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三百三十話


「ラルオン、話を続けたいんだが……敵がどんな連中なのかは分かったけれどその頭とか組織とかは分かってるのか?」

「その辺りは命令されていただけだからあまり詳しくないYO。けど……頭は間違いなく人間じゃないし、ユキカズの言う迷宮種でもNOね。竜の魔王とも、この世界で語られる神獣の勢力でもないと思うYO」


 まあ、そうだろうとは思うけど竜の魔王ってなんだっけ? フィリンあたりが詳しそうなワードだなーなんかそれっぽい歴史の話をしてくれたような気がする。

 なんかその辺りも無視できない勢力としてありそうだけど今回は気にしない。


「……さすがに神って奴は今回の敵がどんな奴なのかを知ってそうだし……ラルオンも知っている範囲の限度がある。それこそ聖獣を全部正常化したら問い詰めてやるよ」


 ラルオンは先兵として洗脳されていただけみたいなもんだからなぁ。

 収集できる情報も限度がある。


「ソーリーね。もっと有益な情報を渡したかったYO」

「別にいいさ……」

「MEはユキカズに助けられてラッキーだったYO。あの時のMEのパーティーのみんな……生きてたら利用されてると思うとハートエイク」


 ラルオンは藤平とあのヒス女だけが仲間じゃない。

 一応パーティーで活動していて、俺の知らない仲間がいたはずで藤平にみんな殺されたという話だった。

 おそらく……ラルオンと同じく死体を搬送された後に改造されて利用されているんだろうというのは想像に容易い。

 氷山の一角って事なんだろうなぁ。

 みんなどこかで操られていると思うと頭が重い……。


「何にしてもユキカズ=トツカ、YOUは十分過ぎるほどに活躍してるYO! ライラも鼻が高いNE」

「きっと怒ってると思うなー……やりたい放題だし」


 結局命令無視だったし。


「じゃあさ、この世界に来てから奴らの基地とか作戦内容とかはわかるだろ?」

「イエース。奴らの基地は分かるYO。けどMEだったら作戦失敗と判断したら即座に場所を変えるYO」

「そうだろうなぁ……とはいえ何か見つかるかもしれないし後で確認には行く」

「目的は分かってる。この世界を支配するって言うのは間違いないNE」


 敵勢力の目的はそんなチンケな目的で動いてるのか。実に面倒だなぁ。

 そんなもんに俺たちは巻き込まれたって事なんだな……。


「あ、じゃあこれはどう? ユキカズ、YOUはあのローブの奴のネームは知ってるKAI?」

「いいや? 異世界の戦士の力を集めてパワーアップして名前もなんもよくわからなかった」

「アイツは、仲間内のコードネームかわからないけど、こう呼ばれてたYO」


 あの神を僭称したローブの野郎の固有名詞ね。

 いったいどんな名前だったんだ?


「ムーフリス。大迷宮と同じ名前なのは何なのだろうNE?」


 という所で俺もムーイに視線を向ける。

 そういや戦った迷宮種もムーイの事を知ってるような態度だったよな。

 あのローブ野郎ってムーフリスって名前だったんだなとは思うけど……なんで同じ名前?


「ムーイの名前か? なんで同じ名前なんだー?」

「ムーイも本名はムーフリスって言うんだが……」

「ちょっと話をしたら別人だってわかるYO。どうもみんな個性的な能力持ってるみたいNE。彼女と使う能力絶対違ったYO」

「そうなのか? というかアイツはどんな能力持ってたわけ?」

「権力者を騙す話術が能力だったみたいだYO? バカにされてたYO」


 ああ、なんか不自然なくらい暗躍が得意な奴だったけどそういった能力だった訳ね。

 フレーディンとかの能力はターミナルの結界をすり抜けるとかだったようにアイツもその手の戦闘向けじゃない能力持ちだったんだろう。

 力の源を確保出来たらある程度推測は出来そうだが……。


「迷宮種共の能力が童話とかに由来した名前であるとしたら、フレーディンは長靴を履いた猫って所じゃねえの? 口八丁で周囲を騙して主人に富を与える話だしよ」

「なんだな……」


 ああ、エミールを騙しているし町にも騙して侵入したと考えるとそれっぽいか?


