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三百四十三話

「ラウの坊ちゃんごめんなさいなんだな。オデの実験でフラフラさせちゃったんだな」

「きゅ? エミールの息、いい気分だったっきゅ。大丈夫っきゅー」


 グッとラウが親指立てて宥めている。

 気にするなって配慮してくれるいい子だね。


「あっぶねー! おいカエル、リイやカトレアにそれ使って襲い掛かるんじゃねえぞ!」


 狼男が何かボケを抜かしている。


「後は雨雲を呼び出せるとか」

「確かに簡単に呼び出せるんだな」


 指でなぞるだけで雨を降らせるようだし、畑に水をやるとかする場合は便利そう。

 コストが殆ど無く使えるぞ。

 砂漠とかでも使えたらかなり強力なスキルだろうなぁ。


「生命の雫と蝦蟇の油」

「あ、これはオデ、わかるんだな。傷を治せる薬を体から出せるようになるんだな。植物さんに任せる時のをオデが出来るんだな」


 ここはいばらの魔女のスキルによる理解が働いているようだね。


「オデが出す薬効と植物さんの薬を合わせればもっと強い薬が作れるんだな。例えばユキカズの兄貴程じゃないけど別の種族に変身できる薬とか、頭に浮かんでくるんだな」


 変身薬って奴ね。

 なんか座学で聞いたことがある。ダンジョン内にはそういった薬も見つかる事があるって。

 エミールはそういった薬も自作出来るのね。


「じゃあ健人、お前は狼男じゃなく別の生き物にでもなって貰うか」

「なんでだよ! 別に困っちゃいねえだろ。むしろ雪一、お前こそ人間になれる薬を作って貰えればいいだろ」

「ユキカズの兄貴を人間にする薬……」


 ぱちくりとエミールが所持するスキル内にあるレシピを検索しているのが寄生しているからわかる。

 それと同時にエミールが俺の分析をしてるっぽい。


「ユキカズ人間になりたいのかー?」



 ムーイが俺に聞いてくる。


「そりゃあいずれは……戻りたいとは思うけど今じゃない」


 ムーイを苗床に進化した時の出来事を思い出す。あの時も進化の可能性に人間に戻れるってのがあったけど……俺が求めるのは良い人がしっかりと報われて欲しいという願いだ。

 今、人間に戻れたからって何なんだ。困って無いから後回しで良いんだよ。

 そもそも進化してればそのうち人化とかできるだろうと思ったけど結局出来ずじまいでこんな姿になっちゃったんだよなぁ。


『人間に戻るか……神はあまり人間に良い感情を持っていないので難しいと思うぞ』

『そうだな。その点は間違いない』

『この世界の者たちは別だがあちらの者たち、人間と言う存在を嫌悪しているのは間違いない』


 嫌っている割には俺をからかっているのは何なんだ?


