三百二十五話
「感謝したいところだYO。ところでーモンスターのYOUだけどー聞いていいかいYO?」
「ああ」
「YOUとは前に会ったことある気がSUるんだけど、その時は人じゃなかったYO?」
「正解。俺としては貴方様のような方を相手にどのような仕事が出来るのか見当が付かないですってね」
前にそういって断っただろ?
「さっきの善人って所に拘るのはMEが知る限りユキカズ=トツカしか知らないNE。その断り方も実にそうだネ!」
「証拠のお菓子食べるかー? 味は劣るけど信じてくれると思うぞーこれは偽物だけど風味は似てるはずだぞ」
ムーイがこれ見よがしにここで土からクッキーを作ってラルオンに渡す。
それで通じるの?
「本当はもっと美味しいぞ?」
ラルオンは渡されたクッキーを少し齧る。
「ちょっと知ってる味より香ばしさと味が薄いYO!」
「ごめんなームーイ、再現すると本物より悪くなる」
「でもこれ以上ないのは間違いないNE! YOU、ユキカズ?」
こんなやり取りでよくわかったな。俺って。
「――危ない!」
ムーイがサッとラルオンを掴んで移動する。
するとラルオンのいた所に触手がちょうど伸びていた。
く……復帰して来たかドラゴン・ミュータントパラサイト。
しぶといなこの野郎……と、思った直後、ドラゴン・ミュータントパラサイトが何か掴んで触手の中に入れた。
俺は見えた。ラルオンが所持していた異世界の戦士の武器だ。
「グギギギッ!」
カッとオーラをさらに増したドラゴン・ミュータントパラサイトがパワーウォールクラッシュを放ってきた。
「させるか!」
ムーイとラルオンを守るように俺は前に立って魔眼で障壁と作り出す。
それと同時に二人を抱きかかえるように耳を広げて準備し、障壁が砕けると同時にブリンクで飛んで避けた。
「OH! あいつ、逃げるYO!」
「待て!」
「あ!」
「ギイィイイイ! ギ――」
っと、ブリンクで跳躍した隙をついてドラゴン・ミュータントパラサイトがナンバースキルを使って結界をぶち破り……はじけた?
いや、異世界の戦士の武器と機械パーツにエネルギーが宿って流星となって飛んで行った。
ただ、目視できる範囲に落ちて行ったぞ。
どうなってるんだ?
「おい! いつまでも悠長に戦ってる暇はねえぞ」
声に目を向けると結界の外で健人が走って後方を指さしている。
追撃に出ていたってのに何を……と思ったが後方で何か来ているように見える。
そういえば後方で援護射撃していた迷宮種たちはどこだ?
いつの間にかいなくなっていた。
そして……なんだ? まだ遠くだけど、無数の人と肉塊……?
「うう……」
「ああ……」
「た、助けて……」
「ああぁ……」
助けを求める肉塊にくっついた、この世界の人々がうごめいて波のように流れ込もうとしている。
あれは……なんだ?
「OH……あれを投入してきたんDANE。マジでヤバイYO」
「なんだアレ……」
「MEにこんなことをした奴らがこのワールドの生き物たちを捕らえてつなぎ合わせた化け物YO。今だとわかるけど胸糞悪いね」
「スライム系の災害でああいった化け物ってのは出てくることがあるけどよ。見ろ」
健人とラルオンが指さす先には……魔獣寄生型NO,3の反応がある。いや……なんか名前が変わる。進化したのか?
マシンミュータント・機械仕掛けの天使。
機械仕掛けの天使……ね。物は言いようだな。
「オウセラの野郎に言われて偵察をしてたらアイツらの後方にあんな代物を用意していてよ……やべぇなと思って後方指揮をしている奴の妨害してたんだが、色々と逃げ回られてあのザマだ」
呻く人々を思うとなんて胸糞悪いんだよ。
あれは非人道的な化け物と形容するしかないぞ。
……もしかしてヴァイリオを生け捕りにして寄生改造した後、人々はあの肉塊に取り込んで捕獲するつもりだったのか?
なんのため? 使い道は色々とあるのか?
