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三百五十六話


「更に厄介な事にこの塔から毒素……瘴気と呼べる代物が空気中に散布されてて徐々に領域を絶賛拡大中。今の所、都市の方の結界を突破する事はないけど毒性はお世辞にもよくはないかな」


 ピピっと俺の鑑定で塔から毒素が放出されているのを確認出来ていてみるみる広がって行っている訳で……。

 生態系にどれだけ打撃を与えるか、いや、変化を与えるのかって言えるくらいヤバイ代物だ。

 座学で迷宮内にこういった瘴気を放つところがあるって話は聞いたことあるけど、こんな所で放出されるとは溜まったもんじゃない。

 少なくとも近隣の植物、昆虫、魔物が汚染されて死ぬか異形化しつつある。

 どこぞの腐海みたいな形相になりかねない代物だ。

 挙句、環境内の生物じゃない場合は弱体化のバフまで施されるし……神獣類にもある程度、効果があるっぽい。

 どうも相手はこっちの神に対して色々と対策をしていたようで、切り札を切ってきたって事で良いのかね。


「放置してたらこの世界中に広がりそう。厄介極まり無い」

「ったく、危機を乗り越えたら次の危機が舞い込んで来ましたってか! 相手のやり口が一々えげつねえ」

「冗談じゃすまないNE……この瘴気はME達がどうにか出来るのKAI?」

「健人やラルオンは……素直にバルトに乗っていた方が身のためって所」


 鑑定で健人やラルオンがあの瘴気に耐えられるかを確認すると見事によろしくないと判断出来る。

 神獣になるとこんなことまでわかるって便利で良いね。


「逆にバルトクラスの竜騎兵とかなら問題なく活動できる。ダンジョンの瘴気空間を動けるなら、問題なしってライン」

「ヒュー……笑えねえな」

「ムーイはー?」


 ここでムーイが手を上げる。


「ムーイは全く問題ないだろう、もちろん俺もね。エミールの場合は……エネルギーを増やすと毒無効付くから問題ない。それ以外は厳しいって所だ」


 俺とムーイ、エミールは平気って所で人員が相変わらず絞られる。


「きゅー」

「ラウはもちろんダメ。オウセラ有りでも危ない」

「きゅー……ボクも一緒に行きたいー!」


 ラウが駄々を捏ねる。

 気持ちはわかるけどさ。


「瘴気ってムーイの力で消せないのかー?」

「ムーイの力の量にも寄るけど、出来そうか?」

「うーん……ある程度は普通の空気に出来るけど届く範囲があるぞー」


 ムーイの周囲は浄化可能かもしれないかー……それも戦闘が入ると意識し続けるのは難しくなりそうだし、あまり良い手ではないよなぁ。


「この瘴気をどうにかしないとなぁ……」

「でだ……偵察してたらな」


 記憶している映像を俺は魔眼でみんなに見せる。

 偵察してた俺目掛けてなんか飛ばされたからなんだと思ったら丸いマシンミュータントの核みたいなのが俺の目の前に堕ちてきた。

 そのマシンミュータントの核の目玉みたいに目を開いて立体映像を映し出したんだ。

 そこには目から機械で構築された顔みたいな奴が姿を現してな。


「ギギ――まさかお前が異世界から召喚された素材の成れの果てだとは思いもしなかったぞ。確か最後の神獣に選ばれた奴だったとはな!」

「へぇ……俺の正体をどうやって知ったか教えて貰って良いかな?」


 何処からそんな情報が漏れたのか、まあこの世界の人たちの中に知っている人が居るし、何らかの手段で漏れる可能性はあるからそこまで驚きはないけどね。


「邪神に優遇され変異の末に生み出された化け物が! だが、今度は勝てると思わんことだ。ふふふ……この汚染された地と空気は始まりだ、この世界の変容を見ているがいい!」