「童話って権力者を騙す話結構あるもんな」

「そうなると……ありそうなのは裸の王様に出てくる機織り職人かね」


 はは、推測だけどそれっぽいな。


「けどなんでだろうNE?」


 割とそこは本気で謎ではあるんだが……よくわからないんだよなー。


「同名の迷宮種とかそんなところなのかね? もしくはムーイの分身の成れの果てとか? 俺に会う前にどこかで分裂しててさ」

「え……それだったらやだぞ……」


 ムーイが心の底から嫌がってる。

 もともと分裂能力持ってるからあり得ない話じゃない訳だけど。


「その可能性はまあ低いだろうな。神って奴の声が時々俺も聞こえるんだけど否定してたし」

「そっかーよかったーでもムーイと同じ名前ってのは嫌だぞ」


 あいつ、世の中呪っているようだったな、そういえば……あれは黒幕から付与されたものなのかあいつ自身が持っていた感情だったのか。所属組織の迷宮種内でも虐められていたっぽいんだよな。

 ……わからないな。

 ただ、少なくとも同名のムーイがこうしてみんなと一緒に笑っていられる光景はきっと良い事なんだと思う。

 どうかずっとムーイは笑っていてほしいな。

 一番傷つけたことがあるのが俺だってのは、どうしたら良いんだろう。

 はぁ……俺も臆病な所が自己嫌悪だ。

 健人並みに気楽に出来たら良いのかな……よくないと思うんだけどなー。

 少なくとも何も知らないムーイに選んでもらうのは絶対違うと思うんだ。


「まどろっこしい。オウセラに聞けば良いだろ」


 健人がここで間に入って来た。ああ、思考が脱線してた。

 確かに考察をいくらしても答えなんてもう出ないか。

 まあ、その辺り物知りな能力持ちのオウセラに聞くのが早いか。

 と……うとうとと仮眠していたラウへと視線が向く。

 ぼんやりとした目でラウが口を開いた。


「同一の名を持つ迷宮種は居る。が、所有する能力も強さも異なる。その意味は階層から何まで異なる。ここにいるムーフリスの方が君たちの話す……ムーフリスよりも格がはるかに、上だ――」


 っとラウを介してオウセラが説明しているのだけど声が掠れて行く。

 連続稼働をした所為で休ませないと答えてくれないか。


『知りたかったら僕のところまで来たら教えてあげるよ』


 ……ここぞとばかりに神らしい奴が言いやがる。

 気にするだけ無駄ってか? ならサッサと教えりゃ良いだろうに。


『君が倒した彼なんてね。実に大したことない存在さ。けど神を僭称した時点で許す気はないね。ああそれと能力名は当たりだよ。彼の能力名は『裸の王様を騙す機織り』さ』


 神を僭称した故に許さないとは……まあ、そんなものかね。

 それと……このステータス欄、こいつが命名してる疑惑が浮上してきたぞ。


「名前被りはあるのか」

「マジで紛らわしい」

「でも異世界の戦士たちも能力かぶりがあるんじゃないかYO?」


 ラルオンの指摘でふと思い当たる。

 そういや健人が同時期に臨界に達した同じ異世界人の話をしたっけ。

 おそらく俺と同じ神獣に選定されたって……そう考えたらかぶりがあり得るか。

 ……バルトから後で聞いて資料を照らし合わせればわかりそうだ。


「ま、何か気づいたり思い出したりしたことがあったら教えてくれ」

「もちろんだZE!」

「次はバルトだけど……バルトの場合は操られていて情報収集している範囲も限られているんだったか」

「ギャウ」


 肯定とうなずかれてしまった。


「ある程度は分かっていることもあるけれど、ラルオンと大差ないようだし……結局は操られた駒から得られる情報は一部って事なんだろう」

「ギャウウウ……ギャウ!」


 バルトに関しちゃパーツが色々と改造されているのだけど、今はなんか出会った頃のバルトを彷彿とさせる顔つきをしている。

 元々テスト機で情報収集が目的の竜騎兵となる試作品だったんだったか。


「ま、今の俺はバルトに頼らなくても戦えるから、健人とラルオンを頼むぞ? もちろん、頼りにしている」


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