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三百五十四話


「おー」


 ペロっとムーイが俺の作った甘い毒を舐める。

 するとビリビリっとムーイが目を大きく見開いてペロペロとなめ始める。


「おおお、これがエミールが、感じている、感覚、なのかー?」


 ぺろぺろとされてかなり擽ったい。

 と言うかそのまま噛みつかれて食われそう。

 ブワッとムーイの毛が逆立っている。


「きゅー。ボクもー」

「ラウはダメ。これは毒だから」


 そんな美味しいもんじゃないだろうし、ムーイにだって限度があると思う。大丈夫かと凝視してムーイの体調を確認している。

 まあ、ムーイって恐ろしく頑丈な体をしているので俺の毒なんて屁でもないみたいなんだけどね。全属性に耐性持ちだ。

 おそらくエミールも俺の毒は効果が薄いし強化すると毒無効が付くから舐める事は可能だ。


「きゅー! ムーイお義母さんだけ羨ましいー!」

「ワガママ言わないの。ムーイだから出来る事だし」

「そうだぞラウ、お前のパパママが楽しい事をしてるんだから凝視しちゃダメだぞ」

「そうだNE! BOYには早すぎるYO!」


 って、健人とラルオン! それはどういう意味だ!


「ん……」


 夢中で舐めるムーイに健人がニヤニヤして見てる。

 その目つきをやめろ。ラウを見えない様にリイとカトレアさんに渡すな。見ようとラウがもがいてるぞ。

 ラルオンもサングラスを掛けなおしてニヤついてる。

 みんな黙って見てるんじゃない。


「あらあらまあまあ」


 ……こんな周囲に人が居る所でやるもんじゃなかったと今更になって後悔してきた。

 やがてチュパっとムーイは毒腺から口を離した。


「んー……元気は出るけどームーイはユキカズが作ってくれたお菓子の方が好きだぞー」

「オデのとは違う感じなんだな?」

「すごく味は良い、何も知らないムーイだったらもっと欲しいって思うけど、今のムーイは作って貰うお菓子の方が好きってだけだぞ」


 どうやらムーイへの刺激はエミール程ではないという事らしい?


「な、なんだな……ムーイの姉貴、凄いんだな」

「なんとなくエミールの感じている感覚はこれなんだって思うんだぞ。これはきっと凄いんだぞーだけどムーイはユキカズが作ったお菓子が好きってだけー」


 どう判断したら良いんだ?

 ムーイの反応が淡泊過ぎてよくわからん。


「これもこれでムーイ、ドキドキするから良いと思うぞー。強く成れるけど、ムーイが嬉しいって気持ちがこれだとちょっと違う様に感じになるんだぞー」

「この反応の違いは、アレだ。雪一、そこのカエルは変化を抑え込んでるからより刺激を直接受けてるって事じゃねえか?」

「ありえるYO。刺激への耐性が低いんだYO」

「な、なんだな。オデももっと強く成れば気にならなくなるんだな? ユキカズの兄貴の強さに追いつく前に壊れちゃうと思うんだな」


 エミールの今の姿が弱いからかー……それもあり得るかなー。と言うか悔しいと思うようなことな訳?

 ムーイって元々強い迷宮種だから今の俺が好みの味を受けた際に受ける刺激が抱え込める範囲だったみたいな。

 で、ムーイが俺を抱きしめる。


「えへへーなんかこれも良いと思うぞー」


 ……あんまり深く考えない様にした方が良いと思う。


「毒生成や毒使いってスキルなんだろー? じゃあ次はエミールの番だぞ」

「え……!? なん、だな!?」


 エミールが信じられないというかのような顔で俺へと視線を向ける。

 健人がラルオンと同じくOHって感じに両手を上げてるよ。

 うん。別に卑猥ではない。俺が出した甘い毒の試食をムーイはしているだけであるだけだから!

