三百五話
「ギャ――ギャガ!」
「ギギ――ギヒャハ!」
「ギギギ――」
迷宮種たちはそんな笑みを浮かべ、ローティガも同様の笑いにもとれる雄たけびを上げる。
多勢に無勢とはこのことだ。
記憶からの解析であるのもあるが相手の強さが相応にあるので解析の進みはよくない。
けれど攻撃パターンの解析は出来る。
何よりヴァイリオとローティガは聖獣仲間、予想外の攻撃以外は知らない仲ではない。
それは相手も同じで攻撃パターンを読まれている。
正面から避けられないのはナンバースキル等の神獣の力による強化状態から放たれる攻撃だ。
「ガァアアアア!」
シュンシュンと無数の真空をローティガは飛ばしてきて、ヴァイリオたちは切り刻まれる。
致命傷に至らない限りは体力を犠牲に傷は即座に治っていく。
けれど血はどんどん失われて行く訳で。
そんな中で――。
「危ない!」
ドン! っとヴァイリオは強化竜騎兵が放ったライトニングピアースらしき一撃を突進でベリングリと協力をしていた者たちを突き飛ばして体に大穴を開けてしまった。
この穴は……俺が寄生する際に使った傷口だ。
ジュウウ……っと酷く肉が焼け、更に雷属性を纏った魔力がヴァイリオの全身を駆け巡る。
「うぐううう……」
「ヴァ、ヴァイリオ!?」
ぶん! っと竜騎兵らしき奴がヴァイリオを突き刺したまま持ち上げてローティガの方へと投げつける。
「ぐううう――」
「ガアアアアアア!」
その隙を逃さないとばかりにローティガはヴァイリオの喉に食らいつく。
「ぐっ……はなせガアアアアアアア!」
カッとヴァイリオは聖なる光を体から放ち、ローティガへとぶつける。
物ともせずにヴァイリオの喉笛を噛み千切るかと思ったその時。
「ハァ!」
ベリングリが高質化した拳を力強く握りしめローティガを思いきり殴りつけると同時に口から熱線を吐き出した。
「グギュアアアアアア!?」
これは思わずローティガも耐え切れず口を開いてそのまま吹き飛ばされる。
そこを守るように竜騎兵が間に立って盾で熱線の軌道を逸らしながらトルネードエアで熱線を切り上げ、そのままベリングリを一刀両断するとばかりに斬撃を飛ばしていた。
「ふん!」
もちろん飛んでくる攻撃を避けるベリングリだが、避ける先にも迷宮種たちの後方射撃が無数に飛んできて……ヴァイリオの視線だから普通に戦っているように見えるけど、これ……俺がこの場に居たら早すぎて目で追うのがやっとの速度で戦ってるぞ。
次元が違う。
ヴァイリオが大ダメージを受けた事で速度に追いつけなくなったから気づいた。
「ゼェ……ゼェ……うぐ……ううう」
カッと光を纏おうとするヴァイリオだがダメージが大きすぎて戦闘継続が難しくなっていた。
何より毒素が体中を巡り始めて力の制御がおぼつかなくなっている。
俺が寄生してどうにか処理したのはここで受けたのか。
「大丈夫かヴァイリオ!」
「あ、ああ……!! まだ、私は戦え、る! ぐ……ううう」
致命傷になりかねない攻撃を何発か受けてしまったが、ここで引き下がるわけにはいかずヴァイリオは残された力で立ち上がって戦意を高揚させる。
野生の動物や魔物というのは絶命するその瞬間まで戦い続けることが出来る。
それほどに生命を燃やし尽くして戦えるのは……尊敬に値する勇気ある意志だ。
俺は出来てないと思う……死んでもいいと思って戦う事は出来たけれどさ。
「シャアアアア!」
弱っている所に迷宮種連中も追撃の攻撃をしでかし始めた。
こいつはさっき仕留めたファルレアじゃないか。地面から飛び出してナンバースキルらしき加速でヴァイリオに食らいつく。
「離れろ!」
カッとヴァイリオは光でオーラを放って跳ね飛ばすけれどダメージは地味に入ってしまう。
無数の敵から雨のように降り注ぐ集中砲火を受けて負傷したヴァイリオは限界に近付きつつあった。
「逃げろヴァイリオ! もうお前じゃ無理だ」
「逃げるわけにはいかんだろう……ぐうう!」
重傷を払いのけて懸命に闘志を燃やすヴァイリオにベリングリは下がるように提案する。
そこでノシっと……竜騎兵らしき奴が余裕を見せるように前に出て挑発するように手をかざす。
何をする気だ?