「させると思うか?」

「邪魔をしたければ掛かって来るがいい。出来るのならな! 古の邪神の使徒にして化け物に成り下がった素材よ。こちらの決戦兵器が完成する様を見ているが良い!」


 で、ボン! っと弾けた。

 なんともヤケクソな事でとは思ったけれどどうしたもんかね。

 しかもその後は塔から俺目掛けて滅茶苦茶、熱線と言うか魔法や大砲が放たれて迎撃しようとしてきた。

 殺意が高かったぞ。



 魔眼で映した映像はここまでだ。


「決戦兵器ね。お相手さん、何が目的なんだろうな?」

「追い詰められてヤケクソになってるように感じるYO」

「そこはそうなんだけどさ……この塔がな」


 瘴気は出すわエネルギーは吸うわで厄介なのは間違いない。


「神獣様とムーイの合体変身でヴァイリオでも呼び出して一気に行けばいいんじゃね? それくらい力を持ってるだろ」


 健人がぶっちゃける。


『お? 出番か?』


 ヴァイリオがアップを始めた。割と乗り気なのはどうなんだろ?

 空気的に落とし穴と言うか罠に掛かりそう。


『そうだな。調子に乗るなヴァイリオ』

『だが私の出番がありそうな雰囲気じゃないか』

『いや、ここは私が出る番だ』


 ローティガがヴァイリオに注意しつつ自己主張した。

 違う。そうじゃない。


『何を言ってるんだ。順番に決まってるだろう?』


 ペリングリ、それも違う。

 圧倒的な力で相手を蹂躙出来るかって事なんだけど……こう、こっちの手札が一部相手に判明している訳で。


「そりゃあそうだが……あの瘴気、神獣に効果があってさ。どうも神獣への対抗策にでもするつもりだったんじゃね?」

「そういえばダンジョンから出土する魔導兵や竜騎兵の武装に魔王に効果的な粒子散布装置とか聞いた事があるYO。それに近い代物じゃないかYO?」


 昔からそんな兵器があったのかねー。


「で、成分に関しては分析自体は割と簡単に出来るし、ムーイの耐性面が強力だから変身と言うか召喚自体は問題ない……ま、やってみるのが良いか。防衛設備の的にされるだろうけどヴァイリオ達からしても多少痛いで済むだろうし」

『痛いで済む……指摘した方が良いか? これは』


 だってしょうがないじゃないか、変身すると大きくなるんだからさ。


「圧倒的な力で蹂躙出来るってのは楽で良いじゃねえか。楽しそうだなおい。分析して対応可能ってよ。マジ化け物、味方でよかったぜ」

「健人……俺をどこぞの魔王にでもさせるつもりか?」


 ヴァイリオ達にもそれっぽい事言われたんだけどさ。

 最後の神獣に選ばれた存在だから見て凌駕するって能力は兼ね備えているのかもしれないけど俺の選択はあくまで良い人の力になるだからな?

 むしろムーイが凄いんであって俺じゃないんだぞ。


「すぐに片づけるぞー!」

「ああ……まあ、それでも良いかもしれないけどさ。ラウ。オウセラは呼べるか?」

「きゅー。うん。起きてると思うから呼べるー」

「じゃあムーイ」

「わかったぞー」


 と言う訳でムーイにラウを抱えて貰ってオウセラを呼び出してもらう。


「まったく……次から次へと困難が舞い込んでくる。相手も手が早い事だ」

「それでオウセラ、とりあえず俺とムーイ、聖獣たちの力で叩こうと思うんだが行けると思うか?」


 呼び出されたオウセラにそう尋ねる。

 今のオウセラは先の戦いで集めた力の源でパワーアップしているムーイが力となっているので迷宮種としての力が存分に発揮されている。

 森の賢者だったっけ、相談事に関しては的確な助言をしてくれるだろう。


「正直、瘴気の妨害を受けて聖獣たちの攻撃を耐えきられてしまうのは元より半端な攻撃は吸収される。君が神獣由来の力を吸収するように」

「まあ……」


 聖獣って竜騎兵より若干大きい程度で俺たちが直面している建物はそれよりも遥かに大きい。


「ワシの能力による回答では、様々な迷宮種や魔物、聖獣を素材にして構築された物質だ。破壊するのは骨が折れるだろう。何より地脈からエネルギーを吸っているので自己再生能力も高い。無駄に力を消耗するし吸収される結果になる」


 なるほど……そういえばバルトを発見した時の建物を思い出すなぁ。

 確かフィリンの話だと動力部に獲物を放り込んで稼働する生体工場で自己再生もするとかそんな話をしていた。

 それに近い性質をあれは持っていると。


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