迷宮種たちの餌は元より人体実験の材料とか……ラルオンに仕組まれていた基盤のデータを抹消したけどログが確認できた。
……おぞましい計画で動いてやがる。
命をなんだと思ってんだ。
「あの肉塊自体を指揮している代物も居て、そっちはどうにか壊せたんだけどよ。止めとばかりにエネルギーが降ってもう一体がパワーアップしてぶっ壊れた奴のパーツを取り込んでってな」
『く……なんともおぞましい代物を投入してくるものだ』
『手立てが無いわけではなかったんだが……』
『そうだな。ヴァイリオ、あの手の魔物が出現した際にはお前が担当だったはずだな』
『まあな、私の光ならばどうにか出来たんだが……ユキカズ、私の力を再現して散らせるか?』
ああ、ヴァイリオなら対処できるのか。
ヴァイリオの力を俺自身が使えるかと言えば一部使用可能ではある。
だが……あのサイズとなると厳しいな。
「ああなったらもう倒すかアウェイしかないYO……」
確かに座学で大型のスライムがダンジョンからあふれ出し村を覆って人々を喰らい尽くしたって事件が歴史であったと聞く。
その際の悲惨な状況は文章でも伝わってくる話だった。
確か竜騎兵とか炎の魔法で周囲のすべてを焼き尽くして被害を最小限に抑え込むのが精々だったという話だ。
「けどYOU、君は諦めるような人じゃないNE」
「よくわかってるじゃないか。な? ムーイ」
「うん。ムーイ……あんなこと、絶対にしないぞ」
ムーイはスライム系の特徴を持つ迷宮種、真似しようと思えば同じことが出来るのかもしれない。
だからこそ、あんな真似はさせられない。
俺が出せる手札は何枚もある。
スライムコア系に変化して逆に引っ付いて操る……あの巨大な津波のような肉塊のすべてを操るのは難しいのは何より、肉塊であっても逆支配が出来るようになるのに多少の時間が掛かる。
しかも敵は異世界の戦士の力と聖獣の力でブーストしている。
単純に攻撃として使ってくると俺は吸収できないし、能力上昇でブーストしているから押し負ける可能性はかなり高い。
で、安易に攻防をしようものなら肉塊に取り込まれた人たちに被害が及ぶ……下手に動くだけでも大ダメージを今でも受けている被害者たちを……どうにか助けたい。
だから悠長に寄生合戦なんて出来ない。
肉塊とマシンミュータント・機械仕掛けの天使は土煙を上げて町の方へと一歩、また一歩と歩みを向けている。
このままじゃみんなに多大な被害が及びかねない。
「動きを止めるにしてもあの巨体を相手にどうしろってな。雪一、お前らならどうにか……って竜騎兵があるじゃねえか、どうなんだ?」
ラルオンが搭乗していた竜騎兵を健人が指さす。
確かにあの竜騎兵が使えれば、対処は大分できる。
「いきなり降ろされた後に機能停止しちゃったYO。上手く動くか試すしか――」
と、話をしていると竜騎兵が動き出した。
自立稼働で更なる敵として戦わなきゃいけないか?
とりあえずササっと寄生してシステム周りを沈黙させないといけないかも知れない。
と、思った直後、肉塊を睨んだ後に俺たちに向かって屈んだ。
そして俺を凝視して鳴く。
「ギャウ」
それからほほ笑んで、コックピットを開いて乗り込むように腕を広げていた。
「どうやら乗せてくれそうじゃねえか」
「MEと操っていた魔物が外れて再起動してたんだZE!」
「んじゃ早速乗せて貰おうじゃねえか。あ、てめえは操られてたんだから無しな」
「OH! そりゃないぜフレンド! 何も戦う手立ての無いMEに黙って見てろってDOGのYOUは言うかい?」
「誰が犬だコラ! 引っ付くな! くっそ、なんだこいつ!? 馴れ馴れしい挙句妙に力がつえー!」
ラルオンが竜騎兵に乗り込もうとしている健人に縋りつくように引っ付いて懇願している。
なんていうか……こういう所、ラルオンっぽいなと思う。
健人が振り払おうとしているのに剥がせないくらいには力というか絡み方が上手い。
これもある意味、元軍人枠の冒険者だったって事なのかね。
もしくは改造の影響か。