するとグニッと……俺の認識通り龍鱗の装甲版が開いて核が露出し、そこから――。
え……おい。
ドクンとヴァイリオの記憶を閲覧していた俺の心臓が強く鼓動したのを感じ、同時に言葉を失ってしまった。
「HEY! いい加減楽になるのがいいZE! 俺も可愛い動物ちゃんを痛めつけるのは心がペインしちゃうからYO!」
竜騎兵から降りて姿を見せたのは……。
「ラル……オン!?」
そこに居たのは敵方の迷宮種たちと似たように頭の半分が機械化している……ラルオンだった。
バカな……ラルオンは藤平の暴走によって殺されたって話だったはず。
少なくとも藤平がこの件で嘘を吐くはずがないし、騙されていたにしても迷宮内で死体を遺棄したとか抜かしてた。
ラルオンの姿を確認すると、胴体辺りに藤平が傷つけたのではないかと思われる痕が存在する。
まさか敵はラルオンを何らかの手段で捕まえる、ないし死体を操って竜騎兵を操縦させているとでもいうのか……?
くっ……ラルオンの登場の所為で冷静に居られずヴァイリオの戦闘の様子が概念的にしか入ってこない。
ラルオンの挑発に激高したヴァイリオだったがそこから数度の猛攻を受けて立っているのもやっとになってしまった。
「いい加減にしろ! このままじゃお前が足手まといになる。さらに敵に捕まってみろ! ローティガの二の舞だぞ!」
「うぐ……」
ベリングリの忠告を受け、且つ瀕死の状況……このまま負けるのは元より生け捕りにされようものならより犠牲者を生みかねない。
「……すまない。ベリングリ……く……」
「言ってろ。これが終わったら神獣様の子とやらと戯れるんだろ? ケントともな。その為に少しくらい休んでろ。ここは私一匹で十分だ。全部仕留めてやるさ」
親指を立てて逃げるヴァイリオを見送るベリングリだが圧倒的に不利、そんな中でも臆することなく対峙していた。
「HAHA、じゃあこっちも遊んじゃ可哀SOUだから全力で行くぜベイビィ!」
ラルオンは異世界の戦士の力を発動させてベリングリへと突撃する所でヴァイリオの感知範囲から抜けた。
それからあまり時間が掛からずに大きな爆発音が響き渡り……ベリングリが自爆特攻により絶命し座に戻ったのをヴァイリオは感じ取ったのだった。
それとほぼ同時にベリングリと連携して発動させた都市封鎖の結界が強固に発動し、まばゆい光が都市を守るのを……見届けたままヴァイリオは近くの村の結界をバイパスにして瞬間移動を行ったようだった……。
「私の経験した敵との戦闘はこのようなものだった。どうだ? 何か参考に……ユキカズ? どうした?」
俺に記憶を見せていたヴァイリオが驚きのまま状況を見ていた俺へと尋ねてくる。
「あ、ああ……」
「流れてくる力から狼狽しているのが寄生しているからこそ分かる。一体どういうことか説明してくれ」
ヴァイリオも俺が驚いているのを察しているか……ここは素直に答えるのが良いよな。
「敵の竜騎兵に乗っていた人間は……死んだはずの俺の知り合いだ」
俺はヴァイリオに逆に知っている情報を流す。
異世界の戦士として兵士をしている際、謎の勢力の暗躍から藤平を保護するためにライラ教官の同士である冒険者のラルオンが藤平を見習いとしてスカウトし保護した事。
その立場を気に食わない藤平が敵に利用されてラルオンを殺して免許証を利用していた事。
藤平の口からラルオンを殺したという事を聞いた事などだ。
ラルオンは一緒の任務で賞金首を個人所有の魔導兵で仕留めていて、腕は確かだった。
その死んだはずのラルオンが……どうしてこんな場所にいて聖獣たちは元よりこの世界の者たちに害をなしているのか。





