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三百四十五話


「戦い方がなんか思い浮かんでくるんだな。でもオデ、これを出来るか不安なんだな」

「こんな感じになる」


 落ちてる枝を拾い上げて剣にしてライラ教官仕込みの剣術、主に突剣系の構えを取る。

 うん……今まではムーイを操った際にやっていた豪快な剣の振り回しによる攻撃ではなく技術重視の戦い方だ。

 シュンシュンと軽く枝を振ってエイミングと言う突く技を放って一歩踏み出し、横に枝を振るう。

 大きな風切り音が響いてアクセルエアが飛んで行った。

 他にサマーソルトとかバク宙なんかも軽やかに出来る。

 体が軽い軽い。

 いや、まあ……人間だった頃の俺がこんなポンポンとやっていたかと言ったらやってないけどね。

 羽が生えて空を飛べるようになってから気軽にやるようになってしまった。

 ちなみにムーイは運動神経が良いのでよく跳ねる。

 ムーイに寄生しているうちにやり方を覚えてしまった。


「な、なんだなぁ!?」


 あ、エミールが思わぬ肉体操作に目を回している。

 ただ、エミールもカエル型の迷宮種、ジャンプに関しちゃ割と前からやった事がある分、驚きも少な目だ。

 とにかく、実にこの姿……中々軽くて扱いやすい。

 魔法援護の観点からからすると今までとは別の戦い方だけど嫌いじゃないなぁ。


「み、見えるし出来ると思うけど、オデ……こんな動き出来るんだな」

「ちなみに所持スキルにソードマスターってのが出てきたぞ」

「それ、マスタリースキルでも中々取るのが大変なスキルだYO」

「あーなんか見たな。確か剣修練を10まで取って他にも面倒な条件の流派を複数習得する剣豪とかその辺りを取ってやっと至る奴だ」


 ちょいちょいとウォーミングアップの相手とばかりにラルオンに手招きするとラルオンも乗ってくれて枝を構える。

 ムーイが相手をしたいと指さしてるけど次な? ラルオンなら組手のやり方わかってるのでやりやすいんだ。

 さっとラルオンが突いてくる枝を……見切りで交わして避けられるように枝でスイング。


「大蝦蟇ってスキルが今回のルートだとカエルの騎士ってのになってる」

「そうだNE。文字通り騎士の動きになってるYO。トツカはライラ仕込みで叩き込まれているから実にそれらしいNE」


 避けさせて反撃のさらに見切りでこっちも紙一重で避ける。ラルオンの速度に合わせた型での動き、本気になれば簡単に枝を弾けるけど模擬戦闘なんだから加減している。

 使える魔法は……大蝦蟇仙人のルートとは異なり攻撃魔法より補助魔法の方が多い印象か。

 攻撃力や守備力、速度なんかも上げられるのが揃っている。


「エミール、この動き。出来そうか?」

「が、頑張れば出来るんだな……たぶん、なんだな」


 自信無いかー……まあ、エミールには向いてないかな。

 フレーディンの闇雲な力片重進化とは逆にエミールはスレンダーな進化になっていくみたいだ。


「得意な魔法は補助、自己能力を引き上げるのが多いみたいだぞ。ブレスは……音波系でこっちは元々出来る奴だったか。秘孔って兵士だったら習得推奨スキル所持、疾風と来て……近接戦闘向けだぞ。水の上も水渡りで歩けそうだ」


