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三百三十九話



 翌朝。

 救助された人々の治療や復興の手伝いを俺たちはしつつ、聖獣たちが封じた都市の解放を視野に入れる会議に俺は参加する事になった。

 まあ、ヴァイリオやペリングリが命がけで展開した結界があるから都市に残った人々は身を守れているけれど逆に結界から出るのは中々に危険な状況であるのは変わらない。

 一応、都市が陥落に近い状況まで追い詰められていたんだ。

 ターミナルジャンプで都市まで行けれたらよかったのだけど操られたローティガや残りの聖獣が直接乗り込めないように道中のすべての部分でロックが掛けられているようなのだ。

 ヴァイリオの施したコードなので俺は通過可能である。

 ヴァイリオの話だと聖獣なら行ったことが無い場所でも出来るとの話だけど、安易に行ったことのない都市のターミナルに飛ぶのは推奨出来ないとの意見が多い。

 まあ……俺が神獣としての力が強いのでジャンプ先に居る人々はすぐに信用してくれるだろうとの目算はあるけれどね。

 攻勢に打って出るにしても残った聖獣及び敵の基地を見つけて叩かねばならない。

 問題はどこに潜んでいるのかわからないんだよなぁ。

 ローティガと同様の処置が施されているとの事で居場所が座からわからないそうだ。

 ちなみに少人数ならターミナルジャンプが出来るが大人数の移動は出来ない。


「神獣様、これからどのような作戦をお考えでしょうか?」

「重要なのは都市にいる人たちの連絡かな、もちろん継続して敵と捕らえられた聖獣の解放をしていかないといけない」

「この世界の者たちが一丸となって事に挑む所存でございます」

「無茶はしないように」

「ま、結局は奴らの居場所を見つけて叩くしかねえって事だな」


 俺が代表なのは元より、ムーイ、健人、そしてラルオンがこの席にいる。

 ああ、健人に翻訳して貰ってるぞ。

 ちなみに健人は二日酔いで昼まで役立たずだったのは言うまでもない。


「正直、相手が対抗策を見出す前に足早に叩きたい所ではあるんだけどさ」


 ラルオンの証言で敵の前線基地へと偵察に行ったのだけど案の定もぬけの殻だった。


「というか神獣様よーおめーの弱点って何があるのか教えてくれねーか?」

「知ってたら苦労しないだろ」

「ユキカズの弱点かー? 良い人だと思うぞー」

「OH! そりゃあ間違いないNE! 人質作戦が適任だYO!」


 いや……まあ、確かに、俺にとっちゃ一番困るのは良い人と思った者たちを盾にされる展開だけどね。


「となるとみんな、健人の良い女が主に敵に誘拐される展開なんだが……健人、お前が困る展開だな。各地の女を招集しないといけないぞ」

「そうなったらトツカのお眼鏡にかかる事になるNE! どんな子がいるのかホワィ?」

「てめぇら……」


 健人の良い女たちは、まあ性格良い人多いからね。

 この世界では間違いなく誘拐されて盾とか操られたり改造されると困る。


「……拠点防衛は健人とラルオンがバルトに乗って守ってくれるのが良いでしょ」

「はいはい。あー……やっとこさ聖獣に対抗できる竜騎兵を鹵獲できたと思ったのに、もはやそれも不必要ってのはどうなんだ?」

「結果的にとしか言いようがないだろ」


 今やヴァイリオやローティガの力を内包する俺が居れば残りの聖獣単体はどうにかなりそうな雰囲気はある。

 ただ……問題として依然として存在するのは敵がそんな簡単に倒せる相手じゃないって事だろう。

 少なくともこれまでの戦いを上手く乗り越えられたのはみんなが頑張ったからに過ぎない。

 何よりの功労者はムーイな訳で……こういう時、ムーイに相談すると敵の次の考えがわかるかも。


「ムーイはどう思う? 敵がどんな手立てに撃ってくるかわかるか?」

