三百十八話
「く……力が足りないが、これで少しでも――」
オウセラが舞い降りて翼をかざすと風の障壁が生成されるが突き破られてしまった。
そのままラルオンが俺たちの前に突撃し、剣で叩き潰さんとしてくる。
残った尻尾でみんなを守るように――。
と、動いた直後。
「なん――だな!」
どん! っと全身を使った突進を巨大化したエミールがラルオンの竜騎兵目掛けて放って突き飛ばした。
「はぁああ!」
で、ナンバースキルを使用しているムーイがよろめいたラルオンの竜騎兵にブルクラッシュでたたきつけを行って更に跳ね飛ばす。
「これでも……喰らえ!」
俺は魔眼を開いてあふれ出すエネルギーで強力な極太の熱線をぶちかましてやった。
カッと下手したら消し炭になりかねない程の威力が籠ったレーザーがラルオンの竜騎兵を焼き焦がすが、土台が俺だからか焼き焦がしても即座に再生してしまう。
く……奪われたエネルギーが悪用されてる。
しかも俺の魔眼が反動で焼けてしまった。
全身が死ぬほど痛い。いや……このままじゃ死ぬかもな。
今度こそヤバイ。
『はやくその力を解放しろ』
『君じゃ抱えきれない。爆死したいのか!』
って頭の中でヴァイリオたちの抗議の声がうんざりするくらい聞こえてくる。
うるさいな。お前らの所為なんだぞ。
俺に後を託すとかやらかそうとしたからこうなるんだ。
謝りながら死ぬなんてことを俺は許さない。
「OH……素晴らしい連携だYO! ギギ――ここまでやられるなんて想定GAI!」
「早くユキカズを安全な所に逃がして!」
「だが、ムーイ!」
「早く! 話はそっちのムーイがするし、今そこに居られるのが困る!」
ムーイがそう、強めの口調で言い切った。
で……ムーイに向けてオウセラが何かを落として受け取り、俺を掴んでからみんなに渡した。
くそ……どうにかヴァイリオたちの仇は取ったのにまともに戦う事すら、いや……戦う事は出来るんだ。
「ええ、わかったわ」
「そうね。早く行くわよ」
「エミール、君がみんなを避難させるんだ。私が彼を掴んで急速離脱する」
「わかったんだな」
今更オウセラが俺を掴んで羽ばたき、町の方へと飛び上がる。
で、エミールは遮蔽物とばかりに植物を生やして煙を発生させてからみんなを連れて逃げ出した。
まだムーイが戦っているって言うのに……。
「随分と無茶をしたものだ。出力の所為で読み違えたのを謝罪せねばいけないが、そこまでやるとはね」
「うるさい。これが俺だ」
俺自身の無茶でどうにかなるならやってやるしかないだろ。
「このままだと君は死ぬぞ? 早めにヴァイリオたちから手を放してそのあふれ出す力を放出すべきだ」
「それは受け入れられない。受け入れたら神への扉が開く、そうなったらこの世界はどうなる」
「……消滅する前に神の元へと行けばいい。扉をくぐれた者たちは生き残れると私は読み取った」
「ダメだな……それじゃあどれだけ犠牲が出るかわからない」
ごく一部の者たち以外を切り捨てろとか到底受け入れられない。
「まだ敵は彼だけじゃない。この先に居る奴は……私もケントたちが見つけるまで読み切れなかった。あれは……あまりにも惨いのが蹂躙する為に来る」
「なんだよ。随分と行列じゃないか。次は何が来るんだ?」
「……」
オウセラが視線を逸らしている。
なんだよ。とんでもない奴が来るみたいだな。
「今は君が少しでも生き残る方法を考えなさい。アイツは世界と共に消してあげる方が救済だ」
話にならない説得とも言い難い命令染みた事を言うな。
と会話をしているうちに戦線から離れて町近くに俺は降ろされた。
「ぐ……う……」
く、戦線から離れて緊張が解けたのか全身を貫くような痛みが走る。
これはナンバースキルで臨界を迎えた時以上に、単純な痛みが凄いな。
「ユキカズの兄貴!」
「神獣の申し子様!」
「大丈夫!? みんな! 回復手段を持っている人たちは神獣の申し子様、ユキカズに手当を!」
町のみんなやエミールが俺に回復を施そうとしているけれど、回復するその場で体がはじけるような衝撃が走り、出血する。
「一体どうなってるの!?」
「彼はヴァイリオたちの為に聖獣のすべてを小さき器で抱えている。解放すれば重症から立ち直れるかもしれないが神への扉が開かれ世界が滅んでしまう。それをさせないようにしているんだ」
「そんな……」
「私たちの為に……ああ、神よ」
みんな揃ってアイツに祈りなんてするな。アイツは見てるだけだぞ!