 うーん……これも良いなー。

 イケメンのキリっとしたエミール。

 まあ、あんまり本人には向いてないのもわかってる。

 エミールって魔法とかでみんなを守るのが本人としての戦い方であるのだし。


「ユキカズの兄貴がオデを使って戦う時にこの姿が良いのなら良いと思うんだな」

「ま、そうなるか。ちなみに……フェロモンってスキルもあるみたいだぞ」


 さっと、試しに発動させる。

 うん。エミールの体から魅了効果のある匂いが周囲に展開された。


「う……てめぇ」


 あ、健人は狼男だから匂いに関しちゃ敏感か。


「OH、魅了を放ってくる魔物のスキルだNE。人間にも効果があって下手に掛かると一時的な誘惑状態になって心変わりしちゃうYO」


 ラルオンは効果なしと言うか精神で耐えきった感じかな。


「きゅー……」


 で、またもラウには被弾してしまったようでふらふらとムーイの腕から抜け出そうとしている。

 男女関係なく効果があるスキルのようだ。


「なんかカッコいいーっきゅー……」

「ユキカズのお陰でエミールが別人みたいだなー」


 で、ムーイに関しちゃ全く効果が無さそう。


「ユ、ユキカズの兄貴、その力を放出し続けるのやめて欲しいんだな。なんか町の人たちに当たったらクコクコさん達がもっと集まって来そうなんだな!」

「似た種族だから効果高そう。味方なら能力アップとかも掛かるっぽいぞ」

「本当にやめて欲しいんだな!」


 ありゃ、エミールが本気で嫌がっている。


「ま、マジでその体臭を広げるのやめろ。臭いんだよ! うぐ……」


 健人は本当、鼻が良いんだなぁと思う。と言うか掛かりかかってるから臭い言ってるんだろうなぁ。

 ちなみに俺は効果が無い。ヴァイリオ達、聖獣もレジストしてしまうだろう。

 ヴァイリオは魅了の魔眼を健人に放ってからかった事があったっけ。


『ふふ、あれはあれで中々面白かった出来事だな』

『新たな神獣は気に入った者たちが魅力的になる事を好む傾向があるな』


 そりゃあな。だってエミールは良い奴だし、良い縁とか来てほしいだろ?


「ユキカズの兄貴! 本当、やめて欲しいんだな。ケントの兄貴の呼吸が荒くなって来てるんだな!」

「大丈夫だ。健人が頭振ってるだろ? 結構意志強いから慣れると平気になる」

「この野郎!」


 案の定健人は掛かりかけたけどすぐに平静になった。

 洗脳魔眼が僅かしか効果が無い健人だからな。地味にレジスト能力が高い。

 ま、エミールが本気で嫌がる事をいつまでも俺はしないのでフェロモンの発動を解除した。


「意志が強けりゃこの程度の状態異常は大したことないって事だ。何か使い道あるかねー」

「オデが出来る事だけど、薬の材料が頭に浮かんで来るんだな……でもこれって欲しがる人居るんだな?」

「どんな薬なんだ?」

「惚れ薬だと思うんだな」

「そりゃあ俺のいた世界だと沢山欲しがりそうな品だー」


 エミールって薬学に関しちゃ凄まじい代物を息するみたいに作れそう。

 素直にすごい。


「ま、エミールの変化はこんな感じに変える事も出来るぞ」

「この姿をオデ、使いこなせないんだな」


 慣れりゃ出来ると思うけどね。

 ああ、ブルが狼男姿で鍛錬している時のカッコよさをエミールからも感じられて俺は良かったかな。


「ユキカズの兄貴、早く戻して欲しいんだな」

「はいはい。ちょっと残念だけど出力をさげてー」


 って形でエミールの姿がボンっと戻る。


「これで終わりなんだな?」

「いや、まだある。そこは……どうもデリルインの力の源からくる変化みたいだ」

「まだあるのかよ……」

「そういうなよ。これくらい迷宮種ってのは可能性の塊だって事だろ。手早くやるぞ」

「な、なんだな」


 エミールも困っているのがわかるから手短に進化させてみる。

 するとー……デリルインの影響で出し入れ出来るようになった吸盤付きの尻尾の機能が頭に移動し、頬にエラが生える形に体が変化していく。

 手足も短くなっていくけど……なんだ?


「サハギン系の特徴が出てきたな。けどなんか違うな」


 ああ、半魚人みたいになる進化なのかな?

 しかもエミールの体の軟体具合が増しているように感じる。

 かなりグニグニで……なめくじやカタツムリみたいだったデリルインの特徴が強めに出ているようだ。


「なんだな? なんか頭に被りたい気がしてきたんだな」


 と、エミールは収納していたらしき箱を吐き出して頭に帽子のように被る。

 とりあえずそのまま一気に進化させた結果……雪だるまみたいな体形、出会った頃のムーイと似た感じの姿で箱を被る姿になった。

 耳とかは長くなく太ったカエルとサハギンの混合な感じだけどさ。

 箱は仮で被っている。

 この体形はムーイみたいで悪くないなー。


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