表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/394

三十五話


 ブルが兜にしていた鍋の蓋みたいな物を被せて煮る。

 ああ……小麦粉とか米が見つからないだろうか!

 などと内心愚痴りつつ出来あがった即席鍋を全員で食べた。


「味は悪いけど、非常時は何でも美味しいね」

「ブー」

「希少な薬草を惜しげもなく使っていますしね。結構、香草が入っていたので美味しかったですよ」


 そう? 舌がバカにでもなったんだろうか?

 なんとなくホッとする。

 やはり非常時とはいえ、飯を食うというのは重要だ。


「ふー……」


 緊張の連続でウンザリする。

 で、ターミナルにアクセスしながら腕輪でマップ内に味方がいないかを確認。

 ……俺達が通った所しか地図に描かれていない。

 どうやら今回の大遠征で国はこのマップにまだ来た事が無いようだ。

 ターミナルが他のターミナルと繋がっている前提だけど。


 しかし……結構くねくねと動いているな俺達。

 最終的に上の階への入り口近くまでは行けたわけだし、幸運に感謝しなきゃな。

 ……まるで仕組まれたような幸運だけどさ。


「ゆっくり休もう。幾らスタミナ回復が早まっていると言っても限界があるしね」


 ライラ上級騎士が来た際の事で多少は助かったけど、俺達もそこそこ危険ではあったんだ。

 痩せていたからなー……回復する力があっても元の力がなきゃいずれ倒れるって事なんだろう。

 ……もう少し食べられる物を探しておいた方が良いかもしれない。

 希少な薬草に内包された栄養素が俺達を元気にしてくれるけどさ。


「……そうですね。ダンジョン内の空に変化が無いから気付きませんけど、アレから結構経ってますものね」

「ブー」


 ブルも横になって俺達の話に頷く。

 隠れたりする動作もあるけど、進むのに時間が地味にかかった。

 昼夜が非常に分かり辛い事も然ることながら経験値汚染で感覚がおかしくなって食欲が麻痺していた。

 定期的にレーションや生でも食べられる草や薬草で飢えを抑えていたけど。


 ダンジョンに放置されて何日経過しているのやら。

 仮眠を取った回数を基準にすると……三日か?

 もう少し経っている可能性は高い。


 そんな感じで雑談をしていたらうつらうつらとして来て、俺達は寝てしまっていた。





 どれくらい経ったかは分からないけど、ターミナルの結界のお陰でそこそこ休めたようだ。


「さてと……ターミナルで安全を確保できたわけだけど、これからどうしようか? ここで救助まで待つ?」


 ゆっくりと休んだ俺はこれからの方針を尋ねる。

 結界の効果がある安全なエリアからわざわざ出るというのは愚かな事でもあるだろう。

 救助が来るまでここに隠れるという手段が現実味を帯びてくる。


「確かにそれも手ではありますね。難点は維持に必要な魔石の確保ですが」


 フィリンが定期的に魔石を補充していたのは知ってる。


「ここのターミナルは魔物から隠れるためには燃費がかなり悪いですね」

「……結局は弱い魔物を相手に狩りをしなきゃいけない感じ?」

「はい」


 まあ、ブルと俺が居ればそこそこどうにかなりそうな気もしなくもないけど……。


「考えは悪くないと思います。ただ、それもこの辺りの探索をしてからで良いのではないかと」


 確かに……救助を待つにしてもね。


「後、私が魔法の練習をして風の魔法を習得して熟練度を上げれば、あの高さに届かせる事はできると思いますし」

「籠城をするにしてももう少し調べてからで良いと」

「はい」


 確かに……勝てないぐらい危険な魔物がいない事は無いけど、気を付ければどうにか生き残れるような余裕がある。

 スキルを振る事でより効率よく戦えるようになったと思うしね。

 試し切りというわけじゃないけど、少し探索範囲を増やしても良いかもしれない。

 それで帰路のオイルタイマーが見つかれば儲け物だ。


「ブー!」


 ブルもやる気なのかオルトロスのピッケルを担いで鳴いている。


「よし、じゃあ少しこの辺りを調べてみよう」

「はい!」


 そんなわけで……俺達は向かおうとしていた謎の白い建物の方へと向かった。




 考えてみればゲーム風で言うところのターミナルってセーブポイント。

 ダンジョン前や重要施設の前には親切に設置してあるよね。

 そんな感じの場所だったんだなーと……ターミナルの位置を思い出して俺は感じていた。


 俺達の目の前にあるのは……うん。

 何かの人工的な建物としか言いようがない場所。

 入口はたぶん、分厚い障壁で遮られている。

 一枚目の防壁は既に壊れているのか開いてる。

 隣には……会社のビルみたいなボタンが並んだインターホンっぽい何かがあるし。


「フィリンは何か知ってる?」


 さすがのフィリンもよくわからないってところかな?

