「ギャオオオオ!」


 俺とムーイが先頭にラルオンと健人を乗せたバルトがついてくる。

 バキュ! っと背中と口の両方から真っ黒な炎の弾をぶっぱなしてくるミアズママシンミュータント・ザウルス型の砲撃を見切って避けて距離を詰める。


「アクセルエア!」


 ズバン! っと襲い掛かって来るミアズママシンミュータントとつく瘴気を纏った機械が混ざった魔物を切り伏せながら走る。


「いくぞー!」


 ムーイはピョンピョンと竜騎兵用の剣を持っているのを感じさせない速度で跳ねるように駆けていて敵に叩きつけを行い、地面をえぐるような一撃を加えていく。

 ズバン! っと斬れたミアズママシンミュータント・スラッグ型はブチブチっと分裂しようとするのだけどそこで砂糖細工のカラメルのようになって粉々に砕け散る。


「分裂させないぞー」


 どうやらムーイが剣に自身の能力を付与して切り裂き物質変化をさせて仕留めたようだ。

 やー……何とも絶好調な事だと感心せざるを得ない。


「おーやりやがるな」

「こっちは追いかけるだけで精一杯だYO」

「ギャウ」


 ズシンズシンと俺たちの後をついてくるバルトをちらりと視線を向けつつ駆け抜けていくと……建物の方からドンドン! っと魔法や物理的な砲撃、施設で生産された魔物が雨のように降り注いでくる。


「よっと!」


 障壁魔眼を展開して思いっきり突き出し、面で跳ね飛ばしてそのまま進み続ける。

 チチチ……と視線と言うか建物の防衛装置から魔眼のような熱源反応が感じられた。

 熱源から高密度の熱線が放たれる。


「なん……だな! 目が回るけど、ユキカズの兄貴がオデの体を操作してくれてるからやるんだな!」


 エミールがいばらの魔女の能力で周囲の怪しげな植物を逆にのっとって放たれた熱線を……防壁とばかりに植物を生やし受け止める。

 が……容易く貫通してしまう。

 けれど僅かに時間があれば十分、避けてバルトに向かって放たれる熱線は操った植物から水蒸気を吐かせて拡散させることに成功していた。

 おお、エネルギーが溢れてるとエミールもかなり戦えるんだなぁ。


『ふむ……予測通りではあるが、相手も簡単に近寄らせはしないか』

『私たちも受けたらそこそこダメージを受ける集中砲火をしているぞ』

『厄介な……』

「前回の戦い、エミールにもっと力を貸して貰っていたら良かったかもな」

「なんだな。あの戦いじゃオデ、足でまといだったんだな。ムーイの姉貴の方が力を出せるんだな」

「単純な力はムーイの方があるぞーでもエミールだからこそ、出来る事もあるから今、ユキカズがエミールと一緒なんだぞ」


 そうだ。

 適材適所、エミールにしか出来ない事がある。

 ムーイの分裂体に俺が寄生して手立てを増やすって手もあったけど、それ以上に今のエミールが出来る事がある。

 物質変化で防御するより植物操作しながら前に進んで行けるのが今回は有利だって事だ。


「ギャウ」


 ドシンドシンと健人とラルオンをコックピットに乗せたバルトが俺たちの後に続く。


「なんつーか思うけどよ。竜騎兵よりも小柄な連中なのに竜騎兵よりも戦闘力がある。異世界の戦士に求められるスペックをあいつ等、息をするようにやるようになってるよなー」

「ケント、YOUも下手な魔導兵や竜騎兵より戦闘力あるYO? 劣悪品にME乗ってた事あるから知ってるYO」

「へいへい、元々軍人の正式な冒険者様は詳しい事で、横からお客様の登場だぜ。歓迎会に涙が出そうだな」

「OH! わくわくするNE! 生憎、こっちもプレゼントFOーYOUだYO!」


 ズバァっと流れるようにラルオンが操縦しているらしきバルトが横から現れたミアズママッシブと言う……筋肉質な人型のグロテスクな魔物を真っ二つにして流れるままに俺たちの後ろについてくる。

 しかしまあ……瘴気の密度が濃いなぁ。

 瘴気をぶち抜いて砲撃や熱線が放たれるけどこっちが魔眼で状態異常を周囲にばら撒こうとしても遮られてしまっている。

 と言うか……どいつもこいつも目が無い。


「目が無くて視線合わせられないなー、実は目があるとかだったら魔眼で色々と仕掛けられるってのに」

「メタって来てるんだろうよ」

「ムーイの力で目を作るかー?」

「何その攻撃、ムーイ……無理に魔眼で状態異常にするより叩きつけた方が早いぞ」

「わかってるぞー」


 相手をムーイの力で目を生やす……どんどん体中に目が生えてくるとか気色悪いにも程がある。


「おい元目玉の化け物、現新たな神獣。前にやって無かったか? 体中から目を開くやーつ」


 ……まあ、俺も前にそういった事が出来たのは否定しない。

 目が多ければそれだけ魔眼が出せたから。

 しょうがないだろ出来るんだから。

 今は寄生した相手の額に宝石を出してそこから魔眼とか出せるだけだしー。


「健人、五月蠅い。戦いに集中しろ」

「冒険者様が操縦してるだけだからやる事ねえんだよ」


 現状、戦いに参加とかする状態じゃないのは間違いないか。

 ここで外に健人が出ると瘴気でダメージ受ける。死ぬような事はないけどさ。

 装備で多少は対策出来るけど意味はあんまりないよなぁ。

 ここで皮肉でも返すか。


「コックピットで大人しくキャンキャン吠えてるんだな。ポチ」

「てめぇ! 言うに事欠いて俺を犬とでもいう気かこの野郎!」


 だって狼ってカテゴリーで犬だろ?

 戦場を駆ける犬ってなんか絵になるけど健人だとなんか引っかかるんだよなぁ。

 これはあれだ。普段の女好きが印象を悪くしてるんだろう。


「しかし随分とお相手はやる気じゃねえか、どんだけ砲撃が飛んでくることやら」

「戦場に少数突撃なんて英雄譚みたいDANE!」

「お? 冒険者様は経験無いか?」

「あるYO。あれは中々の激戦だったNE。ケント、YOUは無いのかYO?」

「あるに決まってんだろ? あっちの異世界で起こった復活した魔王って奴の本拠地に挑む時にな」


 雑談しながら戦っているラルオンはバルトを上手い事操縦して俺たちについてきている。

 やっぱりラルオンの操縦技術は目を見張るものがある。

 バルトが分析した際のシミュレーションでかなり強かったけど本物はそれ以上の実力を持ってると思える。

 戦いの申し子ことムーイが苦戦するくらいには操縦が上手いんだ。


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