 藪を突いて蛇を出してしまったと思う他ないぞ。

 スイートソムリエ、ムーイによるスイートポイズンの試食現場なだけだ。


「ちょ、直接舐めるのはユキカズの兄貴だけにしてほしいんだな!」

「エミール?」


 何を言っているんだお前は? いや、言わんとしている事はわかるけど。


「おーわかったぞーじゃあ早く出して欲しいぞー」

「ユキカズの兄貴! 甘い毒の出し方教えて欲しいんだな!」


 必死の形相でエミールが俺に毒生成での甘い毒の作り方を聞いた。

 こうして……ムーイは俺とエミールが作った甘い毒の違いをスイートグロウに登録することが出来た訳だ。

 ちなみにエミールの毒腺は背中にあってそこにコップを当てて出したぞ。

 なんだろう……すごくいけないことをしてしまったような錯覚を覚えるようなやり取りの所為で俺もエミールも何かごっそりと消耗してしまった気がする。

 エミールに至っては太ったと言って困っていた分、消費したかのようなやつれた表情をしていた。


「ユキカズとエミールとで甘いが違ったぞーそれと出てくる力の差もー確かにユキカズの方が凄いぞー」

「そうか」

「なんだな……」


 こう、安易に毒で甘みを作るもんじゃなかったんだろう。

 レスティさんとかから母乳を貰ってそれで乳糖を生成したりしたんだけど、それに匹敵する感覚がバグっている気がした。

 大丈夫かな? なんかこう……健人やラルオンの反応からしていけない事をしてしまったような気もする。

 ただ……まあ、エミールにスイートレッドベリィをお願いするのと同じ能力由来の生成なんだしおかしくはないんだ。

 ムーイは甘みって所で強化される迷宮種で、エミールは虫を食べる事で強化される迷宮種だった、ただそれだけさ。

 アブラムシの甘露みたいなムーイの強化案か……。


「甘い調味料確保に毒の使用は……視野に入れるべきかもな。こう……毒って獲物の分解効果もあるし、甘みへの変化毒のしようをね」


 アントラインの毒とかそう言った効能があったはずだ。

 ムーイの強化案として未知の甘み調味料も菓子作り研究に必要かもしれない。


「ユキカズが作ってくれるお菓子でも十分だぞー? まだまだいろんなお菓子があると思うからー」

「甘みは甘みって事を言いたいみたいだぜ?」

「そもそもムーイは自力で砂糖を確保できるんじゃないかYO? 魔物でもなんでも変化させてNE?」


 まあ、ムーイのとどめの攻撃で物質変化を魔物に施せばなんでも甘みには出来るか。

 出会った時に既にやっていたっけ……フライアイボールをスペルオレンジってのに変化させていたし。

 確かにムーイのスイートグロウは変化させた魔物の甘みでも強化される代物だったけどさ。

 むしろ上昇量は魔物を変化させて食べても低い感じではあった。

 しかも本人曰く、強い魔物を知っている甘いものに変えてそこそこ程度だったし。

 ……うん。深く考えずに自作でお菓子をムーイに食べさせるで良いかもしれない。


「お菓子のネタ切れしないか怖いがやっていくしかない」

「ネタ切れするのかお前、まあムーイの反応からして何作っても満足して貰ってそうだが」

「不満を言われた事はあるぞ」

「キノコをキャラメルにした奴は違うぞー。あれはそんな美味しくなかったぞ」


 まあ、あれは手抜きも良い所ではあるからね。


「甘ったるい考察はこれくらいにして、仲が良いのは良い事じゃねえか」

「相性が良かったってのは否定しない」


 思えば遠くに来たものだ。

 この前、最初の基地にいったん戻ったからこそ思い出すね。

 ムーイの好みとかから来た関係が今になるとね。


「そんな訳で、これから相手がどんな手を使ってくるかわからないから出来る限り戦力の増強に努めないといけないね」


 俺の直感でいろんな菓子を作ってムーイの強化、エミールも併用して強くなって貰い、敵が攻めてきたら返り討ちにしつつ最後の聖獣の奪還ってね。


「歯痒い状況だNE!」

「相手の居場所を特定出来たら苦労しないんだけどさ」


 なんて言いつつ、本日の実験を終えてその日は過ぎて行った。


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