「うーん……ユキカズの仲間たちの力を使うっていうのもユキカズには通じないのを敵はもう知ってるだろー? で、ユキカズに聖獣の力が集まってるのもわかったと思うぞ」


 俺が困る作戦を練って来るを考えるって中々に難しいなぁ。

 こっちは知っている前提がある訳だし。

 相手がこっちの事情をどこまで把握しているかで読み違いもありそうだ。


「でも、ユキカズが元々どんな生き方をしていたか敵は知ってるのか?」


 敵はあくまで俺がどんな神獣なのかのスペックしか知らない。

 遠目で見ていた程度じゃ難しいよなぁ。

 で、敵に改造された連中は情報を持って帰る前に仕留めた訳だし、現状でもその手の改造をしているやつにはジャミングとハッキングが可能……少なくとも俺がどんな神獣なのか、背景まで知っておくのは難しい。

 とは思うけれど……それもどこまでか。


「あれだ。藪を突いて蛇を出すって感じだろ。聖獣を操って暴れてたら新しい神獣が誕生する現場に遭遇したとでも思ってんじゃね?」

「敵も苦しい状況にまで追い詰められているって事だNE」

「そりゃああれだけ総力戦を仕出かして敗北したんだ。むしろ捕まえた聖獣をそのままあっちの異世界に連れてくとかの方があり得るんじゃねえの?」


 確かにその可能性の方があり得るなぁ。

 少なくともあっちの世界に潜伏している勢力であるわけだし……ハッキングした基盤に載っていた情報からしてもなぁ。


「結局は情報収集しかないか……その間に都市の解放及び避難、もしくは物資運搬が無難か」

「すでにこの町が抱えられる人員は限界を迎えつつあります。安全を求めて神獣様の元へと人々が集まるのも時間の問題にもなりえましょう」


 俺を頼りに人が集まってくるって事?

 ええ……いつの間にか俺が矢面に立ってるんだけど不安になってきた。

 ヴァイリオの強さに圧巻してサポートが精々だったのがいつの間に……寿命を削る異世界の戦士の力で命がけの戦いに挑んだ時のような状況を思い出す。

 ただ、あの頃とは課せられた期待や出来ることが大分違うけどさ。

 結局今の俺は借り物の力を振るっているに過ぎないのだけど……。

 あー……ライラ教官の配下だった頃は楽だった。改めて実感したけどヴァイリオ達が健在だった方が気楽で良いよなー。

 単純に俺たちが挑むってだけのポジションだから深く物事を考えずに済むし。

 本当、ヴァイリオ達には早く復活してほしいなー。


『そこまで正直に思われてしまうのはどうなんだ? ヴァイリオ』

『ははは……君らしいと言えば君らしいのかね。心の声と言うのが聞こえるのは難儀なものだ』

『元々人間であるからなのだろうが実に複雑な考えを持った者だな。行動と考えが結びつけるのが難しい』


 だって、俺ってもっと気楽にいい人の力になりたいんだもん。

 卑怯かもしれないけど責任を完全に被るのとは違うと思うんだ。

 支えるなら面倒な事でもやるけど矢面にたって全面指揮ってのは柄じゃないんだ。

 そういう意味ではどれだけ進化しても俺は兵士なんだよ。

 面倒な事が片付いたら元の異世界で冒険者業をやってブルやフィリンとエンジョイ生活をするんだって夢があるんだけど、叶うか

なー。


『無理だ』

『自身の状況を理解しろ』

『我ら以上の力を持った存在だぞ』

『人間共の世界でいう所の魔王ではないのか?』


 ええい、聖獣共が脳内ツッコミをしてきて五月蠅い。

 俺のささやかな夢を壊すな。


「さっさと敵を見つけてサクッと仕留められるなら仕留めたい」


 ああもう……神もさ、俺の視線や思考を盗み見るのは程ほどに自分の世界をどうにかしろよ。

 進化してからはあんまり声をかけて来なくなったけど、ヴァイリオ達へ配慮でもしてるのかね。


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