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三百三十八話


「もちろん、ムーイの姉貴に寄生するだけで良いならそれが一番なんだな」


 念のために確保って事であるのはわかるが……。


「別にエミールが本気で嫌ならしないぞ?」


 先ほどのルセトさんたちとの出来事が脳裏を過る。

 俺ってムーイに始まりエミールに寄生した影響でこういうのが付きまとっているんだよなぁ。


「本気で嫌だとは……思わせてくれないのがユキカズの兄貴なんだな」


 そんな困ってるけど嫌じゃないのを絞り出すような感じに言わないで欲しいんだが。


「ユキカズの兄貴の味、本当にすごくて兄貴が体に入った時、オデ……放心するのを抑えるのが大変なんだな。操って貰えてなかったら体中から何かあふれ出るくらい、すごいんだな」


 まあ、寄生した際にエミールの体の様子はある程度把握してる。

 とはいえ迷宮種の感覚をつかみきれておらず、すごく気分が良いというのは聞いたけどさ。

 エミールは思いやりがあるから俺を食べるってのが嫌なんだろう位は理解しているんだけどさ。

 寄生する度に強くなっているのなら良いと思うけどね。

 何よりエミールのストレスが解消されるのはわかっている。


「まあ……この体の実験にエミールもして貰う可能性は無くはないか」


 何事も実験は必要だ。

 何が出来て何が出来ないのかがある。

 そもそも迷宮種がどんな存在なのか俺も理解しきれていない。

 神って奴に会えば教えてくれるだろうが……まだ聖獣をすべて救えていないしラルオン達を操っていた連中を駆逐できていないんだ。

 気を引き締めておかないといけない。


「無理にしなくても良いんだな、ムーイの姉貴が居れば十分だとはオデも思うんだな」

「いや、ムーイもその辺りは考えるだろうなぁ。覚悟はしておけって」

「な、なんだな」


 ムーイは戦いの申し子、俺に引っ付いているムーイも休眠状態ではあるけど把握はするはず。

 もちろんムーイに寄生した状態での変身を使えば消費を軽くしてヴァイリオ達を呼び出せるんだからそれが一番ではあるのだけどさ。

 この変身の拡張性は相当だからなぁ……分析してポイントを振り込まないと変化できなかった時よりもはるかに万能だ。

 ちなみに前からある分析からのポイントでの変化も据え置きで使う事は可能だ。

 こっちはポイントを稼がないといけないから余裕のある時にやらないといけないんだけど……確認した所、コストは大幅に下がっている。

 俺自身の進化が影響しているのだろう。

 まあ、この強さに関しちゃ、借り受けているヴァイリオ達の力をいずれ返したら使う様になるかもしれない。


『返す気全開だな』

『キミが好きに使ってくれて良いが……座から戻るまでその分、時間は掛かるか』

『いつ戻れることやら……先行きが不安なのは間違いない』


 ヴァイリオ達のエネルギーから解析を進めているが、それでうまくヴァイリオ達を復活させれれば良いんだが。

 ともかく、エミールなりの傷跡を残す手段と俺に寄生してもらう通路の確保なのねそこは。

 そんなに嫌なら虫系を使わない宝石姿になって飲み込んで貰うって手もあったんだけどね。

 エミールなりの配慮に合わせるのが良いか。


「ユキカズの兄貴が受け入れてくれるなら……オデの力の源だって持っていて欲しいとすら思うんだな」

「いや、それは重すぎるだろ。死ぬぞ」


 エミールの源と言うか……どうもムーイの話だともう一人の自分のような代物らしいんだけどさ。

 体と源で分離させることが出来る代物らしいのだ。

 魂……ともちょっと異なるんだよなぁ。解析した感じだと。

 いや、魂でもあるのだけど分離する魂と言うか。

 体の方のムーイと力の源のムーイと別れていて、俺が体の方に寄生してつなぎ止め、カーラルジュに捕らえられ溶けそうになっていた力の源のムーイを助けた影響で一つに戻ったって話なんだけどね。

 そういえばムーイも自身の力の源を俺の中に入れようとしたんだよなぁ……そうポンポン入れて良いものじゃない。

 だってお前たちの心と言うか魂だ。

 重すぎる……おそらく俺の中に入れるだけでずっと俺と一緒である事にはなるだろうけど。

 上手く構築するとヴァイリオ達の今いる状態にまで出来そうな気はする。


『そうなのか? ここに……?』

『座からアクセスできると思ったけれど想像以上に変わった場所なのだなここは』

『ムーイがここに来るのか、雑談相手には良さそうだな』

『中々に賢いのでここに住んでもらえば良いのではないか?』


 聖獣たちが賛成だと思っているが……よくないだろ。

 オウセラなら……とは思うけどさ。ただ、やっぱり俺の中で見る事しかできない状態はさ。


『思ったより不便ではないぞ。娯楽になりえる。神獣様方の気持ちがわかる』


 はいはい。聖獣たちはそうなんだろうけどね。


「そこはムーイの姉貴が持っている質を落とした力の源をこのオデの中に入れておけばきっと死なないんだな」


 体が死なないから大丈夫と言う考えは良くないと思う。

 うーん……。


「その方法を使えばユキカズの兄貴、ムーイの姉貴やオデにも変身できそうなんだな」

「まあ……出来るとは思う」


 単純にエミールが増えるみたいな変身が出来るようにはなるとは思う。


「気持ちは受け取っておくよ」

「ユキカズの兄貴と出会ってオデ……強く成る事、虫さんを食べる事、いろいろと怖い事があるんだってわかったんだな。でもそれ以上に楽しい事、大切な事が増えたんだな」

「俺はエミールが自称するほど弱くない、やっぱり良い所が沢山あるのを知ってよかったと思っているよ」


 出会った時のムーイ曰く、かなり弱い迷宮種だって言ってたけど侮れない能力をしっかりと持っていた。

 必殺と呼べるくらいの切り札を持っているし、ムーイ程じゃないけど頑丈、何より根が心優しい。

 これで嫌うなってのは無理がある。


「俺のミスでつけた傷を誇りだって言うけど、俺からしたらエミール、お前の優しい所こそ誇りだと思うぞ」

「ユキカズの兄貴にそういって貰えると嬉しいんだな」

「ああ、ここが正念場。聖獣たちを助けて世界の危機を解決したら神って奴に会わないとな」


 初心を忘れてはいけない。

 俺は元の異世界に、ブルやフィリンのいる世界に戻らないといけない。

 どうもこの世界を救うだけで解決しそうにない問題であるようだし。


「……なんだな」


 ちょっとだけエミールが遅れて頷く。

 エミールだって神様にあって平和に過ごせる場所を用意して貰うのが目的なんだ。

 フレーディンと見た夢が叶うのを俺も見届けたい。


「エミールがその傷を大事にしたいのはわかった。そんで夜も更けてきたがエミール、お前はこの後どうするんだ?」

「オデはみんなの薬を作るんだな。夜の方が捗るんだな」


 そういえばエミールは夜目と言うか夜の方が活発に動いている気はする。


「程々にするんだぞ? 何かあったらしっかりと休んで飯を食えよ」

「ユキカズの兄貴が用意した鱗粉入りのお菓子が残ってるから疲れなんて一瞬で吹き飛ぶんだな」


 栄養剤じゃあるまいし、そんなやばい程の劇物なつもりは無いんだけどなぁ。

 そんな感じに……夜は更けて行き、朝になっていくのだった……。


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