三百十五話
「ギギギ!」
マシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2の金属質の触手が本体に向かってエネルギーをドクンドクンと集約している。
ボコボコと膨れているのが分かる。
ローティガから力を奪って俺を返り討ちにするつもりだな!
「ギィイイイ!」
マシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2の金属質の触手の数本の先からチェンソーが現れてギュイイイン! と音を立てて俺に向かって伸びてくる。
ムーイ!
と、分身のムーイに寄生状態の念話で周囲のマグマのような血液を金属に変化させて貰い、チェンソー部分に絡ませる。
「ギギギィ!?」
予想だにしない周囲の変質にマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2は声を出した。
「させるかコラァアア!」
注意しないといけないのは自爆されてローティガを死なせてしまう。
そうなると座に戻ったローティガにこいつがくっついたまま復活するという事になる。
「ギギギ――!?」
それをさせないために一気に自爆装置を破壊ないし沈黙させねばいけない。
マシンクラックと上級マシンコントロール、更にマシンパラサイトをお前に使って沈黙させてやる!
「体内での攻防は俺も経験はなかったけれど……俺には協力者がいるからな!」
力の供給源のヴァイリオ、そして俺の頼みに協力してくれるムーイ。
後方で俺たちの傷をいやしてくれたエミール。
だからこそ、俺は目の前の奴に寄生をかけてやるんだ。いやいやだったけれど、今回は容赦しなくて良い。
だってそれでヴァイリオの仲間を助けられるならば! この世界で出会った良い人たちの力になるために!
教えてやる。寄生なんて碌なもんじゃない、寄生されることのおぞましさをな!
寄生する機械が寄生されるなんて滑稽なことだ。
「ギイイイイイ!」
予想だにしない自身への寄生攻撃を受け、マシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2が悲鳴を上げているようだった。
まずは自爆装置をぶち壊してやる!
「ギイイ!」
第五神獣の力。
カッと抵抗に異世界の戦士の力を発動させたようだったが残念、使ったその場で俺に吸収されるのはさっきも分かっていたはずだ。
それでも吐かずにはいられなかったか、もしくは防御装置のつもりだったって事か。
バチバチ……と更にエレクトロダイブでマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2の電子空間内へと侵入を試みる。
……何か遠隔通信を感じるが違う……コピーだな。こいつは。ログ映像がチラッと見える。
オリジナルではない。
『おのれ……神に値する私に対抗するためにこんな化け物を作ったか!』
何が神だこの野郎! お前が一体何者かはまだわからないがぶち壊してやろうじゃねえか。
「ギィイイイ!」
『ぐううう!?』
ここでヴァイリオの呻く声が聞こえた。
ムーイから流れるエネルギー経由で周辺把握を行うと、ローティガの体から金属質の触手が皮膚を貫いて生えてヴァイリオに突き刺さり、エネルギー吸収を始めている。
「くそ! やめろ! こら!」
ぶち壊してやろうと電磁パルスと電撃をぶちかますがマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2はダメージをものともせずにエネルギー吸収をぶちかましてくる。
「ギイイ!」
「うぐううう!」
バチン! と恐ろしいほどの力で俺を肉壁に叩きつけた!
うぐううう……痛いなんてもんじゃない。
なんだこの攻撃密度、ヴァイリオからのエネルギー供給でブーストしてなかったら真っ二つになってたぞ。
「お、お前……」
「ギイイイ」
勝利を確信したような目線をマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2は俺に向かって放っている。
が、良いのかな? 俺に組み付かれて色々といじくられたんだぞ?
パワーでは勝っただろうが今の俺はムーンライトプラズマゴーストという機械の天敵、ハッキングした機械にとんでもない代物を仕掛けるのは当然だ。
「3、2、1」
「ギ――ギギギ――」
バチバチバチとマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2が電撃を放ちながら痙攣を始める。
論理爆弾を寄生時に大量にぶちかましつつ自爆装置の破壊を仕込んでやったんだ。
これで奴はまともに戦闘を継続なんてしきれないはずだ。
「ギギ――ギ!」
「くっそやろう! いつまでヴァイリオとローティガのエネルギーを吸ってやがる!」
別回路で行っているらしきエネルギー吸収を次の攻撃で止めようと泳ぎだそうとした直後!
どっくん! っとひと際強い心臓の収縮をしたかと思うと、パッとパーツをパージしてマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2が心臓内から出て行った。
閉じられていた肉壁があっさりと開いてだぞ。
ご丁寧に出て行った後に壁に干渉してきつく締めて凍結させてやがる。
「あ!」
『うぐ……はぁはぁ……お、お前は』
ローティガが寄生から解放されのか声が聞こえてくる。
『騙して悪いな。今は話している暇はない。さっさとお前の体のどこかに逃げたあの野郎を捕まえてぶち壊さないと――』
『ぐあああああ!?』
『『ヴァイリオ!?』』
情報が流れてくる。
ローティガの体を突き破り、ガクガクと視線が定まらず意志を感じずにおぞましい動きをしたマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2がヴァイリオに絡みつき、触手を突き刺してエネルギーを吸い取り始めた。
『ヴァイ――うぐうう』
操られた状態が解除されたローティガがヴァイリオを助けようとしたのだけど動けずに倒れこむ。
咄嗟にローティガのバイタルを確認すると……エネルギーがもう残っていない!?
あいつ、ローティガのほぼすべてのエネルギーを奪った状態で潤滑させていたとでもいうのか!?
だから妙にローティガが電撃攻撃ばかり放つようになってたのか?
解析が追いつき切らなかった……く、逃しちゃいけない奴だった。
後悔は後だ!
「離れろ!」
カッと、ヴァイリオが俺の因子で異世界の戦士の力を発動させてマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2を殴りつけつつ、振り払うようにハンドレッドダガーをぶちかました。
「これも喰らえ! 尊敬に値する我が小さき神の兵士の技だ!」
と、ヴァイリオは目玉のエネルギーエフェクトを発生させて極太の熱線をマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2にぶちかまして消し飛ばす。
「ギィイイイ――」
放たれた光の中にマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2は蹂躙され、吹き飛ばされて転がったようだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「ギギ……ギ……ギギ……」
マシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2が地面に転がり、機能停止……したようだ。
「ユキ、カズよ。早くローティガを」
「ああ、わかっている!」
ローティガが座に戻る際に相手に付けられた部分を除去しておかねばいけない。
その部分の修繕方法はヴァイリオが俺に魔法の力で込めた水晶を持たせていたのでローティガの心臓部でそれを解放させる。
キラキラと心臓部内で弄られたローティガの異常部分に溶け込んでいき、本来の聖獣としての状態へと修復されていっているようだった。
同時に他の機械部分を俺自身が電撃を放って破壊する。
メインで操っている奴がいなければ後は造作もない! ローティガも抵抗しないんでスムーズに解除出来た。
よし! ローティガの救出が出来たぞ。
……ほとんどエネルギーを奪われてしまっていて、ヴァイリオよりもひどい状態になってしまっているけれど。
本来ならもっと、良い状態で救出してラルオンと竜騎兵を相手に一緒に戦って貰うはずだったのに。