『変わり者だからだろう』

『その辺りも謁見を果たして尋ねてみるのが良い』


 はいはい。


「薬の作り方は閃いたけどユキカズの兄貴だと効果は……無い気がするんだな」

「気にしなくて良いさ。ムーイもな」

「良いのかー?」

「今のところはね。そこまで重要じゃない」


 まあ、見た目だけでも戻れたらとは常々思うけど。

 頑張れば見た目だけなら出来るだろ。

 そうでも思わないとやってられない。


「そんで次は仙人って露骨なスキル」

「聞いたことがあるスキルだYO。弛まぬ訓練を続けた修行者が習得できるスキルだNE。変わった魔法や術を使えるようになるらしいYO」


 ああ、そっちの異世界でも存在するスキルなのか。

 スキルを鑑定も……ある程度、実は出来るので確認するとラルオンの言う通りの魔法資質や周辺の力や魔力、龍脈のなどの流れを感じ取れるようになるスキルのようだ。

 雲に乗る力にも影響を及ぼしている。と言うよりこの仙人から発生したスキルのようだ。

 隠者とかそういった代物とエミールは縁があるんだろう。

 いばらの魔女と言うメインスキルからもエミールらしい側面かな。


「いきなりたくさんの事が出来るようになっちゃって目が回るんだな」

「それくらい、いきなりの強化だからなーしかもこれはエミールが意識して選んだ成長だろ?」

「そうだけどわかんないんだな。ユキカズの兄貴はいつもこんな風にいろんな力を手に入れて駆使して凄いんだな」

「俺の場合はなんとなくでできそうなスキルを使いまわしているだけだぞ。よくわかんないスキルは手つかずだ」


 迷宮王の加護とか機械仕掛けの神を討つ者とか鑑定しても名前以上の効果がわかんないし。


「そんなもんじゃね? ゲームとかであるだろ、俺が知るのだと愛とかよくわかんないステータスがあるゲームとかあったぞ」


 愛って何そのステータス。レトロゲームだな。間違いない。


「ムーイはそのステータスを沢山強化したいぞ」


 ムーイの剛速球は聞き流そう。お願いだから上げすぎて俺に依存しないでくれよ?


「後は……強酸とかは俺も所持していた事があってわかるから割愛して武具合成とキメラ合成ってあるけど何だろう?」


 そう思ってスキルを鑑定すると……様々な武具類を合成する、異なる性質を持つ武具類を合成すると記されていた。

 キメラ合成ってキメラを作り出すスキルではないようだ。


「それってミクスエスケープロッグの特殊能力じゃないかYO!?」


 ラルオンが身を乗り出す勢いで言い放つ。

 なんだっけ? その魔物。

 なーんか覚えがある気がする。座学で聞いた凄く珍しい魔物だったような……。


「ああ、雪一がその魔物と出会ったら何が何でも解析させるのも良いと思った魔物だな」

「健人も知ってるのか? なんだったっけ?」

「ああ、ミクスエスケープロッグって魔物はな。別名動く希少宝箱、ミミックも良い物を持ってるが、そんなのとは別格の……武器に強力な効果を付与を施せる魔物だぜ」

「強い魔物が手に入れた品を収納して力を強化してるってのがあるけどそれよりもいい品を持ってる?」

「イエス! 武器や防具を食べてその力を元に生きている魔物なんだけど倒すと核となっている一番強力な武具にそれまで取り込んだ力が全部宿るんDAYO!」


 ああ、つまり武器合成能力……ゲームのやりこみ要素に必須な魔物なのね。

 ドロップは魔物が収納している代物が死ぬと同時に解ける現象で、合成はより深い体の中に入れて起こす代物か。


「問題は養殖不可、ダンジョンでも稀にしか遭遇できない遭遇した冒険者は何が何でも仕留めて中身を頂く、中身が無いなら良い物を食わせて数日様子を見てから仕留める事で一攫千金が出来るお宝魔物って事だぜ」

「ま、欲をかきすぎてEATさせた宝物パワーでパワーアップしたミクスエスケープロッグに返り討ち、めでたくEATされちゃうなんて話もあるNE!」


 HAHAHAってラルオンが笑ってる。

 冒険者によくある笑い話なのかねー……欲深い者には相応に報いがあるって感じで。


「それをエミールが出来ると、となると任意に武具を合成して貰えるなら便利か」

「上手く使えば強力な武器が作れるYO。例えば切るごとに傷を治す治療効果のある武器とか、この辺りの品はミクスエスケープロッグを上手く使って生み出される武器だNE!」


 あー……なんかそれは町の武器屋とかの目玉商品にあるオプション効果で見た気がする。

 ブルと一緒に見て高いなーって思ったのを覚えてる。


「な、なんだな? してほしいならオデ頑張るんだな」

「問題は取り出すときに内臓に引っ付いていて殺さないと取れない所なんだZE。夢はあるけどトツカの友達の命を天秤には掛けられない。素直に魔具を取り込んでパワーアップが良いと思うYO」


 ラルオンがニカっと笑って遠慮してきた。

 なるほど、取り出す際に件の魔物を殺さないといけない訳ね。

 冒険者になる前にこんな姿になっちゃったけどやっぱりあっちの異世界って面白い要素が沢山あるんだなぁ。


「何言ってんだ。ここに寄生生物がいるじゃねえか、力の源のように引きちぎって安全に取り出してくれるだろ」


 健人……ラルオンの配慮を無視して図々しくお願いするなよ。


「な、なんだな。確かにユキカズの兄貴にお願いすれば出来そうなんだな」

「そもそも合成をするにしたって素材とする強力な品ってあるのか?」


 まあ、聖獣事件の前に潜っていた時に見つけた品々があるにはあるけどさ。


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