 何か会社ロゴの名残みたいな後があるけど、風化していてなんて書いてあるのか判別できない。


「ダンジョンの構造学という本で読んだ物だと何かの施設タイプだとは思います」

「ふむふむ……で、どうやって入ろうか?」

「ブ!」


 ブルが建物の上の方にある穴っぽい場所を指差す。

 確かに、登れそうだ。

 結構高そうだけど、空中にある謎の入り口(24階への道)よりは行きやすいね。


「と言うか、入る方向で良いのかな?」

「帰路のオイルタイマー探しをするなら良いかと」


 まあ、そうなるか。

 こういった重要施設の中にあるアーティファクトでもあるわけだし。

 階層的に外れレアとなっていたとしても、そっちの方が俺達には都合が良い。


「じゃあとりあえず……外から入るよりも一枚目の防壁から中を確認してみよう。みんな索敵をお願い」

「はい」

「ブー」


 フィリンとブルがそれぞれ一枚目の開いてる防壁から先をサーチする。


「何もいないみたいですね」

「ブ」


 二人の意見は一致しているようだ。

 トラップの気配も……無いな。

 見た所だと何らかの防衛装置があったのだろうけど、壊された残骸がある。

 配線ケーブルの様子からセントリーガンみたいだなーとか友達がやっていたゲームから連想してしまう。


 恐る恐る中に入って様子を見る。

 キノコとかは生えてはいないけど、レッドクリスとブルーレベッカという調合で傷を治すのに良い薬草が生えていた。


 採取をしながら中を確認。

 ただ、中はそれだけのようだ。

 結構厳重な建物なんじゃないだろうか?


「ブ」


 コンコンとブルが壁を叩いていて、何か気付いたっぽい。


「どうした?」

「ブブ」


 ブルが壁を叩くと他の壁とは異なる音がする。

 安易な表現だと壁が薄いって奴だろうか?

 よく確認すると何か補修したような柔らかさを感じる気がする。


「壊せそうか?」

「ブブー!」


 任せろと言った様子でブルがピッケルを構えて……呼吸を整える。

 全身の筋肉が高まって水蒸気を纏っているように見えるぞ。力溜めとかの技かな?

 結構な時間、ブルがそこで力を溜めていた。


「ブウウウウウウ! ブ!」


 やがて、大きく跳躍する。

 そして大きくピッケルを振りおろすとガリガリと壁が削れる音が響いた。

 破砕系の技だと思う。ターミナルで習得したんだろうな。

 やがてブチっと壁が壊れるにしては妙な音がして壁に僅かに亀裂が入った。

 俺達が身を小さくして入るのにギリギリ入れそうな隙間ができている。


「ブ! ブ!」


 少しばかり亀裂を広げてブルは仕上げとばかりに俺達の方を向く。


「おお……」

「強度的に魔導兵の主砲は必要かと思いましたが……」

「壁相手なら動かないし力も溜め放題って事なんじゃない? 実戦じゃ難しいから使わないとか」

「ブー!」


 あ、俺の意見が正解のようだ。

 ブルが俺を指差して跳ねてる。


「とりあえず、入ってみようか。かなりギリギリだけど」

「はい」


 少なくともこの穴の小ささじゃまず魔物も入ってこられないだろうしね。

 そんなわけで俺達は穴を潜って中へと入った。

 中は……薄暗いな。

 だけど人工物的な物に、今までのサバイバルな状況とはまた異なった緊張感が湧いてくると同時に、少しばかり安心を覚える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
イラストの説明
― 新着の感想 ―
[気になる点] 設定とか展開は面白いんだけど…。 登場人物の台詞がちょくちょく違和感があるんだよかぁ。 例えば今回の希少な薬草を惜しげもなく使ってます、とか。 読んでて気になっちゃって内容に集中できな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