『……』
奴が見ている気配がする。何か言えよと言っても答えないんだろう。
世界の為? 確かにそうだが俺の目的はヴァイリオたちの無念を見過ごせないだけだ。
この痛みから解放される手立てはヴァイリオたちを掴んでいる手を放せばいいだけではあるのだろうがそれは絶対にしたくなんかない。
「このままじゃ神獣の申し子様が死んでしまわれる」
「ユキカズの兄貴! 無茶しちゃダメなんだな」
「悪いなエミール。これが……俺の信念だからさ。良い人だと思った相手の、力にさ……なりたいから」
「だからってそれはダメなんだな!」
「だい、じょうぶ……早く、怪我を治療して、戦場に戻らない、とな」
残った尻尾をくねらせて立ち上がろうとするのだけど上手く行かない。
うぐ……エネルギーが体からあふれて弾けそう。
少しでも気を抜くと確かに死ぬか。
ザザっと視界に砂嵐が浮かぶ。鑑定する目とか能力もエネルギーで焼かれてきているって事かね。
やばいな。
『早く、もう君が爆発するのも時間の問題だ!』
『こんなことをしなくても良い! 早く――』
ヴァイリオたちの声が五月蠅いくらい聞こえてくる。
ああもう、そんな騒ぐな。俺は欲張りなんだよ。
俺よりみんなを助けたい。こんな面倒な理屈を述べずに頑固に、一直線に善人になりたいんだ。
「ユキカズ」
ヌッと俺に引っ付いていたムーイの分身……違う。ムーイの本来の力の源を感じられる。
俺の寄生状態をいつの間にか解除して引っ付いていた?
「ムーイ……一体」
「……すごく嫌だけどオウセラに渡していた迷宮種の力の源とか受け取ってあっちはもう一人のムーイに任せた」
「後は君たちに任せよう」
と、オウセラが言うと同時に変身が解かれてラウと分身のムーイに分離した。そして分身のムーイが本体に合体する。
うわ……やっぱり便利な能力してるなムーイは。
だけどここでどうする気だ?
「お義父さん無理しすぎっきゅ! 死んじゃうっきゅよぉおおおお……」
ラウが俺に縋りついて泣き始める。
「悪いな……ここで引くわけには、いかないんだ」
死ぬかもしれないけど最後まであきらめたくない。
これが俺の選択の結果なら良いとさえ思うんだ。
ああ、成長しない俺が嘆かわしい。
すべて抱え込んで失敗とか無様にもほどがあるんだろうけどさ。
「今のユキカズ、ヴァイリオたちの力に耐えきれない。このままじゃ死んじゃう! だけどユキカズその手を放さないんだろ?」
「そう、だな」
ムーイがラウに離れるように手で合図を送り、周囲の人々を一望する。
俺がみんなを見れるように持ち上げて見せつける。
ムーイが俺に何かしているのか触れている部分はスッとして心地いい。俺の体に頑丈になるような変化を緊急でしてるのかな?
「ユキカズ、このままだとここにいるみんな、無事じゃすまない。だから言うぞ」
「ぐ――な、なにをだ」
膨れたエネルギーで内臓が一部潰れた。
それもすぐに再生させているけれどすぐにまた潰れるだろう。
「ムーイならその力に耐えられる。けどムーイは神獣でも聖獣でもないからバイパスは出来ても上手く受け持つことは出来ない」





